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令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅲ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
2020 年以降今日までの外部経営環境の変化の中で、C 社の販売面、生産面の課題を 80 字以内で述べよ。
回答例(80 字)
販売面の課題は、既存の業務用市場への依存から脱却し新たな市場を開拓すること。生産面の課題は、小ロット生産に対応できる体制へ移行し、過剰な製品在庫を削減すること。
解説
この問題の着眼点
2020年以降の環境変化を踏まえ、 販売面と生産面の課題を80字で述べる問題 です。需要の減少と発注の小口化を分け、それぞれにC社がどう対応する必要があるかを考えます。
市場と発注の変化から、従来のやり方とのずれを読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落: ホテル、旅館、外食産業などの調理場で使用される製品、 業務用食器・什器の卸売企業 2 社を販売先としている とあります。販売先の社数だけでなく、需要の源が業務用市場に偏っている点を捉えます。
- 第3段落: 外国人の新規入国規制、 外食産業の営業自粛 とあります。従来の需要を支えていた観光・外食の活動が制約され、C社の受注にも影響しています。
- 第11段落: 発注ロットサイズが減少、 基準日程によって設定しているロットサイズで加工を続け、 確定受注量以外は C 社内で在庫している とあります。顧客は少量ずつ買うようになりましたが、C社は作る単位を変えていません。
販売面は、既存市場の需要回復を待つだけでは足りない
観光や外食の活動が縮むと、調理場で使う食器・什器の需要も減り、卸売企業を経由してC社の受注が減少します。ここで「売上が減った」とだけ書くと、起きた現象の説明で止まります。C社が取り組む課題は、 業務用市場への依存を減らし、新しい市場を開拓すること です。
第5問まで読むと、アウトドア用品という新しい需要との接点が見えてきます。この具体的な商談は、販売面の課題が単なる営業量の不足ではなく、 需要が偏った事業構成の見直し であることを裏付けます。第1問では、新市場での詳細な戦略まで書く必要はありません。
生産面は、顧客の小口化に作る単位を合わせる
第11段落の 「しかし」 は、従来の全量引取りから発注小口化への変化を示します。続く 「ただ」 では、C社が従来の加工ロットを維持していることが示されています。顧客が減らした在庫負担を、C社が抱える構造になっています。
例えば、以前なら一度に作った量を全て引き取ってもらえましたが、現在は注文分を超えた製品が社内に残ります。そのため、 小ロット生産へ移行し、過剰な製品在庫を削減すること が課題です。段取り短縮や計画の変更は、この課題を実現する具体策として第3問で扱います。
販売面と生産面の課題を80字で答案化する
答案の骨格は、 販売面=既存市場への依存から新市場開拓へ/生産面=小ロット対応で過剰在庫を削減 です。二つの問いなので、40字ずつを目安に答える場所を確保します。
「販売面は〜。生産面は〜。」と分け、需要減少や在庫増加という現象を、何を変えるべきかという課題 へ置き換えます。金型技術などの強みを列挙するより、環境変化に対応する方向を残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の多品種少量生産の解説からは、受注頻度やロットの大きさに応じて、段取りと在庫の負担を合わせて考える視点を持ち帰れます。本問では、顧客の発注単位が変わったのにC社の生産単位が変わっていない点へ当てはめます。
類題は、2025年度事例III第2問、2024年度事例III第2問、2018年度事例III第2問です。共通点は現状の問題から生産面の課題を捉えること。相違点は、各類題がコストダウンや工程改善などの具体策へ進むのに対し、本問では販売面も含めて課題を診断することです。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「多品種少量生産における効率的な生産方法を教えてください。」(受注頻度とロットサイズを分析し、段取り効率と在庫保有を組み合わせて生産方式を決める方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 2 問(配点 20 点)
