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平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅲ 解答解説 ​

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第 1 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持されてきた。その理由を 80 字以内で述べよ。

回答例(78 字) ​

金型設計・製作から成形まで一貫対応し、技能者育成で技術力を高め、顧客の歩留り向上とコスト低減に貢献した。さらに工業団地で継続的に共同受注・開発を進めたため。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

海外移転によって国内受注が減る中でも、業績を維持できた理由を80字で述べる問題 です。C社が社内の能力をどう高め、団地内の企業とどう助け合い、顧客にどんな価値を提供したかをつなげます。

受け身の成形加工から、顧客の改善を担う企業へ変わった ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第3段落: 顧客企業の生産工場の海外移転、 主要顧客企業からの受注量の減少が続いた とあります。以前の量産品を待つだけでは、仕事を維持しにくい環境です。
  • 第4段落: 金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制、 技能士などの資格取得者を養成、 OJT によってスキルアップ、 材料歩留り向上や成形速度の改善、 顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積 とあります。体制と人を強化した結果が、顧客のコスト改善までつながっています。
  • 第5段落: 技術交流会の定期開催、 共同受注や共同開発、 工業団地組合活動のリーダー的存在 とあります。単独で技術を磨くだけでなく、近隣企業との継続的な協力を進めています。
金型から引き受けることで、改善できる範囲を広げた ​

創業時のC社は、顧客から支給された金型を使って成形加工をする企業でした。それに対して、金型設計・製作部門を新設した後は、製品図面を受け取り、どのような金型でどう成形するかまで社内で考えられます。

この 金型設計・製作から成形までの一貫対応 が重要です。金型を作る側と成形する側で加工条件をすり合わせれば、成形時に生じる問題を金型へ戻して改善しやすくなります。単に部門を増やしたのではなく、顧客の製品をより効率よく作るための対応範囲を広げたと読みます。

体制を動かす技能が、顧客のコスト低減を支えた ​

第4段落の 「また」 は、部門新設に加えて人材も強化したことを示します。 「さらに」 は、資格取得者の養成にOJTによる技能向上を加える言葉です。資格の取得だけで終わらず、現場で使える技能へ育てています。

その積み重ねが、 材料歩留り向上や成形速度の改善 に結びついています。同じ材料から良品を多く作れたり、加工にかかる時間を短くできたりすれば、顧客が購入する成形加工品のコストを下げられます。

したがって、業績維持の理由は「技術力が高い」で止めず、 技能者育成で技術力を高め、顧客のコスト低減に貢献した と結びます。環境が厳しくても、顧客にとって任せる価値のある企業へ変わったことが中心です。

団地内の連携が、技術と受注を補強した ​

第5段落の 「そこで」 は、同じように経営難に直面した企業が、協力して乗り越える行動へ進んだことを示します。技術交流会は互いの加工能力を知る場になり、共同受注・共同開発はその能力を仕事へ結ぶ取り組みです。

工業団地での共同受注・共同開発 は、自社だけで扱える仕事の範囲を補う要因になります。C社はその活動のリーダーであり、ただ工業団地に入居していたのではなく、企業間の関係を活かしてきた点に意味があります。

第5問でも同じ資源を使いますが、ここではこれまでの業績を支えた理由として整理します。今後の顧客開拓策を詳しく書くより、社内の一貫対応・技能強化と、社外の連携を両方残しましょう。

社内の能力と外部連携を80字で答案化する ​

答案の骨格は、 一貫対応+技能育成→顧客のコスト低減/団地内の共同受注・開発→業績維持 です。一貫対応には金型設計・製作から成形までの範囲、顧客価値には歩留り向上、外部連携には共同受注・開発を肉付けします。

80字では、社内の取り組みとその効果を一続きにし、団地内連携を加えます。何をしたから、顧客に選ばれる力が保たれたのか が伝わるように、理由を述べる「〜ため」で結びます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21「製造現場の生産性向上」は、設備・研究開発や情報技術への取り組みを生産性へ結ぶ参考です。本問では新しい投資を提案するのではなく、C社が整えてきた一貫体制と技能が、顧客のコスト低減へ役立った経緯を読み取ります。

