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令和 5 年度(2023 年度)事例 Ⅲ 解答解説 ​

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第 1 問(配点 10 点) ​

設問文 ​

C 社の生産面の強みを 2 つ 40 字以内で述べよ。

回答例(39 字) ​

料理人経験に基づく調理・厨房管理能力と、多品種少量の食品を受託製造する対応力。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

生産面の強みを二つ、合わせて40字で整理する与件抜粋型の問題 です。料理人経験に基づく能力と、多様な注文を少量ずつ作る対応力に分けて拾います。

根拠集めは最初、答案の確定は最後 ​

与件を読みながら、生産面の強みへ蛍光ペンやボールペンで印を付けます。すぐに40字へ絞らず、第2問以降へ進みます。

作業改善や製品開発を考えると、標準化して引き継ぐ技能と、企画に活かす調理の知識が見えてきます。後続設問で使う能力を優先し、第1問へ戻って二つに束ねます。

料理を作る能力と、注文に応える体制を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第2段落: 和食や洋食の総菜、菓子、パン類などの多品種で少量の食品を受託製造 とあります。異なる食品を、販売先の必要量に合わせて作る実績があります。
  • 第3段落: 高級ホテルの料理人を経験し、 ホテル調理場の作業内容などのマネジメントに熟知した現経営者 とあります。経営者には調理だけでなく、厨房の仕事を管理する知識があります。
  • 第5段落: ベテランのパートリーダーが各 1 名、 ホテルや旅館での料理人の経験がある とあります。現場を率いる人にも経験があり、技能を生産へ活かす体制があります。
  • 第9段落: 口頭で直接指示を受けて試作し決定、 製品の出来栄えのチェック とあります。販売先料理長の要求を試作で具体化し、出来栄えを確かめながら供給しています。
経験を、調理と厨房管理の能力としてまとめる ​

料理人の経歴は、肩書だけでなく何ができるかへ置き換えます。食材の扱いや調理の加減を理解し、厨房での作業内容にも通じているため、販売先の求める料理を製造する土台になります。

経営者だけでなく工場管理者にも料理人経験があります。人の経歴を別々に列挙するより、 料理人経験に基づく調理・厨房管理能力 と束ねれば、一つ目の強みとして短く表せます。

多様な食品を少量ずつ受ける力を、別の強みとして残す ​

和食・洋食の総菜に加え、菓子やパンも作り、販売先ごとの製品仕様へ対応しています。調理技術という能力が、 多品種少量の食品を受託製造する対応力 として実際に使われている点が二つ目の強みです。

第2問では、その体制を人手が減っても維持するための改善を考えます。第4問では、受託で蓄積した知識を自社企画へ活かします。現在の対応力があることと、そのやり方を今後もそのまま続けられることは分けて捉えます。

第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける ​

答案へ残す能力を1軍、その裏付けとなる経歴や体制を2軍として整理します。

第1問で拾った候補後続設問とのつながり答案に残す方向
経営者・工場管理者の料理人経験第2問の標準化・教育、第4問の調理知識の共有へ活かす調理・厨房管理能力
多様な食品の少量受託・試作対応第4問の企画開発の土台、第5問の新事業向け体制との比較多品種少量の受託対応力

ベテランの存在や販売先別の班は、能力を支える根拠へ含めます。ホテル・旅館の受注回復は外部環境の変化なので、生産面の強み二つを置く場所には入れません。

二つの強みを40字で答案化する ​

答案の骨格は、 調理・厨房管理能力+多品種少量の受託対応力 です。一つ目に「料理人経験」、二つ目に「食品」を肉付けし、何に裏付けられた、何への対応力かを明確にします。

「強みは〜である」の書き出しより二つの名詞句を優先し、一つの長所を言い換えて二つに数えない ようにします。40字は二つを合わせた上限として配分します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の多品種少量生産の解説は、受注の頻度・数量に合う生産の仕組みを考える参考になります。本問では改善策を展開する前に、C社が既にどのような注文へ応えられるかを整理します。

