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平成 19 年度(2007 年度)事例 Ⅰ 解答解説
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第 1 問(配点 10 点)
設問文
バブル経済崩壊後、10 年以上にわたって続いた長期景気低迷も、2003 年以降回復傾向にある。A 社も、そうした景気回復を追い風に業績を改善しつつある。しかし、活況を取り戻しつつあるとはいえ、今日の消費市場は、以前にも増して不透明さや複雑さが高まっている。A 社が事業を展開している宝飾品市場は、どのような不透明さや複雑性を抱えていると考えられるか。100 字以内で答えよ。
回答例(100 字)
高額な裁量的消費で景気・所得に左右され、回復が続くか不透明である。年齢や嗜好・流行で選好が分かれ、品質・価格だけでなくブランド認知やイメージも購買を左右するため、ブランド間競争と需要予測が複雑である。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、宝飾品市場の 不透明さと複雑性 です。市場回復の先行きと、個別ブランドが顧客を獲得する難しさを分け、100字で説明します。
与件文から市場の回復と自社の条件を読む
与件文のどこを見るか
- 第6段落: バブル経済崩壊直前の市場規模にまで復活するような好業績を期待することはできない、 わずかながら拡大傾向 とあります。回復傾向と、回復の大きさを楽観できない状況が併記されています。
- 第7段落: 限定的な市場で知られているニッチ・ブランド、 多額の販売促進費用を継続的に負担していくことは現実的ではない とあります。市場の追い風をA社の需要へ変えるには、認知形成と費用の制約を考える必要があります。
第7段落の 「もっとも」 は、インポート市場の拡大とA社の限定的な認知の違いを示します。 「とはいえ」 では、認知を上げたいという課題に費用の制約が加わります。
市場が伸びても、どのブランドが売れるかは別に考える
回復の方向と、回復する大きさを分ける
市場は縮小から拡大へ転じていますが、バブル期の規模へ戻るほどの成長は期待されていません。景気回復の追い風があっても、それが今後どれだけ続き、需要がどの程度増えるかを単純には見通せません。 緩やかな回復と、成長の先行きの不透明さ を合わせて読みます。
業界の追い風を自社の売上へ変えるには認知が必要
有名な海外ブランドへの関心が高まっても、国内で知られていないブランドが同じように選ばれるとは限りません。A社は価値を知ってもらう必要がありますが、継続的な大規模広告は難しい状況です。
ニッチブランドの認知形成と、限られた販促資源の両立 が市場開拓を複雑にします。内部の費用制約だけを述べるのでなく、回復市場で自社の需要をどう獲得するかという外部との関係へ結びます。
市場の不透明さと複雑性を100字で答案化する
答案の骨格は、景気・所得に左右される需要の不透明さと、年齢・嗜好・ブランドイメージが絡む競争の複雑さです。A社の販促資金の制約だけでは市場の性質を説明しきれません。X・Yの顧客と価格帯の違いや輸入ブランドの認知の差を踏まえ、誰に何が選ばれるかを予測しにくいと説明します。景気が必ず悪化するとは断定しません。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくりについて解説しています。本問では、「機会と脅威を外部環境として分ける」と「複数要因の相互作用を見る」を2007年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 機会と脅威を外部環境として分ける | 市場は緩やかに回復する機会がある一方、バブル期水準まで戻らない脅威がある | 好転か悪化かの一語で決めず、方向と回復幅を分ける |
| 複数要因の相互作用を見る | 限定的な市場回復、ブランド認知の課題、販促費制約が市場開拓へ同時に作用する | 単に『競争が激しい』と一般化せず、与件の要因を因果で束ねる |
| 内部制約を外部環境と混同しない | 多額の販促費を継続できない点は、市場の複雑性へ対処するA社側の制約である | 市場の説明を人事・店舗施策へすり替えない |
類題は、2010年度事例I第1問(設問2) は商品特性と価格志向・物流要求・大手参入から環境変化を説明する問題で、本問と同じく複数の外部要因を束ねます。2012年度事例I第1問 は海外進出を促す外部環境を二要因に分ける点が共通します。2025年度事例I第1問 はSWOT四区分を直接要求するため、本問より内部・外部の切り分けを厳密に行います。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくり)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 15 点)
