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平成 28 年度(2016 年度)事例 Ⅲ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
カット野菜業界における C 社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ 40 字以内で述べよ。
回答例(39,40 字)
【(a)強み】親会社との連携で新鮮な野菜を調達し、規格外野菜をカット加工して商品化できる点。 【(b)弱み】グループ別管理が非効率で、品質・衛生管理が弱く約3カ月休業し通年供給できない点。
解説
この問題の着眼点
カット野菜業界におけるC社の強み・弱みを、それぞれ40字で整理する与件抜粋型の問題 です。原料調達と顧客対応の基盤、収益構造と管理上の課題を分けて拾います。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
読みながら強み・弱みの候補をマーキングし、40字に絞る前に第2問以降へ進みます。蛍光ペンやボールペンの色、S・Wの印で区別しておけば、最後に戻って候補を整理できます。
調達・受注の基盤と、利益を残せない仕組みを分ける
与件文のどこを見るか
- 第1段落: X 農業法人から分離し、設立、 総菜メーカーや冷凍食品メーカーが中心、 受注生産 とあります。生産者とのつながりと、業務用顧客の注文に応じて加工する事業基盤があります。
- 第4段落: 規格外野菜の有効活用、 他産地からの仕入れも必要 とあります。X農業法人由来の原料に加え、事業拡大に伴い調達先を広げてきました。
- 第5段落: 限界利益がマイナス、 効果的な生産管理が組織的に行われていない とあります。費用が売上を上回り、その構造を改善する管理の仕組みが十分に働いていません。
- 第11段落: 製造グループごとの生産管理、 同種類の原材料調達における単価の差異、 加工ロスによる歩留りの低下 とあります。グループ別の運営によって、調達と加工の両方に非効率が生じています。
強みは、生産者と顧客をつなぐ事業基盤
カット野菜は、原料を確保できて初めて顧客の注文へ応えられます。C社はX農業法人の加工部門を母体とし、農業法人との関係を持っています。これを 原料調達経路 と捉え、総菜・冷凍食品メーカーの要求に合わせる 取引先別の受注生産基盤 と組み合わせます。
第6段落には 約 3 カ月の休業期間 と 通年取引の要望 があり、調達経路があることと、一年を通じて十分な原料を確保できることは分けます。第4問では、この基盤を活かしつつ通年供給に足りない部分を整えることになります。
第2段落の カット野菜需要の割合は年々増加 は、C社だけの能力ではなく市場の機会です。40字の強み欄では、C社が保有している関係・対応力 に絞ります。
弱みは、赤字の構造とグループ別管理の非効率
表1では、売上高100に対して変動費が111.4で、限界利益は▲11.4です。固定費を賄う前から赤字になっていると読めます。単に営業利益がマイナスという結果だけでなく、変動費が売上を上回る収益構造 を押さえます。
その背景が第11段落のグループ別管理です。同じ原材料でも仕入単価が異なり、加工ロスや輸送のムダが発生しています。これらを40字へ全て並べる代わりに、グループ別生産管理による非効率 とまとめると、費用が膨らむ理由を残せます。
第5段落の 「ものの」 は、独立後も改善に努めながら成果が出ていないことを示します。弱みは努力の有無より、全社で管理し改善へ結ぶ仕組みにあると捉えます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
後続設問で活かした強み、補った弱みを1軍にします。個別の現象は、同じ管理課題へ束ねてから字数を調整します。
| 候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 親会社からの新鮮な原料調達 | 第4問の鮮度を活かす新事業の土台 | 強みの優先候補として残す |
| 規格外野菜のカット加工・商品化経験 | 第4問で現有工程を新しい商品へ活かす | 強みの優先候補として調達基盤と組み合わせる |
