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2026年度 事例4(速報版)模範解答・解説
独自作成の解答例・評価基準。公式解答・公式採点基準ではなく、本試験の得点を予測・保証しない。
第2問設問2は期末資産の算定前提を置いた暫定解です。計算過程と解釈の違いを併記しています。
「(○)」は答案用紙の該当する選択肢を丸で囲むことを表します。
第1問 設問1
D社と同業他社の財務諸表を用いて、①キャッシュ・コンバージョン・サイクル(売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間)を求めよ。なお、回転期間は売上高を用いる方法により計算すること。次に、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを除き、同業他社と比較して②D社が優れていると考えられる財務指標、③D社が劣っていると考えられる財務指標を計算せよ。②および③については、各財務指標の名称を(a)欄に記入し、(b)欄にその値とともに単位をカッコ内に記入すること。また、数値については最終的な解答の小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで記入すること。
模範解答
| ① | D社 | 同業他社 |
|---|---|---|
| CCC | 59.04 日 | 13.92 日 |
| (a) | (b) | |
|---|---|---|
| ② | 売上高販管費率 | 31.75(%) |
| ③ | 自己資本比率 | 9.03(%) |
計算過程
- 棚卸資産:D社=176+507=683百万円、同業他社=153+32=185百万円。
- D社CCC=(379+683−122)÷5,811×365=59.043…日 → 59.04日。
- 同業他社CCC=(716+185−436)÷12,193×365=13.919…日 → 13.92日。
- D社売上高販管費率=1,845÷5,811×100=31.750…% → 31.75%。同業他社は6,595÷12,193×100=54.09%。
- D社自己資本比率=203÷2,248×100=9.030…% → 9.03%。同業他社は830÷3,081×100=26.94%。
解説
CCCは設問指定どおり、売上債権・棚卸資産・仕入債務のすべてに売上高を用いる。棚卸資産には原材料も含む。各期間を途中で丸めてから加減するとD社は59.05日になるため、最終結果だけ四捨五入する。答案用紙の単位は「日」で固定されているため365日基準で答える。月数換算は参考値にとどまり、指定欄への月数回答は正答扱いにしない。優位指標は販管費率の低さ、劣位指標は自己資本比率の低さを選択した。売上高営業利益率の高さ、流動比率の高さ、原価率の高さ、固定資産回転率の低さ等も、方向・数値・設問2との整合を確認して評価する。販管費率の低さだけで全社の収益性が十分とは断定しない。
第1問 設問2
同業他社と比較した場合のD社の当期の財政状態および経営成績の特徴を、経営戦略上の差異を踏まえ、根拠となる財務指標を指摘しながら80字以内で述べよ。
模範解答
回答例(76字/80字以内)
特徴は、販管費率が低い一方、自己資本比率が低く安全性に乏しい点である。自社製造や飲食店展開で資産を保有し、原材料在庫も厚く、資金が滞留してCCCが長い。
解説
販管費率31.75%は比較企業54.09%より低い。一方、自己資本比率9.03%は26.94%より低く、CCC59.04日は13.92日より長い。自社工場・飲食店舗の保有と、原材料507百万円という事業構造を財務的特徴へ結び付ける。比較企業が製造しない等の事業形態は本文で示されていないため断定しない。自社製造が販管費率低下を直接生んだとも断定せず、費用構成の比較と資産保有・在庫の特徴を区別する。優劣指標を別に選んだ答案も、数値の方向と戦略・財務状態の対応が妥当なら評価する。
第2問 設問1
当期における飲食店事業のROI(投資利益率)を計算せよ。なお、投資額としては当該事業の期末資産を用いること。解答にあたっては、当期における飲食店事業のROIの値を(a)欄に記入し、(b)欄にその計算過程を記入すること。
模範解答
(a)△3.36 %
(b)計算過程
- 飲食店事業利益=156,000−123,000−38,000=△5,000千円。
- ROI=△5,000÷149,000×100=△3.355…% → △3.36%。
解説
投資額は設問指定の期末事業資産149,000千円。共通固定費315,000千円の配賦基準はないため、個別固定費控除後の事業利益を用いる。全社営業利益74,000千円を分子にしない。マイナスは答案では△で表す。計算途中の負号と△は同義として確認し、表示だけの違いで立式の点まで失わせない。
第2問 設問2
店舗を改装した場合の次期における飲食店事業のROIを計算せよ。なお、投資額としては当該事業の期末資産を用いること。解答にあたっては、次期における飲食店事業のROIの値を(a)欄に記入し、(b)欄にその計算過程を記入すること。
模範解答
(a)△3.11 %
