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令和 6 年度(2024 年度)事例 Ⅰ 解答解説 ​

目次は画面右上の「On this page」をタップしてください。

第 1 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

A 社の 2000 年当時における ⒜ 強みと ⒝ 弱みについて、それぞれ 30 字以内で答えよ。

回答例(29,29 字) ​

【強み】地元密着の輸送力、協力会連携、倉庫・流通加工の総合対応力。 【弱み】旧態依然の管理、弱い新規開拓力、非効率な受注管理体制全般。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、 2000年当時のA社の強みと弱み です。それぞれ30字以内で、与件に書かれた資源・能力や課題を整理して答えます。

本問は、配置転換の狙いや今後の施策を考える問題とは、取り組み方が少し異なります。与件から新たな意味を類推することよりも、 根拠となる言葉を拾い、強み・弱みに分類し、短くまとめること が中心です。

難しいのは、根拠が見つからないことだけではありません。「これも強みとして入れたい」と候補を増やすうちに、字数が足りなくなることもあります。そこで、与件を読む段階では候補を広く拾い、答案に残す要素は後から絞る方法を使います。

根拠集めは最初、答案の確定は最後 ​

与件を読みながら候補をマーキングする ​

与件を読みながら、強み・弱みの候補をボールペンや蛍光ペンでマーキングします。色や線の種類で区別しておくと、後で見返しやすくなります。この段階では30字に絞らず、第2問以降へ進みましょう。 後の問題を解くことで、活かす強みと補う弱みの重要度が見えてきます。

候補を拾ったら、第2問以降へ進む ​

2000年時点のA社に当てはまる候補の中で、後続設問でも使うものを1軍、その他を2軍として整理し、最後に第1問へ戻ります。後に得た首都圏事業部のノウハウや長男のシステム提案力は、本問の強みにはできません。創業当時の問題が2000年にも残るかを確かめ、1軍を優先して各30字にまとめましょう。

与件文から強み・弱みの候補を拾う ​

与件文のどこを見るか ​

強みとしてマーキングする箇所 ​

  • 第3段落:A社は 地元密着型の質の高い輸送サービス を志向し、 協力会事業者との連携関係 を築いていました。地域のニーズを理解し、協力会とともに輸送を担えることが強みです。
  • 第4段落:A社は 自社で倉庫を保有 し、 流通加工や適切な温度・湿度で管理するサービス を提供していました。輸送だけでなく、保管や加工まで対応できる点を拾います。
  • 第5段落:食品スーパーX社の 各店舗への輸送業務を長期契約で請け負う とともに、 保管業務や流通加工の能力を高めた とあります。先に拾った倉庫・流通加工機能が、具体的な取引で生かされていることを確認できます。

弱みとしてマーキングする箇所 ​

  • 第4段落: 旧態依然の管理体質 が温存されていました。事業が広がっても、組織の管理の仕方に古さが残っていることを拾います。
  • 第5段落: 紙の伝票管理など受注管理面において非効率 が生じていました。物流取扱量の増加に、受注管理の仕組みが十分に対応できていないと読めます。
  • 第5段落:従業員は 地元志向が強かった とされ、 顧客の新規開拓力が弱かった ことも示されています。既存の地元顧客への対応と、新しい顧客を開拓する力を分けて捉えます。
接続詞からどう読むか ​

第4段落の 「一方で」 は、倉庫・流通加工という事業上の強みから、組織の古い管理体質へ話を切り替えています。強みの説明が続いていると思い込まず、弱みの候補へ切り替えてマーキングする箇所です。

第5段落の 「反面」 は、既存顧客との関係の強さと、新規開拓力の弱さを対比しています。A社の営業力が全面的に弱いのではなく、地元の既存顧客に強みがある一方、新しい顧客の開拓には課題があると整理します。

接続詞は候補を見つける目印になりますが、分類を決めるのは、その後に書かれた内容です。

第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける ​

後続設問で使う強み・弱みを確認する ​

今回の事例では、後続設問とのつながりから、次の要素を優先候補にできます。

第1問で拾った候補後続設問とのつながり答案に残す方向
地元密着の輸送、協力会との連携第3問で、Z社の県内進出を実行面で支える基盤となる地元密着の輸送力・協力会連携
倉庫、保管、流通加工の機能第3問で、企画だけでなく県内で物流を実行できる理由となる倉庫・流通加工の対応力
旧態依然の管理体質第2問の新市場開拓を担う組織づくりや、第4問の改革・調整につながる管理体質の古さ
地元志向、新規開拓力の弱さ第2問で、既存組織とは別にプロジェクトチームを組織する背景となる新規開拓力の弱さ
受注管理の非効率後年の受注管理高度化や、第4問設問2で知識・情報システムを県内へ展開する方向につながる受注管理の非効率

