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平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅰ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
研究開発型企業である A 社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から 100 字以内で答えよ。
回答例(100 字)
資源が限られる研究開発型企業のため、大手が量産・価格で優位に立つ市場での直接競争を避ける。センサー等の高度技術を特注・高精度の専門需要に集中し、小規模市場で差別化して競争優位と安定収益を確保するため。
解説
この問題の着眼点
小規模な市場を狙う理由を、競争戦略の視点から100字で説明する問題 です。「誰と競うことを避けるか」と「何で顧客に選ばれるか」を結びます。市場の小ささだけでなく、A社の資源と技術に合う競争の仕方を考えます。
与件文から、競争する範囲と強みを読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落: 従業員数は約 50 名、 研究開発中心の企業 とあります。大規模な生産・販売ではなく、開発を中心に資源を使う企業です。
- 第2段落: コアテクノロジーであるセンサー技術、 高精度の製品開発、 売上の 8 割近くを主力取引先向け電子機器製造に依存 とあります。固有技術を持つ一方、過去には大口取引先への依存がありました。
- 第3段落: 自社技術を応用した様々な新製品開発 とあります。蓄積した技術を別の用途へ使ってきました。
- 第4段落: ニッチ市場に向けた製品、 継続的に安定した収入源 とあります。小市場への開発を続けてきましたが、収益の柱を得ることには苦労しています。
大きな市場で広く競うには、資源が足りない
A社は約50名で研究開発を中心に事業を行っています。幅広い顧客を対象に、大量生産や大規模な販売活動で大手と競えば、人員や資金を広く分散させる必要があります。
そこで、 限られた経営資源を、対応する顧客と用途に集中する 方向が考えられます。大手が大きな売上規模を得にくい市場を選べば、規模や価格を軸にした直接競争を避けやすくなります。
小さく絞った市場で、技術による独自価値を出す
A社にはセンサー技術と高精度の開発経験があります。一般的な製品では満たされにくい特殊な計測・制御等の要求に、その技術を合わせることができます。 ニッチ市場への集中と、固有技術による差別化 を一組にする考え方です。
| 判断する軸 | A社の選び方 | 競争上の意味 |
|---|---|---|
| どこで競うか | 規模の小さな市場へ絞る | 資源分散と大手との直接競争を避ける |
| 何で選ばれるか | センサー技術・高精度の開発力 | 特殊な需要に応える独自価値をつくる |
二つを合わせると差別化集中戦略です。市場を狭くするだけの説明では、低価格で競うのか技術で競うのかが残りません。A社では安さよりも、技術を使った対応力に根拠があります。
市場を絞ることと、一社へ依存することを分ける
第2段落の 「もっとも」 は、共同開発が増えても売上の大半を主力取引先へ依存していたことを示します。市場の選択と、一社の発注に左右される状態は別です。技術の応用先を広げながら、自社の強みが活きる需要を選ぶ方向で捉えます。
また、ニッチ市場でも全ての製品が受け入れられたわけではありません。安定収益は狙う効果であり、小市場へ入れば保証される成果ではありません。 顧客の要求と技術が適合し、取引が続くこと が必要です。
小市場を選ぶ理由を100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
限られた資源では大手の量産・価格競争に対応しにくいことを背景に置きます。そのうえで、センサー等の技術が役立つ特注・高精度の専門需要へ集中するという、技術と市場の対応を示します。単に小さい市場を選ぶのではなく、自社技術で独自価値を出せる需要に絞ることが、差別化と収益確保につながります。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」は、限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択・集中する考え方について解説しています。本問では、「競争範囲を選ぶ」と「自社資源と市場を対応させる」を2018年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2018年度への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 競争範囲を選ぶ | 約50名のA社はニッチ市場へ対象を絞る | 小市場なら自動的に有利としない |
| 自社資源と市場を対応させる | センサー技術・研究開発力を特殊ニーズへ適合 | 技術力がある、の抽象語で終えない |
| 独自価値で競争優位を築く | 大手との価格・規模競争を避けて技術で差別化 | 集中と差別化の片方だけにしない |
