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平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅰ 解答解説 ​

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第 1 問(配点 35 点) ​

設問文 ​

A 社は、ここ数年で急速に事業を拡大させている。以下の設問に答えよ.

設問 1 ​

A 社のこれまでの成長を支えた、健康食品の通信販売事業を長期的に継続させていくために必要な施策として、新商品の企画や新規顧客の開拓以外に、どのような点に留意して事業を組み立てることが必要であるか。80 字以内で答えよ.

回答例(79 字) ​

既存顧客の不安に丁寧に応対し信頼を保ち、顧客情報を共有して購入後もフォローする。製造・発送委託先の品質・納期を管理し、主力商品の継続購入と関係強化につなげる。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、新商品の企画・新規顧客の開拓 以外 に、通販事業を長く続けるための留意点です。 既存顧客との信頼関係を育て、主力商品の継続購入へつなげること を80字で説明します。

与件文から既存顧客との関係を支える接点を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第5段落: 電話やFAXによる注文の受付、商品に関する問い合わせの対応 とあります。注文を受けるだけでなく、顧客の不安や疑問を聞ける接点を持っています。
  • 第6段落: 顧客データベースの構築 とあります。顧客との関係を把握し、応対やフォローへ活かす基盤があります。
  • 第7段落: 顧客に直接対応するコールセンターのオペレーター業務、 非正規社員とはいえ直接採用 とあります。顧客に接する人材を自社で抱え、応対を管理できる体制です。
  • 第8段落: 売上のほとんどを骨・関節サポート向けサプリメントが占め とあります。既存の主力商品と顧客との関係が、継続する事業の土台になります。
新商品へ話を広げず、今いる顧客へ戻る ​

第8段落の 「とはいえ」 は、急成長の後にも主力商品への依存が残ることを示します。ただし、本問は新商品・新規顧客を除外しています。そこで、現在の商品を選んでいる顧客との関係をどう深めるかに焦点を絞ります。

一度の購入を、安心して付き合える関係へつなぐ ​

注文の処理に加え、不安や疑問に応える ​

通信販売では、顧客が対面で商品を確認しながら店員に相談することができません。電話での問い合わせは、疑問を解消し、販売する会社への信頼を確かめる機会になります。オペレーターが話を聞き、分かりやすく丁寧に対応することで、単なる受付を 安心と信頼を生む顧客接点 にできます。

健康に関わる不安を聞くことと、医学的な判断を行うことは別です。ここで重視するのは、根拠のない効能を約束して販売することではなく、顧客の疑問に誠実に対応し、満足度を高める関係づくりです。

顧客情報を次の応対へ戻し、関係を継続する ​

例えば、問い合わせの内容や前回の対応を共有できれば、次の担当者も経緯を踏まえて話せます。顧客DBやコールセンターで得る情報をこうした応対に活かし、購入後も適切にフォローする方法が考えられます。情報の保有ではなく、顧客が安心して付き合える対応へ戻すことが重要です。

満足した顧客が継続して購入すれば、毎回新しい顧客を獲得することだけに頼らず事業を支えられます。 信頼・満足→継続購入→顧客生涯価値の向上 とつなげて捉えます。

長期継続を支える既存顧客への施策を80字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

本問では新商品や新規顧客ではなく、既存顧客との関係を深めることが必要です。オペレーターが問い合わせや不安を丁寧に受け止め、安心・信頼を保つ応対を行います。製造・発送の委託先についても品質と納期を管理し、顧客情報を次の担当者へ共有して購入後のフォローへ戻せば、満足が継続購入と関係強化につながります。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」は、顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組みについて解説しています。本問では、「常連客・上顧客との関係を維持する」と「双方向のコミュニケーションを重視する」を2013年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2013年度への当てはめ答案上の注意
常連客・上顧客との関係を維持する主力サプリメントの既存購入者を継続支援新商品・新規顧客へ戻らない
双方向のコミュニケーションを重視する注文・問い合わせで不安や利用実感を把握一方的な広告追加で終えない
顧客接点を売上維持へつなげる満足・信頼を高めて継続購入を促すデータ保有だけをCRMと呼ばない

類題は、2009年度事例I第5問(既存の商品・販路・顧客基盤から短期売上施策を組み立てる問題)、2019年度事例I第3問(HPを一方的宣伝ではなく顧客課題・新規事業情報の収集接点にする問題)、2025年度事例I第2問(店舗、EC、SNS、イベントの顧客接点を需要把握へつなぐ問題)です。共通点は、接点の数ではなく、対話で得た情報を顧客価値と次の行動へ還流することです。本問はその中でも既存顧客の継続購入へ範囲を絞ります。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」(顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組み)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2013年度の与件事実を主根拠にします。

設問 2 ​

A 社は、急速な事業拡大にもかかわらず、正規社員の数を大幅に増員せずに成長を実現してきた。今後もその体制を維持していく上で、どのような点に留意すべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ.