後続設問を使うのは、 2000年当時の候補の重要性を確かめるため です。後年に起きた問題を、そのまま2000年の弱みとして書き足すわけではありません。

2軍の候補は、1軍へまとめられないか考える ​

例えば、顧客からの信頼、温度・湿度管理、X社との長期契約も、A社を理解する上で大切な事実です。

ただし、これらをすべて独立して書くと、30字では収まりません。本問の下書きでは、まず補足候補として置き、顧客からの信頼や取引実績は地元密着の輸送力を支える根拠、温度・湿度管理は倉庫機能の具体的な内容として整理できます。

弱みも同様です。「地元志向」と「新規開拓力の弱さ」を別々に並べるより、答案では新規開拓力の弱さにまとめる方法があります。

2軍を捨てるのではなく、1軍の言葉に意味を含められないか考える と、根拠を生かしながら字数を縮められます。

強み・弱みをそれぞれ30字にまとめる ​

強みは、異なる機能を残す ​

強みでは、地元密着の輸送力、協力会との連携、倉庫・流通加工の対応力を残します。

「地元の信頼」「既存顧客との関係」「地域での実績」のように近い意味の言葉だけを並べると、倉庫や流通加工という別の強みが抜けてしまいます。 似た根拠はまとめ、異なる強みを残す ことを意識します。

弱みは、管理・営業・業務の違いを残す ​

弱みでは、古い管理体質、新規開拓力の弱さ、受注管理の非効率を整理します。

いずれも「経営が非効率」と一括りにするのではなく、管理体質、営業、受注業務という異なる面の課題を短く示します。そうすることで、A社の弱みを一つの側面だけで捉えることを避けられます。

本問は強み・弱みそのものを聞いているため、「強みは〜である。」と書き始める必要はありません。与件から選んだ要素を、名詞句で簡潔に並べます。

最後に、 各30字以内か、2000年当時の事実か、優先したい要素が抜けていないか を確認して答案を確定します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくりについて解説しています。本問では、「強みを外部環境への対応に生かす」と「弱みは戦略実行を妨げる内部要因」を2024年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料から得る判断軸2024年度第1問への当てはめ答案上の注意
強みを外部環境への対応に生かす協力会ネットワークと倉庫・流通加工機能で地元ニーズへ対応2000年以後に得た首都圏の能力を書かない
弱みは戦略実行を妨げる内部要因旧態依然の管理体質、受注管理非効率、新規開拓力不足規制緩和や競争激化などの脅威と混同しない
SWOTは分類後に組み合わせる地元密着の差別化に強みを使える一方、成長には管理面の弱みが残る本問はS・Wだけを30字ずつ答えるため、クロス分析まで答案に詰め込まない

類題は、2023年度事例I第1問の統合前A社の強み・弱み、2022年度事例I第1問の法人化前A社の強み・弱み、2025年度事例I第1問の新規事業に関するSWOT分析です。特に2023年度と2024年度は各30字なので、複数の与件事実を「資源・能力」に束ねる圧縮練習に向いています。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくり)

公的資料と類題は考え方を再利用するための補助資料です。2024年度の答案では、必ず設問の時点と当該与件の事実を優先します。

第 2 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

なぜ、A 社は、首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の 2 代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。100 字以内で答えよ。

回答例(97 字) ​

地元志向で新規開拓に弱い既存組織とは別に、少人数の専任チームで迅速に首都圏を開拓するため。長女の物流企画・営業経験を活かすとともに、事業を率いる経験を積ませ、後継者としての経営能力を育てるため。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、首都圏市場を開拓するに当たって、なぜプロジェクトチームを組織し、そのリーダーに長女を任命したのかです。 既存組織の弱さを補う組織づくり と、 長女の経験の活用・後継者としての育成 を結び付けて読みます。

問いは「チームを組織した理由」と「長女を任命した狙い」の二つです。そこで、100字を 組織目的に約50字、任命の狙いに約50字 と分けて考えましょう。

A社は地元顧客との取引を通じて成長してきました。 しかし 、地元の既存顧客に対応する仕事と、首都圏で新しい顧客を開拓する仕事では、求められる経験や行動が異なります。その違いを踏まえると、チームの編成と長女の任命を一つの狙いとして理解できます。