類題は、2025年度事例III第1問、2024年度事例III第1問、2021年度事例III第1問です。共通点は与件の資源・実績を能力へまとめる点。相違点は、2021・2025年度は弱みも扱い、2024年度は強みを80字で述べるのに対し、本問は生産面の強み二つを40字へ絞る点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「多品種少量生産における効率的な生産方法を教えてください。」(受注頻度とロットサイズを分析し、段取り効率と在庫保有を組み合わせて生産方式を決める方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 2 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社の製造部では、コロナ禍で受注量が減少した 2020 年以降の工場稼働の低下による出勤日数調整の影響で、高齢のパート従業員も退職し、最近の増加する受注量の対応に苦慮している。生産面でどのような対応策が必要なのか、100 字以内で述べよ。

回答例(97 字) ​

食材・使用量・手順と変更をレシピに整理して共有し、共通手順をパート従業員に教育して技能を引き継ぐ。衛生区画を保ちつつ工程順の配置で動線を短縮し、専用器具の導入で手作業を減らして受注増に対応する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

パート従業員の退職と受注回復に対し、 少ない人員でも増加する受注へ対応できる生産上の対策を100字で助言します。 口頭で伝える仕様・変更をレシピに整理し、共通手順を教育します。さらに、衛生区画を維持しながら配置・器具を改善し、一人当たりの処理量を高めます。

ホテルの厨房のような作り方を、工場の生産へ合わせる ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第6段落: 食品衛生管理上交差汚染を防ぐようゾーニングされている、 各加工室の設備機器のレイアウトはホテルや旅館の厨房と同様 とあります。衛生上の区分には意味がありますが、室内配置は工場としての流れから見直す余地があります。
  • 図:食材を加工する工程の順序と、調味料を調合・配合へ、配送用コンテナを包装へ供給する流れが示されています。設備配置と資材の置き場を見直す手掛かりになります。
  • 第7段落: 受注量が最も多い総菜、 鍋やボウル、包丁など汎用調理器具を使って手作業 とあります。改善対象と、人の作業負担が大きい製造方法が示されています。
  • 第8段落: パート従業員に直接作業方法を指導、監督 とあります。作業を教える仕組みはありますが、工場管理者とリーダーの直接指導に頼っています。
  • 第10段落: メモ程度のレシピ、 整理されていない とあります。指導の内容を、誰もが使える基準へ整える必要があります。
工程の順に配置し、運ぶ・取りに戻る負担を減らす ​

図から、食材がトリミング・洗浄、計量・カット、調合・配合、加熱・調理、包装の順に流れることが分かります。また、調味料は計量して調合・配合へ、配送用コンテナは包装へ供給されます。まず受注量の多い総菜について、この工程順に設備を配置し、必要な資材を使う場所へ供給できるかを調べます。

図は工程のつながりを示したもので、実際の設備配置や運搬距離を示した配置図ではありません。長距離の運搬や動線の交差、特定工程のボトルネックが発生していると断定せず、第6段落の厨房型レイアウトと組み合わせ、現場で移動・運搬の負担を確認する手掛かりにします。

例えば、計量した食材を離れた場所へ運んだり、必要な器具を取りに戻ったりしていれば、配置の見直しで移動を短縮できます。 工程順の設備レイアウトで動線を短縮する ことが、人を増やさずに作業へ使える時間を増やす対策です。

第6段落の 「ゾーニングされているが」 は、衛生面の配慮と厨房型レイアウトを対比しています。加工室の区分を一律になくすのではなく、交差汚染を防ぐゾーニングを維持して流れを改善する と考えます。

汎用器具の手作業を、量に合った器具へ置き換える ​

少量なら包丁や鍋で柔軟に対応できても、同じ手作業のまま受注が増えると必要な人手も増えます。反復が多く負担の大きい作業を選び、 専用調理器具を導入して作業負荷を軽減する 方法を考えます。

例えば、一定の大きさへ切る作業を補助する器具などが候補です。対象製品の量、段取り・洗浄の手間、品質を確かめ、全ての製品を一律に機械化するのではなく、効果の大きい作業から改善します。