設問文
A 社は、主に百貨店やショッピングセンター内のインストアショップによる店舗展開を行ってきた。路面店と比較して、インストアショップによる店舗展開のメリットとデメリットについて 150 字以内で答えよ。
回答例(144 字)
メリットは、商業施設の高い集客力と信用力を活用し、ブランド認知度が低いA社でも比較的少ない初期投資で安定した売上が期待できること。デメリットは、売上比例の手数料による収益性の低下や営業時間や販促活動の自由度が低く、独自のブランド世界観を構築し、顧客のロイヤルティを高めることが困難なこと。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 路面店と比べたインストアショップの利点と欠点 です。集客・費用・運営の自由度を共通の軸にして、150字で比較します。
与件文から出店形態とA社の制約を読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落: 立地条件に恵まれた有名百貨店や大手ショッピングセンター内のインストアショップ とあります。人が集まる施設の中へ出店する方式です。
- 第7段落: 2つのブランドの国内での知名度は、有名インポート・ブランドのように高くなく、 多額の販売促進費用を継続的に負担していくことは現実的ではない とあります。自力で大きな認知を作る負担を抑えたいA社にとって、施設の集客力には意味があります。
- 第10段落: 責任権限の委譲や部門間連携の円滑さ、意思決定の迅速性 とあります。インストアの運営裁量や調整には課題があると読み取れます。
第7段落の 「とはいえ」 が示す販促費の制約を踏まえると、自社だけで集客しなくてよいことの価値が分かります。
集客基盤を借りる代わりに、自由度と収益の一部を譲る
施設の来店客と信用を使い、出店負担を抑える
路面店では、自社の店を知ってもらい、足を運んでもらう働きかけが必要です。インストアなら施設へ来た人との接点が生まれ、有名百貨店などで扱われていることも商品への安心につながります。 施設の集客力・信用力を活用できる 点が利点です。
独立した店を整える場合と比べ、施設の基盤を使って初期投資を抑えられる可能性もあります。ただし、具体的な投資額は示されていないため、出店方式の一般的な比較として説明します。
費用と運営ルールが、自社の判断を制約する
施設への支払いが売上歩合などで設定される場合、売上の一部が手数料となり利益を圧迫します。また、営業時間、売場づくり、販促などを施設と調整する必要があり、路面店ほど自由に変えにくくなります。
手数料等の負担と、運営・ブランド表現の自由度の制約 が欠点です。A社の具体的な契約率を推定するのではなく、施設の力を利用する方式に伴う負担を示します。独自の世界観や継続的な顧客関係を自社の裁量で育てる点では、路面店に役割があります。
インストアの利点と欠点を150字で答案化する
答案の骨格は、 集客・信用・初期投資面の利点/手数料負担・運営裁量・独自ブランド形成の制約 です。利点の後に、同じ方式で何を失うかを対にして置きます。
150字では、A社の低認知・資金制約への適合と、その代償を残します。店舗形態の一般論だけでなく、A社が使う意味が分かる比較にしましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
中小企業庁「2022年版中小企業白書 第2部第3章第2節」は、デジタルを含む販売接点の便益と取引条件上の制約を確認する材料です。公的資料から得る判断軸は、一般論を答案へ貼ることではなく、設問の要求と2007年度の与件事実を対応させることです。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 他者の集客基盤を利用する | 百貨店・SCの来店客と信用を使い、認知度の低いA社でも集客する | 立地が良いという結果だけでなく、借用する資源を特定する |
| 固定投資と販促負担を抑える | 路面店より少ない投資で14店舗へ展開し、継続的な大量広告を補完する | 低投資と低コストを無条件に同一視せず、手数料負担も見る |
| 取引条件による自由度低下を確認する | 営業時間・販促・売場の制約で、独自世界観と顧客囲込みが難しい | メリットだけを書かず、同じ比較軸のデメリットを対置する |
類題は、2013年度事例I第1問(設問1) は通信販売チャネルを長期継続する事業設計、2019年度事例I第3問 はWeb接点を情報収集へ使う機能を問います。共通するのは、接点ごとの便益・制約・役割を分けることです。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第2部第3章第2節」(デジタルを含む販売接点の便益と取引条件上の制約)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 15 点)
