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令和 2 年度(2020 年度)事例 Ⅲ 解答解説 ​

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第 1 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社の ⒜ 強みと ⒝ 弱みを、それぞれ 40 字以内で述べよ。

回答例(38,38 字) ​

【⒜強み】高度な溶接・研磨技術を持ち、特注品を設計から製作・据付まで一貫対応できる点。 【⒝弱み】製作前の仕様調整が長引き製作期間が不足し、工程順序・工数見積りも未標準な点。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

C社の強みと弱みを、それぞれ40字で整理する与件抜粋型の問題 です。高い表面品質を実現する技術と一貫対応力、それを納期どおりに発揮する管理上の弱さを拾います。

根拠集めは最初、答案の確定は最後 ​

与件を読みながら、蛍光ペンやボールペンの色、S・Wの印で強み・弱みの候補をマーキングします。すぐに40字へ絞らず、第2問以降へ進みます。

営業・製造の改善、IT活用、モニュメント事業の拡大を考えた後に戻ると、活かす技術と一貫対応、補う標準化・計画の弱さが見えてきます。

技術の高さと、仕事を計画どおり進める力を分ける ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第3段落: 溶接技術や研磨技術を高める、 設計から製作、据付工事までを受注する とあります。製品の表面品質を支える技術を持ち、完成品の設置まで一連の仕事を引き受けています。
  • 第4段落: 特殊加工と仕上げ品質が要求されるステンレス製モニュメント製品 とあります。既存技術を、デザイン性の高い製品へ応用する実績があります。
  • 第9段落: 製作期間を十分に確保できない、 製作期間が生産計画をオーバーする、 納期の遅延が生じ とあります。製作前の遅れと製作中の計画超過が、最終納期に影響しています。
  • 第13段落: 基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない とあります。どの順に、どれだけ時間をかけて作るかという計画の基準が十分に整っていません。
強みは、加工技術と一貫対応の二つに束ねる ​

鏡面仕上げをはじめとする表面品質は、装飾性を求める顧客にとって価値になります。単に「技術力が高い」とせず、 高度な溶接・研磨技術 と書くことで、何の品質を実現できる企業かが伝わります。

もう一つは、 設計から製作・据付までの一貫対応力 です。顧客のイメージを図面へ落とし、製品を作り、現場で引き渡すまでをまとめて任せてもらえることが強みです。

  • 第8段落: 据付工事は社外の協力会社に依頼、 施工管理のみ社内営業部担当者が行っている とあります。据付も自社の作業員だけで実施するわけではありません。協力会社を使いながら工程全体に対応できる力として捉えます。
弱みは、納期遅延を生む管理の不足までまとめる ​

納期に遅れるという現象だけで終わらず、計画の基準が未整備という原因へ一段まとめます。個別受注品では形状や難易度が異なるため、工数を見積もる基準がなければ、必要な製作期間を確保しにくくなります。

第2問設問2では作業方法や工数を整え、第3問ではそれを能力・進捗の共有へ使います。したがって、 標準化が不十分で生産計画の精度が低いこと を弱みの中心に置くと、後続設問の改善理由とつながります。

第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける ​

後続設問で活かす能力と補う管理上の弱さを1軍とし、個別の加工例や現象を2軍として束ねます。

第1問で拾った候補後続設問とのつながり答案に残す方向
溶接・研磨、鏡面仕上げ、特殊加工第4問のモニュメント提案で活かす高度な溶接・研磨技術
設計・製作・据付の受注第2問設問1の部門連携、第4問の提案を支える一貫対応力
工程順序・工数見積りの未標準化第2問設問2で整え、第3問の共有情報にする計画の基準不足・精度の低さ
製作期間不足・計画超過・納期遅延全社改善の目的になる管理の弱さが納期へ及ぼす影響

班の技能差や作業スペース不足も弱みの候補ですが、各40字ではすべてを列挙できません。全社の納期問題を説明する管理の弱さを優先し、具体的な現場対策は後続設問へ回します。