類題は、2025年度事例III第1問、2024年度事例III第1問、2023年度事例III第1問です。共通点は与件から具体的な内部能力を見つける点。相違点は、これらが強み等を整理するのに対し、本問は海外移転という環境変化への対応と業績維持まで説明する点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「製造現場の生産性向上」(事業領域と強みを踏まえ、設備、IT、生産管理システム、CAD/CAM等で製造現場の生産性を高める方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 2 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

回答例(115 字) ​

問題は金型・材料の探索と運搬で段取りが長く、自動運転中に人の手待ちがある点。置場と識別コードを統一し、運転中に次の金型・材料を準備して外段取り化する。二台の加工と切替えの順序を組み直して手順を標準化し、人の待ちと機械停止を減らす。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

図2の作業内容から、作業方法の問題点と改善策を120字で述べる問題 です。作業者と成形機の動きを並べ、長い段取りの中から短縮できる作業と、前もって済ませられる作業を見つけます。

探してから段取りを始める仕事を、準備して切り替える仕事へ変える ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第10段落: 作業者 1 人が 2 台の成形機を担当、 製品の取り出しも含め自動運転 とあります。成形中に作業者が加工を続ける方式ではありません。人と機械の時間を分けて読みます。
  • 第12段落: 各置き場で探し、移動し、準備する作業、 統一した識別コードがなく、 ベテラン作業者しか探すことができない金型、 その都度納品位置が変わり探す とあります。金型や材料を使う前の探索・運搬が、段取りを長くしている直接の原因です。
  • 第13段落: 段取り作業時間の短縮 とあります。顧客の小ロット・短納期要求へ応えるための会社方針とも一致します。
図2は、人が待つ時間と機械が待つ時間を対応させる ​

図2の中央は作業者、右側は成形機1・2の時間の使い方です。両機が自動で加工している間、作業者には「待ち」があります。一方、朝や昼休み後に一方の機械を段取りしている間、もう一方は段取りを待っています。

ここから、 自動運転中の待ち時間を、次の段取りの準備へ使えないか と考えます。機械の加工速度を上げるより先に、人の作業を組み替えて機械の停止時間を減らす余地があるわけです。

左側の詳細を見ると、13時から13時40分の成形機1の段取りには、金型の取外し・取付けに加えて、置き場との往復や材料の移動が含まれています。40分全体を一つの作業として扱わず、止めないとできない作業と、止める前に準備できる作業 に分けます。

誰でも探さずに取り出せる状態を作る ​

金型の置き場が混乱し、識別コードも統一されていなければ、経験のある人しか必要な物を見つけられません。材料も納品のたびに場所が変わるため、毎回探すことになります。

まず 金型・材料の保管場所固定と識別コード統一 を行い、現物と置き場の表示を合わせます。5Sのうち、ここで効くのは不要物を整理し、必要な物を決めた場所へ戻す整頓です。清掃だけを挙げるより、探索をなくす具体策になります。

同じ金型を誰でも同じ名称・番号で取り出せるようになれば、ベテランを待つ負担も減ります。この現物の整理は、第4問の情報化で登録する識別・所在情報の土台にもなります。

準備を前へ移し、二台の切替え手順をそろえる ​

次に、金型や材料を安全な準備場所へそろえる作業を、現在の製品を加工している間へ移します。これは 外段取り化 です。機械停止後に探し始めるのではなく、必要な物を準備してから切替えに入ります。

金型の取外し・取付けなど停止が必要な作業は残し、その手順も標準化します。二台の加工終了時刻と必要な段取りを見て、片方への対応中にもう片方が長く待たない順序を検討します。安全確認や必要な監視を維持し、休憩を削ることで時間を作る提案にはしません。