設問文
A 社の唯一の直営路面店は、2005 年に開店した。この店舗の A 社の事業展開における戦略的位置づけと、それを達成するために必要だと思われる施策について、100 字以内で述べよ。
回答例(100 字)
直営店を両ブランドの世界観と価値を発信する旗艦店とする。統一的空間演出、限定品・イベント、デザイナーの魅力を伝える接客で認知と愛顧を高める。顧客嗜好や新商品への反応を集め、企画と全店の販売へ還元する。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 直営路面店の戦略的位置づけと、それを実現する施策 です。旗艦店という役割を先に示し、何を発信し、顧客とどんな関係を作るかを100字で説明します。
与件文から立地とブランドの課題を読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落: ファッション情報の中心地ともいえる地区の直営路面店 とあります。商品の販売だけでなく、情報を発信する拠点として使える立地です。
- 第5段落: 両ブランドを取り扱っている店舗、 直営路面店で6名 とあります。二つのブランドを伝え、接客を通じた関係づくりに取り組む場と考えられます。
- 第7段落: いかに2つのブランドの認知度を高めていくか とあります。直営店の役割を結びつける経営課題です。
第7段落の 「もっとも」 は、市場の伸びと自社の低認知の間に隔たりがあることを示します。情報の中心地に持つ店舗を、その隔たりを埋める顧客接点として考えます。
売る店から、ブランドを知り好きになる拠点へ
旗艦店で、二つのブランドの世界観を伝える
直営店では、空間や商品陳列、接客を通じて、自社が伝えたい価値を一体として表現しやすくなります。商品の価格だけでなく、デザイナーの意図や着用場面まで体験してもらう ブランドの情報発信拠点となる旗艦店 と位置づけます。
ここで得た認知や支持が他店舗での購入へつながれば、単独店舗の売上を越えた役割を果たします。高級な内装を作るだけでなく、顧客がブランドを理解する場にすることが大切です。
体験と対話を、継続的な関係へつなげる
答案の骨格は、情報発信する旗艦店、世界観を体験できる空間・接客、顧客反応の収集と全店還元です。デザイナーの魅力を伝える接客は提案例であり、本人が店頭に立つという事実ではありません。嗜好や商品への反応を次の企画と各店の販売へ戻すことで、認知だけでなく市場を学ぶ拠点とします。
旗艦店の位置づけと施策を100字で答案化する
答案の骨格は、 ブランド情報を発信する旗艦店→世界観を示す空間・限定品・イベントと関係づくり→認知・支持の向上 です。役割を先に置き、それに合う行動を肉付けします。
100字では、位置づけと具体策の両方を確保します。イベントの細部より、ブランドの理解と継続的な顧客関係へつながる施策を残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「コーポレートブランディング」は、企業の存在意義とブランドコンセプトを明確にし、継続的に発信・維持する手順について解説しています。本問では、「ブランドのコンセプトと伝える価値を明確にする」と「顧客接点で体験と情報を蓄積する」を2007年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| ブランドのコンセプトと伝える価値を明確にする | ニッチな輸入ブランドの世界観を、都心の直営路面店で一貫して表現する | 「高級感を出す」だけで終わらず、ブランド認知度向上という経営課題へつなぐ |
| 顧客接点で体験と情報を蓄積する | 限定品、イベント、接客で顧客との関係を深め、反応を直接収集する | 売上拡大だけでなく、顧客情報を企画や他店舗へ還流する効果を書く |
| 接点をブランド資産へ変える | 継続的な多額の広告に代えて、旗艦店を情報発信拠点として活用する | 直営路面店の戦略的位置づけと、それを実現する施策を答案上で分ける |
類題は、2025年度事例I第2問(顧客接点を作り、顧客理解と関係強化へつなげる論点)、2019年度事例I第3問(試験サービスを双方向の情報収集と市場開拓へ使う論点)、2020年度事例I第3問(直販で得る顧客情報を営業能力へ変える論点)です。共通するのは、接点を販売だけでなく情報収集・価値発信へ使うことです。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コーポレートブランディング」(企業の存在意義とブランドコンセプトを明確にし、継続的に発信・維持する手順)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 45 点)