回答例(100 字) ​

正規社員を企画・広告等の中核業務と全体管理へ集中させる。委託先の調整や非正規社員の教育・監督を担う能力を育て、品質と連携を保つ。DBと手順を共有・標準化し、適切に権限を委譲して属人化と負荷集中を防ぐ。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、今後も正規社員を大幅に増やさず成長するための留意点です。 正規社員が担う判断と、非正規社員・委託先に任せる仕事 を明確にし、任せた仕事が回る仕組みまで100字で助言します。

与件文から社内に残す業務と任せる業務を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第6段落: 商品の梱包・発送などの業務も外注、 宣伝広告については、広告代理店任せにするのではなく、 A社が主導的に行っている とあります。外へ任せる業務と、自社の強みとして判断を残す業務を分けています。
  • 第7段落: 正規社員の数を大幅に増やしているわけではない、 オペレーター業務、 売上規模の伸びに応じて増員 とあります。正規社員を少人数に保ちながら、顧客対応の担い手は増やしています。
外注と自社主導を、使い分けている ​

第6段落の 「ただし」 は、業務の外注が進んでも、広告は自社のノウハウで主導していることを示します。第7段落の 「他方」 は、正規社員を大幅に増やさない一方、直接対応するオペレーターは増やすという役割の違いを示します。すべてを少人数で抱える体制ではありません。

正規社員に仕事を集めるのではなく、判断と管理へ集中させる ​

自社の競争力を作る仕事と、全体をつなぐ仕事を残す ​

広告や商品企画は、顧客を理解して何をどう伝えるかというA社の強みに関わります。正規社員はこうしたコア業務と、オペレーターや委託先を含む運営の管理に集中する方向が考えられます。外注した梱包・発送でも、品質や納期、問題発生時の対応は確認しなければなりません。

実作業を任せても、全体の品質と連携への責任は社内に残す と考えます。担当範囲や連絡先を明確にすることで、人数を抑えながら事業を統制できます。

日常の判断を任せるために、手順と権限を整える ​

仕事が増えるたびに正規社員へ確認が集中すると、少人数の管理者が処理の詰まりになります。よくある問い合わせや例外対応の基準を共有し、教育したうえで一定範囲の判断を非正規社員へ任せることが必要です。難しい相談だけを正規社員へ引き継ぐ形にすれば、品質と効率を両立しやすくなります。

標準化と教育で対応力をそろえ、権限委譲で日常運営を分担する ことが、今後の成長にも耐える仕組みです。人件費を抑える話だけでなく、誰もが迷わず担える業務と判断の設計として説明します。

少人数の正規社員で成長を続ける留意点を100字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

競争力を生む企画・広告等の中核業務と全体の判断は正規社員に残し、定型・専門業務を非正規社員や外部へ適切に任せます。任せた仕事の品質を保つため、正規社員の委託先調整や教育・監督能力も育てます。DB・手順の共有と標準化、権限委譲で負荷集中を減らし、少人数でも増加する業務を処理できる仕組みへつなげます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「アウトソーシング」は、外部資源を計画的に活用し、コスト・生産性・人手不足を改善しながら中核業務へ集中する方法について解説しています。本問では、「内部に残す中核機能を特定する」と「外部資源で補完する」を2013年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸当年度の与件への当てはめ答案上の注意
内部に残す中核機能を特定する広告・企画は蓄積ノウハウを持つA社が主導何でも外注する答案にしない
外部資源で補完するDB構築と梱包・発送を専門業者へ委託委託範囲と責任者を明確にする
標準化と統制を両立する非正規社員・委託先を正規社員が管理人件費削減だけを効果にしない

類題は、2017年度事例I第2問(商品・販路の絞り込み、自動化、雇用区分別分業で少人数運営を説明する問題)、2021年度事例I第1問(内部に残す機能と外部へ委ねる機能を選び、経営資源を集中する問題)です。共通点は、少人数を可能にする分業条件を問う点です。本問では広告・企画というコア業務と、外注・非正規へ移す定型業務の境界を答案にします。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「アウトソーシング」(外部資源を計画的に活用し、コスト・生産性・人手不足を改善しながら中核業務へ集中する方法)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。

第 2 問(配点 35 点) ​

設問文 ​

A 社の従業員の大半を占める非正規社員の管理について、以下の設問に答えよ.