類題は、2015年度事例I第1問(ゲートボール・グラウンドゴルフ等の小規模市場特性を分析する問題)、2017年度事例I第4問(地域市場から全国市場へ広げる際にブランド・人材面のリスクを診断する問題)、2023年度事例I第2問(競争相手との違いを作り、標的市場を選ぶ狙いを問う問題)です。共通点は、競争範囲と優位の源泉を分け、自社資源に合う候補を選ぶことです。本問では狭い市場と技術差別化がそろうため、差別化集中を選びます。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」(限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択・集中する考え方)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2018年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 40 点)
設問文
A 社の事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問 1)
A 社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A 社の人員構成から考えて、その理由を 100 字以内で答えよ。
回答例(100 字)
約9割が技術者で、市場調査や商品企画・販路開拓を担う人材が乏しく、消費者の潜在需要を製品に反映し販売する力が弱いため。法人の具体的な特注要求や共同開発に技術者の強みを集中する方が、能力を活かせるため。
解説
この問題の着眼点
最終消費者向けの製品開発に力点を置かなかった理由を、人員構成から100字で説明する問題 です。技術者が多いという事実を、その裏側で手薄になる機能と結びます。
技術を開発する力と、市場をつくる力を分けて考える
与件文のどこを見るか
- 第7段落: 技術者が 9 割近く、 管理業務を兼務、 従業員数は倍増程度にとどまっている とあります。限られた人員を技術・開発へ厚く配分しています。
- 第1段落: 生産を他社に委託、 販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託 とあります。社内で全ての機能を抱えず、開発を中心にしています。
- 第2段落: 大手・中堅メーカーとの共同プロジェクト、 売上の 8 割近くを主力取引先向け電子機器製造に依存 とあります。企業の要求を受けて開発する経験が中心でした。
- 第11段落: 取引先や顧客などの声を反映させていた受け身の製品開発 とあります。従来の開発の起点を確認できます。
約9割が技術者という配分から、何が手薄かを読む
A社の強みは研究開発ですが、最終消費者向けの事業では、技術的に優れた製品を作るだけでは足りません。生活上の需要を調べ、用途や価格を決め、価値を伝え、買える売場を開く必要があります。
約9割が技術者で、営業や管理の兼務もある構成では、こうした仕事へ専任の人員を厚く置きにくいと考えられます。 開発機能への偏り→市場調査・販促・ブランド構築・販路開拓の手薄さ へ一段まとめることが本問の読み取りです。
法人の要求を受ける開発と、消費者の需要を探す開発は異なる
企業との共同プロジェクトでは、相手が必要な機能や性能を伝え、それに技術で応える形を取りやすくなります。最終消費者向けでは、多様な使い手の需要を自社で探し、誰に何を売るかを決める負担が大きくなります。
第2段落の 「もっとも」 が示す主力取引先への依存も、特定の企業の要求に応じる開発が中心だったことを支えます。 企業の要求へ応える能力と、消費者市場を開く能力 を分けると、人員構成と事業の重点を結びつけられます。
外部へ任せる構造も、開発への集中と整合する
現在は生産・販売を外部へ委託しています。社内の開発力を活かす選択である一方、最終消費者に直接接して調査・販促・販売を行う機能は社内に厚く蓄積しにくい構造です。
営業職が全くいない、技術者は顧客を理解できないと決めつける必要はありません。 専門人材の配分と経験が、企業向けの開発に適した形になっている と説明します。現在の委託形態が創業時から同一だったとも断定せず、設問が指定する人員構成を理由の軸に置きます。
人員構成から不足機能を100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
約9割が技術者という人員構成から、消費者の需要を探り商品化・販売する専門機能の薄さを説明します。法人向けでは具体的な要求を受けて技術を開発する働きが中心となり、技術者の強みを活かしやすいという対比も残します。市場調査・販促・ブランド等を全て列挙するより、消費者向けに不足する機能と法人向けに適合する能力をつなぎます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
中小企業白書の人材戦略の視点は、事業戦略に必要な役割を洗い出し、現在の人材構成との過不足を人材ポートフォリオとして確認する際に使えます。
| 公的資料の判断軸 | 当年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 現有人材の偏りを把握する | 社員の約9割が技術者 | 技術者が多いだけで結論にしない |
| 戦略に必要な役割を特定する | 市場調査、販促、ブランド、チャネル開拓 | 営業人員不足の一語で済ませない |
| 情報を開発へ還流する | 消費者ニーズを技術者へ伝える機能が弱い | 技術力不足と誤読しない |