設問文
A 社が行った従業員の意識や満足度の調査結果について、以下の設問に答えよ。
(設問 1)
一般的に、高級ブランドを取り扱っている店舗の従業員の満足度は、それよりも低い位置づけにあるブランドを扱っている店舗の従業員の満足度よりも高いと考えられる。しかし、A 社では、高級アクセサリーの X ブランドのみを取り扱っている店舗の従業員の満足度が相対的に低い傾向を示している。なぜ、そうした傾向がみられるのかについて、100 字以内で説明せよ。
回答例(99 字)
X店は経験豊富な従業員が高価格品の専門的接客を担うが、給与が技能や売上・利益への貢献を反映しないため。熟練契約社員が若い正社員より雇用区分・学歴を重視した処遇と受け取り、不公平に感じると考えられる。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 Xブランド店の従業員が処遇に不満を持つ理由 です。扱う商品と販売員の経験を踏まえ、貢献への期待と報酬の受け止め方を100字で結びます。
与件文から求められる仕事と不満の項目を読む
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 平均単価10万円を超える高級アクセサリー、 平均年齢、業界経験年数でともに高く とあります。Xブランド店には、高価格品を扱う経験豊富な人材が配置されています。
- 第10段落: 給与水準、業績への給与の反映度 とあります。Xブランド店の不満が特に強い項目です。
第10段落の 「特に」 は、労働条件全般から給与と成果の反映へ焦点を絞っています。ここでは職場の人間関係でなく、経験や成果がどう報われるかを考えます。
高価格品への専門的な貢献が、処遇に見合うか
顧客が納得して買うために、経験と販売技能が必要になる
高額なアクセサリーでは、顧客が価値を理解し、自分に合うと納得できる説明や提案が重要になります。経験豊富な販売員は、商品知識や接客の蓄積を使って、その判断を支えると考えられます。 高価格品を売る専門性と経験に基づく貢献 が、処遇への期待の根拠です。
貢献が認められていないと感じると不公平感が生まれる
答案の骨格は、高価格品を扱う経験・技能、貢献への処遇期待、雇用区分等を優先していると感じる不公平感です。与件は契約社員と正社員の経験・年齢差、X店の経験の高さ、給与と業績反映への不満を示します。特定店舗の社員構成や給与差は示されないため、経験ある契約社員が能力より雇用区分・学歴を重視されたと感じた可能性として説明します。実際の給与制度を断定しません。
Xブランド店の不満の理由を100字で答案化する
答案の骨格は、 高価格品を担う経験・販売技能→貢献に見合う処遇への期待→給与・成果反映とのギャップ です。担当商品と人の特徴から、特定の不満項目へつなぎます。
100字では、なぜXブランド店で期待が高くなるかと、何が報われていないかを残します。単に「給与が低いから」ではなく、貢献との対応を説明しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
中小企業庁「2023年版中小企業白書 第2部第1章第3節」は、経営戦略と採用・配置・教育・評価・報酬を連動させる人材戦略を確認する材料です。公的資料から得る判断軸は、一般論を答案へ貼ることではなく、設問の要求と2007年度の与件事実を対応させることです。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 戦略に必要な能力を定める | 高級アクセサリーの販売に必要な商品知識・接客力・経験を明確にする | 高級品だから大変という一般論で終えない |
| 能力・貢献と評価を対応させる | 高単価販売への貢献と専門性を評価項目へ反映する | 売上だけでなく、関係構築や専門知識も確認する |
| 評価と報酬の公正を点検する | 給与水準と業績反映度が他ブランド店に比べて見合うか確認する | 理由問題なので施策列挙より不公平感の因果を優先する |
類題は、2010年度事例I第3問 は成果主義強化の長短を問う制度選択、2012年度事例I第5問 は組織貢献を含む成果主義の設計を問います。本問は制度設計ではなく、現行処遇への不満理由を説明する点が異なります。2013年度事例I第2問(設問2) は評価・処遇を定着へつなぐ点が共通します。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書 第2部第1章第3節」(経営戦略と採用・配置・教育・評価・報酬を連動させる人材戦略)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
(設問 2)
