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平成 20 年度(2008 年度)事例 Ⅱ 解答解説 ​

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第 1 問(配点 10 点) ​

設問文 ​

B 社が長年にわたって顧客に支持された理由は何か。30 字以内で 2 つ答えよ.

回答例(30,28 字) ​

【理由1】静寂と和みの空間で、一部屋一担当の仲居が丁寧に応対すること。 【理由2】地産地消の会席料理や茶道・陶芸などの文化的なおもてなし。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

長年の支持理由を、 静寂・和みと個別サービス、食と文化のおもてなし の二つへまとめ、各30字で示します。設備の名前から、顧客がどんな時間を過ごせるかへ結びつけます。

与件文から約束する価値と具体的な対応を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第1段落: 心を和ませる静寂への誘い、 一人が一部屋を担当 とあります。コンセプトと接客体制を対応させます。
  • 第2段落: 地産地消を原則とした会席料理、 書斎風の読書コーナーやベンチ とあります。食と空間が、落ち着いて過ごす滞在を支えます。
  • 第3段落: 女将が顧客の到着時にお茶を点ててもてなし、 インストラクターによる陶芸教室 とあります。日本文化を自ら味わう体験もあります。

第3段落の 「また」 は、茶のもてなしに加え、食事の器も工房で作ることへ話を広げます。文化が飾りとして置かれるのでなく、食事や体験に組み込まれています。

静かに過ごせる約束を、サービスで実現する ​

B社は団体客や小さな子供連れの受入れを制限し、仲居が一部屋を担当します。読書できる場所も設け、周囲を気にせず落ち着いて過ごせる環境を整えています。

静寂・和みというコンセプト→空間ときめ細かな接客→非日常の滞在 というつながりです。一部屋一担当という人数の事実は、個々の要望へ丁寧に応えるサービスとしてまとめます。

食と文化を、その旅館ならではの体験にする ​

地元食材の会席料理、女将の茶のもてなし、陶芸教室は、土地や日本文化を味わう機会です。食べる、眺める、作るという体験が、落ち着いた滞在を豊かにしています。

地元の食と茶道・陶芸→文化を味わうおもてなし と捉えます。「料理がある」「茶室がある」と並べるより、高額でも訪れたい独自の体験へまとめることが重要です。

二つの支持理由を各30字で答案化する ​

答案の骨格は、静寂・和みの空間と個別接客、地産地消の料理と文化体験の二つです。第一の欄では「きめ細かい」だけでなく、一部屋を一人の仲居が担当する仕組みを示します。第二の欄は現行の食と文化の体験を維持し、異なる支持理由を簡潔に答えます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「サービス業での生産性向上」は、顧客経験、サービスブランド、人材育成、顧客別の提供方法を一体で高付加価値化する考え方について示しています。本問では、「顧客ニーズに合う価値を一貫して届け、信頼・選好・価格受容へつなぐ」を2008年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸この設問への当てはめ答案上の注意
顧客ニーズに合う価値を一貫して届け、信頼・選好・価格受容へつなぐ「【理由1】設問の要求に対応する与件の事実」を、設問に対応する与件根拠から導く公的資料の一般論を答案へ写さず、2008年度のB社固有の事実を主根拠にする

類題は、2024年度事例II第2問 です。

共通点 は、顧客ニーズと自社資源から提供内容を具体化する点です。

相違点 は、本問が「【理由1】設問の要求に対応する与件の事実」を扱うのに対し、類題は新商品・サービスの開発助言を中心に問う点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「サービス業での生産性向上」(顧客経験、サービスブランド、人材育成、顧客別の提供方法を一体で高付加価値化する考え方)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 2 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

B 社の予約客の数が減少した理由は何か。30 字以内で 2 つ答えよ.