与件文からチーム編成と長女任命の狙いを読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第4段落:A社は倉庫管理事業へ進出しました。 一方で 、組織には 旧態依然の管理体質 が温存されていました。事業の広がりに対して、組織の仕事の進め方が十分に変わっていなかったと読めます。
  • 第5段落:従業員は 地元志向が強かった とされています。また、 既存顧客との関係が強い反面 、 顧客の新規開拓力が弱かった という特徴がありました。地元で築いた関係は強みですが、新しい市場へ踏み出す力には課題があったことが分かります。
  • 第6段落: 県外との輸送の引き合いが増加 する中、長女は 大手物流企業で物流企画部門や営業部門を経験 し、 首都圏での物流需要に可能性 を見出していました。新市場を開拓する機会と、その仕事に適した経験を持つ人物がそろった場面です。
  • 第6段落:創業経営者は長女をリーダーに任命し、 若手社員 1 名、首都圏での新規採用社員 1 名 とともにチームを組織させました。既存組織全体を動かすのではなく、少人数のチームに新市場開拓を担わせたことに注目します。
接続詞からどう読むか ​

第5段落の 「反面」 は、既存顧客との関係の強さと、新規開拓力の弱さを対比しています。A社は営業力が全面的に弱いのではなく、これまで関係を築いてきた顧客への対応に強みが偏っていたと捉えます。

続く第6段落の 「他方」 では、県外との取引機会へ話が移ります。地元中心の既存組織に対し、市場の側では新しい機会が生まれていました。この隔たりを埋めるための組織と人材として、プロジェクトチームと長女の役割を考えます。

チーム編成と長女任命の狙い ​

新市場開拓に取り組める小さな組織をつくる ​

地元志向が強く、新規開拓力が弱い既存組織に、そのまま首都圏開拓を任せても、従来の顧客や仕事を優先し、新しい取り組みが進みにくいことが考えられます。

そこで、 新市場開拓を担う専任のプロジェクトチーム を組織します。長女と若手社員、新規採用社員という少人数に役割を絞って任せることで、 既存組織の慣習に縛られず、機動的に開拓を進める 狙いが読み取れます。

与件には、既存社員が実際に反対したとは書かれていません。「抵抗が起きた」と断定するより、地元志向や古い管理体質が新市場開拓の妨げにならないよう、取り組みやすい体制を設けたと理解すると自然です。

長女の経験を新市場開拓に生かす ​

長女は、大手物流企業で物流企画と営業を経験しています。顧客の物流上の課題を捉えてサービスを考えることと、その提案を取引につなげることの両方に関わってきた人物です。さらに、首都圏の物流需要に可能性を見出しており、開拓する市場への問題意識も持っています。

長女をリーダーに据えることで、 物流企画・営業の経験を新市場開拓に生かす ことができます。自ら見出した事業機会について、チームを率いて実行する役割まで任せた配置と読めます。

新事業を任せることで後継者を育てる ​

設問では、長女にわざわざ「後の2代目」と添えられています。この表現を踏まえると、任命には、目の前の市場開拓に加えて 将来の後継者を育成する 意味も考えられます。

社外で物流企画や営業を経験していても、人を率い、判断し、事業の成果に責任を持つ経験は別に必要です。プロジェクトの責任者を任せれば、長女は自分の知識を使うだけでなく、メンバーを動かしながら新しい事業を形にすることになります。

創業経営者にとっても、 責任ある仕事を通じて長女の経営能力を育て、適性を見極める 機会になります。長女の任命は、即戦力としての能力活用と、次の経営者に向けた育成を兼ねたものと捉えられます。

チーム編成と長女任命の狙いを答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。

与件から読み取った内容を、 組織目的と任命の狙いに約50字ずつ 配分してまとめます。ここでも 50字×2を目安 に、二つの問いへ偏りなく答えることを意識しましょう。「理由は〜である。」でも答えられますが、今回は設問の問い方に合わせて、 「組織目的は〜するため。任命の狙いは〜するため。」 と書くと、どちらの問いに答えているかが明確になります。

前半の組織目的では、まず 地元志向で新規開拓に弱い既存組織とは別に、少人数の専任チームを設け と、チームを設ける背景を置きます。その後に、 不確実な新市場を迅速に開拓するため と、実現したい効果を続けます。「既存組織にどのような制約があるのか」と「チーム化によって何を実現するのか」をつなぐことで、プロジェクトチームを選んだ理由が伝わります。「不確実な新市場」は、これから開拓する首都圏の需要や取引先を探っていく状況を表す言い換えです。

既存社員による反対は与件にないため、答案でも抵抗があったとは書きません。既存組織の地元志向・新規開拓力の弱さに対し、専任体制で首都圏開拓を進めるという因果を示します。