設問文
C 社のプレス加工製品の新規受注では、新規引合いから量産製品初回納品まで長期化することがある。しかし、プレス加工製品では短納期生産が一般化している。C 社が新規受注の短納期化を図るための課題とその対応策を 120 字以内で述べよ。
回答例(119 字)
初回納品の短納期化へ、営業に設計担当が同行して仕様を早期確定し、プレスと板金の設計を分担して手戻りと負荷集中を防ぐ。金型の組立仕上技能を標準化して若手へ承継し、資材調達・金型製作・プレス・組付仕上まで日程と進捗を一元管理して着手を早める。
解説
この問題の着眼点
新規引合いから量産品の初回納入までを短縮する課題と対応策 を120字で述べます。量産時の加工速度だけでなく、その前に必要な金型製作、特に設計が長引く原因を見ます。
初回納入の前に、どこで時間を使っているかを読む
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 金型を製作する金型製作工程、 同じ製品の繰返受注生産を行う製品量産工程 とあります。新しい製品では金型が完成してから量産へ進みます。二つの工程を分けて見ます。
- 第6段落: 短いもので約 2 週間、長いもので約 1 か月 とあります。金型製作にはまとまった期間が必要です。設計の遅れは、後続の加工・組立・試作へ波及します。
- 第7段落: 発注元との仕様確認が遅くなること、 発注元からの設計変更、仕様変更の要請、 個別受注の板金加工製品の製品設計も担当するため、設計業務の混乱が生じ とあります。顧客との調整と、社内の役割分担という二つの原因が示されています。
図で、初回納品までに必要な工程をたどる
図の上段では、仕様確認から金型設計、金型部品加工・組立・仕上、試作確認・品質評価、顧客の品質・仕様確認へ進みます。その後、下段の量産受注から製品の加工・検査を経て納品する流れです。新規受注の納期は、プレス加工の時間だけでは決まりません。
本文の仕様確認の遅れや設計変更をこの順序へ重ねると、上流での遅れや手戻りが金型製作と量産開始へ波及することが分かります。営業と設計が早期に顧客と摺り合わせる意味は、この連鎖を短くする点にあります。図そのものに各工程の所要日数はないため、長期化の原因や期間は本文で確認します。
仕様を早く摺り合わせ、後工程の手戻りを減らす
設計を始めてから仕様の認識違いが分かると、図面を直すだけでなく、既に進めた金型部品の加工にも影響しかねません。設計担当者が営業とともに顧客へ出向き、形状・サイズ・用途や製造上の条件を直接確認すれば、伝言による行き違いを減らせます。
これは、 上流で仕様を摺り合わせ、後工程の手戻りを防ぐ フロントローディングの考え方です。最初の確認に時間をかけることが、全体の納期短縮につながります。単に「急いで設計する」のではなく、設計をやり直す原因を減らします。
顧客との調整に加え、設計課内の混乱も解く
第7段落の 「また」 は、仕様変更とは別に、板金製品の設計兼務という社内要因を加えています。顧客との打合せだけを改善しても、担当者が二種類の設計を抱えて仕事が滞れば、納期は短くなりません。
そこで、 プレスと板金の設計担当を分け、専門化する 対応を考えます。担当領域と責任を明確にし、仕事の割込みや切替による混乱を減らします。専用部門を大きく新設するという話より、現在の設計業務をどう分担するかに焦点を当てます。
現象から、二つの対応先へ整理する
| 長期化の原因 | 対応先 | 納期が短くなる理由 |
|---|---|---|
| 仕様確認の遅れ・変更 | 営業と設計が顧客と早期に摺り合わせる | 認識違いによるやり直しを減らす |
| 板金設計との兼務による混乱 | 設計担当を分離・専門化する | 業務を整理し、設計を円滑に進める |
このように、顧客との情報のやり取りと、社内の仕事の分け方 を一つずつ直すと、対策が原因に対応した答案になります。