回答例(26,30 字) ​

【理由1】最新設備を備えた低価格な大規模競合ホテルが出現した。 【理由2】建物・設備が老朽化し、最新競合に比べ快適性と魅力が低下した。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

予約客の減少理由を、 新しい競合の出現と、自社設備の相対的な魅力低下 に分け、各30字で示します。外部の変化と内部の課題を、顧客が宿を選ぶ場面へつなぎます。

与件文から比較される条件の変化を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第6段落: 最新設備の整った大規模な温泉ホテル、 平均価格はB社より低く設定 とあります。設備と価格の両面で競争条件が変わっています。
  • 第9段落: 平日の予約状況に空きが出るようになった とあります。B社に表れた結果です。
  • 第10段落: 建物や設備の老朽化は避けることはできず とあります。競合と比較する自社側の課題です。

第6段落の 「ちなみに」 は、最新設備だけでなく低い平均価格も比較条件であることを示します。第10段落の 「しかし」 は、取材で問い合わせが増える一方、設備面の課題が残ることへ話を転換します。

選択肢が増えることで、これまでと比較の基準が変わる ​

最新設備を備え、B社より平均価格の低いホテルが登場しています。顧客にとって、快適な設備をより低い価格で利用できる選択肢が増えたことになります。

新設備と低価格の競合→宿泊先の選択肢拡大→B社への競争圧力 です。B社の良さがすべて失われたと考えるのでなく、従来と異なる比較対象ができたことを押さえます。

伝統の価値と、設備の快適性を分ける ​

古い建物が持つ風情と、老朽化による使い勝手や快適性の問題は同じではありません。補修を続けていても、新設備の競合と比較された際に、設備面の魅力が弱くなった可能性があります。

自社の老朽化→相対的な快適性・魅力の低下 がもう一つの理由です。与件に予約減少の顧客調査があるわけではないため、複数の事実を結んだ原因の推論として説明します。維持費の上昇は経営上の負担ですが、それ自体を顧客が予約しない直接の理由にはしません。

二つの予約減少理由を各30字で答案化する ​

答案の骨格は、 最新設備・低価格の競合出現/B社の設備老朽化による相対的魅力低下 です。一方に外部の競争条件、他方に自社の状態を置きます。

各30字では、顧客の選択に関わる要因を優先します。「平日が空いた」は結果なので理由として繰り返さず、競合と自社の変化へ圧縮しましょう。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法について示しています。本問では、「顧客・競合・自社を相対比較し、自社が選ばれる根拠を特定する」を2008年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸この設問への当てはめ答案上の注意
顧客・競合・自社を相対比較し、自社が選ばれる根拠を特定する「新設備・低価格の競合ホテルが増える中、B社の設備老朽化によって相対的な快適性と魅力が弱まったと考えます。」を与件根拠から導く公的資料の一般論を答案へ写さず、2008年度のB社固有の事実を主根拠にする

類題は、2023年度事例II第1問 です。

共通点 は、顧客・競合・自社の事実から競争上の課題を絞る点です。

相違点 は、本問が「【理由1】設問の要求に対応する与件の事実」を扱うのに対し、類題は3Cの現状分析を直接求める点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

B 社の 4 代目経営者の拡大構想には、マーケティング戦略上、どのような問題があるのか。50 字以内で 2 つ答えよ.

回答例(49,49 字) ​

【問題1】洋室の追加や規模拡大で静寂と和の風情、個別のもてなしが薄れ、これらを評価する既存客の離反を招く点。 【問題2】和洋折衷への転換で競合ホテルと同質化し、設備や価格の競争に陥って、高価格を支える独自価値を失う点。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

拡大構想の問題を、 既存顧客との不整合と、競合との同質化 の二方向から各50字で説明します。顧客が求める価値と、競合に対する位置づけがどう変わるかを考えます。

与件文から変更内容と守る価値を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第11段落: 建物の建替えと客室(洋室)の追加、 和洋折衷のコンセプトへの転換 とあります。維持補修にとどまらず、提供価値の転換を考えています。
  • 第1段落: 心を和ませる静寂への誘い、 一人が一部屋を担当 とあります。既存の約束と接客体制です。
  • 第6段落: 最新設備の整った大規模な温泉ホテル、 平均価格はB社より低く設定 とあります。設備競争へ近づく際の比較相手です。

第11段落の 「また」 は、客室の追加に加えて食事の提供方法も変える構想を示します。建物だけの問題ではなく、滞在全体の過ごし方が変わる点に注目します。

既存顧客が選んできた理由と合うか ​

客室の拡大や共用ダイニングの導入が、静かな空間や個別対応を損なえば、従来客が期待していた滞在とずれます。多世代にわたり利用してきた顧客にとって、設備が新しくなることだけが魅力ではありません。