強みと弱みを各40字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

弱みの骨格は「仕様調整の長期化による製作期間不足+工程順序・工数見積りの未標準化」です。納期遅延と計画精度の低さを別の弱みとして重ねるより、営業段階で使う時間と製造段階の計画基準を分けて示します。班の技能差や狭い作業空間も候補ですが、40字へ全て詰め込む必要はありません。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の組織・体制づくりの解説は、自社の能力と顧客の要求を合わせて考える参考になります。本問では一般的な分析用語を並べず、表面品質を実現する技術と一貫対応、その実行を妨げる計画上の弱さへ具体化します。

類題は、2025年度事例III第1問、2024年度事例III第1問、2023年度事例III第1問です。共通点は与件の技術・実績を能力としてまとめる点。相違点は、2023・2024年度が強みのみを扱うのに対し、本問は納期問題につながる管理の弱さも各40字で整理する点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 2 問(配点 40 点) ​

設問文 ​

C 社の大きな悩みとなっている納期遅延について、以下の設問に答えよ。

(設問 1) ​

C 社の営業部門で生じている ⒜ 問題点と ⒝ その対応策について、それぞれ 60 字以内で述べよ。

回答例(56,59 字) ​

【⒜問題点】営業技術者だけで顧客との仕様調整・図面承認に時間を要し、製作開始後も打合せが続いて手戻りと製造期間圧迫を招く点。 【⒝対応策】3次元CADと製造の早期参加で仕様を合意し、承認期限を管理する。確定仕様・変更を製造へ即時共有し、製作期間を確保する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

第2問設問1は、営業部門の問題点と対応策を、それぞれ60字で述べる問題 です。受注件数の不足ではなく、仕様調整と図面承認に時間がかかり、製作へ影響する流れを読みます。

顧客との合意が遅れると、製作時間が削られる ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第7段落: 受注、設計、据付工事施工管理は営業部が担当、 造形物のイメージの摺り合わせに時間を要する、 図面承認後の製作段階でも打ち合わせが必要 とあります。営業が顧客対応を一貫して担いますが、イメージの共有が製作開始前に十分に済まない場合があります。
  • 第7段落: 設計には 2 次元 CAD を早くから使用 とあります。設計情報は既にデジタル化されています。立体的な形状を顧客とどう確認するかに改善の余地があります。
  • 第9段落: 契約、図面作成、顧客承認までの製作前プロセスに時間を要して、 製作期間を十分に確保できない とあります。最終引き渡し日までの期間のうち、製作へ使える時間が短くなっています。
  • 第12段落: デザイナーの指示によって製品に修整や手直しが生じる とあります。完成後の確認でも認識のずれが表れ、手直しが発生しています。
最終納期から、時間を使っている上流へ戻る ​

第9段落の 「設定されているが」 は、引き渡し日が決まっていても、その前に必要な製作期間を確保できていないことを示します。最終納期を伝えるだけでは、製作前の長期化は解消しません。

とりわけモニュメントは立体的で複雑です。図面を見たデザイナーと製作側が異なる完成形を思い浮かべたまま進めば、加工を始めてから確認・変更が必要になります。 仕様の合意が遅い→製作時間の圧迫・開始後の打合せ→手戻りと納期遅延 が営業側から見た問題です。

立体的な完成形を共有し、合意を早める ​

3次元CADを用いれば、複数方向から形状を確認しやすくなります。例えば曲面のつながりや取付位置を同じ立体像で確かめ、図面と顧客のイメージのずれを早期に見つける使い方が考えられます。

大切なのは、 見せる情報を変え、顧客との仕様合意を早めること です。3次元CADへ置き換えれば変更がなくなるとせず、確認項目・承認内容・変更点を記録する運用と組み合わせます。仕上げ品質など画面だけで伝えにくい部分は、サンプル等を使う方法もあります。

製造部門も、図面が確定する前から加わる ​

顧客と営業が合意してから、製造側が「この形は加工が難しい」と気付けば、再び打合せが必要になります。設計段階から製造部門が参加し、加工方法、必要な時間、作業スペースを確認すれば、作れる仕様と日程を先に摺り合わせられます。

