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令和 3 年度(2021 年度)事例 Ⅲ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
革製バッグ業界における C 社の ⒜ 強みと ⒝ 弱みを、それぞれ 40 字以内で述べよ。
回答例(38,37 字)
【⒜強み】熟練職人の縫製・仕上げによる高級品の一貫製造力、自社サイト販路と修理対応力。 【⒝弱み】新製品の企画経験と技能承継の不足、受注と生産量のずれによる欠品・過剰在庫。
解説
この問題の着眼点
C社の強み・弱みを、それぞれ40字で整理する与件抜粋型の問題 です。高級バッグを企画・製造・販売する力と、それを今後伸ばす上での弱さを拾います。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら、蛍光ペンやボールペンの色、S・Wの印で強みと弱みをマーキングします。すぐに40字へ絞らず、第2問以降へ進みます。
受託生産の効率化、自社ブランドの開発、直営店での高級路線を考えた後に戻ると、活かす技能と販路、補う技能承継や事業構成の弱さを選びやすくなります。
高級品を届ける力と、その継続を妨げる弱さを読む
与件文のどこを見るか
- 第2段落: 完成品までの一貫受託生産ができる、 受注量は多いものの低価格品が主 とあります。一貫して製造できる技術を持つ一方、受託品は数量が多くても低価格品が中心です。
- 第3段落: 製品デザイン部門を新設、 手作り感のある高級仕様が注目された とあります。加工だけでなく自ら企画する機能があり、製品の特徴も顧客に評価されています。
- 第4段落: インターネットによるオンライン販売も開始、 収益に貢献している とあります。自社で販売する接点を持ち、ブランド製品が収益を支えています。
- 第5段落: 熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品 とあります。評価された高級感を生み出す土台は、職人の技能です。
- 第14段落: 熟練職人の高齢化が進み、 製造全体の技術習熟が進んでいない とあります。現在の強みを次の担い手へ引き継ぐ仕組みに弱さがあります。
強みは「作る力」と「自ら売る力」を組み合わせる
強みは、熟練職人の縫製・仕上げ技術、完成品まで対応する一貫製造、自社サイトによる販売と修理対応です。製品デザイン部門を持つことと、新製品を企画開発した経験が十分にあることは分けて考えます。後者には不足があり、第3問の開発体制を整える必要につながります。
弱みは「技能の継続」と「低価格受託への依存」を分ける
高齢化だけでなく、若手がバッグ全体を製品化できるほど習熟していない点を結び、 技能承継の遅れ とまとめます。職人の年齢そのものより、退職後にも高級品を供給できるかが経営上の問題です。
もう一つは、 低価格の受託生産への依存 です。自社ブランドは収益に貢献していますが、売上の約20%であり、製造はなおメーカーからの受託が中心です。第2問の効率化と第3・4問の自社ブランド強化は、この事業構成を変えていく上で意味を持ちます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
後続設問で活かす能力・補う弱さを1軍とし、個別の実績や症状を2軍として束ねます。
| 第1問で拾った候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 熟練技能・高級仕様・完成品までの加工 | 第3問の商品化、第4問の高級路線を支える | 高級品の一貫製造能力 |
| 小売店・オンライン販売 | 第3問の顧客情報収集、第4問の直営店展開の基盤 | 独自販路 |
| 職人の高齢化・全体技能の習熟不足 | 第3・4問で若手育成を進める理由 | 技能承継の遅れ |
| 低価格受託が主・自社ブランドは売上の約20% | 第2問の効率化と第3・4問の付加価値向上が必要 | 低価格受託への依存 |
弱みは、企画機能があっても新製品の企画経験が不足すること、技能承継の不足、受注と生産量のずれによる欠品・過剰在庫を優先してまとめます。低価格受託への依存も有効な別候補ですが、模範解答に必ず追加する必要はありません。
強みと弱みを各40字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「強み=高級品の一貫製造+自社販路・修理/弱み=企画経験・技能承継の不足+欠品・過剰在庫」です。強みは具体的に何ができるか、弱みはどの機能や管理に不足があるかを短く示します。「オンライン」「管理が弱い」といった総称だけでなく、対象と症状を残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の技能伝承の解説は、個人に帰属する技能を次の担い手へ移す方法を考える資料です。本問では施策の列挙に進まず、C社の熟練技能という強みと、その継承が遅れている弱みを区別する手掛かりにします。