良い作業方法をそろえ、他の人にもできるようにする ​

配置と器具が変わっても、使い方が人ごとに異なれば、時間と出来栄えは安定しません。工場管理者・リーダーが持つ知識を使い、食材の量、手順、調理条件、確認点と仕様変更をレシピへ整理し、最新の内容を共有します。

その基準で 作業を標準化し、教育訓練で定着させる ことで、直接付き添う指導の負担を減らし、他のパート従業員も安定して担当できるようにします。レシピの整備は、第3問では必要材料量、第4問では製品開発にも使う共通の土台です。

変える対象具体策人手不足への効き方
配置工程順に配置し動線短縮移動・運搬に取られる時間を減らす
器具負担の大きい作業へ専用器具手作業を減らし処理量を増やす
作業・人標準化と教育訓練手順を共有し品質と作業時間を安定させる

レシピ・教育から配置・器具の改善へ100字で答案化する ​

答案の骨格は、 口頭の仕様・変更のレシピ化と共有→共通手順の教育→衛生区画を保つ配置・器具の改善→受注増への対応 です。レシピと教育で技能を引き継ぎ、工程順の配置で動線を短縮し、専用器具で手作業を減らします。交差汚染を防ぐ区画を撤廃する案にはしません。

単に「効率化する」とせず、配置には動線短縮、器具には手作業の削減、標準化には教育を添えます。最後は 増加する受注へ対応できること へつなぎ、採用策だけで答案を終えないようにします。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の業務プロセス改善からは、作業を分解して移動や待ちを減らす視点を、技能伝承からは、個人のやり方を記録して教育へ使う視点を持ち帰れます。C社では厨房型の配置・汎用器具の手作業と、直接指導への依存へ当てはめます。

類題は、2019年度事例III第3問(設問1)、2015年度事例III第2問、2007年度事例III第4問です。共通点は、人・設備・工程の関係から必要な能力を確保する点。相違点は、新工場や設備投資を主に扱う類題に対し、本問は既存工場の人手不足を、衛生条件を守る配置・器具・標準化で補う点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「業務プロセスの見直しによる生産性向上」(作業工程を見える化し、待ち・移動等のムダを除き、人材を流動化してPDCAで改善する方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「マニュアルで表せない技術の伝承方法を教えてください。」(技能を収集・保存・分析・標準化・展開・改善し、若手へ形式知として伝える方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社では、最近の材料価格高騰の影響が大きく、付加価値が高い製品を販売しているものの、収益性の低下が生じている。どのような対応策が必要なのか、120 字以内で述べよ。

回答例(114 字) ​

レシピと生産計画から食材所要量を算定し、在庫を差し引いて発注を一元化するとともに、入出庫・期限の記録と適時納入・先入れ先出しで廃棄を減らす。材料単価と使用量から製品原価を把握し、販売先料理長と食材・仕様を見直して採算を確保する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

材料価格の高騰で収益性が低下しているC社へ、 材料の使い方と調達・在庫管理を改善する対応策を120字で助言します。 高付加価値の商品を作れていても、余分に買い、廃棄していれば利益は残りません。

必要量が分からない発注と、記録のない在庫をつなげて読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第10段落: メモ程度のレシピ、 整理されていない とあります。何をどれだけ使うかを共通の基準として参照しにくい状態です。
  • 第11段落: 必要量を経験値で見積り、 月末に定期発注、 入出庫記録がなく、 在庫量は増加傾向にあり、廃棄も生じている とあります。必要量の見積もりと実際の残量が結びつかず、余剰と廃棄が生じています。
  • 第12段落: 宿泊予約数の変動によって週初めに修正し確定 とあります。月度計画の後にも数量が変わります。材料手配へ最新の必要量を反映する必要があります。
  • 第11段落: 製造日に必要な食材や調味料は前日準備、 その時点で納品遅れが判明 とあります。過剰在庫がある一方で、必要な材料が間に合わないこともあります。
図の材料の流れに、記録する場所を対応させる ​