探索・移動の削減+段取り手順の標準化 によって、一回の切替えを短く、誰でも安定して行えるようにします。第3問の多回生産を可能にするには、切替え回数が増えても負担を抑えられることが重要です。

作業上の原因と改善策を120字で答案化する ​

答案の骨格は、探索・運搬による段取り長期化と自動運転中の手待ちを挙げ、それぞれ定位置・識別統一と外段取り化へ対応させる形です。自動運転中に次の金型・材料を準備し、二台の加工終了と切替えの順序を組み直すことで、人の待ちと機械の停止を減らします。5Sや標準化という用語だけで終えず、準備をいつ行うかを答案に残します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21「業務プロセスの見直しによる生産性向上」は、作業を見える化して待ち・移動を減らす考え方の参考です。本問では図2を使って、人の待ち時間と成形機の停止時間を対応させ、探索・運搬・準備のどこを変えるかを考えます。

類題は、2025年度事例III第2問、2024年度事例III第2問、2017年度事例III第2問です。共通点は作業の標準化や改善で生産性を高める点。相違点は、本問では二台持ちの時間関係と金型・材料の探索を直接分析し、段取り時間を短くする点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「業務プロセスの見直しによる生産性向上」(作業工程を見える化し、待ち・移動等のムダを除き、人材を流動化してPDCAで改善する方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1)を分析して、C 社の生産計画上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

回答例(113 字) ​

段取りが長く受注量より大きいロットで週1回生産し、過剰在庫を抱える点が問題である。段取りを短縮し、納品予定と実在庫から必要量を算定して小ロット・多回生産に改め、在庫と受注変動を日々確認して生産量・日程を更新し余剰と欠品を防ぐ。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

生産計画の決め方と図1の在庫推移を結び、問題点と改善策を120字で述べる問題 です。毎日納品する量に対して、作る量と頻度がどう決まっているかを比較します。

まとめて作る効率を優先し、在庫を抱えている ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第9段落: 翌週の月曜日から金曜日の確定納品計画、 原則週 1 回計画される、 生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、 毎日 600 個前後、 約 3,000 個で週 1 回の生産 とあります。納品情報はありますが、毎日の必要量より段取り効率を重視して大きくまとめています。
  • 第12段落: 準備する作業に長時間要している とあります。ロットを大きくした背景には、短縮できる段取りの負担があります。
  • 第13段落: 短納期化、小ロット化、多品種少量化 とあります。顧客の要求は、従来のまとめ生産と反対の方向へ強まっています。
図1の山の高さと、補充前に残る在庫を見る ​

製品Aは毎日600個前後を納品するのに対し、一回の生産量は約3,000個です。図1では、納品によって在庫が減った後、生産によってまとまった数量が加わる形を繰り返しています。

着目するのは、 在庫が残る中で、大きなロットを補充している ことです。山の部分だけでなく、生産直前の低い部分にも在庫が残っています。次に必要な納品量と手元在庫を合わせて考えれば、より小さい補充へ見直す余地があります。

在庫は日々減るため「常に増え続けている」とは書きません。また、図から精密な平均在庫を計算することが主題でもありません。大きく作って在庫を持ち、そこから毎日出荷する計画 を、本文の週1回・大ロットという決め方へつなげます。

確定納品計画があっても、作る単位が合っていない ​

X社は金曜日に翌週の確定納品計画を示し、C社もそれを受けて翌週計画を作っています。したがって「納品情報がない」「生産計画がない」という診断ではありません。

問題は、 段取り時間を優先した大ロット・週1回生産 です。一度に長く成形機を動かせば切替え回数は少なく済みますが、早く作った分を在庫として抱えます。日々の納品量が少なく変動もある他製品では、必要な品種と作ってある品種のずれも生じやすくなります。

ここで生産効率を機械一台の稼働だけで判断せず、納品に必要な製品を、必要な時に供給できるか まで広げて考えます。過大在庫を減らしながら顧客の変動へ対応することが、計画の見直しの目的です。