直営店に比べてインストアショップの従業員の満足度が、相対的に低い傾向を示している。なぜ、そうした傾向がみられるのかについて、100 字以内で説明せよ。
回答例(99 字)
インストアショップは施設の運営条件と本社の指示に従うため裁量が小さい。少人数で地域に分散し、本社・他店と情報交換や支援を得にくい。承認・調整に時間がかかり顧客へ迅速に対応できず、主体性が乏しいため。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 インストアの従業員が直営店より不満を持つ理由 です。施設と本社との関係から、現場の裁量・連携・意思決定がどう制約されるかを100字で説明します。
与件文から店舗形態と不満の内容を読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落: 有名百貨店や大手ショッピングセンター内のインストアショップ とあります。自社に加えて、入居先の運営条件にも合わせる出店形態です。
- 第5段落: インストアショップで2~3名、 直営路面店で6名 とあります。インストアは少人数で店舗を運営しています。
- 第10段落: 責任権限の委譲や部門間連携の円滑さ、意思決定の迅速性 とあります。現場の判断と、本社などとの連携に関わる不満が示されています。
第10段落の 「また」 で、ブランド別の給与の話からチャネル別の運営の話へ移っています。設問1の報酬の不満をそのまま使わず、権限と調整の仕組みへ焦点を変えます。
現場で担う責任に、判断できる範囲が追いつかない
施設と本社の両方へ合わせる調整が必要になる
インストアはA社の店舗である一方、入居する商業施設の中で営業します。例えば売場での販促や運営方法を変えようとすると、自社の方針だけでなく施設側の条件も確かめる必要があります。 施設の制約と本社の管理による裁量の小ささ が、路面店との違いとして考えられます。
具体的な承認手順は示されていませんが、権限委譲への不満から、現場が必要と感じる判断範囲が十分でないことを読み取れます。
連携が滞ると、顧客への対応を進めにくい
答案の骨格は、施設と本社の制約、少人数分散による連携の難しさ、意思決定遅延による働きにくさです。店舗は地域に分散し各2〜3人なので、直接の情報交換や支援を得にくいと考えられます。施設の個別契約や現実に起きた接客トラブルは作らず、満足度調査の権限・連携・迅速性の低さを説明する可能性として結びます。
インストアの不満の理由を100字で答案化する
答案の骨格は、 施設・本社の制約→現場裁量の不足と連携の難しさ→判断の遅れ・主体性の阻害 です。出店形態の特徴を、現場で起きる仕事の進めにくさへ結びます。
100字では、誰との調整が必要で、何を決めにくいかを短く残します。満足度が低い項目の列挙だけで終わらず、それらがつながる理由を示しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」は、幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方について解説しています。本問では、「顧客接点へ必要な権限を置く」と「部門間の情報経路を短くする」を2007年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客接点へ必要な権限を置く | インストアショップへ売場改善と顧客対応の一定裁量を与える | 全面的な権限委譲ではなく、施設・本社ルールとの境界を定める |
| 部門間の情報経路を短くする | 店舗、本社、施設側の相談・承認先を明確にする | 連携不足を会議増加だけで解決しない |
| 意思決定速度と統制を両立する | 定型的な顧客対応は店舗で決め、重要事項のみ本社承認とする | 設問は理由を聞くため、施策より現状の因果を優先する |
類題は、2008年度事例I第3問 は人事権・購買権を工場長へ移し意思決定軸を変える問題、2022年度事例I第4問(設問2) は後継者へ段階的に権限委譲する問題です。本問はチャネル制約下の現場裁量が焦点です。2016年度事例I第2問(設問2) は機能別組織の縦割りを越える部門横断連携という共通点があります。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」(幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
(設問 3)
社歴の長い従業員の満足度が社歴の短い従業員の満足度より低くなる大きな理由は、自分自身の将来像やキャリアに対する不満と、上司に対する不満である。中でも、上司に対する不満が、インストアショップで相対的に高いことが分かった。不満の原因とそれを解消するために取るべき施策について、中小企業診断士として、どのようなアドバイスをするか。100 字以内で答えよ。