類題は、2025年度事例III第1問、2024年度事例III第1問、2023年度事例III第1問です。共通点は資源・実績を能力としてまとめる点。相違点は、2023・2024年度が強みだけを問うのに対し、本問は弱みも各40字で整理し、企画・販売と技能の継続まで見渡す点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「マニュアルで表せない技術の伝承方法を教えてください。」(技能を収集・保存・分析・標準化・展開・改善し、若手へ形式知として伝える方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 2 問(配点 30 点)
設問文
バッグメーカーからの受託生産品の製造工程について、効率化を進める上で必要な ⒜ 課題 2 つを 20 字以内で挙げ、それぞれの ⒝ 対応策を 80 字以内で助言せよ。
回答例(20,79,19,78 字)
【課題1】月次計画と受注量超過ロットによる在庫増。 【対応策1】生産管理担当者の負荷を分担し、月次計画を週次化する。システムで受注・在庫・進捗を共有し、需要変動や特急品に合わせてロットと優先順位を調整し、過剰在庫を減らす。 【課題2】裁断工程責任者任せの属人的管理と欠品。 【対応策2】資材管理を裁断工程リーダーから専任者へ移す。在庫管理システムで入出庫・在庫・発注点・調達期間を共有し、生産計画と連動して適量を発注し、欠品と過剰在庫を防ぐ。
解説
この問題の着眼点
バッグメーカー向け受託生産の課題と対応策を、二組で助言する問題 です。各組の課題は20字、対応策は80字。作る数量・時期の管理と、材料を間に合わせる管理に分けて考えます。
受注から生産・調達へ、情報がつながらない箇所を読む
与件文のどこを見るか
- 第7段落: 製造および修理の生産計画の立案、 生産計画は月 1 回作成、 計画立案後の受注内容の変動や特急品の割込み とあります。受付・計画・指示が一人に集中し、月次計画は月内にも変更されています。
- 第8段落: 1 回の受注量は年々小ロット化、 受注量よりも多いロットサイズで生産を計画、 納品量以外は在庫保有 とあります。顧客の発注単位は小さくなっていますが、C社は繰返受注を見越して多めに作っています。
- 第10段落: 資材発注と在庫管理も裁断工程のリーダーが担当、 発注から納品までの期間が 1 カ月を超える資材、 資材欠品が生じた場合、生産計画の変更が必要 とあります。材料管理は工程責任者との兼務です。調達に時間がかかる資材が欠けると、計画まで変わります。
一つ目は、受注の変化に合わせて作る量と順番を変える
受注量を超えて作った分は、次の注文が来るまで完成品在庫として残ります。その間にも新しい注文や特急品が入り、月初に想定した仕事の順番は変わります。問題は在庫という結果だけでなく、 月次計画と過大な生産ロットが、実際の受注に合っていないこと です。
そこで、月次の見通しを持ちながら、実行する計画を週次などの短い周期で見直します。受注量、納期、利用できる在庫、工程の進捗を同じ情報として共有し、 必要な数量と優先順位を調整する ことで、先回りの作り過ぎを減らします。特急品もその場で差し込むだけでなく、既存注文への影響を確認して変更を伝えます。
受付や出荷指示まで担当者が抱えたままでは、頻繁な見直しが負担を増やします。受付・入力などを分担し、生産管理担当者が計画と調整へ時間を使えるようにします。システムは、関係者が同じ受注・在庫・進捗を見て判断するための手段です。
二つ目は、資材管理の担当と情報を整える
第10段落の 「行うが」 は、生産計画に基づく発注が既にある一方、それだけでは長い調達期間に対応できていないことを示します。計画と発注を初めて結びつけるのではなく、 使用日に間に合うよう調達期間を織り込む 必要があります。
裁断工程リーダーに兼務させず、資材管理の専任担当を置きます。入出庫の記録、現在庫、発注残、調達期間を共有し、必要量から使える在庫を差し引いて発注します。発注点も決めれば、担当者の経験だけで補充時期を判断する状態を改められます。
1カ月超かかる材料を、製造する週になってから注文しても間に合いません。 長期の見通しで先行手配し、短期の確定受注に合わせて調整する と捉えます。完成品の過剰在庫は抑えつつ、材料は調達期間と変動に応じて必要量を確保するため、両者に同じ「在庫ゼロ」を当てはめません。
二組の課題を、対応策の役割で分ける