これは 製造の知識を上流で使い、後工程の手戻りを減らす フロントローディングです。営業の窓口を増やして顧客を混乱させるのではなく、窓口は保ちながら必要な技術者が検討へ加わります。

問題の原因対応納期へ効く理由
完成形の認識がそろわない立体的な可視化と仕様確認合意を早め、開始後の変更を抑える
製造上の難しさが後から分かる製造部門の設計段階からの参加加工可能性と工数を先に検討できる

営業の問題点と対応策を各60字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

対応策の骨格は「可視化・製造の早期参加で仕様合意→承認期限を管理→確定仕様と変更を製造へ即時共有」です。早く相談するだけでなく、いつまでに承認を得るかを決め、製造が最新の仕様で着手できるようにします。これを製作期間の確保へ結び、問題点欄との対応を示します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の組織・体制づくりは、顧客の声を社内へ取り込む仕組みを考える参考になります。本問では、営業・顧客・製造が上流で認識を合わせる形へ具体化します。図面承認の長期化という診断は、資料ではなく第7段落と第9段落から導きます。

類題は、2025年度事例III第2問、2024年度事例III第2問、2018年度事例III第2問です。共通点は原因に対応する改善策を選ぶ点。相違点は、類題が主に製造現場の品質・能力・作業方法を扱うのに対し、本問は製作前の営業・設計・顧客の調整を対象とする点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

(設問 2) ​

C 社の製造部門で生じている ⒜ 問題点と ⒝ その対応策について、それぞれ 60 字以内で述べよ。

回答例(56,60 字) ​

【⒜問題点】工程順序・工数が未標準で班の技能差があり、工場の狭隘化で加工物移動や材料・工具の運搬、歩行などの不稼働が多い点。 【⒝対応策】手順・標準工数を整え計画精度を高め、OJTで技能差を縮める。材料・工具を作業場所へ定置し、動線を短縮して不稼働を減らす。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

第2問設問2は、製造部門の問題点と対応策を、それぞれ60字で述べる問題 です。工数の基準、班の技能、作業スペースと移動を分け、計画どおりに加工を進められない原因を整理します。

加工する前提と、加工以外に使う時間を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第11段落: 各作業チームの技術力には差があり、 任せられない作業チームもある とあります。4班が同じように仕事を処理できるわけではなく、難しい加工を任せられる班が限られます。
  • 第13段落: 納期順にスケジューリング、 工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない とあります。納期や難易度は考慮していますが、必要時間を見積もる共通の基準が不足しています。
  • 第14段落: 作業スペースの確保が難しく、 作業途中の加工物の移動 とあります。大型化した加工物を置くため、製作途中の物を動かす負担が生まれています。
  • 第15段落: 「材料・工具運搬」と「歩行」、 「打ち合わせ」、 「不在」 とあります。不稼働の中身は移動だけでなく、情報を確かめるために作業を離れる時間にもあります。
作業手順と工数の基準を、計画の土台にする ​

納期が近い順に並べても、各製品にどれだけ時間が必要か分からなければ、班の能力を超えた計画になるおそれがあります。C社は難易度による振り分けを行っていますが、判断を支える標準が十分ではありません。

まず類似する加工の手順と実績時間を整理し、形状・難易度に応じて工数を見積もる基準を作ります。個別受注品をすべて同じ時間で作るという意味ではなく、 違いを見積もるための共通基準 を持つことが目的です。実績と計画を比べて基準を見直せば、必要な日数と割当ての精度が上がります。

標準を教え、担当できる班を増やす ​

高い技能が一部の班に偏ると、難しい製品を受注するたびに同じ班へ仕事が集まります。ほかの班に余力があっても応援できず、納期調整の幅が小さくなります。

熟練リーダーの作業や判断の勘所を標準へ落とし、OJTや班をまたぐ指導で習熟を進めます。 技能差を縮め、複数工程・製品へ対応できる人を増やす 多能工化によって、負荷に応じた仕事の分担がしやすくなります。教材を配るだけでなく、実技で任せられる範囲を確認します。