| 顧客別の受注生産基盤 | 業務用顧客との取引に対応する | 有効な別候補。答案への追加は必須にしない |
| グループ別管理の非効率 | 第2問の収益改善 | 弱みの優先候補として残す |
| 通年供給不足・品質衛生管理の不足 | 第3問の品質改善と第4問の安定供給 | 弱みの優先候補として管理・供給の制約を示す |
| 変動費超過 | 第2問の収益構造の改善 | 有効な別候補。答案への追加は必須にしない |
| 個々の加工ロス・移動制限・輸送ロス | 第2・3問で具体策を考える根拠 | 個別名称は2軍に置き、非効率へ束ねる |
グループ別に注文へ応じられることは顧客対応の基盤ですが、購買や人員配置まで分断されることは弱みです。顧客に合わせる力を残し、全社で共通化すべき管理を見直す と、強みと弱みを矛盾なく説明できます。
強み・弱みを各40字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
強みは親会社からの新鮮な原料調達と、規格外野菜を商品へ変えるカット加工の経験を組み合わせます。弱みは、グループ別管理の非効率、品質・衛生管理の不足、休業期間による通年供給の難しさから具体的な事実を選びます。赤字という結果だけでなく、その背景にある管理・供給上の制約を示し、改善策は後続設問へ分けます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の組織・体制づくりの解説は、SWOTで社内の資源・課題と外部環境を分ける参考になります。本問では市場全体の需要増加と、C社の調達・受注基盤を区別します。費用構造の診断には、公的資料の一般論ではなく表1と第11段落を使います。
類題は、2025年度事例III第1問、2024年度事例III第1問、2023年度事例III第1問 です。共通点 は、後の助言に活かす社内の能力を拾う点。相違点 は、2024・2023年度が強みを問うのに対し、本問は強み・弱みを分け、表1の収益構造も弱みの根拠にする点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 2 問(配点 30 点)
設問文
現在 C 社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を 160 字以内で述べよ。
回答例(157 字)
顧客別3グループの個別運営を改め、受注・原料在庫・能力を共有し生産計画を一元化する。共通原料の集中購買と適正発注で調達単価・在庫費を下げる。加工条件と作業を標準化し、加工ロスを測定して歩留りを高め、教育と横断配置で人員を有効活用する。出荷便を集約し輸送費を抑え、歩留り・工数・製品別原価を定期把握して改善を続ける。
解説
この問題の着眼点
収益を早急に改善するための生産管理面の対応策を160字で述べる問題 です。表1で負担の大きい費用を確認し、第11段落のグループ別管理が生むムダへ対策を結びつけます。
同じ会社の中で、購買・加工・出荷が分かれている
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 原材料費と労務費の上昇、 限界利益がマイナス とあります。売上の拡大より先に、現在の受注で利益を残せる費用構造へ変える必要があります。
- 第7段落: 他の製造グループへの移動はない とあります。忙しいグループへ別グループの人が応援する運用になっていません。
- 第10段落: 生産高を日常の管理項目 とあります。作った量を管理するだけでは、どれだけの原料・時間を使って利益が残ったかが見えません。
- 第11段落: 各々生産計画を立て、 原材料調達から出荷まで行っている、 同種類の原材料調達における単価の差異、 加工ロスによる歩留りの低下、 出荷のための輸送費用のロス とあります。購買から出荷までの分断が、材料・加工・物流の費用に表れています。
表1から、優先して変える費用を見つける
原材料費66.8%、労務費28.1%の二つで売上高の94.9%を占め、さらに荷造運賃9.0%などが加わり、変動費計は111.4%です。現状の費用比率が続けば、売上を増やすだけでは限界利益の赤字も拡大します。まず 原料の買い方・使い方と、人の働き方 を変える必要があります。