段取り短縮を土台に、小さく何度も作る ​

第2問の改善によって切替えを短くすれば、同じ期間に生産する回数を増やしやすくなります。そのうえで、 納品計画と手元在庫に連動した小ロット・多回生産 へ変えます。

例えば、次の補充までに納める量を確かめ、現在庫を差し引いて生産量を決めます。製品Aも週の必要量を一度に作るだけでなく、納品日に近づけて分けて作る方向です。回数や数量は他製品も含めた設備能力・段取り時間で決め、無条件に毎日600個へ固定するわけではありません。在庫と受注変動を日々確認し、必要量を再計算して生産量・日程を更新します。

平準化は、需要を無視して毎日同じ量を作ることではなく、納品を満たす範囲で品種・数量の偏りをならす考え方です。段取り負担を減らしてから、納品に合わせて生産の山を小さくする という順に考えると、現場改善と計画改善がつながります。

大ロットの原因と見直し方を120字で答案化する ​

答案の骨格は、 長い段取りを理由に週1回・大ロットで生産し過剰在庫→段取り短縮と、納品予定・実在庫に基づく必要量算定→小ロット・多回生産と日々の計画更新 です。多回生産だけで在庫が減るとせず、必要量を決め、受注・在庫の変化に合わせて作り過ぎと欠品を防ぐ運用を示します。

段取り短縮だけでは生産計画が変わったことになりません。作業を改善したうえで、何個をどの頻度で作るように変えるか まで残すと、第2問との違いが明確になります。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の多品種少量生産に関するQ&Aは、受注頻度・数量に応じて生産方法を選ぶ参考です。本問では、繰り返し納品する製品Aと数量が少なく変動もある他製品を区別し、段取り負担と在庫の両方を見てロットを設計します。

類題は、2024年度事例III第4問、2023年度事例III第3問、2016年度事例III第2問です。共通点は、原価・在庫・生産管理を収益につなげる点。相違点は、2024年度が価格交渉前の原価把握、2023年度が食材管理、2016年度が生産管理面からの収益改善を問うのに対し、本問は図1から生産ロットと頻度を具体的に見直す点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「多品種少量生産における効率的な生産方法を教えてください。」(受注頻度とロットサイズを分析し、段取り効率と在庫保有を組み合わせて生産方式を決める方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 4 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を 120 字以内で述べよ。

回答例(117 字) ​

金型・材料の識別コードを統一し、保管場所のルールを定め、在庫・所在情報、段取り手順・標準時間をデータベース化する。入力責任者、入力時点、更新・点検ルールを定め、生産現場で正確な情報を共有し、検索・準備を効率化する運用手順を標準化する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

生産管理のコンピュータ化に先立ち、整備する内容を120字で述べる問題 です。現物を特定できる状態を作り、その情報を登録・更新して、誰でも現場で使えるようにする流れで考えます。

探せない現場を、そのままコンピュータへ移さない ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第12段落: 統一した識別コードがなく、 置き場も混乱、 その都度納品位置が変わり探す とあります。対象の呼び方と所在が定まっていないため、何をどこから持ってくるかが分かりにくい状態です。
  • 第14段落: 成形加工課の作業者が効率よく金型、材料などを使用できるようにする必要、 データベース化などの社内準備 とあります。導入後に現場で使えることを目的として、事前に整える内容が問われています。
現物と情報を、同じ識別コードで結ぶ ​

ベテランしか見つけられない金型がある状態では、名称だけを入力しても他の人が現物へたどり着けません。まず 金型・材料の識別コード統一と保管場所のルール化 を行います。

現物の表示と登録情報のコードを合わせ、保管場所にも棚・区画などの識別を付けます。すると「この製品に使う金型はどれか」「その金型はどこにあるか」を、経験に頼らず調べられるようになります。