類題は、2013年度事例I第2問(設問1)(顧客接点へ適合する人材を選ぶ問題)、2020年度事例I第3問(直販に必要な営業能力を育てる問題)、2022年度事例I第2問(戦略に必要な人材の獲得・定着を考える問題)です。共通点は、人数でなく役割・能力の過不足を見ることです。本問では技術者偏重とBtoC機能不足の対比が理由になります。
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。
(設問 2)
A 社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100 字以内で答えよ。
回答例(96 字)
従来は特注機器や装置販売など売切り中心で、案件ごとに収益が変動しやすいフロー型だった。一方、複写機関連は再生品・部品・トナー等の消耗品供給を伴う反復取引で、継続的に収益を得るストック型である。
解説
この問題の着眼点
従来製品と複写機関連製品の事業特性の違いを100字で比較する問題 です。製品の種類ではなく、取引がいつ終わり、次の収益がどう生まれるかを共通の軸にします。
製品を一度売る事業から、使われる間の需要へ
与件文のどこを見るか
- 第4段落: 継続的に安定した収入源、 販売した時点で取引が完了する売切り型の事業の限界 とあります。製品の性能だけでなく、収入が続く仕組みを変えることが課題でした。
- 第1段落: 複写機の再生品や複合機内部の部品、 複写機用トナーなどの消耗品 とあります。交換・補充等の繰り返し需要につながる製品が含まれています。
- 第5段落: 大口顧客は事務機器を販売していたフランチャイズ・チェーン、 A 社の売上も頭打ちになった とあります。販売先との取引を得た後も、市場縮小の影響は受けています。
売切り型は、次の収入のために次の案件が必要になる
以前の特注電子機器や検品装置等は、開発して販売した時点で取引が完了する形でした。技術的に良い製品ができても、その販売だけで継続した収入が決まるわけではありません。
次の案件や新製品が必要になるため、受注の有無によって収益が変動しやすくなります。 一度の開発・販売で完結し、案件ごとに収入を得る売切り型 という特徴です。
部品・トナーは、機器が使われる中で次の需要を生む
複写機関連には再生品、内部部品、トナー等が含まれます。機器の使用に伴ってトナーの補充や部品交換などの需要が生まれれば、同じ販売先との取引を繰り返せます。
使用・交換・補充に伴う反復需要を取り込む ことで、一度の販売から次の供給へつなぐ方向です。フロー型とストック型という用語は、この収入の続き方を整理する補助になります。定額料金や保守契約があるとは書かれていないので、反復取引そのものを説明します。
| 比較軸 | 従来の製品 | 複写機関連製品 |
|---|---|---|
| 取引の続き方 | 販売時点で完結する売切り中心 | 部品・消耗品等の供給が繰り返される |
| 次の収入の源泉 | 新しい案件や製品の受注 | 使用に伴う交換・補充などの需要 |
| 目指す収益の性質 | 案件ごとに変動しやすい | 継続した取引で安定化を図る |
継続収益の仕組みも、市場変化の影響は受ける
第5段落の 「ところが」 の後では、市場が縮小して売上が頭打ちになります。反復需要を持つ事業でも、顧客の利用や市場そのものが減れば成長は鈍ります。
したがって、複写機関連へ参入した狙いは収益の安定化ですが、永久に売上が増える仕組みではありません。 収入の繰り返し方と、市場の成長性を区別する と、その後も新規事業開発を続ける背景まで理解できます。
二つの事業特性を100字で答案化する
答案の骨格は、 従来は売切り・案件ごとの収益/複写機関連は部品・消耗品の反復取引・継続収益 です。前半と後半に約50字ずつを取り、同じ収益軸で対比します。
「従来は〜。一方、複写機関連は〜。」と書き、 何を売るかに加え、なぜ収入が続くか を残します。製品名を列挙するだけでなく、売切りと継続供給の違いが読める形にまとめます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
中小企業白書の事業戦略・経営資源配分の視点は、事業ごとの顧客、価値提供、収益発生、継続性を比較してポートフォリオを評価する際に役立ちます。
| 公的資料の判断軸 | 当年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 売上発生の単位を比べる | 従来は特注案件ごとの売切り | 不安定という感想だけにしない |
| 反復需要の源泉を確認する | 再生品・部品・トナーを継続供給 | 複写機本体の販売と誤読しない |
| 必要な運営能力を合わせる | 在庫、品質、供給、顧客関係を継続管理 | 安定収益を自動的な結果としない |
類題は、2015年度事例I第3問(事業構成と依存リスクを診断する問題)、2021年度事例I第3問(事業ドメイン拡大の利点・リスクを考える問題)、2016年度事例I第1問(設問2)(事業の関連性と資源配分を評価する問題)です。共通点は、事業を売上高だけでなく収益構造・資源で比較することです。本問は売切りフロー型と消耗品ストック型を明確に対比します。
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
A 社の組織改編にはどのような目的があったか。100 字以内で答えよ。
回答例(98 字)