設問 1 ​

A 社は、同業他社と比べて時給が多少高くても、勤務経験がある中高年層の主婦をオペレーターとして採用している。それには、どのような理由が考えられるか。80 字以内で答えよ.

回答例(79 字) ​

主要顧客と同世代で健康上の悩みに共感でき、勤務経験による対人応対力もあるため、安心できる相談対応ができる。顧客満足と継続購入を高め、時給差に見合う価値を生む。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、時給が多少高くても 勤務経験のある中高年層の主婦を採用する理由 です。設問に示された人材像を、主要顧客と接する仕事へ結びつけ、80字で説明します。

与件文から顧客とオペレーターの仕事を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第2段落: 中高年層を中心に美容や健康の維持・増進への関心 とあります。オペレーターが対応する主要顧客の関心と生活段階を確認します。
  • 第5段落: 電話やFAXによる注文の受付、商品に関する問い合わせの対応 とあります。相手の話を聞き、分かりやすく説明する対応が求められます。
  • 第7段落: 顧客に直接対応するコールセンターのオペレーター業務 とあります。オペレーターがA社と顧客の信頼をつなぐ接点です。
顧客と直接接する仕事を、自社の人材が担う ​

第7段落の 「他方」 以降では、正規社員を抑える中でも、顧客に直接対応するオペレーターは直接採用して増員しています。この接点の品質を、人数だけでなく人材の経験・適性によって支える意図を考えます。

同じ目線で話を聞けることを、信頼につなげる ​

顧客の言葉や生活上の不安を理解する ​

主要顧客は中高年層で、健康の維持・増進への関心があります。同世代であれば、生活段階や身近な困り事を理解する手掛かりを持ちやすく、相手が何を気にしているかを聞き取るうえで活かせると考えられます。勤務経験も、相手に合わせた言葉遣いや落ち着いた説明を行う土台になりえます。

これは、年齢や性別だけで能力を決めるということではありません。採用時には実際の応対能力を確かめることが前提です。本問では、設問にある経験を 主要顧客と近い目線で、悩みや疑問を受け止める力 に結びつけます。

時給の差を、顧客対応の価値で考える ​

通信販売では、電話の応対が会社への印象を左右します。説明が一方的だったり、話が通じないと感じられたりすれば、不安が残ります。一方、親身に話を聞いて分かりやすく対応できれば、顧客の安心と信頼につながります。

経験を活かした応対→安心・信頼→顧客満足 という価値があるため、A社は時給だけで採用を判断していないと考えられます。安く採る理由ではなく、多少高くてもその人材を選ぶ合理性を説明します。

経験のある中高年層を採用する理由を80字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

中高年層の主婦は主要顧客と近い生活経験を持つため、健康上の不安や要望を同じ目線で受け止めやすい人材です。さらに勤務経験による対人応対力があれば、相談や受注を早期から安定して担えます。親身で安心できる応対が満足と継続購入を高めるため、多少高い時給にも価値があります。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

中小企業白書の人材確保の視点は、必要人数だけでなく、事業戦略と顧客へ適合する人材像を具体化する際に役立ちます。

公的資料の判断軸当年度の与件への当てはめ答案上の注意
必要人材像を事業から逆算する主要顧客と同世代で勤務経験のある中高年層年齢そのものを能力と決め付けない
職務との適合を確認する健康上の悩みを聞く電話応対経験・共感・傾聴がどう効くかを書く
顧客価値へ結び付ける親身な応対で安心・信頼・満足を高める採用コストの話だけにしない

類題は、2018年度事例I第2問(設問1)(人員構成と必要機能の適合を分析する問題)、2020年度事例I第3問(直販に必要な提案営業能力を育成する問題)、2022年度事例I第2問(対象人材の獲得・定着条件を考える問題)です。共通点は、戦略に必要な役割から人材像を選ぶことです。本問は消費者向け応対における同世代の共感性が決め手です。

出典:中小企業庁『2024年版中小企業白書 第2部第1章第1節』

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。

設問 2 ​

A 社のオペレーターの離職率は、同業他社と比べて低水準を保っている。今後その水準を維持するために、賃金制度以外にどのような具体的施策を講じるべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ.