移動と確認で止まる時間を減らす ​

第14段落の 「改善したが」 は、10年前の配置改善では現在の大型化へ十分に対応できないことを示します。かつてのレイアウトが悪かったと決めつけず、今の加工物に合う置場・動線へ見直します。

5Sで不要物を減らし、材料・工具を使う場所の近くへ定位置化します。仕掛品の置場と搬送経路も整えれば、 作業のために運ぶ・歩く・物をどかす時間 を抑えられます。打合せや不在には、作業前の図面・変更点の確認と共有を組み合わせ、加工中に確認し直す回数を減らします。

問題のまとまり対応策期待する変化
工数基準が不十分手順・標準工数の整備実行可能な計画へ
班ごとの技能差OJT・多能工化仕事の偏りを緩和
狭隘化・運搬・歩行5S・置場と動線の改善不稼働の削減

製造の問題点と対応策を各60字で答案化する ​

答案の骨格は、 工程順序・工数の未標準、班の技能差、狭隘化と運搬・歩行の不稼働/手順・標準工数の整備、OJT、材料・工具の定置と動線短縮 です。稼働調査で確認されたのは材料・工具運搬、歩行、打合せ、不在です。手待ちが発生していたとは補わず、5Sの名称だけで済ませずに、置き場と移動をどう変えるかを示します。

工数・人・配置の三つを短く束ね、挙げた原因に対応する施策を一つずつ置く と、一般的な改善策の羅列を避けられます。営業側の仕様調整は設問1と分け、本問は製造が仕事を実行する条件に焦点を当てます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の作業標準書の解説は、手順に加え、作業の急所と理由を伝える参考になります。C社ではそれを技能共有の基準とし、実績工数を計画へ戻します。資料の一般論に置場・動線の改善を加えるのは、第14段落と第15段落の具体的な問題へ対応するためです。

類題は、2025年度事例III第2問、2024年度事例III第2問、2018年度事例III第2問です。共通点は標準化・技能・作業方法から現場の生産性を高める点。相違点は、本問が工数基準の不足と班の技能差に加え、大型加工物による狭隘化・移動まで組み合わせる点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「作業標準書の必要性とその内容について教えてください。」(品質・コスト・安全を安定させる作業条件と手順を標準書へ落とし、教育・改訂する方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社社長は、納期遅延対策として社内の IT 化を考えている。C 社の IT 活用について、中小企業診断士としてどのように助言するか、120 字以内で述べよ。

回答例(120 字) ​

納期遵守へ共有基盤を整備する。営業は2次元CAD図面、仕様、設計変更履歴、納期を一元化し製造へ即時共有する。製造は標準工数、チーム別能力・負荷、着手・完了実績を入力し、進捗と遅延予兆を可視化する。部門間で日程・優先順位を調整し手戻りを防ぐ。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

第3問は、納期遅延を防ぐITの活用方法を120字で助言する問題 です。営業と製造が何の情報を共有し、その情報でどんな判断を変えるかを一組にします。

図面を渡すだけの連携から、変更と進捗を共有する連携へ ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第7段落: 仕様変更や図面変更などによって顧客とのやりとりが多く発生、 設計には 2 次元 CAD を早くから使用 とあります。図面データはあります。顧客との変更内容も含め、製造が最新の仕様を見られる形に整えます。
  • 第8段落: 製作図を製造部に渡すことにより製作指示 とあります。現在の部門間の受渡しを、変更・進捗も分かる継続的な共有へ発展させます。
  • 第11段落: 各作業チームの技術力には差があり とあります。班を同じ能力として計画せず、加工可能な仕事と負荷を把握する必要があります。
  • 第13段落: 製造部長が月次で作成、 工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない とあります。計画と実績を比較するには、まず工数等のデータの基準を整える必要があります。
  • 第15段落: 営業部担当者などとの打ち合わせのための「不在」 とあります。必要な情報の確認で現場を離れる時間も、共有の仕組みで減らす対象です。
営業の情報は、最新の仕様と納期が分かるようにする ​