第11段落の 「によって」 は、グループ別の管理と複数のロスをつないでいます。個々の担当者へ節約を求めるだけでなく、全社一元管理を土台に、費用ごとのムダを減らす という方向が導けます。
全社の受注・在庫・能力を見て計画する
各グループが自分の注文だけを見て計画すると、他グループの原料在庫や空いている人員を使えません。全社で受注量・納期・原料在庫・作業能力を共有し、購買、加工、出荷をつなぐ生産計画を立てます。
顧客ごとのカット仕様は守りながら、共通原料の手配や応援の調整をまとめます。顧客対応の違いと、管理を共通化できる部分を分ける ことで、各グループの経験を活かした改善になります。
原料は、単価と歩留まりの両方から見る
同じ原料を別々に買えば、仕入条件がそろわず、会社としての必要量も分かりにくくなります。共通原料の集中購買と発注ロットの適正化 で、調達条件と必要量をまとめます。ただし生鮮原料のため、安さを理由に大量に買わず、使い切れる量と鮮度を保てる期間に合わせます。
加工では、皮むきやカットの方法・条件を標準化してロスを減らします。投入した原料から製品になる割合が歩留まりです。同じ製品量を少ない原料で作れれば、仕入単価を下げる以外にも原材料費を改善できます。買う単価を下げることと、使える量を増やすこと を一組にします。
人と出荷便も、グループの境界を越えて使う
人員が固定されたままだと、仕事量に偏りが出ても応援できません。作業手順の共有と教育で他グループの仕事に対応できる人を育て、必要な技能を確かめて 負荷に応じた要員の横断配置 を行います。人を動かすだけでなく、同じ品質で作業できる基準と習熟が必要です。
出荷は、納品先・時間帯・温度条件を確認して便を集約します。同じ納品先へ別々に手配するようなムダを減らす考え方です。鮮度や納期を犠牲にせず、出荷便の集約による物流費の低減 へつなぎます。
作った量から、残った利益まで管理する
改善後は、生産高だけでなく、原料使用量、歩留まり、作業時間、配送費を記録して製品別の採算を確認します。どの費用が下がり、どの受注条件に負担が残るかが分かれば、次の改善や納品頻度・ロット等の見直しにも使えます。
| 費用の問題 | 対応する管理・作業 | 利益につながる変化 |
|---|---|---|
| 原料単価差・加工ロス | 集中購買・適量発注・加工標準化 | 調達費と原料のムダを減らす |
| 人員固定・稼動の偏り | 教育とグループ横断配置 | 待ちと負荷の偏りを減らす |
| 輸送費用のロス | 納品条件に合う出荷便の集約 | 品質・納期を守って物流費を減らす |
一元管理と費用ごとの改善を160字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
全社で受注と能力を共有したうえで、集中購買、加工ロスの削減、標準化と柔軟な人員配置、出荷の集約を費用ごとに対応させます。最後に歩留り・工数・製品別原価を定期的に測り、改善の効果を確かめて次の対策へつなぐ運用を残します。管理項目の列挙ではなく、どの無駄を減らし、どの指標で継続確認するかを示します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21「コスト削減の仕方」からは、業務ごとの費用を把握してムダ・ムラ・ムリを見つける視点を持ち帰れます。C社では原料、工数、物流費を製品別に捉え、グループ別運営で生じるロスに対策を対応させます。原価計算の手法名だけでなく、計算結果を改善へ使うことが要点です。
類題は、2024年度事例III第4問、2023年度事例III第3問、2010年度事例III第2問 です。共通点 は、費用の発生源を捉えて利益を確保する点。相違点 は、2024年度が価格交渉前の準備、2023年度が食材の原価・在庫、2010年度が設備・工程移管の採算と混乱を扱い、本問は現行3グループの管理をつなぎ直す点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コスト削減の仕方」(活動別・製品別の間接コストまで可視化し、ムダ・ムラ・ムリを特定して削減する方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
C 社では、クレームを削減する改善活動を計画している。このクレーム改善活動を最も効果的に実施するために、着目するクレーム内容、それを解決するための具体的対応策を 120 字以内で述べよ。