拡大・コンセプト転換→静寂と個別対応の弱まり→既存客との不整合 という懸念です。客室増に合わせて仲居が増えるといった記述もなく、現在のサービス密度をどう維持するかが課題になります。

競合と似た価値へ移ると、比較される軸も変わる ​

新設備や和洋折衷の利便性を主な訴求にすると、大規模ホテルと似た土俵へ近づきます。相手より規模や価格で優位に立ちにくいB社が独自性を失えば、高額でも選ばれる理由が弱くなります。

競合との同質化→価格・設備での比較→差別化と収益性への懸念 です。現時点で値下げが決まったという意味ではなく、価格競争へ向かう危険を説明します。

必要な補修や快適性の改善まで否定する問題ではありません。伝統的な滞在価値を守りながら改善することと、支持されてきたコンセプトを変えることを分けて判断します。

拡大構想の二つの問題を各50字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。

拡大そのものを否定するのではなく、洋室追加や規模拡大が静寂・和風・個別対応に与える影響を検討する。既存客との不整合と、競合ホテルとの同質化という異なるマーケティング上の問題に分けて説明する。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「コーポレートブランディング」は、ブランドコンセプトを明確にし、一貫した価値の発信と維持によって信頼・選好へつなげる手順について示しています。本問では、「顧客ニーズに合う価値を一貫して届け、信頼・選好・価格受容へつなぐ」を2008年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸この設問への当てはめ答案上の注意
顧客ニーズに合う価値を一貫して届け、信頼・選好・価格受容へつなぐ「洋室追加・規模拡大が、静寂・和の風情・個別対応に及ぼす影響を考える。 既存客との不整合と、競合との同質化による価格・設備競争を分ける。」を、設問に対応する与件根拠から導く公的資料の一般論を答案へ写さず、2008年度のB社固有の事実を主根拠にする

類題は、2023年度事例II第1問 です。

共通点 は、顧客・競合・自社の事実から競争上の課題を絞る点です。

相違点 は、本問が「洋室追加・規模拡大が、静寂・和の風情・個別対応に及ぼす影響を考える。 既存客との不整合と、競合との同質化による価格・設備競争を分ける。」を扱うのに対し、類題は3Cの現状分析を直接求める点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コーポレートブランディング」(ブランドコンセプトを明確にし、一貫した価値の発信と維持によって信頼・選好へつなげる手順)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 4 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

B 社の現在の設備と経営システムを大きく変えずに、顧客を増やすプロモーション戦略はどのようなものか。次の設問に答えよ.

設問 1 ​

既存顧客に向けてのプロモーション戦略について 50 字以内で答えよ.

設問 2 ​

B 社の良き伝統を維持しつつ、新規顧客を取り込むためのプロモーション戦略について 50 字以内で答えよ.

回答例(49,50 字) ​

【設問1】女将の礼状やDMで地元特産品、旬の料理と茶道・陶芸体験を案内し、滞在の記憶を想起させ再予約を促す。 【設問2】和風旅館を求めるアジアの富裕層に、HP で茶道や陶芸など本物の日本文化体験の魅力を発信し、予約を促す。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

設備と経営システムを大きく変えず、既存客と新規客へ働きかける方法 を各50字で示します。同じB社の価値でも、既に体験した人と、まだ知らない人では伝える内容を分けます。

与件文から顧客別の接点を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第9段落: ホームページを開設し予約も受け付け、 毛筆で書く御礼状 とあります。既存の予約導線と個別の接点があります。
  • 第12段落: 地元の食材についての問い合わせが増えてきている、 人手不足もあり、 昔からの顧客に対してだけは、食材を特別に販売 とあります。需要と提供範囲の制約を合わせて拾います。
  • 第7段落: 和風旅館の風情に親しみたい、 温泉組合の観光案内所には問い合わせが増えつつある とあります。伝統的な価値を求める新しい顧客がいます。

第7段落の 「しかし」 は、外資系ホテルへ向かう外国人の中にも和風旅館を求める層がいることを示します。第12段落の 「また」 は、食材への関心から農家の体験案内へ広がり、既存客へ伝える話題になります。