複写機事業の先細りを補う新製品を生むため、専門技術者を製品別の混成チームにして知識を統合する。品質管理・生産技術が開発を支援し、複数の生産委託先と調整して、製品化の品質と円滑な量産を確保する目的。
解説
この問題の着眼点
組織改編の目的を100字で説明する問題 です。部門名の変更を写すのでなく、異なる技術をどう結び、開発した製品をどのように生産へつなげる体制にしたかを読みます。
技術別のまとまりから、製品を実現する役割分担へ
与件文のどこを見るか
- 第8段落: 専門知識別に部門化、 製品開発部門、品質管理部門、生産技術部門に編成替え、 専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チーム、 製品開発部門の業務をサポート、 複数の生産委託先との調整業務 とあります。組織の区切り方、チームの構成、支援部門の役割が同時に変わっています。
- 第6段落: 新規事業や製品の開発にチャレンジし続けている とあります。事務機器市場の変化を踏まえ、次の事業を生み出す必要があります。
- 第1段落: 基本的に生産を他社に委託 とあります。開発だけでなく、生産委託先との接続も必要です。
一つの製品のために、異なる専門家を集める
第8段落の 「しかし」 は、電子回路・精密機械・ソフトウェアという専門知識別の区切りから、製品開発・品質管理・生産技術という役割別の区切りへの転換を示します。
さらに開発部門の各グループは、異なる専門技術を持つ人材を組み合わせた混成チームです。製品の性能や仕様を決める際に、それぞれの技術から意見を出し合えるため、 専門知識を組み合わせて新製品を開発する ことが狙いと考えられます。
例えば、回路側の設計を機械やソフトウェアの担当者と早く摺り合わせれば、後からの手戻りを減らせます。実際にどの手戻りがあったかを断定するのではなく、混成配置によって調整しやすくなる働きを説明します。
品質と生産技術が、開発を事業化へつなぐ
製品が設計できても、求める品質で生産できなければ事業になりません。品質管理・生産技術の担当者が開発を支援し、製造上の条件や品質の確認点を委託先と調整します。
開発チームによる技術の統合と、支援部門による生産委託先との調整 を一組にすることで、開発から生産までの連携を強められます。自社で工場を持つ方向への転換ではなく、外部生産を使いながら製品を形にする体制です。
| 変更したこと | 担う役割 | 期待する効果 |
|---|---|---|
| 各開発グループへの混成配置 | 電子回路・機械・ソフトの知識を結ぶ | 新製品開発と仕様調整の迅速化 |
| 品質管理・生産技術の支援 | 開発と品質・製造条件をつなぐ | 手戻り抑制と生産への円滑な移行 |
| 複数の委託先との調整 | 外部の製造能力を開発へ接続 | 多様な製品への対応力向上 |
新しい製品領域へ進む戦略に、組織を合わせる
複写機関連事業が先細る中、環境エネルギー、精密機械、LED等の開発を進めています。従来の技術の区分を越えて、製品ごとに知識を合わせ、事業化まで支える形が必要になります。
部門の再編は 新規事業を生み出す戦略に、社内外の役割分担を合わせること と捉えます。製品別グループがあるだけで独立採算の事業部制とは決めず、実際の権限や支援関係に沿って説明しましょう。
組織改編の目的を100字で答案化する
答案の骨格は、先細る複写機事業を補う新製品開発に向けて専門技術を混成し、品質管理・生産技術が製品化を支えるという流れです。製品別チームが知識を組み合わせる働きと、支援部門が複数の生産委託先を調整して品質・円滑な生産を確保する働きを区別します。部門名やプロセス別という名称だけでなく、社内外の連携が何を実現するかまで残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「営業部門を再編したいのですが、どのような組織編成にすればよいでしょうか?」は、商品・顧客・事業特性と再編目的に応じて、機能別組織や事業部制等を選ぶ視点について解説しています。本問では、「旧組織の限界を特定する」と「業務の流れへ再編する」を2018年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 当年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 旧組織の限界を特定する | 技術分野別の縦割りで工程間調整が難しい | 機能別組織一般の短所に広げ過ぎない |
| 業務の流れへ再編する | 製品開発・品質管理・生産技術へ編成替え | 部門名の列挙で終えない |
| 改編効果を因果化する | 開発から量産、委託先調整の速度・効率を高める | 人材育成だけを目的にしない |
類題は、2014年度事例I第3問(異質な事業の分化・統合を管理する問題)、2016年度事例I第2問(設問2)(機能別組織へ横串を通して人材流動性を高める問題)、2025年度事例I第3問(事業特性から適切な組織形態を選ぶ問題)です。共通点は、組織名ではなく採用・改編理由を与件から導くことです。本問は技術別からプロセス別への変化と連携目的を対応させます。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「営業部門を再編したいのですが、どのような組織編成にすればよいでしょうか?」(商品・顧客・事業特性と再編目的に応じて、機能別組織や事業部制等を選ぶ視点)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 20 点)