初回納品までの対応策を120字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「仕様の早期確定+設計の分担+金型製作技能の安定化+初回量産・納品までの連動管理」です。設計だけを早めても、組立仕上が熟練者に集中したり、資材・プレス・組付仕上の着手が遅れたりすれば納品は早まりません。技能の標準化・承継と、全工程の日程・進捗をつなぐ運用まで120字に残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の組織・体制づくりの解説は、顧客の意見を取り込む仕組みを考える参考になります。本問では、その一般的な視点を営業・設計・顧客の直接的な摺合せへ具体化します。金型設計の遅れという診断自体は、公的資料ではなく第7段落が根拠です。
類題は、2023年度事例III第4問、2013年度事例III第2問、2011年度事例III第3問です。共通点は顧客要求と社内の設計・開発体制をつなぐ点。相違点は、2023年度は企画開発の進め方、2013年度は技術部の情報共有と効率化、2011年度は特注品事業の課題を扱い、本問は金型設計の長期化を解く点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
C 社の販売先である業務用食器・什器卸売企業からの発注ロットサイズが減少している。また、検討しているホームセンター X 社の新規取引でも、1 回の発注ロットサイズはさらに小ロットになる。このような顧客企業の発注方法の変化に対応すべき C 社の生産面の対応策を 120 字以内で述べよ。
回答例(119 字)
対応策は、①金型・材料の外段取り化と複数人化で段取り時間を短縮する。②確定受注量に合わせ加工ロットを小さくし過剰在庫を抑える。③プレスから仕上まで同期させ、受注に連動する週次計画で短納期生産を行う。資材発注も計画と連携し調達を迅速化する。
解説
この問題の着眼点
既存顧客とX社の小ロット発注に応える生産上の対応策 を120字で助言します。少なく作るという結論だけでなく、段取り・全工程の計画・資材調達を一緒に変える必要があります。
小さく作るために、作業と計画を組み合わせる
与件文のどこを見るか
- 第10段落: 生産能力に制約があり、 金型交換作業と材料準備作業など長時間の段取作業を一人で行っている とあります。能力を制約するプレス工程で、製品を切り替えるたびに長く設備が止まっています。
- 第11段落: 「プレス加工」の計画だけが立案され、 発注ロットサイズが減少、 確定受注量以外は C 社内で在庫している とあります。後工程まで含む計画がなく、顧客の注文より大きい単位で作り続けています。
- 第9段落: 「月度生産計画」を作成して「資材発注」 とあります。現状は月単位の生産計画と調達が結びついています。生産だけ細かくしても、材料が間に合わなければ作れません。
- 第17段落: 毎週月曜日、 納期は発注日から 7 日後、 かなり小ロットになる とあります。X社は週ごとの発注と7日納期を求めます。計画の周期を考える具体的な手掛かりです。
図で、プレス加工後にも残る仕事を確認する
図の製品量産工程では、プレス加工の後に製品部品組付、製品仕上、製品検査があり、その後に納品します。プレスだけを小ロット化しても、後工程の数量・着手時期が合わなければ仕掛や待ちが残り、納期へ対応できません。
本文の「プレス加工」の計画だけという現状と合わせ、受注数量と納期を、材料手配から組付・仕上・検査までつなぐ計画へ変えます。図は後工程の存在を確認する根拠であり、各工程の能力不足を一律に示すものではありません。能力の制約と段取りの問題は本文から判断します。
段取りを短くし、小ロット化で増える切替に備える
同じ総量を小分けに作れば、一般に製品の切替回数は増えます。C社のように一人で長時間の段取りをしていると、小ロット化によって加工時間が圧迫され、納期へ対応しづらくなります。
そこで、材料や工具の準備など、 設備を止めなくてもできる作業を事前に行う 外段取り化を進めます。停止が必要な金型交換も、手順の標準化や安全を確保した複数人の協業で短縮します。人を増やすだけではなく、何を事前準備し、何を分担するかまで考えると、停止時間を減らす対策になります。
プレスだけでなく、完成までを週次でつなぐ
プレス工程だけ早く終わっても、部品組付や仕上げで待てば納品はできません。 プレスから製品仕上までの全工程を対象に、受注量に応じた週次計画を立てる ことで、必要な製品を必要な納期に完成させます。
第11段落の 「しかし」 と 「ただ」 が示すのは、顧客の小口化とC社の固定ロットのずれです。従来の1日分を作る基準から受注量に合わせる基準へ変え、工程間で数量と時期をそろえます。ここでいう同期化は、全工程を同時に始めることではなく、前後工程がつながる計画を持つことです。