後半の任命の狙いでは、 長女の物流企画・営業経験を生かすこと と、 事業を率いる経験を通じて後継者を育成すること をまとめます。現在の能力をどう使うか、将来に向けてどのような経験を積ませるか、という順序で書くと自然につながります。模範解答では、責任ある事業運営を経験させ、後継者としての経営能力を育成する狙いを示しています。「人脈」については、第7段落には、 長女と同窓であった外食チェーン Y 社の経営者から案件を受託した とありますが、大手勤務先で得た人脈とまでは明記されていません。答案では、物流企画・営業経験の活用を軸に据えます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「後継者の選択と育成」と経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」は、承継候補と期間・将来像を定め、社内外の経験と責任ある地位で後継者を育てる方法と現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続きについて解説しています。本問では、後継者の社内外教育、責任ある地位での経験、段階的な権限委譲を2024年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

区分教育例主な効果
社内各部門をローテーションさせる全社的な経験と必要知識の習得
社内責任ある地位に就ける権限委譲と意思決定経験による経営への自覚
社内現経営者による指導経営ノウハウ・業界事情・経営理念の引継ぎ
社外他社での勤務を経験させる人脈形成、新しい経営手法、客観的視点の獲得
社外子会社・関連会社等の経営を任せる責任感の醸成と経営者としての資質確認
社外セミナー等の活用経営知識の習得と幅広い視野の育成

2024年度第2問では、長女の「大手物流企業での勤務」が社外教育に、プロジェクトリーダーへの任命が責任ある地位への配置・権限委譲という社内教育に対応します。この二段階で見ると、任命理由に「即戦力」と「後継者育成」の両方を置けます。

同じ論点は2021年度事例I第2問でも出題されています。広告代理店に勤務していた3代目へ、A社経験がない段階で新設デザイン部門の統括を任せた理由が問われました。共通する型は、社外経験・人脈を新戦略へ適合させ、責任ある地位と権限を与えて後継者を育成することです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「後継者の選択と育成」(承継候補と期間・将来像を定め、社内外の経験と責任ある地位で後継者を育てる方法) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」(現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続き)

この外部資料と類題整理は経営学の理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。実際の答案では、必ず2024年度の与件事実を主根拠にします。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

なぜ、Z 社は A 社に案件を持ちかけたのか。100 字以内で答えよ。

回答例(95 字) ​

県内の地域輸送網・自社倉庫の保管や流通加工能力と、首都圏で培った受注・在庫管理や物流システムの提案力を併せ持つ。このため、Z社は県内進出後の各店舗への商品供給を一貫して支援できると期待した。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、Z社が県内へ進出するに当たって、なぜA社に案件を持ちかけたのかです。A社の強みを挙げるだけでなく、 その強みがZ社の県内進出にどう役立つのか まで考えます。

スーパーが新しい地域に出店するには、商品を保管し、各店舗へ届ける仕組みが必要です。A社には、県内で長年培ってきた物流の基盤と、首都圏事業部が蓄積した物流企画・在庫管理のノウハウがありました。Z社は、その両方を持つA社に、県内進出に伴う物流を任せられると期待したと考えられます。

与件文からZ社が期待したことを読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第3段落:A社は 地域物流のコーディネーターとしての役割 を果たし、 協力会事業者との連携関係 を築いていました。自社だけでなく、地域の運送事業者と協力して輸送を担える基盤があったと読めます。
  • 第4段落:A社は 自社で倉庫を保有 し、 流通加工や適切な温度・湿度で管理するサービス を提供していました。商品を運ぶだけでなく、保管や加工まで対応できる点が強みです。
  • 第5段落:県内の食品スーパーX社について、 各店舗への輸送業務を長期契約で請け負う 経験がありました。同じスーパーであるZ社にとっても、店舗への商品供給を任せる際に期待できる実績です。
  • 第7段落:首都圏事業部は、 受注処理の効率化 や 各店舗の在庫管理のノウハウを蓄積 していました。県内の倉庫・輸送機能に加え、物流の進め方を考え、改善する能力も持っていたことが分かります。
  • 第10段落:長男は 持ち前の物流システム提案力 を生かして営業を展開し、Z社から 県内進出に当たっての案件 が持ち込まれました。物流システムを提案する力と、進出先で物流を実行する基盤を結び付けて考える箇所です。
図で、二つの事業部が持つ機能を確認する ​

図では、県内事業部に運送部・倉庫部、首都圏事業部に物流企画部・情報システム部があります。県内で物流を実行する機能と、物流の仕組みを企画・システム化する機能が、同じ会社にあることを確認できます。本文の取引実績やノウハウと合わせると、Z社が企画から県内での実行までを任せる相手としてA社を評価した理由が分かります。