受注製品ごとに図面、仕様、顧客承認の状態、変更履歴、納期をまとめます。図面の版と変更箇所が分かれば、製造が古い仕様で進める手戻りを防げます。

第2問設問1では形状の可視化による合意の促進を考えました。本問の中心は、 既存の2次元CADを含む設計情報を、変更履歴とともに一元共有すること です。表示を立体化することと、各部門へ最新情報を届けることは異なる役割です。

製造の情報は、残りの仕事と使える能力を見えるようにする ​

標準工数、班ごとの技能・能力、割り当てた仕事量、各工程の着手・完了実績を記録します。例えば予定日になっても前工程が終わっていなければ、後工程や据付への影響を早く検討できます。

計画と実績の差を把握し、遅延の予兆を見つける ことが重要です。実績を月末にまとめるだけでなく、作業の節目に更新し、営業・製造が同じ進捗を確認できるようにします。班の能力も見えれば、応援可能か、別の製品を先に進めるかという判断につながります。

情報を出す側共有する情報その情報で行う判断
営業図面・仕様・変更履歴・承認状態・納期最新仕様で進められるか、変更の影響は何か
製造工数・班の能力と負荷・着手完了実績納期に間に合うか、日程や割当てをどう変えるか
見える化の後に、調整する運用を置く ​

画面で遅れが見えても、誰も日程を調整しなければ納期は守れません。営業と製造が変更の影響を確認し、作業順序・担当・日程を決め、最新の指示を共有する運用を設けます。

工数の基準がないまま入力を始めると、数値を比較しにくくなります。第2問設問2で整える標準工数を土台に、製品の識別方法、情報を更新する人と時点もそろえます。 情報を集める→遅延を予測する→部門間で調整する までつないで初めて、ITが納期対策になります。

共有する情報と、その使い方を120字で答案化する ​

答案の骨格は、 営業の図面・仕様変更・納期+製造の工数・能力・進捗→遅延予兆の可視化→日程・優先順位の調整 です。情報の名称に加えて、営業から製造へ変更を伝える向き、製造実績を全体調整へ戻す向きを肉付けします。

「システムを導入し情報共有する」で終わらず、何を共有して、納期のためにどう使うか を残します。機器やソフトの名称より、両部門を結ぶデータと判断を優先します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の製造現場の生産性向上は、ITを業務の見える化と改善へ使う参考になります。本問では設備やAIを幅広く挙げず、C社の図面変更と班別の進捗・負荷を共有する用途へ絞ります。データの基準と更新方法は、情報を実際に使うための準備です。

類題は、2022年度事例III第4問、2018年度事例III第4問、2015年度事例III第3問です。共通点はITに必要な情報と管理の仕組みを結びつける点。相違点は、2022年度がデジタル化と社内活動、2018年度が導入前の整備、2015年度が納期管理の情報を問うのに対し、本問は個別受注品の設計変更と班の進捗を全社の納期調整へつなぐ点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「製造現場の生産性向上」(事業領域と強みを踏まえ、設備、IT、生産管理システム、CAD/CAM等で製造現場の生産性を高める方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 4 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社社長は、付加価値の高いモニュメント製品事業の拡大を戦略に位置付けている。モニュメント製品事業の充実、拡大をどのように行うべきか、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

回答例(119 字) ​

工数見積り、作業手順、生産計画・進捗管理を標準化し、教育で技能差を縮めて納期を遵守する。デザイナーと、溶接・研磨技術や設計から据付までの一貫対応を生かし共同提案する。実績を新たなデザイナーと建築用金属製品メーカーへ訴求し、顧客を開拓する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

第4問は、付加価値の高いモニュメント事業を充実・拡大する方法を120字で助言する問題 です。受注を増やす提案だけでなく、その仕事を納期どおりに引き渡す社内体制を合わせて考えます。