| 管理する対象 | 課題の中心 | 対応策と効果 |
|---|---|---|
| 何をいつどれだけ作るか | 月次計画・受注超過ロット | 業務分担、短周期化、受注・在庫・進捗共有で作り過ぎを減らす |
| 材料をいつどれだけ用意するか | 工程責任者との兼務・欠品 | 専任化、記録・発注点・調達期間と計画の連動で欠品を防ぐ |
第9段落の欠品・過剰在庫は自社ブランドの見込生産についての記述です。本問の受託品は第8段落を直接の根拠とし、製品を取り違えずに数量の問題を説明します。
課題20字・対応策80字の二組で答案化する
答案の骨格は、 計画・ロットの不適合→短周期化と情報共有/資材管理の兼務・欠品→専任化と計画連動 です。各課題欄では原因と問題を短く置き、対応策欄へ担当、使う情報、調整する内容を肉付けします。
「在庫削減」「効率化」だけを課題にするより、どの管理を直すかが分かる言葉を使います。対応策は 担当・仕組みを変える→数量と時期を合わせる→在庫・欠品を抑える 順でまとめれば、二組の対応関係が明確になります。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の多品種少量生産の解説は、受注頻度と数量を見て、作る単位と在庫負担を考える参考になります。C社では顧客の小ロット化と受注超過の生産ロットを比較し、計画・調達の管理へ具体化します。資料中のプレス加工向け対策をそのままバッグの縫製へ移すのではなく、与件の管理上の原因から選びます。
類題は、2025年度事例III第2問、2024年度事例III第2問、2018年度事例III第2問です。共通点は、現状の原因に対応する改善で生産を効率化する点。相違点は、類題が品質・工程能力・作業方法を中心にするのに対し、本問は受託品の計画・ロットと資材管理という二つの管理課題を対応策へ結ぶ点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「多品種少量生産における効率的な生産方法を教えてください。」(受注頻度とロットサイズを分析し、段取り効率と在庫保有を組み合わせて生産方式を決める方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
C 社社長は、自社ブランド製品の開発強化を検討している。この計画を実現するための製品企画面と生産面の課題を 120 字以内で述べよ。
回答例(114 字)
製品企画面では、企画開発経験不足を補うため、顧客ニーズを捉える仕組みと体系的な開発プロセスの構築が課題である。生産面では、熟練職人の技能を形式知化し若手へ技術承継を進め、アイテム増に対応できる生産体制を構築することが課題となる。
解説
この問題の着眼点
自社ブランド製品の開発を強化するための、製品企画面と生産面の課題 を120字で述べます。二つの観点に約60字ずつを確保し、売れる製品を考える仕組みと、それを作れる体制を組み合わせます。
企画の経験不足と、製品全体を作る技能の不足を読む
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 「永く愛着を持って使えるバッグ」、 オンライン販売情報などを活用して企画 とあります。コンセプトと情報活用は既にあります。その土台を継続的な開発へ発展させます。
- 第6段落: 大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設、 新製品の企画・開発経験が少ない とあります。販路を広げる方針に対し、新製品を継続して企画する経験が十分ではありません。
- 第11段落: 部分縫製から立体的形状を要求される全体縫製のすべてを一人で製品ごとに熟練職人が担当、 製品完成まで担当している とあります。自社ブランドでは、一人の職人が縫製から仕上げまで担います。部分作業の習熟だけでは代わりを務められません。
- 第14段落: 若手職人の養成を行っている、 細分化した作業分担制、 製造全体の技術習熟が進んでいない とあります。育成そのものがないのではなく、育成方法と必要な到達点が合っていません。
企画面は、集めた顧客情報を開発の判断へつなぐ
既存のオンライン販売情報から、どの製品が選ばれているかを読み取れます。さらに、例えば購入者や小売店から使い勝手・修理時の困り事を聞けば、「なぜ選ぶか」「何を改善したいか」まで把握できます。直営店を開設した際にも、接客で得た情報を製品デザイン部門へ戻す仕組みが考えられます。
ただ情報を増やすだけでなく、 顧客ニーズ→コンセプト・仕様→試作→評価・改良 という開発プロセスを設けます。デザイン部門と製造部門が、顧客の求める形と現在の技能で作れる形を摺り合わせれば、思いつきの企画で終わらず製品化につながります。