図は2020年当時の組織です。部門が存在することと、部門間の連携が実際に機能していることは分け、取引開始後の対応不足は本文から確認します。

「ただし」の前後を分けて読む ​

第10段落の 「ただし」 の後には、取引開始後、県内事業部で在庫管理や商品補充の問題が顕在化したことが書かれています。

ここでは、 案件を持ちかけた時点の期待 と、 取引開始後に分かった課題 を分けて読みます。Z社が期待した能力をA社が十分に発揮できなかったとしても、それは案件を持ちかけた理由そのものを否定するものではありません。

本問では「実際に一貫対応できていた」と断定せず、「一貫して担える相手と評価した」と捉えると、与件の流れに沿った説明になります。

Z社がA社に案件を持ちかけた理由 ​

進出先で物流を動かせる基盤がある ​

Z社が県内に店舗を展開する際には、商品の保管や各店舗への配送を担う相手が必要になります。

A社には、県内の物流事情に通じた経験、協力会との連携、自社倉庫、食品スーパーX社の店舗配送実績がありました。これらは、 Z社の県内進出を実行面で支える能力 として評価できるものです。

物流の仕組みを考え、提案する力もある ​

倉庫やトラックがあるだけでは、各店舗の在庫や注文に応じて商品を供給する仕組みまで整うとは限りません。

首都圏事業部には、物流企画業務の経験や在庫管理のノウハウがあり、長男も物流システムの提案力を持っていました。Z社はA社に、作業の受託だけでなく、 県内進出に適した物流の仕組みを考え、提案すること も期待したと考えられます。

県内の実行基盤と首都圏の企画提案力を併せ持つことで、A社は、 物流の企画から実行までを一貫して任せられる相手 と映ったのでしょう。模範解答では、この価値を「県内進出後の各店舗への商品供給を一貫して支援できると期待した」と具体的に表しています。

Z社の期待を答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。

100字では、県内の地域輸送網と自社倉庫の保管・流通加工能力に、首都圏で培った受注・在庫管理と物流システムの提案力を組み合わせます。第1文でこの保有能力を示し、第2文でZ社の県内進出後の各店舗への商品供給を一貫して支援できるという期待へ結び付けます。

第2問と異なり、今回は二つの問いに答える設問ではありません。二つの能力を別々の結論にせず、一つの依頼理由へ結び付けます。第1文でA社の物流基盤と企画提案力、第2文でそれを踏まえたZ社の評価を示すと、保有能力と依頼理由の関係が明確になります。

「県内で何を実行できるか」→「どのような企画・提案ができるか」→「だからZ社は何を任せられると評価したか」の順に書くと、A社の強みの羅列で終わらず、案件を持ちかけた理由になります。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

国土交通省は3PLを、荷主企業に代わって、効率的な物流戦略の企画立案や物流システム構築を提案し、それを包括的に受託・実行する事業として説明しています。したがって、単にトラックや倉庫を持つだけではなく、企画・提案と実行を一体で提供できるかが判断軸です。

3PLの構成要素A社が持つ資源Z社から見た価値
企画・提案首都圏事業部の物流企画・在庫管理ノウハウ、長男のシステム提案力県内進出時の物流設計を相談できる
包括的な実行県内の配送網、倉庫、流通加工、温度管理設計した物流を県内で運用できる
社内外の調整協力会、外部の運送・倉庫事業者をコーディネートした経験必要な事業者を組み合わせて一括対応できる

類題は、外部協力企業との関係を発展させる2021年度事例I第4問、大手中食業者との取引関係を助言する2022年度事例I第3問、二次・三次問屋とのネットワークが強みとなった理由を問う2010年度事例I第1問です。共通するのは、取引先や協力企業を単なる外注先として列挙せず、顧客価値を実現する補完資源と調整能力まで説明する点です。

出典:国土交通省「3PL事業の総合支援」

公的な3PLの定義は解答の方向を確認する補助線です。本問の直接根拠は、県内事業部と首都圏事業部が実際に蓄積した資源・能力です。

第 4 問(配点 40 点) ​

設問文 ​

今後、A 社が 3PL 事業者となるための事業展開について、以下の設問に答えよ。

(設問 1) ​

2024 年の創業経営者の助言による配置転換の狙いは何か。80 字以内で答えよ。

回答例(78 字) ​

長男の物流システム知識を運送・倉庫業務に生かし県内を改革する。専務となる経験豊富な幹部が指導・調整し、独断による混乱を抑えて円滑な改革と事業部間連携を図る。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、2024年の配置転換によって何を実現したいのかです。 長男の知識を県内の業務改善に生かすこと と、 経験豊富な経営幹部が指導・調整すること を組み合わせ、配置と効果のつながりを読みます。80字では、 長男の能力活用 と 経営幹部の指導・調整 の両方を入れ、円滑な改革という効果へ結ぶことを意識しましょう。本問は配置転換全体の狙いを問うため、40字ずつに等分する必要はありません。誰の能力をどう生かし、どの課題を改善するのかが伝わるようにまとめます。