回答例(91 字) ​

希望シフトや休暇で家庭生活との両立を支え、研修と難しい顧客対応の相談窓口で業務負担を減らす。顧客の感謝を共有して表彰し、改善提案を職場運営へ反映して貢献と参加を実感させ、定着を促す。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、オペレーターの低い離職率を維持するための 賃金制度以外の具体策 です。 仕事の意義・貢献への承認・改善への参画 を通じて、働き続けたい理由を育てる助言を100字でまとめます。

与件文から仕事のやりがいへつながる場面を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第5段落: 商品に関する問い合わせの対応 とあります。顧客の疑問や不安を解消し、役立った実感を得られる仕事です。
  • 第7段落: 顧客に直接対応するコールセンターのオペレーター業務、 その離職率は、5パーセント程度と業界内では低水準 とあります。顧客との接点を担う人材が、継続して働いている状態を維持する問いです。
直接雇用している顧客接点を、長く支えてもらう ​

第7段落の 「他方」 以降では、成長に応じて直接採用のオペレーターを増やす方針が示されます。低い離職率は既に実現しているため、その原因を賃金以外の特定制度に断定するのでなく、これからも定着を支える具体策を考えます。

自分の応対が役立ち、職場を良くできる実感をつくる ​

顧客からの感謝を共有し、良い応対を認める ​

オペレーターは日々の応対に追われると、受け付けた件数だけで仕事を捉えやすくなります。顧客からの感謝や「説明が分かりやすかった」といった声を共有すれば、自分たちの仕事が人の安心を支えていると実感できます。

親身な説明や適切な引き継ぎなど、良い応対を具体的に認める表彰も考えられます。販売件数だけを競わせるのではなく、顧客に役立つ行動を評価することで、 貢献への承認と仕事の達成感 を支えます。

改善提案を受け止め、運営に関われるようにする ​

顧客と接する人は、繰り返される質問や分かりにくい案内など、日常の改善点に気づけます。提案を募り、採用した内容を応対手順や案内へ反映し、その結果を本人に伝える仕組みが考えられます。採用できない場合にも理由を返すことが、提案する意味を保ちます。

自分の声が職場を良くする参画意識 が高まれば、単に決められた作業をする以上の責任や愛着が生まれます。顧客への貢献を認められることと、職場の改善に参加できることを、定着につなげます。

賃金以外で低離職率を維持する施策を100字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

賃金以外の定着策は、仕事の価値を感じる仕組みと、働き続けやすい条件の両方から考えます。顧客の感謝を共有して表彰し、改善提案を採用すれば貢献と参加を実感できます。希望シフト・休暇、研修・相談窓口も整え、家庭事情や難しい対応による負担を減らします。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」は、顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組みについて解説しています。本問では、「貢献を可視化する」と「仕事へ参画させる」を2013年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸当年度の与件への当てはめ答案上の注意
貢献を可視化する顧客の感謝を共有し、優れた応対を表彰抽象的な褒める文化で終えない
仕事へ参画させるオペレーターの改善提案を採用意見聴取だけでなく反映まで示す
非金銭的動機を高める達成・承認・責任を職務へ組み込む賃金制度以外という条件を守る

類題は、2014年度事例I第5問(高度専門人材を長期定着させる管理施策を問う問題)、2018年度事例I第4問(技術者の内発的動機と独創性を高める問題)、2022年度事例I第2問(獲得後の定着を動機づけ・衛生要因から検討する問題)です。共通点は、賃金以外の定着要因を職務へ埋め込む点です。本問では顧客からの承認と現場提案への参画が与件に近い施策です。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」(顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組み)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。

第 3 問(配点 15 点) ​

設問文 ​

A 社では、最近になって大学新卒の正規社員を採用し始めた。従来、中途採用しか行っていなかった同社が新卒正規社員を採用するようになった理由として、どのようなことが考えられるか。80 字以内で答えよ.