暫定解。次期損益の全額を事業資産に反映し、本部からの20,000千円以外の資金移動・負債変動等がないと仮定。期末資産の扱いが異なる答案は前提を確認し、即誤答にしない。解釈を確定できない要素は要確認とし、総合点・総合ABCDEFを保留する。
(b)計算過程
- 改装設備の年間減価償却費=20,000÷10=2,000千円。
- 次期売上高=156,000+8,500=164,500千円、変動費=123,000+6,600=129,600千円。
- 次期事業利益=164,500−129,600−38,000−2,000=△5,100千円。
- 主案期末資産=149,000+本部投下20,000+次期利益(△5,100)=163,900千円。
- ROI=△5,100÷163,900×100=△3.111…% → △3.11%。
解説
本部資金で取得する改装設備を事業資産へ加算し、その後の事業損益が事業資産を増減させると置いた。既存固定費内の減価償却があっても、現金収支に足し戻す額と固定資産の減額が相殺され、他の変動がなければ純資産額の変動は利益に一致する。ただし問題文は本部との資金精算や既存資産の翌期推移を明示していない。改装しない場合の期末資産を149,000千円に据え置き、改装の増分だけ反映する解釈では149,000+20,000−2,000+8,500−6,600=168,900千円、ROIは△3.02%になる。さらに増分現金1,900千円を事業外へ移す仮定なら167,000千円・△3.05%となるが、その送金条件は与件にない。これらを同じ前提での丸め差として扱わない。人件費減少の金額は指定されていないため追加控除せず、分子は△5,100千円で統一する。負のROIが△3.36%から小さい負数へ変わっても、事業利益は100千円悪化しており、改装の採算が改善したとはいえない。
第3問 設問1
撤退案における旧設備の売却損益を求めよ。また、第1期首(売却時)に発生するキャッシュフローを計算せよ。解答にあたっては、売却損益を(a)欄に、売却時に発生するキャッシュフローを(b)欄に、(c)欄にはそれらの計算過程を記入すること。なお、(a)欄のカッコ内の「売却損」または「売却益」のいずれかを○で囲むこと。
模範解答
| 欄 | 解答 |
|---|---|
| (a) | 売却損 / 売却益(○) 6,000 千円 |
| (b) | 37,600 千円 |
(c)計算過程
- 年減価償却費=48,000÷8=6,000千円。3年経過後簿価=48,000−6,000×3=30,000千円。
- 売却損益=36,000−30,000=6,000千円の売却益。
- 第1期首CF=売却収入36,000−撤去・整備3,400+運転資本回収5,000=37,600千円。
解説
撤退案の売却・撤去・運転資本回収は第1期首に生じる。売却益課税1,800千円と撤去費の節税1,020千円は第1期末のため、設問1の売却時CFに混ぜない。帳簿価額は3年分償却後であり、残存5年分の簿価30,000千円とも一致する。
第3問 設問2
継続案における旧設備の売却損益を求めよ。また、第1期末および第5期末のキャッシュフローを計算せよ。解答にあたっては、売却損益を(a)欄に、第1期末のキャッシュフローを(b)欄に、第5期末のキャッシュフローを(c)欄に、(d)欄にはそれらの計算過程を記入すること。なお、(a)欄のカッコ内の「売却損」または「売却益」のいずれかを○で囲むこと。
模範解答
| 欄 | 解答 |
|---|---|
| (a) | 売却損 / 売却益(○) 3,000 千円 |
| (b) | 6,630 千円 |
| (c) | 13,730 千円 |
(d)計算過程
- 毎期売上高=1.1×16,000=17,600千円。変動製造費=0.5×16,000=8,000千円。
- 毎期課税利益=17,600−8,000−2,700−6,000=900千円。
- 毎期営業CF=900×(1−0.30)+6,000=6,630千円。
- 第5期末簿価=0。売却益=3,000−0=3,000千円、税引後売却収入=3,000×0.70=2,100千円。
- 第5期末CF=6,630+2,100+5,000=13,730千円。
解説
取得から8年経過した第5期末に簿価がゼロとなる。売却額の全額が売却益で、売却課税後の2,100千円に運転資本回収5,000千円を加える。減価償却費は損益計算で控除し、CF計算で足し戻す。売却収入と売却益を二重に加算しない。
第3問 設問3
撤退案と継続案の正味現在価値を計算し、どちらがどれだけ有利か計算せよ。解答にあたっては、両案の正味現在価値の差額を(a)欄に記入し、(b)欄にはその計算過程を記入すること。なお、(a)欄のカッコ内の「撤退案」または「継続案」のいずれかを○で囲むこと。
模範解答
(a)撤退案(○) / 継続案 の方が 3,635.2 千円有利。
(b)計算過程
- 撤退の第1期末税CF=−6,000×0.30+3,400×0.30=△780千円。
- 撤退案NPV=37,600−780×0.943=36,864.46千円。
- 継続案NPV=6,630×4.212+(2,100+5,000)×0.747=33,229.26千円。