材料の手配まで、小さい周期に合わせる
週次で作る製品が決まっても、資材発注が月単位のままでは不足や余剰が生じやすくなります。 週次計画と資材発注を連動し、仕入先と短納期調達を調整する ことで、製品だけでなく材料の滞留も抑えます。
X社の月販売予測は能力や材料を準備する手掛かり、毎週の確定発注は実際の生産数量・納期を決める情報として分けて使います。見込みを全て完成品にしておくのではなく、小さく作れる現場と、情報に応じて動く計画 を組み合わせます。
作業・計画・調達の三つを120字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「段取短縮→確定受注量に合わせた加工ロット縮小→全工程の短周期計画・同期化→資材手配の連動」です。週次に計画を変えるだけで従来の1日分ロットを維持すると、作り過ぎは残ります。何日ごとに計画するかと、何個作るかを分けて示し、小ロットでも必要な時期に流せる仕組みを説明します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の段取り改善の解説からは、停止中に必要な作業と稼働中に準備できる作業を分ける考え方を持ち帰れます。C社では金型交換と材料準備を分解し、外段取り化や手順の改善へつなげます。全工程の計画・調達まで含めるのは本問の与件に応じた展開です。
類題は、2025年度事例III第3問、2024年度事例III第3問、2018年度事例III第3問です。共通点は納期に応える工程管理を考えること。相違点は、2025年度は製品在庫を持たない条件、2024年度は工程管理の混乱、2018年度は生産計画と製品在庫の問題が中心で、本問は小ロット化に向けて段取りと週次計画・調達を結ぶ点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「ムダのない段取り改善の方法について教えてください。」(内段取りの外段取り化、手順標準化、継続改善によって切替時間を短縮する方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 4 問(配点 20 点)
設問文
C 社社長は、ホームセンター X 社との新規取引を契機として、生産業務の情報の交換と共有についてデジタル化を進め、生産業務のスピードアップを図りたいと考えている。C 社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動はどのように進めるべきか、120 字以内で述べよ。
回答例(109 字)
社長主導の部門横断チームを組成し、受注・仕様図面・生産計画・進捗・在庫を電子化して一元共有する。入力項目と更新責任を標準化し教育を行い、受注と在庫から資材所要量を計算し、生産計画を更新して変更を速やかに現場へ伝達する。
解説
この問題の着眼点
優先するデジタル化の内容と、そのために行う社内活動 を120字で助言します。何を情報化するかと、誰がどう使える状態にするかを一組で考えます。
個別のパソコン利用を、部門をまたぐ情報共有へ変える
与件文のどこを見るか
- 第12段落: 各業務でパソコンを活用している、 情報の交換と共有はいまだに紙ベースで行われている とあります。機器がないことより、部門をまたぐ情報のつながりに問題があります。
- 第7段落: 2 次元 CAD、 発注元からの設計変更、仕様変更の要請 とあります。設計情報を分かりやすく共有し、変更を関係者へ確実に伝える必要があります。
- 第11段落: 「プレス加工」の計画だけが立案され、 確定受注量以外は C 社内で在庫している とあります。工程の進捗と在庫を共有し、全体で判断できる情報へ変える対象です。
- 第8段落: プレス加工技術にも習熟するベテラン技能者、 高齢化している、 若手の養成を検討している とあります。データを整える活動とともに、技術や新しい仕事の進め方を担う人を育てる必要があります。
図の受け渡しから、情報を共有する相手を決める
図では、営業課の仕様確認を設計課の金型設計へ渡し、金型製作や試作・品質確認を経て顧客と確認しています。量産側では受注、生産計画、資材発注、加工・仕上・検査へ仕事が渡ります。この流れを使うと、単に「情報共有する」から、誰が何を共有するかへ具体化できます。