与件文から配置転換の狙いを読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第8段落: 長女が 2 代目経営者に就任 しました。 しかし 、 県内事業部は年功序列的で古い慣習が残る 状態でした。首都圏と県内では組織体質が異なっていたことが分かります。2代目は県内のマネジメントを古くからいる経営幹部に任せており、その経験を全社経営の補佐や現場との調整に生かす配置と読めます。
  • 第9段落:長男は 大手情報システム会社で物流システム構築に従事 していました。この知識を、運送部・倉庫部を統括する立場で県内の実務に結びつけることが期待できます。
  • 第10段落:長男には やや独断的な面 があり、一方で 持ち前の物流システム提案力 があります。また、 各店舗の適正在庫管理や機動的な商品補充 に 県内事業部で対応できていない ことが課題です。長男の能力をこの課題の改善に生かすとともに、周囲と調整しながら進める必要があると考えられます。
  • 第12段落:経営幹部が 専務取締役として 2 代目経営者を支える 体制となり、長男は 経営幹部の直下 の 運送部と倉庫部の統括マネージャーに配置 されます。幹部が2代目を補佐しつつ長男を指導できる関係にし、専門知識による改善と現場との調整を両立する狙いが読み取れます。
図の機能配置と、本文の配置転換を重ねる ​

図では、運送部と倉庫部は県内事業部にあり、物流企画部と情報システム部は首都圏事業部にあります。長男を県内の運送・倉庫の統括へ移すことは、首都圏で培った物流システムの知識を、商品の保管・配送を担う現場へ結び付ける配置と読めます。

ただし、図は2020年時点です。2024年の幹部と長男の指揮命令関係は第12段落で確認し、専門知識の活用に幹部の指導・調整を組み合わせて考えます。

接続詞からどう読むか ​
  • 第8段落 の しかし は、2代目が率いた首都圏事業部と、古い慣習が残る県内事業部との違いを示します。
  • 第10段落 の ただし は、Z社案件の取引開始後に県内の在庫管理・商品補充の未対応が顕在化したことを示します。独断がこの未対応を引き起こした、とまでは書かれていません。

配置転換の狙い ​

能力活用と指導・調整を組み合わせる ​

長男に運送部・倉庫部の現場を統括させれば、 物流システムの知識を県内業務に生かす ことができます。在庫管理や商品補充を担う現場の状況を踏まえて改善を進め、県内事業部の対応力を高める狙いです。

同時に、 経営幹部の直下に長男を置くこと で、 幹部による指導・現場との調整 が可能になります。 やや独断的 な面を踏まえ、長男が周囲との調整を欠いて進めることによる混乱を抑え、円滑な改革につなげると考えられます。混乱や反発が既に起きたという断定ではなく、配置から推論する狙いです。

さらに、第7段落 では、首都圏事業部が 各店舗の在庫管理のノウハウを蓄積 した一方、 県内事業部との業務の連携は、ほとんどなされていない とされています。首都圏で働いた長男が県内の運送・倉庫業務を担い、専務が2代目を支えることで、 事業部間連携を進める ことも期待できます。配置だけで連携が完成するのではなく、知識と現場を結びつけ、全社で改善を進めるための体制づくりと捉えます。

配置転換の狙いを答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。

長男の専門知識の活用 → 県内業務の改善 と、 幹部の指導・調整 → 混乱抑制 を結び、円滑な改革・事業部間連携という効果にまとめます。80字に収める際は、前半で「長男の知識を県内業務に生かして改革する」、後半で「幹部が指導・調整して混乱を抑える」と組み立て、最後を円滑な改革・事業部間連携という効果へつなぎます。 40字×2に機械的に分けず、二つの役割がどう働くかを一続きの因果で示す のがポイントです。「狙いは〜である。」という書き出しも使えますが、80字では役割と効果の説明に字数を充てる書き方もできます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」と経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」は、現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続きと幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方について解説しています。本問では、「後継世代へ実行権限を渡す」と「既存組織との橋渡し・支援」を2024年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

承継期の役割2024年度第4問(設問1)の配置狙い
後継世代へ実行権限を渡す長男を運送部・倉庫部の統括マネージャーへ配置首都圏の知識を県内へ移し、改革を実行させる
既存組織との橋渡し・支援古参経営幹部を専務取締役とし、2代目を支える現場との調整と統制で改革の受容性を高める
後継者主導の全社体制へ移す2代目、専務、長男の役割を再設計事業部間連携と3PL戦略を全社で進める