設問文
A 社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。
回答例(96 字)
挑戦を奨励し失敗から学ぶ組織風土を定着させ、技術者に研究テーマの設定や進め方の裁量を与える。加えて専門職のキャリアパスと継続的な学習機会を明確にし、内発的動機を高めて独創性を持続的に維持する。
解説
この問題の着眼点
金銭的・物理的インセンティブ以外で、チャレンジ精神と独創性を維持する施策 を100字で助言します。挑戦を支える文化、自ら考えて進める裁量、学びと成長の機会を組み合わせます。
報酬だけでなく、研究に取り組むこと自体の意欲を支える
与件文のどこを見るか
- 第9段落: 人材は重要な経営資源 とあります。新技術を取り込む研究開発企業の継続には、人の意欲と成長が欠かせません。
- 第10段落: 個人業績は年二回の賞与に多く反映、 実力主義が A 社の文化として根付いている、 家族主義的な面、 売上の 1 %を報奨金 とあります。成果への報酬と社員を支える施策は既にあります。本問はそれ以外を考えます。
- 第8段落: 専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チーム とあります。他分野の技術を学び、協働する場として活かせます。
- 第6段落: A 社長は、 新規事業や製品の開発にチャレンジし続けている とあります。経営者の挑戦を、社員も継続できる組織の仕組みへ広げる方向です。
挑戦を認め、失敗を次の開発に使える文化にする
研究開発では、新しい着想が必ず成功するとは限りません。失敗を避けることだけが評価されると、確実な仕事へ偏り、独創的な試みが出にくくなります。技術者の提案や試行を認め、結果だけでなく検証から得た知識も共有する方法が考えられます。
挑戦を奨励し、失敗から学ぶ組織文化 をつくることが第一の方向です。振り返りで何を試し何が分かったかを話し、次の仮説へ活かします。失敗を無条件に容認するのでなく、学びにつながる試行を支えます。
研究テーマと進め方に、裁量を持てるようにする
社長が新事業を率いるだけでなく、社員がテーマや進め方を提案し、一定の範囲で判断できるようにします。自分の発想を試し、結果を確かめられることが、仕事への主体性につながります。
目標・責任を共有したうえで研究の裁量を与える ことが重要です。節目の相談やフィードバックを組み合わせ、任せることを放置にしません。裁量と支援があれば、自律的に考える余地を確保できます。
学習機会と、専門家としての将来像を示す
混成チームで他分野の技術を学んだり、勉強会・外部研修で新技術に触れたりする機会を設けます。獲得した知識を開発で使い、成果や改善について助言を受ければ、能力が伸びる実感を得やすくなります。
加えて、専門性を深めてどの役割を担えるかというキャリアパスを示します。 学び続ける機会と、専門職として成長する見通し があれば、挑戦を目先の結果だけで終わらせず継続しやすくなります。
第10段落の 「とはいえ」 は、実力主義だけでなく家族主義的な面もあることを示します。この相互に支える土台を活かし、成果を競うことと、知識を共有して学ぶことを両立させます。旅行や報奨金の追加ではなく、仕事・学習・関係の持ち方を変える提案です。
非金銭的な意欲向上策を100字で答案化する
答案の骨格は、 挑戦と学習を認める文化+研究の裁量+学習機会・専門職のキャリア→内発的動機と独創性 です。文化には失敗からの学び、裁量にはテーマ・進め方、成長には研修や専門職の将来像を肉付けします。
100字では、 何を任せ、何を支え、どう成長できるか を具体的な動詞で残します。給与や福利厚生を再び並べず、仕事そのものに意義と成長を感じられる仕組みで結びましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」は、幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方について解説しています。本問では、「自律性を高める」と「挑戦から学べる風土を作る」を2018年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 当年度の与件への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 自律性を高める | 技術者に研究テーマ・進め方の裁量を与える | 放任と権限委譲を混同しない |
| 挑戦から学べる風土を作る | 失敗を共有・検証し次の研究へ生かす | 失敗を無条件に容認しない |
| 成長の展望を示す | 専門職キャリアと継続学習機会を設ける | 昇給・設備という除外条件へ戻らない |
類題は、2013年度事例I第2問(設問2)(承認と業務参加で非金銭的動機を高める問題)、2014年度事例I第5問(博士人材へ研究裁量・成長機会を与え定着を図る問題)、2016年度事例I第3問(専門人材に魅力的な仕事・成長機会を示す問題)です。共通点は、対象人材の職務に合う内発的動機を選ぶことです。本問は研究開発職の自律性・挑戦・専門成長が中心です。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」(幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では当年度の与件事実を主根拠にします。