既存客には、滞在の記憶を次の接点へつなぐ ​

女将の礼状やDMで、宿で味わった地元食材や季節の案内を届けます。旅先で気に入ったものを帰宅後も楽しめることが、単なる宿泊の売込みとは違う接点になります。

礼状・DM+なじみの食材→滞在の記憶と継続関係 です。人手不足があるため、取扱品や受付時期を絞るなど、既存体制で対応できる範囲を考えます。

新規客には、伝統の中身を具体的に見せる ​

和風の風情を求めるアジアの富裕層へ、茶道・陶芸・地元料理・静かな空間をホームページで紹介します。新しい設備を増やすのでなく、既にある体験を分かりやすく届ける方法です。

和文化を求める顧客→本物の滞在体験の発信→Web予約 と結びます。高価格の説明も設備の豪華さだけでなく、個別対応と文化を味わう時間へつなげます。

顧客別の販促を各50字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

既存客向けの骨格は、礼状・DMでなじみの食材と季節の料理・文化体験を案内し、滞在の記憶を次の予約へ結ぶ、です。物品販売の拡充だけにせず、宿で過ごす価値を伝えます。人手不足を踏まえ、既存の内容と接点で行える範囲とします。新規客向けは現行の、和風旅館を求めるアジア富裕層へホームページで日本文化体験を発信して予約へつなぐ答案を維持します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「お客さまの反応がよいDMの出し方を教えてください。」は、属性・購買履歴・問い合わせ等で対象を絞り、受け手の便益が伝わる個別案内を行う方法について示しています。本問では、「顧客ニーズと自社資源を結び、具体的な価値と顧客行動へ落とす」を2008年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「インバウンド需要を取り込むポイントを教えてください。」は、対象顧客のニーズを見極め、商品・サービス・販促を一貫して設計する原則を補う資料として併記します。

公的資料の判断軸この設問への当てはめ答案上の注意
顧客ニーズと自社資源を結び、具体的な価値と顧客行動へ落とす「既存客には礼状・DMと食材案内で関係を深め、新規客には和風の滞在・文化体験をWebで伝え、設備を大きく変えず予約につなげます。」を与件根拠から導く公的資料の一般論を答案へ写さず、2008年度のB社固有の事実を主根拠にする

類題は、2024年度事例II第2問 です。

共通点 は、顧客ニーズと自社資源から提供内容を具体化する点です。

相違点 は、本問が「【設問1】設問の要求に対応する与件の事実」を扱うのに対し、類題は新商品・サービスの開発助言を中心に問う点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「お客さまの反応がよいDMの出し方を教えてください。」(属性・購買履歴・問い合わせ等で対象を絞り、受け手の便益が伝わる個別案内を行う方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「インバウンド需要を取り込むポイントを教えてください。」(対象顧客のニーズを見極め、商品・サービス・販促を一貫して設計する原則)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 5 問(配点 30 点) ​

設問文 ​

H 温泉組合は集客力を高めるために、地元の資源を活用できるような、協業をベースとした新規事業を考えている。どのような新規事業が考えられるか。それぞれ 100 字以内で 2 つ答えよ.

回答例(100,96 字) ​

【新規事業1】地元農家と協業し、温泉熱ハウスで有機野菜を栽培してH温泉ブランド化する。収穫体験、直売、旅館の夕食を連動させ、アウトレット来訪客をH温泉へ誘客して滞在時間と地域消費を増やす食農ツーリズムを事業化する。 【新規事業2】湯治場の歴史を活かし、各旅館の文化施設(茶室、工房等)を連携させた長期滞在型ウェルネスプログラムを開発。健康と日本文化体験をテーマに、特にアジアの富裕層をターゲットとして旅行代理店と提携する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

H温泉組合を主体とした、地元資源を使う協業事業 を二つ、各100字で提案します。食と農の体験、温泉と日本文化の長期滞在へ分け、誰が何を担い、どう集客するかを考えます。

与件文から地域で組み合わせられる資源を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第12段落: みかん狩りやイチゴ狩りの案内、 温泉の熱を利用したハウス栽培 とあります。食材の生産・収穫を体験へ結ぶ資源です。
  • 第8段落: アウトレット・モールの建設計画 とあります。将来の周遊客を考える手掛かりです。
  • 第4段落: 遠方より湯治客が訪れる とあります。長く滞在する温泉地としての歴史があります。
  • 第3段落: 敷地内には茶室や陶芸工房 とあります。B社が地域の企画へ持ち込める文化資源です。
  • 第7段落: 和風旅館の風情に親しみたい とあります。文化滞在に適合する需要です。