例えば、顧客仕様と変更内容は営業・設計・製作側で最新の版を共有し、受注数量・納期・進捗・在庫は生産管理・資材・各製造工程で共有します。本文の紙による受け渡しを改める際も、図に沿って情報の作成者・受け手・更新時点を決めれば、確認待ちや古い情報による手戻りを減らす運用につながります。図だけから各部門の情報がすべて欠けているとは断定しません。
設計情報と生産情報を、同じ判断に使えるようにする
設計では3D CADを活用して形状の理解をそろえ、顧客との摺合せを支援します。図面の版や変更内容を明確にし、製作側にも最新情報が届くようにすれば、古い仕様で進める手戻りを減らせます。 図面を立体化することと、変更情報を共有する運用 を組み合わせるのが要点です。
生産では、設計・受注・計画・進捗・在庫を一元管理します。例えば、注文を受けた時に完成品在庫と仕掛品、工程の進捗が分かれば、作る数量と納品時期を全体で判断できます。 紙の受渡しを、関係者が同じ情報を見て動ける仕組みへ変える ことが目的です。
先に情報の意味と、更新する役割をそろえる
紙の情報をそのまま別々の表へ移すだけでは、品名や数量の単位が異なったり、どれが最新か分からなかったりする状態が残ります。製品・部品のコード、工程や進捗の区分、入力する担当者と時点などをそろえる必要があります。
社長主導で設計・生産管理・現場などを含む推進チームをつくり、業務を整理してから段階的に導入します。 経営者が目的を示し、部門横断で業務を変える ことで、各部署だけに便利なシステムではなく、初回納入や小ロット対応に役立つ仕組みへ近づけます。
操作を教えるだけでなく、人と技能を育てる
新しい情報を正しく記録し、計画や改善に使うには、担当者の育成も必要です。入力や確認の方法を教育し、実務で使いながら定着させます。ベテランの判断や作業の要点を記録し、若手へのOJTと組み合わせれば、技能を次の担当者へ引き継ぐ助けにもなります。
動画や手順書があっても、それだけで難しい金型仕上ができるようになるわけではありません。 デジタル人材の育成と、現場での技能伝承 を進め、仕組みを使い続けられる状態を支えます。
デジタル化の内容と社内活動を120字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「共有する情報→部門横断の業務見直しと入力・更新の標準化→教育→計画・手配・変更伝達への利用」です。デジタル化する対象を列挙して終えず、誰が更新し、共有した受注・在庫・進捗をどの業務判断に使うかを残します。システム名より、確認待ちや手戻りを減らす運用を説明します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21「DXを進める」は、経営者・担当者の役割、段階的な実践、人材育成の重要性を説明しています。C社へは、紙で分断された情報の共有と、部門横断の推進体制・教育へ当てはめます。IT導入を終点にせず、納期や在庫の判断に使えるかを確かめます。
類題は、2020年度事例III第3問、2018年度事例III第4問、2015年度事例III第3問です。共通点は情報を生産管理へ使う点。相違点は、本問が優先するデジタル化の内容に加え、推進体制と人材育成という社内活動も求めている点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「DXを進める」(ITを目的化せず、データとデジタル技術で業務・組織・プロセスを小さく継続的に変革する考え方)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 5 問(配点 20 点)
設問文
C 社社長が積極的に取り組みたいと考えているホームセンター X 社との新規取引に応えることは、C 社の今後の戦略にどのような可能性を持つのか、中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。
回答例(100 字)
業務用市場依存から脱却し、売上好調なアウトドア市場へ進出して受注基盤を広げる。金型・プレス技術と高評価の品質を生かし国内で安定供給する。中価格帯PB取引を基盤に高価格製品を共同開発し、収益性を高める。
解説
この問題の着眼点
X社との取引が、C社の今後の戦略に開く可能性 を100字で述べます。目先の受注増だけでなく、新しい市場への接点と、そこで得る対応力を次の事業展開へつなぎます。