回答例(120 字)
表2で最多の「カット形状不均一」を重点対象とする。図1の特性要因図で人・設備・材料・方法別に真因を検証し、刃物の交換・研磨基準、切断条件、標準作業を定める。教育、定期点検、受入基準、工程内検査を徹底し、効果確認後に標準へ反映して再発を防ぐ。
解説
この問題の着眼点
着目するクレームと、それを解決する具体策を120字で述べる問題 です。表2で改善対象を絞り、図1の原因候補から対策を考えます。「何を減らすか」と「どう減らすか」を対応させます。
表2で対象を選び、図1で原因へさかのぼる
与件文のどこを見るか
- 第12段落: 品質不良、 製造 3 グループ全員でブレーンストーミング、 作成した特性要因図 とあります。現場全員で原因候補を出し合った段階です。表2で改善対象を選び、その不良に関係する図1の枝をたどります。
- 第7段落: 他の製造グループへの移動はない とあります。各グループ内の経験だけに頼らず、良い加工方法をグループ間で共有することが重要です。
表2と図1で重点と原因候補を見つける
表2では、カット形状不均一が54件・50.5% と最多です。次の鮮度劣化は21件・19.6%で、形状不均一は全107件の約半分を占めています。件数を減らす改善活動では、ここを重点対象にすると効果を得やすいと考えられます。
図1では、形状のばらつきにつながる 刃物交換・研磨のルールの不備、人による作業方法の違いと標準作業の不備、製造チームによる加工スキルの差 に着目します。材料の形状・大きさのばらつきも、加工条件を考える手掛かりです。
二つの図表は、答えている問いが違う
表2は「どの不良が多いか」、図1は「何がその不良に関係しそうか」を示しています。まず対象を形状不均一に決めてから図1を読むと、温度や長時間放置など別の不良に直結する項目と区別して、切断のばらつきを生む要因に集中できます。
このように 件数で重点を決め、原因を系統別に探す のが、パレート分析と特性要因図を組み合わせる考え方です。食品安全に関わる異物混入等への対応は維持したうえで、今回の件数削減活動の重点を定めます。
特性要因図の候補を、現場の事実で確かめる
ブレーンストーミングで挙がった要因は、調べるべき候補です。刃物の状態、材料の種類・形状、切断条件、担当グループなどに分けて不良を記録し、どの条件で形状が乱れるかを確認します。
例えば、研磨直後と摩耗時で仕上がりが異なるなら刃物管理を、同じ刃物・材料でも人によって結果が異なるなら手順や教育を見直します。原因候補を列挙する段階から、対策を試して確かめる段階へ進む ことが必要です。
ばらつきを生む条件を、共通の基準へ変える
刃物と切断条件をそろえる
切れ味が落ちた刃物を使い続ければ、狙った形状に加工しづらくなります。刃物の交換・研磨基準と日常点検 を決め、担当者と記録を明確にします。故障した後の対応だけでなく、加工品質を保つ状態かを日々確認します。
そのうえで材料と顧客のカット仕様に応じた切断条件を定めます。規格外野菜は有効活用の対象であり、全て排除するのでなく、受入時の確認や選別で形状・大きさを把握し、適切な条件で加工することが大切です。
良い作業方法を、三つのグループへ広げる
品質が安定している方法を調べ、材料の扱い方、機械の設定、カットの確認点を標準作業にします。標準作業と教育を組み合わせ、グループ間の加工スキルの差を縮める ことで、担当者が変わっても同じ要求品質に近づけます。
手順書を配るだけで終えず、実際の加工を通じて理解と技能を確認します。製造リーダーが共通の基準で教え、良い方法を全グループで使える状態にすることが重要です。
工程で確認し、改善結果を標準へ戻す
切断後などの工程内で形状を確認すれば、異常を早く見つけ、同じ条件で不良を作り続けることを防げます。受入・加工・点検の記録を残し、改善前後の不良やクレームを比較して効果を確認します。
生産量が変わった場合は件数だけでなく不良率も見ます。効果のあった条件を標準へ反映し、教育と点検を継続することで、その場の修正を、再発を防ぐ仕組みへ変える ことができます。
重点対象から再発防止までを120字で答案化する
答案の骨格は、形状不均一へ重点化→原因検証→刃物・条件・標準作業の整備と教育→効果確認・再発防止 です。冒頭に対象を置き、設備には交換・研磨、作業には切断条件と教育、材料には受入基準を肉付けします。