回答例(79 字) ​

急成長後の組織を担う幹部候補を計画的に長期育成するため。自社の広告・顧客対応の知識や価値観を体系的に継承し、若い視点と新知識で商品企画や事業変革を進めるため。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、中途採用中心だったA社が新卒正規社員を採用し始めた理由です。 将来の幹部候補の長期育成と、新たな発想による組織の活性化 を、持続的成長へつなげて80字で説明します。

与件文から採用の変化と将来の課題を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第7段落: 大学新卒の正規社員を若干名採用、 毎年2〜3名程度の正規社員を中途採用 とあります。従来の少人数の中途採用に、新卒採用という育成の入口が加わっています。
  • 第8段落: 次世代を担うような新商品が登場しているわけではない、 大手メーカーが様々な商品展開で新市場を開拓 とあります。現在の主力商品を運営するだけでなく、次の成長を考える人材が必要です。
急成長の運営から、次の成長を担う人づくりへ ​

第8段落の 「とはいえ」 は、売上が伸びても次世代商品が育っていない課題を示します。現在の仕事をこなす人員だけでなく、将来の事業を構想し、組織を運営できる人材が必要になったと考えます。

即戦力を補う採用に、長く育てる採用を加える ​

A社の事業を理解する中核人材を育てる ​

中途採用では、既に持つ経験を急拡大する業務へ活かしやすい一方、将来の中核人材を計画的に育てる視点も必要です。新卒社員に顧客対応・広告・企画や管理などの経験を段階的に積ませれば、A社の強みと運営全体を理解した幹部候補を育てることにつながります。

当面の業務を担う人員の確保に、将来の責任を担う人材の育成を加える という違いです。新卒採用直後に経営判断を任せることではなく、長い時間軸で能力を育てる理由として捉えます。

新しい視点を、次世代事業を考える力へ育てる ​

主力商品の成功が大きいほど、既存のやり方だけで仕事を進めやすくなります。新しく入る人の疑問や異なる着眼点を受け止めれば、顧客への接し方や商品企画を問い直す機会になります。

若い人なら自動的に革新的になるわけではありません。学習や挑戦の場を与えることで、新たな発想を事業へ活かす力に育てると考えます。 組織の硬直化を防ぎ、次の成長へ変革を進める人材層を作ること が、長期育成と並ぶ理由になります。

新卒正規社員を採用し始めた理由を80字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

中途採用は経験を補いやすい一方、成長後の組織を長期に担う人材を計画的に育てる点に、新卒を採用する意義があります。広告や顧客対応の知識・価値観を自社で体系的に伝え、将来の幹部候補として育成できます。同時に若い視点を取り込み、次世代商品の企画や事業変化へ対応します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」と経営ハンドブック「中小企業の人材確保・育成10カ条」は、理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法と人材を最大の経営資源と捉え、経営方針の明示から採用・育成・定着までを一体で進める要点について解説しています。本問では、「戦略から必要人材像を定める」と「採用と長期育成を組み合わせる」を2013年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2013年度への当てはめ答案上の注意
戦略から必要人材像を定める次世代商品・事業変革を担う中核人材単なる若年人員の補充にしない
採用と長期育成を組み合わせる新卒を企業文化へ適応させ、幅広い業務経験を積ませる採用直後から幹部として扱わない
将来像を示す幹部候補・新事業人材へのキャリアを描く「若返り」だけで効果を説明しない

類題は、2017年度事例I第5問(創業メンバーの定年退職後に知識・経営を継ぐ組織課題)、2021年度事例I第2問(経験のない3代目へ部門責任を任せ、次世代経営者を育てる理由)、2022年度事例I第4問(設問2)(後継者中心の体制へ段階的に権限委譲・人員配置する問題)です。共通点は、将来必要な役割を先に定め、採用、経験付与、権限委譲を時間軸でつなぐことです。本問はその入口である新卒採用の理由を問います。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」(理念・事業計画・求める人材像と評価を結び、明確・公平・透明な基準と面談・フィードバックで運用する方法) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「中小企業の人材確保・育成10カ条」(人材を最大の経営資源と捉え、経営方針の明示から採用・育成・定着までを一体で進める要点)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2013年度の与件事実を主根拠にします。

第 4 問(配点 15 点) ​

設問文 ​

A 社では、ICT の専門業者に委託して構築した顧客データベースを活用している。しかし、そこで得られた情報は必ずしも新商品開発に直接結びついていない。そうした状況が生じる理由について、80 字以内で答えよ.