技術を活かす市場と、取引を通じて育つ力を読む
与件文のどこを見るか
- 第2段落: 難易度の高い金型製作技術、 コスト低減や生産性向上に結びつく提案などが可能 とあります。製造できるだけでなく、作り方を改善する提案力があります。
- 第13段落: 中堅ホームセンター X 社から品質を高く評価された とあります。新しい相手に選ばれる根拠が既にあります。
- 第14段落: アウトドア商品売上の貢献、 PB 商品の納品に支障が生じ、 海外生産委託商品の仕入れ価格の高騰 とあります。需要がある市場で、X社は供給面の課題を抱えています。
- 第16段落: アルミニウム製プレス加工製品、 今後高価格な製品に拡大することも期待 とあります。既存技術を使える取引を入り口に、より付加価値の高い製品へ展開する意向があります。
- 第17段落: 納期は発注日から 7 日後、 かなり小ロットになる とあります。新市場へ進むには、その市場の注文の仕方に応える力が必要です。
業務用市場への偏りを、既存技術で広げる
観光・外食の影響を受ける業務用市場に対し、X社ではアウトドア商品が売上に貢献しています。C社が持つプレス加工・金型技術と、X社が評価した品質を活かせば、 業務用市場への依存を減らし、成長する消費者向け市場へ進む 可能性があります。
入り口はX社のPB商品の受託生産です。C社が直ちに消費者へ直接販売するという話ではなく、X社の販路を通じて新しい最終需要へ届くと捉えます。既存の加工技術を別の市場に活かす、市場開拓の方向です。
小ロット・短納期への対応が、次の提案を支える
第14段落の 「しかし」 は、売れ行きが良くても海外からの供給が滞る状況を示します。続く 「また」 は価格面の懸念です。品質に加えて必要な時期に安定供給できれば、C社はX社にとって頼れる取引先になれます。
第2〜4問で扱った設計短縮、段取り・計画の改善、情報共有は、この要求へ応えるための取り組みです。取引を通じて 小ロット・短納期に応える生産体制と生産性を高める ことが、継続的な受注や提案の土台になります。取引開始だけで自動的に能力が上がるのではなく、対応するための改革を通じて力が育つという因果です。
受託生産を入り口に、高付加価値化へ広げる
第16段落の 「ただ」 は、中価格帯の受託という当面の要請に、社長の高価格帯への期待を加えています。金型製作と改善提案の力に、新市場の用途・要求の理解が重なれば、 PB商品の企画提案や、自社ブランド開発 へ進む可能性が生まれます。
これは高い値段を付けるだけの話ではありません。顧客が評価する使い勝手や品質を製品へ反映し、その価値を作って届けられる体制を持つことです。販路の拡大と生産能力の質的な向上を、次の成長へつなぐ と、事例Ⅲらしい戦略の説明になります。
新市場と将来の展開を100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「業務用からアウトドアへ販路を分散→金型・プレス技術と品質で国内安定供給→中価格帯PBを足掛かりに高価格製品へ展開」です。X社の供給不安へ応えて信頼を得ることが、共同開発や技術提案を進める基盤になります。BtoC市場への進出はX社を通じて消費者需要へ届く意味であり、自社直販を開始したとは書きません。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21のアンゾフの成長マトリックスは、製品と市場を既存・新規に分け、成長の方向を整理する枠組みです。C社では既存技術を活かす新市場開拓を出発点とし、その後の製品企画へつなげます。枠組みの名称を答えるより、何を活かしてどこへ進むのかを明確にします。
類題は、2025年度事例III第4問、2024年度事例III第5問、2023年度事例III第5問です。共通点は新事業とそれを支える生産体制を結びつける点。相違点は、類題が新事業を実現する取り組みや体制の妥当性へ進むのに対し、本問は取引から開く戦略的な可能性を説明する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「アンゾフの成長マトリックス」(既存/新規の製品と市場を分け、市場浸透・市場開発・製品開発・多角化から成長方向を選ぶ枠組み)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