経験不足は、新しいデザイナーを採用することだけで解く問題ではありません。開発の各段階で何を確かめ、誰が判断するかを決め、結果を次の企画へ残すことで、 組織として開発経験を蓄積する ことが課題になります。
生産面は、部分作業の習熟から一つの製品を作る技能へ進む
第14段落の 「習熟を図ろうとしているが」 は、現在の育成が必要な技能へ到達していないことを示します。部分作業を速く正確にできても、立体的な形状を作り、完成まで仕上げる判断が身に付くとは限りません。
そこで、熟練者の作業を工程ごとに分解し、手順や品質を判断する勘所を記録します。例えば映像と実物を使い、手の動きだけでなく「どの状態なら次へ進めるか」も伝えます。若手には標準的な作業から全体縫製・仕上げへ段階的に担当を広げ、実技で習熟を確かめます。
目的は教材を作ることではなく、 熟練技能を若手が再現し、新製品やアイテム増に対応できる生産体制 を整えることです。職人が退職してから対応するのではなく、現在の技能が残るうちに伝える必要があります。
企画と生産を一つの開発としてつなぐ
新しい形を考えても作れる職人が限られれば、品揃えの拡大や安定供給は難しくなります。反対に、作る人を育てても、顧客が求める製品を企画できなければ販売へ結びつきません。 顧客の要求を製品へ変える力と、その製品を再現して作る力 を並行して高めることが、開発強化の中身です。
製品企画面と生産面の課題を120字で答案化する
答案の骨格は、 企画面=顧客ニーズを捉える仕組みと開発プロセス/生産面=技能の形式知化・承継と対応体制 です。前半へ企画経験不足、後半へ若手とアイテム増への対応を肉付けします。
「製品企画面では〜が課題。生産面では〜が課題。」と対応を明示します。顧客情報の種類や教育教材の例は説明のための具体例として絞り、どの能力を整える必要があるか を二面とも残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の組織・体制づくりからは、取引先や消費者の声を開発へ戻す仕組みを、技能伝承の解説からは、動作を記録・分析して教えやすくする考え方を持ち帰れます。C社では、販売情報を企画の判断へ使う流れと、全体技能を若手へ引き継ぐ流れへ分けて当てはめます。
類題は、2023年度事例III第4問、2022年度事例III第2問、2013年度事例III第2問です。共通点は、顧客情報・社内知識を共有し、設計開発へつなぐ点。相違点は、2023年度が自社企画、2022年度が金型設計期間、2013年度が技術部の共有・効率化を扱うのに対し、本問は企画機能と製造技能の両方を開発強化へ結びつける点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「マニュアルで表せない技術の伝承方法を教えてください。」(技能を収集・保存・分析・標準化・展開・改善し、若手へ形式知として伝える方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 4 問(配点 30 点)
設問文
C 社社長は、直営店事業を展開する上で、自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すか、それとも若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やすか、悩んでいる。C 社の経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るためには、どちらを選び、どのように対応するべきか、中小企業診断士として 140 字以内で助言せよ。
回答例(128 字)
熟練技能による高級感が顧客に評価されブランド価値を生むため、手作りの高級路線を維持する。熟練者が高技能工程と指導を担い、手順を標準化して若手を部分縫製から全体縫製・仕上げまで段階的に育て、一人で完成品を作れる人材を増やして品質を保ちながら供給能力を高める。
解説
この問題の着眼点
手作りによる高級感と、分業・標準化によるアイテム拡大のどちらを選ぶか を示し、対応策まで140字で助言します。直営店で何を価値として売るかを決め、その価値を作り続ける人と仕事の分担を考えます。
顧客が評価した特徴と、職人の制約を併せて読む
与件文のどこを見るか
- 第3段落: 手作り感のある高級仕様が注目された、 高価格品であったが生産能力を上回る注文 とあります。価格の安さではなく、手作りの高級感で選ばれた実績があります。
- 第5段落: 熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品、 「永く愛着を持って使えるバッグ」、 自社ブランド製品の修理も行っている とあります。素材・技能・修理を含めて、長く使う価値を提供しています。