回答例(99 字)
原因は上司の指導・対話が不足し、経験者が能力向上と将来像を描けないこと。店長へコーチング研修を行い、面談で課題を把握し助言する。他店経験や商品企画参加、正社員登用の機会と公平な評価基準を明確にする。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 上司への不満の原因と、それを解消する施策 です。育成・キャリア支援の課題を、店長の能力開発と制度の整備へ対応させて100字で助言します。
与件文から上司に期待される支援を読む
与件文のどこを見るか
- 第2段落: 各店舗の店長は、正社員、契約社員に関係なく任命 とあります。上司と部下の関係を、雇用区分だけで決めつけることはできません。
- 第10段落: 相対的に社歴の長い従業員の満足度が低い、 自らの将来像や能力改善に関する項目で満足度が顕著に低く、 上司に対する項目でも不満 とあります。経験を積んだ人の成長・将来像と、上司の支援の関係が課題になっています。
第10段落の 「とりわけ」 は、社歴の長い人の不満を将来像・能力改善へ絞っています。設問文はインストアで上司への不満が高いことを示すため、両方の情報を使って支援の不足を考えます。
経験者を育てる上司の力と、先の見える制度を整える
接客に詳しいだけでは、人を育てる役割を果たせない
経験のある販売員も、今後の役割や能力を伸ばす機会が見えなければ、同じ仕事の繰り返しと感じることがあります。上司が目標を一緒に考え、学習機会や具体的な助言を示せていなければ、成長を支えてもらえないという不満につながります。
部下の育成とキャリア展望を支えるマネジメントの不足 が原因として考えられます。年下・高学歴だから指導できないという話ではなく、販売の能力と、経験者を含む部下を育てる能力を分けて診断します。
店長の指導力と、会社としての将来像を組み合わせる
答案の骨格は、育成・対話の不足という原因、店長のコーチングと定期面談、具体的な能力開発・登用機会です。研修だけで終わらず、日常に社員の課題を聴き助言する方法を示します。他店経験、商品企画参加、正社員登用は将来の選択肢としての助言で、実施済みとはしません。経験や意欲を公平に評価する基準と合わせ、将来像を描けるようにします。
不満の原因と解消策を100字で答案化する
答案の骨格は、 上司の育成・キャリア支援不足→管理職研修+キャリア・評価制度の整備 です。原因を前半に置き、その不足を補う施策を後半へつなぎます。
100字では、上司個人の能力と会社の制度の両方を改善する方向を残します。研修だけ、賃上げだけとせず、経験者が次へ進む道筋を支える助言にしましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「定着率を高める幹部教育」と経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」は、理念・ビジョン共有、経営を学ぶ機会、コーチングで経営幹部を育成・定着させる方法と理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法について解説しています。本問では、「必要な管理職能力を特定する」と「成長機会を見える化する」を2007年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 必要な管理職能力を特定する | 店長に目標設定、権限委譲、育成面談、フィードバック能力を求める | 抽象的なコミュニケーション研修で終えない |
| 成長機会を見える化する | 熟練販売員へ能力開発計画、次の役割、昇進基準を示す | 研修実施だけで将来像が見えると断定しない |
| 管理職行動と制度を連動する | 定期面談と公正な評価・キャリアパスを制度として支える | 原因と施策を一対一で対応させる |
類題は、2014年度事例I第5問 は高度専門人材の長期定着へキャリア・評価・研究環境を整える問題、2022年度事例I第2問 は二要因理論も使い新規就農者の獲得・定着を図る問題です。本問は上司不満と管理職育成が中心です。2022年度事例I第4問(設問2) は権限委譲を通じた後継管理者育成の点が共通します。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「定着率を高める幹部教育」(理念・ビジョン共有、経営を学ぶ機会、コーチングで経営幹部を育成・定着させる方法) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」(理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。
第 5 問(配点 15 点)
設問文