120字では、図1の要因を全て写すのではなく、主要な原因に対応する行動を残す ことが大切です。最後の検査だけへ対策を集中させず、工程で不良を生みにくくする標準と、その効果を確かめる流れでまとめます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の食品クレーム対応の解説からは、苦情への応対だけで終えず、製造・流通へさかのぼって原因を解決する視点を持ち帰れます。工程管理の解説は、品質や設備の数値を記録して異常を見つける方法を補います。C社では、形状不均一の発生条件と改善結果を記録し、刃物管理・作業標準・教育へ戻します。
類題は、2025年度事例III第4問、2014年度事例III第2問、2023年度事例III第5問 です。共通点 は、要求品質を工程と人の管理で実現する点。相違点 は、2014年度が切削不良の改善、2025・2023年度が新事業に必要な品質・生産体制を扱い、本問は表2で既存クレームの重点を選んで図1の原因候補を検証する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「食品製造業向けの有効なクレーム対応方法はありますか?」(クレームから根本原因と履歴を遡り、是正・再発防止とトレーサビリティへつなげる方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」(工程条件と管理値を記録して異常を早期発見し、不良の未然防止と再発防止へつなげる方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 4 問(配点 30 点)
設問文
C 社社長は、経営体質の強化を目指し、今後カット野菜の新事業による収益拡大を狙っている。またその内容は、顧客からの新たな取引の要望、および C 社の生産管理レベルや経営資源などを勘案して計画しようとしている。この計画について、中小企業診断士としてどのような新事業を提案するか、その理由、その事業を成功に導くために必要な社内対応策とともに 160 字以内で述べよ。
回答例(152 字)
親会社の新鮮な野菜と現有のカット工程を使い、設備負担を抑えて顧客要望に応えられる地場スーパー向けサラダ・調理用野菜パックを提案する。顧客に数量と仕様を確認し、既存事業の収益改善後に着手して、受注・在庫・能力を統合した小ロット生産と、生食用の衛生・品質基準の教育を行い、他産地調達も組み合わせ通年供給する。
解説
この問題の着眼点
提案する新事業、選ぶ理由、成功に必要な社内対応策を160字で述べる問題 です。顧客からの要望と現有工程の適合を確かめ、その事業を安定して続けられる条件まで示します。
需要がある事業を、今の資源で実行できるか考える
与件文のどこを見るか
- 第8段落: ソースや乾燥野菜などの高付加価値製品、 設備投資を必要とする事業、 一般消費者向けのサラダ用や調理用のカット野菜パック、 現在の製造工程を利用できる事業 とあります。二つの候補は、必要となる工程と投資に違いがあります。地場スーパーの要望と現有能力を照らして選びます。
- 第9段落: まず現状の生産管理を見直し、 それが達成された後には新事業に着手 とあります。現事業の改善と新事業には順序があり、今の赤字を新規売上で埋める計画ではありません。
- 第6段落: 約 3 カ月の休業期間、 通年取引の要望 とあります。一年を通じて買いたいという顧客の要望と、現在の供給体制に隔たりがあります。
- 第12段落: 施設・設備面などの衛生管理、 作業方法などの衛生管理 とあります。衛生管理は設備と作業の両面で整える必要があります。
二つの候補を、投資と工程の面から比べる
第8段落の 「一つは」 と 「もう一つは」 が示す候補を、同じ軸で比べます。ソース・乾燥野菜は高付加価値化の可能性がある一方、新たな設備投資が必要です。野菜パックは既存の加工工程を使えるため、今の技術・人員を土台に立ち上げやすいと考えられます。
| 候補 | 活かせるもの | 追加で確かめること |
|---|---|---|
| ソース・乾燥野菜 | 原料調達、野菜の加工経験 | 新設備・新工程の能力、保存品質、投資採算 |
| 一般消費者向け野菜パック | 現有のカット工程、地場スーパーの要望 | 衛生・品質、包装、鮮度を保つ供給体制 |