図では、資材管理課が食材類・調味料類を受け入れて保管し、総菜製造課の前処理や計量・調理へ供給しています。この部門間の受け渡しに沿って、入庫時には品目・数量・期限を、製造へ払い出す時には数量と使用先を記録すると、保管残量と製造で使う量を結び付けられます。

製造側では、トリミングなどの前処理への投入量と、実際に利用できた量、廃棄量・理由を確認します。資材管理側の期限切れによる廃棄と、加工時の歩留まりによるロスを分ければ、必要量の見積もりや作業方法をどこから改善するか判断しやすくなります。図は記録・確認する場所を考える手掛かりであり、ロスの発生量や原因が確定しているわけではありません。入出庫記録の欠如や廃棄の発生は第11段落を根拠にします。

レシピを基準に、作る量から必要な材料量を計算する ​

パートリーダーが経験で多めに発注しても、それが最新の生産量や在庫と合っているかは確かめにくくなります。まず、 製品別に食材・使用量を記したレシピを整備する ことを起点にします。

一つの製品に必要な食材量と生産計画が分かれば、製品ごとの必要量を計算し、共通食材は合算できます。単価も結びつけて製品別原価を把握すれば、どの製品で材料費の上昇や使い過ぎが収益へ響いているかを検討できます。

週初めに納品数量が修正されるため、月度計画だけで計算を固定しません。 最新の生産計画とレシピから食材所要量を算定する という情報のつながりを作ります。

発注をまとめ、必要な時期と期限に合わせて納めてもらう ​

各班の経験による手配を、例えば資材管理課が全体の所要量から実在庫を差し引き、発注量を調整する仕組みへ変えます。 発注を一元化し、消費期限と調達期間に合わせて数量・納品日を決める ことで、同じ食材の重複や早過ぎる納入を抑えます。

食品商社は既に計画と消費期限を考慮して納品しています。取引先を替えることより、C社から最新の必要量・在庫・希望日を伝え、納品予定を早めに確認することが先です。前日になって不足を知る状態を改めれば、余分な保有を減らしながら欠品も防ぎやすくなります。

入出庫と期限を記録し、廃棄が生まれる原因を減らす ​

第11段落では、資材管理課が保管していることに続き、 「が、入出庫記録がなく」 とあります。保管する担当はあっても、何が何個残り、いつまで使えるかを判断する情報が不足している点が問題です。

品目・数量・入出庫日・消費期限を記録し、 先入れ先出しと期限の確認で在庫を適正化する ことを考えます。入庫順だけに頼らず期限も確認し、使える食材を残したまま新しい物を使って廃棄を増やさない運用にします。

さらに、投入量に対して製品に使えた量を表す歩留まりと、廃棄量・理由を記録します。期限切れなのか、前処理で余分に捨てたのかを分けて改善すれば、 購入した材料を製品へ使い切る割合を高め、材料費を抑える ことにつながります。在庫ゼロを目指すのではなく、必要な日に使える量へ合わせるのが目的です。

製品原価から、販売先と食材・仕様を見直す ​

材料単価と使用量を結び付けて製品別原価を把握し、材料高騰が採算へ与える影響を確認します。ロス削減だけで吸収できない場合は、販売先料理長と食材・仕様の見直しを相談します。受託仕様をC社が一方的に変えず、味や品質、原価への影響を確かめ、顧客の合意を得て調整します。

発注・在庫管理と製品原価の見直しを120字で答案化する ​

答案の骨格は、 レシピと計画から所要量を算定し在庫を差し引く→発注一元化・入出庫と期限の管理で廃棄を減らす→製品原価を把握し販売先料理長と食材・仕様を調整する です。量的なロス削減と、材料価格を踏まえた採算確保を分けて示します。

「在庫を減らす」とだけ書かず、必要量を決める前提と、残量を把握する仕組み の両方を残します。値上げだけへ話を広げるより、与件に具体的に示された過剰在庫・廃棄・欠品の原因へ対応しましょう。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21のコスト削減の解説は、費用を細かく分け、どこで負担が発生しているかを把握する参考になります。C社では製品別原価と材料の投入・廃棄を調べ、レシピ、調達、在庫のどこを変えると材料費が下がるかへ具体化します。