最も近い類題は、後継者中心の体制に向けた権限委譲・人員配置を問う2022年度事例I第4問(設問2)です。加えて、買収先出身のベテラン職人を工場責任者にした2009年度事例I第4問は、専門性だけでなく現場の信頼を持つ人物を橋渡し役にする配置として比較できます。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」(現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続き) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」(幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方)

白書は一般的な傾向を示す資料です。本問では「長男は独断的」「県内事業部には古い慣習」「専務が2代目を支える」という固有の与件から、推進と調整の役割分担を導きます。

(設問 2) ​

A 社が Z 社との取引関係を強化していくために必要な施策を、100 字以内で助言せよ。

回答例(94 字) ​

長男主導で両事業部の共同チームを設け、首都圏の在庫管理ノウハウと情報システムを県内へ移す。現場教育と店舗在庫に応じた補充ルールの整備で適正在庫・機動的補充を実現し、Z社の受託範囲を広げる。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、A社がZ社との取引関係を強化するために、これから何をすべきかです。第3問ではZ社がA社へ抱いた期待を読みましたが、本問では、 その期待に応えられていない部分をどう改善するか を考えます。

Z社が求める在庫管理や商品補充に、県内事業部が十分に対応できていません。一方、首都圏事業部には在庫管理のノウハウや情報システムの専門人材がいます。まずは、この力を県内の業務で使えるようにすることが必要です。

共同チームによる知識移転 と、 現場教育・店舗在庫に応じた補充ルール を組み合わせ、Z社の要望に応えられる体制を考えます。処遇制度への不満も全社的な課題ですが、本問の100字では在庫管理と商品補充の具体的な改善を優先します。

与件文から取引強化を妨げる課題を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第7段落:首都圏事業部は 受注処理の効率化 や 各店舗の在庫管理のノウハウを蓄積 していました。しかし、 県内事業部との業務の連携は、ほとんどなされていない 状況でした。必要な知識が社内にあっても、県内の仕事へ十分につながっていないと読めます。
  • 第9段落:長男は 大手情報システム会社で物流システム構築に従事 しており、首都圏事業部には 情報システム部 が設立され、 プロパーの専門職を数名雇用 しています。社内の物流業務に合わせた仕組みづくりを担う人材がいることに注目します。
  • 第10段落: 各店舗の適正在庫管理や機動的な商品補充 に 県内事業部で対応できていない ため、 物流業務の受託は部分的なものにとどまった とされています。何を改善すれば取引強化につながるのかが、具体的に示された箇所です。
  • 第12段落:長男は 運送部と倉庫部の統括マネージャーに配置 されています。設問1の配置転換を踏まえ、長男が首都圏で得た知識を県内の運送・倉庫業務へつなぐ役割を担うと考えられます。
  • 第13段落: 専門人材が多様化 した一方で、 人事処遇制度はほとんど変更がなされない ままであり、 処遇面で不満 が生じています。専門性や貢献に見合う評価・処遇へ見直す必要性が読み取れます。
図にある専門機能を、事業部を越えて使う ​

図では、情報システム部・物流企画部と、運送部・倉庫部が別の事業部に配置されています。Z社の在庫管理・商品補充に応えるには、企画や情報システムの知識を、県内の保管・配送の仕事へつなぐ必要があります。例えば、受注・在庫情報を共有し、補充の判断基準や作業手順を両事業部でそろえることが、連携の具体的な内容になります。

部門が分かれているだけで連携不足とは断定できません。2020年の図で機能配置を把握し、本文にある連携の乏しさと対応不足を改善の根拠にします。

「他方」と「ただし」から改善の方向を読む ​

第7段落の 「他方」 は、首都圏事業部でノウハウが蓄積されたことと、県内事業部との連携が乏しいことを対比しています。知識を持っているだけでなく、必要な現場で使えるようにすることが改善の出発点です。

第10段落の 「ただし」 の後には、取引開始後に明らかになった対応不足が書かれています。第3問では案件を持ちかけた理由と区別した箇所ですが、本問では、ここが施策を考える直接の手掛かりになります。

第13段落には 処遇面で不満 とありますが、それが在庫管理の問題を引き起こした、とまでは書かれていません。業務上の課題と人材面の課題をそれぞれ捉え、改善に協力して取り組める体制へ結び付けます。

Z社の要望に応えるための施策 ​

首都圏のノウハウを県内で使えるようにする ​

県内事業部が在庫管理や商品補充に対応できないのであれば、同じ会社の中で蓄積してきた知識を活用することが考えられます。長男を中心に、 首都圏事業部の在庫管理ノウハウと情報システムを県内へ展開する ことで、両事業部の力を結び付けます。