- 第12段落: 自社ブランド製品の修理作業も担当、 最も負荷が大きく時間を要する工程 とあります。縫製は製造だけでなく修理も担い、熟練者の時間には限りがあります。
- 第14段落: 熟練職人の高齢化が進み、 細分化した作業分担制、 製造全体の技術習熟が進んでいない とあります。現在の人だけで手作りを続ける体制にも、部分作業に固定した育成にも限界があります。
まず、高級感を価値として選ぶ
C社には、高価格でも手作りの高級仕様が支持された実績があります。天然素材や職人の仕上げ、修理して長く使えるコンセプトは、製品の価値を説明する一つのまとまりです。直営店でも、その価値に共感する顧客へ届ける 手作りの高級路線 を選ぶのが、既存資源を活かす方向です。
アイテムを増やせば選択肢は広がりますが、新製品の企画経験は少なく、縫製は既に負荷が大きい工程です。 品数を増やすことを優先して、評価された品質と供給を不安定にしない よう、まず競争する軸を定めます。製品を増やす効果を否定するのではなく、限られた資源を何へ優先配分するかという判断です。
標準化は、高級感を失う方法ではなく技能を教える手段にする
手作りを選ぶことは、熟練職人だけで全量を抱え続けることと同じではありません。高齢化と負荷の制約があるため、技能を次の人が担えるように変える必要があります。
ここでは、 標準化の目的を、アイテム数の拡大ではなく教育・技能承継に置く と整理します。工程の分解は教育の入口です。手順・仕上がりの基準・判断の勘所を明らかにし、部分縫製から全体縫製、仕上げへと段階的に教え、一人で完成品を作れることを到達点にします。製品を一律に簡素化することと、品質を再現するための教え方を整えることを区別します。
| 判断の段階 | 選ぶ方向 | C社で行うこと |
|---|---|---|
| 何で顧客に選ばれるか | 手作りの高級感 | 熟練技能と長く使う価値を守る |
| どう担い手を増やすか | 工程分解・標準化による教育 | 手順と判断基準を共有し、段階的に習熟させる |
この区別があれば、主方針は高級路線と明示しつつ、その実現手段として若手の参加と標準化を説明できます。
熟練者の時間を、高難度の製作と指導へ振り向ける
熟練者は、最高級品や難しい加工と技術指導を担い、若手は手順を整理しやすい製品から担当します。任せる範囲に応じて出来栄えを確認し、品質を確保しながら熟練者の負荷を軽減します。
第14段落の 「習熟を図ろうとしているが」 が示す問題を繰り返さないため、若手を簡単な部分作業に固定しません。 標準的な製品を完成させる経験から、より難しい製品へ担当を広げる 育成計画にします。段階的に高級品を担える人が増えれば、技能の継続と生産能力を両立できます。
路線の選択と、その実現策を140字で答案化する
答案の骨格は、 手作り高級路線の維持と顧客評価という理由→熟練者の高技能工程・指導と手順の標準化→若手が部分縫製から全体縫製・仕上げまで習得→品質と供給能力の両立 です。若手の担当を部分作業に固定せず、一人で完成品を作れる人材を増やす施策として示します。
冒頭で選択を明示し、残りを実現策へ配分します。「高級感もアイテム数も増やす」と結論をぼかさず、守る価値と、変える生産の仕組み が一続きになるように書きます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の基本方針は、資源を広く薄く使う前に強みを確かめる参考になります。技能伝承の解説は、その強みを次の担い手へ移す具体策の参考です。C社では手作り高級路線を選び、工程の記録・標準化と指導を組み合わせ、顧客が評価する品質を継続できる体制へつなぎます。
類題は、2017年度事例III第2問、2008年度事例III第4問、2024年度事例III第2問です。共通点は、現有の仕事や技能を整備し、将来の生産能力へつなぐ点。相違点は、2017年度が新製品へ振り向ける余力、2008年度が仕上げ工育成と戦略、2024年度が製缶能力の向上を問うのに対し、本問は競争する路線を選んだ上で技能承継と分担を設計する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」(強みを棚卸しし、限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択集中する考え方) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「マニュアルで表せない技術の伝承方法を教えてください。」(技能を収集・保存・分析・標準化・展開・改善し、若手へ形式知として伝える方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