第2問の5Sは探す作業自体を減らす改善ですが、ここではその状態をデータへ対応させます。実際の置き場と画面上の所在が一致していること が、情報化を役立てる前提です。

何があり、どう使うかを、ひとまとまりの情報にする ​

次に、 在庫・所在情報と段取り手順・標準時間のデータベース化 を進めます。金型や材料の名前を一覧にするだけでなく、作業者が準備や切替えをする時に必要な情報をそろえます。

整備する情報現場での使い道
金型・材料の識別コード、対応する製品必要な物を取り違えずに特定する
保管場所、在庫数量、使用・返却の状況探索や不足の確認を減らす
段取り手順、標準時間同じ手順で準備し、日程を組む根拠にする

標準時間も、探索で長くなっている現状を無条件に固定するのでなく、改善した手順に合わせて設定・見直しします。物を見つける情報と作業の進め方をそろえることで、現場の準備を助け、生産計画にも使える基礎ができます。

登録した後も、現場の変化に合わせて更新する ​

材料を使ったのに在庫を減らさず、金型を移したのに所在を変えなければ、画面はすぐに現物とずれます。その状態では結局、作業者が現場を探し回ることになります。

そこで 入力責任者・入力時点・更新と点検のルール を決めます。例えば、材料の受入れ・払出しや金型の使用・返却の際に担当者が更新し、現物と情報の照合も行います。どの職務が担当するかは社内で決めますが、誰かが後で入力するという曖昧な運用にはしません。

作業者には検索と更新の手順を説明し、小さな範囲で運用して、現場で使えるかを確かめます。コンピュータを入れる効果は、情報を集めたことではなく、正しい情報で準備と判断ができること にあります。

現物・データ・運用を120字で答案化する ​

答案の骨格は、 識別・保管場所の統一→在庫・所在・作業標準のデータ化→責任と更新ルールの明確化→現場で情報共有 です。データ化には金型・材料と段取り、運用には誰がいつ入力・点検するかを肉付けします。

製品名やシステム名を挙げるより、導入前に整える対象と、導入後も情報を正しく保つ仕組み を残します。第2問の作業改善を土台に、第3問の計画改善にも使える情報へつなぐと、一連の改革として理解できます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21「DXを進める」は、経営者・担当者の役割と人材育成、小さく取り組みを続ける考え方の参考です。本問の直接の課題は導入前の現物・情報・運用の整備です。作業者が検索・更新できる状態を作り、使いながら改善する方向へ結びます。

類題は、2022年度事例III第4問、2020年度事例III第3問、2015年度事例III第3問です。共通点はITを業務改善の手段として使う点。相違点は、2022年度が情報と推進体制、2020・2015年度が納期管理への活用を問うのに対し、本問は金型・材料を効率よく使うための事前整備を中心にする点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「DXを進める」(ITを目的化せず、データとデジタル技術で業務・組織・プロセスを小さく継続的に変革する考え方)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 5 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

回答例(119 字) ​

工業団地組合を主導して技術交流を活性化し、共同受注・共同開発を強化する。金型設計・製作からインサート成形まで一貫対応し、顧客の工程数・納期の短縮とコスト削減に貢献する。提案型受注で新規顧客を開拓し、差別化・高付加価値化・収益性向上を図る。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

立地環境と経営資源を活かし、付加価値を高める今後の戦略を120字で助言する問題 です。団地内企業との連携と自社の技術を組み合わせ、顧客の工程や納期・コストを改善する仕事へ広げます。

加工品を納めるだけでなく、顧客の工程を減らす価値を売る ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第2段落: 電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地 とあります。周辺には金属加工など、C社と異なる専門能力を持つ企業が集まっています。
  • 第4段落: 金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制、 顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウ とあります。顧客の図面から加工方法を考え、改善するための社内資源です。
  • 第5段落: 技術交流会の定期開催、 共同受注や共同開発、 リーダー的存在 とあります。企業間で協力する活動と、それを動かすC社の立場があります。
  • 第7段落: インサート成形、 顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、 コスト削減 とあります。自社の加工技術が、顧客側の仕事を減らす効果として具体的に示されています。
団地内の専門能力を、一社では出せない提案へ組み合わせる ​