回答例(79 字) ​

顧客DBは購買履歴中心で潜在要望を捉えにくく、顧客の声を分析して企画へ共有する人材が不足。自社に研究開発機能がなく、製品化に必要なOEM先との調整も弱いため。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、顧客DBを活用していても、新商品開発へ直接つながらない理由です。 情報を集めることと、ニーズとして解釈して企画へ渡すこと を分け、仕組みと人材・時間の両面から80字で説明します。

与件文から情報の入口と企画への隔たりを読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第5段落: 商品に関する問い合わせの対応 とあります。顧客との会話から、数字だけでは分からない理由や要望を得られる接点です。
  • 第6段落: 取り扱い件数が増加、 ICT専門業者に顧客データベースの構築を外注 とあります。DBは取引量の増加に対応する中で構築されています。
  • 第7段落: 正規社員の数を大幅に増やしているわけではない とあります。少人数で成長を支える中、分析や企画に使える人材・時間も考える必要があります。
  • 第8段落: 次世代を担うような新商品が登場しているわけではない とあります。既存事業の成長と、次の商品を生む力との間に隔たりが残っています。
取引を支えるDBが、そのまま新商品の企画になるわけではない ​

第6段落の 「その結果」 以降では、取扱件数の増加を受けてDB構築などを外注しています。第8段落の 「とはいえ」 は、成長の一方で次世代商品がない課題へ切り替えます。取引を支える情報基盤と、新たな需要を見つける企画の仕組みは別に必要だと考えます。

数字と顧客の言葉を結び、企画する人へ届ける必要がある ​

何が起きたかに、なぜそうなったかを重ねる ​

例えば購入回数のような数字からは、継続購入しているかを把握できます。しかし、購入をやめた理由や、別に困っていることまでは数字だけでは分かりません。問い合わせで聞く要望や疑問と照らし合わせて、顧客に共通する課題を読み取る仕事が必要になります。

DBの収録項目は与件に詳しく示されていないため、ここでは具体例として考えます。 DBの定量情報と、コールセンターの定性的な声を統合分析すること が、保有する情報を企画の材料へ変える過程です。さらに、その結果を商品企画や製造委託先との検討へ渡す役割が必要です。

システム構築を任せても、企画の判断は自動では生まれない ​

ICT業者はDBを構築できますが、顧客の課題をどの商品で解くかはA社が判断する仕事です。少数の正規社員が広告や日常運営も担っていれば、データと顧客の声を見直し、企画にする時間が十分に取れない可能性があります。

情報をつなぐ仕組みと、分析・企画を担う役割・時間の不足 が、開発へ結びつかない理由と考えられます。与件は業務時間や制度の全容まで示していないので、DBが役立っていないと断定せず、既存運営の活用から新商品開発へ進む間の不足を類推します。

顧客DBが新商品開発へつながらない理由を80字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

購買・受注履歴は過去の行動を示しますが、潜在要望や未充足の課題を把握するには、応対で得た声を分析して企画へ共有する必要があります。また、自社に研究開発機能がないため、企画情報を製品化するにはOEM先との技術・企画調整が欠かせません。データの内容、社内の共有・分析、人材と外部開発の接続を分けて答案化します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」と経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」は、SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくりと顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組みについて解説しています。本問では、「定量・定性情報を統合する」と「利用責任と手順を決める」を2013年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸当年度の与件への当てはめ答案上の注意
定量・定性情報を統合する顧客DBとコールセンターの声を結び付けるDB導入だけを施策にしない
利用責任と手順を決める企画・開発へ渡す会議、担当、検証手順を置く情報共有の掛け声で終えない
分析時間と能力を確保する少数正規社員へ企画・分析の余力を持たせる外部業者へ商品判断まで丸投げしない

類題は、2019年度事例I第3問(Web上の顧客接点から用途・新規事業の情報を得る問題)、2020年度事例I第2問(個人の暗黙知を共有可能な情報へ変える問題)、2025年度事例I第2問(顧客接点の情報を企画・改善へ還流する問題)です。共通点は、情報の保有と活用を分けることです。本問ではDBの数値と顧客の生の声を商品開発へ接続できない理由を説明します。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくり) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」(顧客接点から要望を集め、製品改善・信頼・従業員の意欲へつなげる仕組み)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。

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