類題は、2024年度事例III第4問、2016年度事例III第2問、2010年度事例III第2問です。共通点は、生産管理を通じて費用と収益性を改善する点。相違点は、2024年度は価格交渉の社内準備、2010年度は工程移管への対応を扱い、2016年度と本問は食品の生産管理を扱う点です。本問では消費期限のある材料の所要量・在庫・廃棄へ焦点を置きます。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コスト削減の仕方」(活動別・製品別の間接コストまで可視化し、ムダ・ムラ・ムリを特定して削減する方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 4 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

C 社社長は受注量が低迷した数年前から、既存の販売先との関係を一層密接にするともに、他のホテルや旅館への販路拡大を図るため、自社企画製品の製造販売を実現したいと思っていた。また、食品スーパー X 社との新規事業でも総菜の商品企画が必要となっている。創業から受託品の製造に特化してきた C 社は、どのように製品の企画開発を進めるべきなのか、120 字以内で述べよ。

回答例(108 字) ​

製品開発部の外部人材の開発経験と工場管理者の調理技術を結集し、料理長やX社から需要・評価を聞いて季節性と高級感ある総菜を企画する。レシピを共有し、試作と顧客評価で味・原価・製造可能性を確かめ、仕様を固めて商品化する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

受託品の製造に特化してきたC社が、 自社企画製品を開発する進め方を120字で助言します。 社内の調理ノウハウと顧客の評価・ニーズを、製品開発部が結びつける流れで考えます。

指示どおりに作る力を、自ら企画する力へ広げる ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第9段落: その販売先料理長が選定する食品、 口頭で直接指示を受けて試作し決定、 製品の出来栄えのチェック とあります。現在は販売先が商品を選び仕様を決めますが、来社時には評価や要望を直接聞ける接点もあります。
  • 第10段落: メモ程度のレシピ、 整理されていない とあります。蓄積した知識が、開発担当者の使える共通情報になっていません。
  • 第13段落: 中食需要に対応する総菜の商品企画、 季節性があり高級感のある和食や洋食の総菜、 中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験 とあります。X社の求める方向、C社が活かす特徴、新設の製品開発部を担う人材が示されています。
外部人材の開発経験と、工場管理者の調理技術を結び付ける ​

料理人経験のある工場管理者は、販売先の指示を理解し、試作や仕様変更へ対応してきました。しかし、経験がその人の記憶とメモにとどまると、新しく入った開発担当者は何が得意で、何を応用できるかを探しにくくなります。

外部から採用した人材は製品開発の実務・管理経験を持っています。この経験と工場管理者の調理技術を結集するため、製品開発部が工場管理者から聞き取り、食材・使用量・調理条件・手順や出来栄えの確認点を整理します。 調理ノウハウとレシピをデータベース化する ことで、過去の経験を次の試作へ使える知識へ変えます。

単なるメモの電子化ではなく、製品ごとに同じ項目で探せるようにし、変更履歴と更新担当を決めます。既存の受託品をそのまま別の顧客へ出す発想ではなく、蓄積した調理の知識を新しい企画へ応用します。

顧客からの指示だけでなく、その背景のニーズを聞く ​

販売先料理長は試作時だけでなく、納入期間中も出来栄えを確認しに来ます。 製品開発部が来社時に同席し、評価やニーズを直接聞く ようにすれば、工場管理者が受けた変更指示の結論だけでなく、なぜ変えたいのかも捉えられます。

例えば、食材の変更希望の背景に季節感を出したい意図があるなら、別の旬の食材を使う企画につなげられます。調理や提供時の負担を聞けば、厨房で扱いやすい仕様も考えられます。聞き取った内容を社内の技術・レシピと結び、言われた物を作るだけでなく提案する力へ広げます。