A 社は、年間約 6 億円の売上げをあげているにもかかわらず、営業利益は 1,600 万円で、売上高営業利益率は 3%以下である。今後、A 社の収益構造を改善していくためには、どのような施策を講じていくべきか。中小企業診断士としてアドバイスする具体的施策について、100 字以内で答えよ。
回答例(100 字)
旗艦店の発信と顧客別の提案でブランド価値を伝え再購入を促し、販促費を効率化する。売れ筋・顧客の嗜好と粗利を商品企画・仕入へ反映し、適正在庫と高収益の商品群を保つ。店別採算に応じ人員・店舗配置を見直す。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、 収益構造を改善する具体策 です。売上を増やすだけでなく、ブランド価値、商品の利益、販促費、在庫・人員の効率を組み合わせて100字で助言します。
与件文から利益を残すための条件を読む
与件文のどこを見るか
- 第3段落: 商品の仕入価格は、販売価格のおよそ40%を目標 とあります。商品売上と仕入の関係を見たうえで、店舗運営などの費用を考える必要があります。
- 第5段落: インストアショップで2~3名、 直営路面店で6名 とあります。店舗の形態や役割に応じて、人員の使い方を確認する視点になります。
- 第7段落: 多額の販売促進費用を継続的に負担していくことは現実的ではない とあります。費用を積み増すだけではなく、販促の効率を高める方向が必要です。
第7段落の 「とはいえ」 は、認知向上の必要性と販促費の制約をつなぎます。費用を増やして売るだけでなく、既存の接点や人を使って利益を残す方法を考えます。
売る価値を高めながら、利益が残る運営へ変える
旗艦店と継続的な顧客関係を使い、販促を効率化する
直営店の情報発信を広報に活かし、接客で分かった好みに合う提案を継続すれば、毎回大きな広告費で新規顧客を集める以外の売り方を育てられます。 旗艦店の発信と顧客関係管理で、ブランド価値と再購入を高める 方向です。
価格を下げて数量を売るだけでなく、価値に納得して選んでもらうことを重視します。販促手段ごとの効果を確かめれば、限られた費用を有効な接点へ配分できます。
商品と店舗の採算を確かめ、在庫・人員を合わせる
答案の骨格は、ブランド価値を伝える提案で反復購入を促すこと、顧客・売れ筋情報を企画と仕入へ反映すること、店別採算に合わせて配置を見直すことです。売上側と費用側を分け、単なる最適化という語ではなく何を基準に変えるかを示します。過剰在庫や人員の無駄が現在あるとは断定せず、採算を確かめて見直す助言として書きます。
収益構造の改善策を100字で答案化する
答案の骨格は、 旗艦店・顧客関係で価値と販促効率を高める+商品構成・在庫・人員を最適化→収益改善 です。売上側と費用・効率側の二つを組み合わせます。
100字では、何を使って価値を高め、何を見直して利益を残すかを具体的に示します。「売上を増やし費用を減らす」という結論だけにせず、A社の資源と制約に合う施策を残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
中小企業庁「2025年版中小企業白書 第2部第1章第2節」は、原価・利益の可視化と透明性の高い経営管理を確認する材料です。公的資料から得る判断軸は、一般論を答案へ貼ることではなく、設問の要求と2007年度の与件事実を対応させることです。
| 公的資料の判断軸 | 2007年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 商品・店舗別の利益を把握する | ブランド別・チャネル別に売上、粗利、手数料、在庫回転を比較する | 売上高だけで好不調を判断しない |
| 固定費と運転資本を見直す | 在庫水準と店舗別人員配置を需要に合わせる | 一律削減で接客品質を落とさない |
| 付加価値と利益率を両立する | 旗艦店・顧客関係管理で販促費を抑えつつ高収益商品の構成比を高める | 値上げや値引きだけの答案にせず、価値・費用・商品構成を結ぶ |
類題は、2009年度事例I第5問 は短期売上のため既存商品・既存販路を使う問題で、本問の利益率・固定費改善とは評価指標が異なります。2010年度事例I第1問(設問2) は差別化しにくい商品で価格・物流要求へ対応する環境分析、2025年度事例I第2問 は顧客接点を作る施策を問います。共通するのは顧客価値を維持しながら収益へつなぐことです。 共通する判断軸を再利用しつつ、相違する設問要求を混同しません。
出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書 第2部第1章第2節」(原価・利益の可視化と透明性の高い経営管理)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2007年度の与件事実を主根拠にします。