評価される技術を、安心して任せられる提案へ変える ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第3段落: 溶接技術や研磨技術を高める、 設計から製作、据付工事までを受注する とあります。特殊な表面品質と一貫対応を、新しい顧客への提案に使えます。
  • 第4段落: デザイナーから、モニュメントの製作依頼を受けたことを契機 とあります。既存の技術がデザイナーの表現を実現する仕事へ広がった経緯です。
  • 第5段落: 受注量の変動が大きいものの、 ビル建築用金属製品と比較して付加価値が高い とあります。変動への備えは必要ですが、同事業を伸ばす経営上の理由があります。
  • 第12段落: 全ての工程で製作図の理解力と高い加工技術が要求される とあります。営業で仕事を取れても、製造が対応できなければ事業は広がりません。
  • 第13段落: 工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない とあります。受注拡大に先立ち、計画どおりに引き渡す基準と管理を整える必要があります。
まず、納期どおりに作れる体制を整える ​

高度な技術があっても、約束した日に完成しなければ、建築プロジェクトの仕事を安心して任せてもらいにくくなります。現在は納期遅延が問題になっているため、営業を増やすだけでは製造の混乱を大きくするおそれがあります。

第2問で整理した工数見積り・作業手順・技能の改善と、第3問の計画・進捗共有を使い、 受注したモニュメントを品質と納期を守って引き渡す基盤 を整えます。教育で難しい加工を担当できる班を増やし、特定の班への集中も緩和します。

第5段落の 「受注量の変動が大きいものの」 は、高付加価値という魅力と需要変動の両方を見る手掛かりです。受注増をそのまま恒常的な増産量とせず、能力・負荷を確かめて引き受ける仕事と日程を調整します。

デザイナーの表現と、C社の加工知識を組み合わせる ​

デザイナーは形や空間のイメージを持ち、C社はステンレスの加工・仕上げと製作の制約を理解しています。両者が早期に協働すれば、実現したい造形を、製作・据付まで可能な提案へ具体化できます。

デザイナーとの共同提案 は、単に紹介を待つことから一歩進み、C社の技術を使ってどんな表現が可能かを示す活動です。例えば仕上げ見本や製作事例を使い、意匠と加工方法の両面から提案することが考えられます。

据付工事そのものは協力会社が担いますが、C社は設計から施工管理まで一貫して対応しています。顧客にとっては、造形を考える段階から引き渡しまで相談できる点が提案価値になります。

実績を、次の顧客との接点にする ​

完成品の写真や採用された加工方法、据付まで対応した事例を整理すれば、新しいデザイナーや建築用金属製品メーカーへ自社の力を具体的に伝えられます。 技術と一貫対応の実績を示し、新たな顧客を開拓する 流れです。

既存のモニュメント製品を新しい顧客へ広げるため、市場開拓の方向として捉えます。無関係な新製品へ多角化したり、工場制約を超える大型品を直ちに受注したりする提案より、現在の技術と対応範囲を活かすことを優先します。

事業拡大の段階C社で行うこと次へつながる理由
確実に作る標準化・技能向上・納期管理顧客が安心して任せられる
価値を提案するデザイナーと意匠・加工・据付を共同提案強みを顧客の具体的な計画へ使える
顧客を広げる製作実績を新たな取引先へ示す新しい引合い・受注へつながる

生産基盤と提案・顧客開拓を120字で答案化する ​

答案の骨格は、 標準化・教育・納期管理→技術と一貫対応を活かす共同提案→実績を使った顧客開拓 です。前半に工数・手順と技能差の改善、中盤にデザイナー、後半に新たなデザイナーや建築用金属製品メーカーを肉付けします。

社内で何を整え、誰と何を提案し、誰へ広げるか を確保します。現場改善だけ、あるいは広告宣伝だけに偏らず、生産・技術の強みが受注増につながる一続きの助言にします。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の組織・体制づくりは、顧客の要求と社内外の知識をつなぐ参考になります。C社ではデザイナーの意匠と加工・施工管理の知識を共同提案へ使います。その前提として納期を守る体制を置くのは、与件にある生産上の制約に対応するためです。

類題は、2025年度事例III第4問、2024年度事例III第5問、2023年度事例III第5問です。共通点は事業の拡大に必要な能力と顧客対応を整える点。相違点は、各類題が新規事業に伴う品質・直接契約・専用生産体制を扱うのに対し、本問は既存モニュメント事業の納期対応を強化し、技術提案で顧客を広げる点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

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