第12段落の 「また」 は、食材調達から果物狩りへ話を広げています。第5段落の 「しかし」 以降は、湯量の制約がある中でも温泉地の新しい方向を探る姿勢です。入浴量を増やすだけでなく、地域の体験を厚くする案を考えます。

農家の生産と、旅館の食事・滞在を結ぶ ​

農家が温泉熱を活かして栽培し、収穫体験や直売を提供します。旅館は地域食材を料理に使い、組合が予約や周遊の案内をまとめれば、「採る・買う・食べる・泊まる」をつなぐ食農ツーリズムになります。

農家の栽培・収穫体験×旅館の食事→地域らしい食の旅→滞在と消費 という事業です。建設計画段階のアウトレットは、開業後の周遊客を取り込む候補として扱い、既に来訪客が流入しているとは書きません。

湯治の歴史に、文化を楽しむ滞在を重ねる ​

温泉でゆっくり過ごし、茶道や陶芸などを楽しむ長期滞在型プログラムを組みます。組合が利用できる施設と担当を調整し、和の風情を求める層へ旅行代理店などを通じて販売する方向です。

温泉地の歴史+文化体験→心身を休める長期滞在→新たな宿泊需要 と説明します。茶室・工房が確認できるのはB社なので、他旅館にも同じ設備があるとはせず、地域内で使える資源を持ち寄ります。温泉の治療効果を保証する企画ではありません。

組合が結ぶことで、個社では届かない価値にする ​

農家の体験、旅館の食事・宿泊、代理店の販売を別々に置かず、組合が日程・受入人数・予約案内を調整します。各主体に体験料、販売、宿泊などの収入機会が生まれることで、協業を続ける意味があります。

二つの協業事業を各100字で答案化する ​

答案の骨格は、 農家×旅館→食農体験と周遊/旅館の文化資源×販売先→長期滞在と誘客 です。各案に資源、役割、顧客の体験、地域への効果を肉付けします。

各100字では、誰と組み、どんな体験を売るかを具体化します。B社の食材販売だけや組合の広告だけで終えず、地域資源を組み合わせた事業としてまとめましょう。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「地域活性化に向けた企業と自治体の連携はどのように進めればよいのでしょうか。」は、地域の共通目標を置き、互いの強み・課題・役割・責任・評価方法を共有する連携手順について示しています。本問では、「共通目的を置き、双方の資源を共同開発・販路開拓へ結び付ける」を2008年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「農商工連携で商品開発をする際に注意すべき点はありますか?」と「地域に根差したビジネスモデルにはどのようなものがありますか?」は、農林漁業者と商工業者が強みを補完し、顧客視点と明確な役割分担で商品化する方法と地域課題の解決と企業価値・収益を両立させる地域密着型ビジネスモデルを補う資料として併記します。

公的資料の判断軸この設問への当てはめ答案上の注意
共通目的を置き、双方の資源を共同開発・販路開拓へ結び付ける「【新規事業1】地元農家と協業し、温泉熱ハウスで有機野菜を栽培してH温泉ブランド化する。」を、設問に対応する与件根拠から導く公的資料の一般論を答案へ写さず、2008年度のB社固有の事実を主根拠にする

類題は、2022年度事例II第4問 です。

共通点 は、外部主体の資源を補完して新しい価値と販路を作る点です。

相違点 は、本問が「【新規事業1】地元農家と協業し、温泉熱ハウスで有機野菜を栽培してH温泉ブランド化する。」を扱うのに対し、類題は地域の複数主体による共同施策を助言する点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「地域活性化に向けた企業と自治体の連携はどのように進めればよいのでしょうか。」(地域の共通目標を置き、互いの強み・課題・役割・責任・評価方法を共有する連携手順) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「農商工連携で商品開発をする際に注意すべき点はありますか?」(農林漁業者と商工業者が強みを補完し、顧客視点と明確な役割分担で商品化する方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「地域に根差したビジネスモデルにはどのようなものがありますか?」(地域課題の解決と企業価値・収益を両立させる地域密着型ビジネスモデル)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

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