ただし、システムを導入するだけで現場の仕事が変わるわけではありません。例えば、在庫や受注情報の共有方法をそろえ、補充の判断や作業手順を県内の担当者と確認することが必要です。専門人材と現場が協力し、実際の運送・倉庫業務で使える仕組みにすることが、ここでいう部門間連携です。

設問1の配置転換は、その取り組みを進める土台になります。本問では配置の狙いを繰り返すだけでなく、 配置された長男が誰と協力し、何を県内へ展開するか まで具体化します。

現場教育と補充ルールで、移した知識を定着させる ​

長男主導の共同チームが、首都圏の担当者と県内の現場を結びます。在庫情報の見方や補充の判断・作業手順を県内の担当者へ教育し、各店舗の在庫に応じて補充するルールを整えます。システムの移転だけで終えず、実際の業務で使える状態にすることが大切です。

評価・処遇の見直しは全社的な補足策として考える ​

専門人材が増えても、従来の制度のままで役割や貢献が十分に認められなければ、不満を抱えながら働くことになりかねません。 専門人材の能力・役割・貢献を評価する処遇制度 へ見直すことが考えられます。

本問では、個人の専門技術だけでなく、県内へのノウハウ共有や現場と協力した改善など、Z社への対応力を高める行動も評価することが大切です。何を評価するのかを明確にし、本人へ説明することで、納得して改善に取り組めるようにします。

「成果主義を導入する」と制度名だけを置くよりも、 取引強化に必要な貢献を認め、協働を促す という目的から考えると、与件の処遇不満と施策がつながります。

業務の改善をZ社の信頼へつなげる ​

ノウハウ共有や現場教育は、それ自体が最終目的ではありません。両事業部と専門人材が協力し、 適正在庫管理と機動的な商品補充を実現する ことが必要です。

Z社が期待したサービスを安定して提供できるようになれば、A社への信頼を高め、部分的な受託にとどまっていた取引を強化することにつながります。組織・人材の施策を、顧客に提供する価値まで結び付けて理解します。

取引強化の施策を答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。

100字では、 長男主導の共同チームによるノウハウ・情報システムの県内展開 と、 現場教育・店舗在庫に応じた補充ルール を示し、 適正在庫・機動的補充の実現と受託範囲の拡大 へ結び付けます。

第1文で、誰が誰と協力し、何を県内へ移すかを示します。第2文で、移した知識を現場教育と補充ルールに落とし込み、在庫管理・商品補充の改善から取引強化へ結びます。

例えば「施策は〜である。」という書き出しを置かなくても、「展開する」「連携させる」「改める」と具体的な行動から書けば、助言として伝わります。模範解答では現場教育と補充ルールを残し、Z社の具体的な対応不足と施策・効果のつながりを示しています。評価・処遇の見直しは補足策であり、答案への追加を必須とはしません。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」と経営ハンドブック「従業員間コミュニケーション」は、理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法と部署を越えた従業員同士の情報移転・相互理解を促す仕組みについて解説しています。本問では、「Z社向けの適正在庫・機動補充を実現できない」と「専門人材が多様化している」を2024年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」は、経営課題と人材課題を対応させた、経営戦略と人材戦略の一体設計を補う資料として併記します。

経営課題必要な組織・人材施策2024年度第4問(設問2)への変換
Z社向けの適正在庫・機動補充を実現できない首都圏と県内を横断する知識移転と役割設計在庫管理ノウハウと情報システムを県内へ展開する
専門人材が多様化している必要な専門性と貢献を明確にする専門人材の役割・評価基準を整える
創業時から処遇制度が変わらず不満がある貢献、能力、役割に対応した処遇と納得性を高める連携への貢献を評価・処遇し、協働を動機づける

類題は、複数事業間で人材の流動性を確保する組織改編を問う2016年度事例I第4問、グループ全体の人事制度を助言する2020年度事例I第4問、成果主義型賃金制度の設計・導入上の留意点を問う2012年度事例I第5問です。共通する型は、制度名を書くことではなく、戦略上必要な行動・能力を明確にし、それを配置、評価、処遇へつなぐことです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」(理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「従業員間コミュニケーション」(部署を越えた従業員同士の情報移転・相互理解を促す仕組み) / 中小企業庁「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」(経営課題と人材課題を対応させた、経営戦略と人材戦略の一体設計)

ガイドラインは人材施策の考え方を補う資料です。答案では、処遇不満、専門人材の多様化、事業部間の未連携という2024年度の与件事実を使って具体化します。

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