C社は生産管理が十分に組織化されず、限界利益も赤字です。まずは 現有工程を使う一般消費者向けカット野菜パック を提案し、追加投資の負担を抑えて新しい市場へ進む方針が考えられます。
ソース・乾燥野菜案も、必要な投資と新工程、保存品質、採算を説明できれば検討対象になります。ここでは、現在の資源とのつながりが明確なパック案に絞り、実行条件を具体化します。
顧客の鮮度要求と、C社の供給基盤を結びつける
地場スーパーは新鮮さを売りにし、一般消費者向けのパックを求めています。X農業法人との関係と既存の加工工程を活かし、鮮度を保った野菜を、消費者が使いやすい形で届ける ことが提供価値になります。
通年取引へ応えられれば、休業期間の短縮と稼働機会の拡大も期待できます。ただし注文が増えるだけで休業がなくなるわけではありません。必要な時期に原料を調達し、品質を保って生産・配送できる体制を整えることが条件です。
事業を広げる前に、利益と安定供給の土台を作る
現事業の収益改善を先に行う
第9段落の順序に従い、第2問の全社一元管理と、第3問の品質改善を先に進めます。原料・工数・物流費を把握し、加工ロスや人員の偏りを減らして、受注した分から利益を残せるようにします。
その土台の上で、新事業に必要な仕様と能力を見積もります。既存工程を使えることと、追加の整備が不要なことは別 です。小分け包装や表示、温度管理など、業務用から消費者向けへ変わる部分を確かめます。
衛生・品質を、設備と日々の作業の両面で整える
図1には加工場の温度管理ができないこと、製品の長時間放置、衛生管理ルールの不備などが挙がっています。施設・設備の清掃や温度管理を整え、洗浄、加工、保管の手順と管理基準を決めます。
さらに 品質基準・標準作業・教育を全グループで統一する ことで、作業者による差を縮めます。商品に応じた包装・表示、工程内の確認、出荷時のチェックも組み合わせ、顧客に約束する品質を安定して届けます。
原料から店頭まで、通年でつながる計画にする
X農業法人との調達経路に加え、他産地との連携や調達時期を調整し、年間の必要量を確保する方法を検討します。通年の原料調達と、受注・生産・在庫・配送の一元管理 をつなぐことが重要です。
スーパーと数量・納品頻度・鮮度条件を摺り合わせ、原料と加工後の製品が長く滞留しない計画にします。大量の完成品在庫で通年供給を代替するのでなく、必要な分を作り、適切な温度と時間で届ける運用を整えます。
事業・理由・社内対応を160字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
地場スーパーの要望に対し、親会社の新鮮な野菜と既存カット工程を使うパック事業を選びます。設備投資を抑えられる点と、鮮度のある商品を提供できる点を理由として分けます。社内対応は、受注・在庫・能力に合わせた小ロットの加工・包装・出荷、生食向けの衛生品質基準と教育、他産地等も含む通年調達へ具体化します。既存事業の収益改善を達成した後に着手し、赤字体質のまま規模だけを広げない設計です。答案でも「まず既存事業の収益を改善し、その後」と開始順序を明示します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の事業化テストの解説は、顧客の反応に加え、採算、生産計画、原料調達などを確認して事業化へ進む参考になります。C社ではスーパーが求める鮮度・包装・数量を試作と商談で確かめ、品質と供給、原価の見通しを整えてから展開します。需要の存在だけを成功の保証にしません。
類題は、2024年度事例III第4問、2023年度事例III第3問、2010年度事例III第2問 です。共通点 は、費用と生産体制を把握して採算の取れる取引にする点。相違点 は、2024・2023年度が既存事業の費用・収益への対応、2010年度が移管の採算と現場対応を問うのに対し、本問は新事業の選択理由と成功条件まで求める点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための事業化テストの取り組み方」(採算、安全・耐久性、生産計画、原料調達、顧客反応を小さく試して事業化可否を判断する方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