開発部を中心に、企画・試作・評価を繰り返す ​

製品開発部には食品製造業で開発の実務・管理を経験した人材がいます。その知見を使い、 顧客情報と社内知識を結ぶ組織的な製品開発プロセス を作ります。

開発部が企画をまとめ、工場管理者と試作し、販売先から評価を受けて改良する流れです。味だけでなく原価と工場での製造可能性も確かめ、食材・量・手順などの仕様を固めて商品化します。例えばX社向けなら、季節性と高級感を持つ和洋総菜という方向を、店舗で求める価格・数量や工場で安定して作れる条件と照らし合わせます。

ホテル・旅館の料理長とX社の商品企画担当者では、評価する場面も求める商品も異なります。顧客ごとのニーズを確かめ、共通の調理知識を使って企画を変える ことが、既存客との関係強化と新たな販路の両方を支えます。

社内知識と顧客情報を開発へつなぐ流れを120字で答案化する ​

答案の骨格は、 外部人材の開発経験と工場管理者の調理技術→顧客ニーズに合う企画→レシピ共有・試作・顧客評価→仕様を固めて商品化 です。データベース化で止めず、料理長やX社から聞いた需要・評価を、味・原価・製造可能性の確認へ結び付けます。全販路の列挙は必要ありません。

「データベース化する」で止めず、その情報を誰が何に使うかまで残します。開発担当者に丸投げするのではなく、既存の調理能力と新しい開発経験を結びつける進め方 を書きましょう。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の組織・体制づくりの解説からは、顧客の声を取り込み、社内で商品開発へ活かす仕組みを学べます。C社では料理長の来社が情報収集の機会であり、製品開発部が工場管理者の知識とつなぐ役割を担います。

類題は、2022年度事例III第2問、2013年度事例III第2問、2011年度事例III第3問です。共通点は、顧客要求と社内の設計・開発の知識をつなぐ点。相違点は、2022年度は金型設計の短縮、2013年度は技術部の共有・効率化、2011年度は特注品事業への対応を扱い、本問は受託製造から自社企画へ進む体制を考える点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

第 5 問(配点 30 点) ​

設問文 ​

食品スーパー X 社と共同で行っている総菜製品の新規事業について、C 社社長は現在の生産能力では対応が難しいと考えており、工場敷地内に工場を増築し、専用生産設備を導入し、新規採用者を中心とした生産体制の構築を目指そうとしている。この C 社社長の構想について、その妥当性とその理由、またその際の留意点をどのように助言するか、140 字以内で述べよ。

回答例(126 字) ​

構想は受注拡大に必要な能力を確保する点で妥当だが、当初は少数店舗のため需要と採算を確かめ段階的に投資する。納品2日前の確定数量を計画へ反映し午前・午後の配送で鮮度を保つとともに、熟練者が標準レシピ・作業手順を新規採用者へ指導し、品質と生産性を確保する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

増築・専用設備・新規採用者を中心とした体制について、 妥当性、理由、留意点の三つを140字で助言します。 新事業の量と納品条件に合う生産方式を選び、設備だけでは解決しない配送・品質・教育も考えます。

既存の少量受託と、店舗へ広げる供給を比べる ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第2段落: 多品種で少量の食品を受託製造 とあります。既存事業は販売先ごとの少量注文に対応しています。新事業との比較の出発点です。
  • 第13段落: 中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験 とあります。外部から採用した人材の経験を、新しい製品と作り方の整備へ活かせます。
  • 第14段落: 納品数量は納品日の 2 日前に確定、 最低午前と午後の配送、 10 数店舗まで徐々に拡大 とあります。数量が決まる時期、多頻度の納品、段階的な店舗拡大という運用条件があります。
  • 第15段落: 現在の生産能力では対応が難しく、 工場増築などによって生産能力を確保する必要 とあります。既存工場へ新事業をそのまま追加するのは難しいと、社長が認識しています。
現能力の不足と段階的な店舗拡大から妥当性を判断する ​

X社向けは、共同企画した商品を数店舗から供給し、対象を10数店舗まで徐々に拡大する計画です。第15段落では、現在の生産能力では対応が難しいと明記されています。増加する受注に必要な能力を確保する点で、構想には妥当性があります。