- 差額=36,864.46−33,229.26=3,635.20千円。撤退案が有利。
解説
比較時点は第1期首。撤退の期首CFは割り引かず、税効果だけ1年分割り引く。継続の毎期営業CFには年金現価係数、最終回収には5年の複利現価係数を用いる。過去の取得支出48,000千円と運転資本投下5,000千円は現在の判断では既支出であり、新たに差し引かない。継続の機会費用として撤退CFを差し引く差額法でも、同じ3,635.20千円の結論になる。工場転用による追加CFはないという条件を守る。
第4問 設問1
D社は、他地域に基盤を有するEC企業であるY社の買収を検討している。
Y社の買収に必要な資金は4億円を見込んでおり、半額を自己資金で、残額を銀行からの借入により調達する予定である。この買収案を検討するにあたり、財務的観点からどのような点に注意すべきか、D社の財務状況を踏まえながら80字以内で助言内容を記述せよ。
模範解答
回答例(80字/80字以内)
助言は、手元資金と返済余力を確保して買収を判断することである。自己資本比率が低く借入依存が高く、資金支出後の資金繰りと追加借入の返済可能性、買収効果を検証する。
解説
自己資本比率9.03%、有利子負債は766+795=1,561百万円である。4億円の買収では手元現金から200百万円を使い、さらに200百万円を借りるため、資金繰りと債務返済余力の点検が必要になる。単純計算では現金629百万円が429百万円へ、有利子負債が1,761百万円へ動くが、買収対象の現預金や引継債務、連結処理は不明なので買収後の連結指標を断定しない。Y社の利益・CF、返済条件、統合費用やシナジーを検証する。流動比率が比較企業より高いことだけで、借入による買収余力が十分とは判断しない。
第4問 設問2
D社の財務状況および各事業の損益を踏まえ、全社的な事業ポートフォリオをどのように見直すべきか、財務的な観点から80字以内で助言内容を記述せよ。
模範解答
回答例(79字/80字以内)
方針は、資本効率に基づく事業再編である。高収益のEC運営支援に重点配分し、赤字の飲食店は縮小・撤退を検討する。ミールキットから撤退し、回収資金で借入を減らす。
解説
共通固定費配賦前の事業利益はEC201,000千円、支援193,000千円、飲食△5,000千円。事業資産ROIは13.64%、57.44%、△3.36%で、支援の資本効率が高い。主力ECは利益額も大きいため直ちに撤退せず、原材料などの在庫・投下資本を管理する。飲食は黒字化策の追加支出と得られるCFを比較し、縮小・撤退も選択肢にする。撤退で全固定費が消えるとは限らず、回避可能費用と処分価値を確認する。支援事業には制度改正リスクがあるため全面集中を機械的に勧めず、資金回収・借入削減と事業リスクの分散を両立させる。記述は事業別損益と財務制約の両方に触れる。ミールキットは第3問の条件では撤退案が3,635.2千円有利であり、事業再編の具体策に含める。主力EC全体の撤退と混同しない。
比較指標一覧
| 指標 | D社 | 同業他社 |
|---|---|---|
| 売上債権日数 | 23.81 | 21.43 |
| 棚卸資産日数 | 42.90 | 5.54 |
| 仕入債務日数 | 7.66 | 13.05 |
| CCC日 | 59.04 | 13.92 |
| CCC月(参考値・答案欄には使用しない) | 1.94 | 0.46 |
| 売上高原価率% | 66.98 | 45.01 |
| 売上高販管費率% | 31.75 | 54.09 |
| 売上高営業利益率% | 1.27 | 0.90 |
| 自己資本比率% | 9.03 | 26.94 |
| 負債比率% | 1,007.39 | 271.20 |
| 固定資産回転率 | 11.60 | 26.45 |
| 流動比率% | 157.81 | 129.06 |
収益性の原因分析は原価率・販管費率等を基本とする。売上高総利益率は100%−売上高原価率であり、方向を正しく読み取った別解を認める。原価率と総利益率を独立した二要因として重複加点しない。
事業別の比較(共通固定費配賦前)
| 事業 | 限界利益(千円) | 事業利益(千円) | ROI |
|---|---|---|---|
| EC | 1,315,000 | 201,000 | 13.64% |
| 支援 | 420,000 | 193,000 | 57.44% |
| 飲食 | 33,000 | -5,000 | -3.36% |
第3問のキャッシュフロー時点
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flowchart LR
A["第1期首:比較時点"] --> B["撤退:37,600千円"]
B --> C["第1期末:税効果 △780千円"]
A --> D["継続:第1〜4期末 各6,630千円"]
D --> E["第5期末:13,730千円<br/>営業6,630+売却税引後2,100+運転資本5,000"]基本用語の参照
ROIの一般的な投下資本・リターンの考え方は野村総合研究所の用語解説を参照。試験の期末資産条件は問題文を優先し、この一般資料で第2問設問2の不明な前提が確定するわけではない。