立地環境の価値は、同じ場所に企業が多いことだけではありません。金属加工やプラスチック加工など、異なる工程を担う企業が近くにおり、技術交流・共同受注・共同開発を続けてきた関係があります。

C社はそのリーダーとして、互いにどんな加工ができるかを共有し、顧客の要求に合う役割分担を作ることができます。 工業団地組合を通じた技術交流と共同受注・共同開発の強化 を、自社の足りない能力を補い、提案する仕事の範囲を広げる手段として位置づけます。

例えば、金属部品の加工は得意な企業と協力し、C社は金型と成形の設計を受け持つ方向です。これは今後の連携の具体化であり、インサート成形の金属部品を現在すでに団地内企業が供給していると断定するわけではありません。

インサート成形の価値を、顧客側から説明する ​

従来は、他社が金属部品、C社が成形加工品を作り、顧客が両者を組み立てていました。インサート成形では、C社が成形時に金属部品を組み込んで納めるため、顧客の組立工程を減らせます。

つまり、売り込む価値は高度な技術の名称ではなく、 顧客の工程数・納期の短縮とコスト削減 です。金型から一貫して考えられるC社なら、どの形状・工程を変えると効果が出るかを提案しやすくなります。

活かす資源提案へつなげる内容
団地内の異なる加工能力と連携関係得意工程を組み合わせた共同受注・共同開発
金型設計・製作から成形までの一貫体制顧客図面に対する加工方法・コスト改善の提案
インサート成形の受注実績組立工程を省き、納期・コストを改善する提案

社内の効率を上げる第2〜4問に対して、本問はその能力を顧客にとっての価値へ変える 問いです。顧客側の改善まで書くことで、安い加工単価だけで競う方向との違いが伝わります。

実績を他の顧客にも示し、提案型の受注を増やす ​

インサート成形は古くからの顧客一社で受注できています。この実績をもとに、同様に部品組立や納期・コストの課題を持つ企業を探し、金型からの一貫対応と合わせて提案する方向が考えられます。

技術と連携を活かした提案型受注で、新規顧客を開拓する 戦略です。顧客の仕様や必要数量を確認し、共同で試作・評価を進め、継続的な仕事へ結びます。何でも新しく始めるのではなく、既存の技術が役立つ顧客へ展開するため、実行可能性のある成長方向になります。

その提案を継続して受けるには、小ロット・短納期にも応える必要があります。第2問の段取り、第3問の計画、第4問の情報整備は、顧客へ約束した価値を安定して提供するための基盤です。

連携・技術・顧客価値を120字で答案化する ​

答案の骨格は、 団地内連携+一貫対応・インサート成形→顧客の工程・納期・コスト改善→提案型受注と高付加価値化 です。連携には技術交流・共同受注・共同開発、成長には新規顧客開拓を肉付けします。

第1問では過去の業績維持の理由として使った能力を、ここでは今後の助言へ変えます。第1文で技術交流・共同受注・共同開発を通じた企業間連携、第2文で一貫対応による顧客の工程数・納期・コストの改善、第3文で提案型受注による新規開拓と収益向上を示します。文を分けても、 何を活かし、顧客へ何を提供し、どのように収益を高めるか の因果関係をつなげます。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、取引先の声や異分野との接点を開発へ取り込む参考です。本問では工業団地の既存の連携関係を活かし、顧客の工程上の課題を共同の提案・開発へつなげます。

類題は、2025年度事例III第4問、2024年度事例III第5問、2023年度事例III第5問です。共通点は経営資源と生産体制を事業展開へつなげる点。相違点は、各類題が新事業に必要な社内対応や体制を問うのに対し、本問は団地内連携と既存の高度な成形技術から顧客価値と戦略を組み立てる点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

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