ただし、当初から全店舗分の需要があるわけではありません。 少数店舗で需要と採算を確かめ、段階的に投資する ことを条件に評価します。品種数やロット規模は確定していないため、少品種量産だから専用設備が必要とは断定しません。

比較する点既存のホテル・旅館向けX社向け新事業で考えること
製品と量販売先ごとの多品種少量共通企画商品の多店舗供給に合う専用設備
生産能力人手不足で受注増への対応が難しい既存事業を圧迫しない能力の追加
納品条件宿泊予約により週初めに修正2日前の数量確定と午前・午後の配送
作業の担い手経験者による直接指導が中心新規採用者も安定して作れる標準・教育
店舗数の見込みと、実際に作る数量を分ける ​

第14段落の 「当初は」 に続くのは、数店舗から始め、徐々に広げる計画です。将来の10数店舗分を最初から確定注文とみなすのではなく、見込量に応じて設備能力・投資額を検討します。

各月の販売計画は人員・材料・能力を準備する情報、 納品2日前の確定数量は実際の製造・配送を決める情報 と分けます。専用設備で大量に作れることと、必要以上に作ることを混同せず、鮮度と納品時刻に合わせた計画にします。

製造した後の配送まで、能力を確保する ​

新事業では、鮮度を保つため最低でも午前と午後に納品します。生産能力だけ増やしても、運ぶ車両・人員・時間が不足すれば店舗へ届けられません。 多頻度配送に対応する物流体制 を、生産の完了時刻と一緒に設計します。

既存の営業部は配送も兼ねています。例えば、既存客への納品とX社店舗への便が重なる時間帯を確認し、配送ルート、担当、保冷・保管の方法を整えることが考えられます。店舗拡大に合わせ、必要な便数と人員を確保していきます。

新規採用者でも、同じ品質を作れる仕組みにする ​

新しい人員を集めても、従来と同じ口頭指導中心では管理者の負担が増え、品質も安定しにくくなります。既存の熟練者が持つ調理技能をレシピ、作業条件、品質確認の基準へ整理し、新規採用者を指導します。外部人材の明示された経験は製品開発の実務・管理であり、生産教育の専門家とまでは断定しません。

その基準で教育し、試作・試運転で出来栄えと処理量を確認してから供給を広げます。 標準化された生産・品質管理と教育訓練 があってこそ、新規採用者を中心とする体制を支えられます。増築・専用設備・人の採用を、安定供給できる仕組みまでつなぐことが留意点です。

妥当性・理由・留意点を140字で答案化する ​

答案の骨格は、 能力確保の点で妥当だが需要・採算を確かめ段階的に投資→2日前の確定数量に基づく生産と午前・午後の配送→熟練者による標準レシピ・作業手順の教育 です。構想の妥当性を条件付きで示し、納品条件と新規採用者の育成を具体化します。

「妥当。理由は〜。留意点は〜。」と問いの順に場所を確保します。設備の利点だけで140字を使い切らず、物流と人・品質を残す ことが重要です。段階的な拡大や確定数量の説明も、体制が実際に機能するかを判断する材料になります。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

J-Net21の製造現場の生産性向上は、事業の方向に合う設備・体制を選ぶ参考に、工程管理の解説は、作業条件と品質の記録から異常を早く捉える参考になります。C社では専用設備だけでなく、新規採用者が標準どおりに製造し、鮮度を保って納品する運用まで整えます。

類題は、2019年度事例III第3問(設問1)、2015年度事例III第2問、2007年度事例III第4問です。共通点は、新工場・設備投資を実際の需要と工程能力に結びつける点。相違点は、本問が妥当性の判断に加え、食品の多頻度配送と新規採用者中心の品質管理まで求める点です。

出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「製造現場の生産性向上」(事業領域と強みを踏まえ、設備、IT、生産管理システム、CAD/CAM等で製造現場の生産性を高める方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「不良品を出さないための工程管理方法について教えてください。」(工程条件と管理値を記録して異常を早期発見し、不良の未然防止と再発防止へつなげる方法)

公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

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