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令和 7 年度(2025 年度)事例 Ⅰ 解答解説
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令和 7 年度添削プロンプトリンク
令和 7 年度解答解説リンク
第 1 問(配点 20 点)
設問文
木製知育玩具の新規事業に進出した際の A 社の現状について、SWOT 分析のそれぞれの観点から、30 字以内で述べよ。
回答例(29,22,29,27 字)
【強み】薄板加工技術等の既存ノウハウと産官学および職人との連携網。 【弱み】新規事業の必要性に対する既存社員の理解不足。 【機会】自然素材志向の高まりと保育・教育現場での木育ニーズの増加。 【脅威】公共案件の不安定性と競争激化、知育玩具市場の既存競合。
解説
この問題の着眼点
木製知育玩具事業への進出時のA社を、SWOTで整理する与件抜粋型の問題です。強み・弱み・機会・脅威を、各30字で答えます。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら候補をマーキングする
与件を読みながら、SWOTの候補をマーキングします。ボールペンや蛍光ペンの色で区別したり、S・W・O・Tの印を添えたりすると、後で見返しやすくなります。この段階では30字に絞らず、第2問以降へ進みましょう。
候補を拾ったら、第2問以降へ進む
後続設問を解くと、新事業で活かす強みと補う弱みが見えてきます。設問の対象・時点に合う候補の中で、重要なものを1軍、その他を2軍として整理し、最後に第1問へ戻ります。進出後に実現したEC出店などを、最初から持っていた強みに混ぜないようにします。
与件文からSWOTの候補を拾う
与件文のどこを見るか
強みとしてマーキングする箇所
- 第6段落:薄板加工技術 と 仕上げ技術 は、既存事業から知育玩具へ活かせる強みです。林業家や製材所とのネットワーク は、材料の安定確保を支えます。
- 第7段落:同県や地元の大学との良好な関係、木工職人たちとのネットワーク があります。技術だけでなく、実証や製造で社外の協力を得られる点も拾います。
弱みとしてマーキングする箇所
- 第5段落:社員たちは 新規事業の必要性を十分には理解できなかった とあります。新事業へ社員全体の力を向けるための理解が不足しています。 第9段落の子息一人では限界が見え始めたという記述は、事業拡大後の課題です。第3問の組織体制を考える根拠として扱い、進出時を問う本問の弱みには含めません。
機会としてマーキングする箇所
- 第3段落:「自然素材」「国産材」への関心の高まり と、「木育」への、教育や子育て支援の場でのニーズの増加 が示されています。木材の加工技術を、新しい需要へ活かせる環境です。
脅威としてマーキングする箇所
- 第3段落:内装材市場における企業間の競争激化と公共案件の不安定性 は、既存事業の収益を不安定にする要因です。
- 第5段落:知育玩具市場には 既にさまざまな製品が存在していた とあります。進出先にも競合がいることを拾います。
事実の持ち主と時点を確かめる
薄板加工 や 外部連携 はA社の資源なので強み、自然素材への関心 や 木育需要 は市場側の動きなので機会です。名詞だけで分けず、A社の状態なのか、外部環境の状態なのかを確かめます。
また、後の段落には、進出前から持っていた資源の活用場面も書かれています。記述の位置ではなく、その資源や課題がいつから存在したかで判断します。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
後続設問で使う強み・弱みを確認する
後続設問とのつながりから、次の要素を優先候補にできます。
| 第1問で拾った候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 薄板加工・仕上げなどの技術 | 第2問で顧客に触れてもらう製品の品質を支える | 既存の加工ノウハウ |
| 県・大学・職人などとの関係 | 第2問の実証・広報や、第4問の関係者との理念共有を支える | 産官学・職人との連携網 |
| 社員の新事業への理解不足 | 第4問で、理念の再定義・浸透を通じて新事業の意義を共有する | 既存社員の理解不足 |
第2問で使う 県や教育施設との関係、第4問で解消する 社員の理解不足 を確認し、対象時点に合う具体的な候補を選びます。候補の全列挙は不要です。弱みは、新規事業の必要性に対する既存社員の理解不足を一つ具体的に示せば、本問の要求に応えられます。
機会・脅威は、新事業を取り巻く環境から選ぶ
機会と脅威は、後続設問で使ったかどうかだけで優先順位を決めません。新事業に需要がある理由と、成長を妨げる競争・不安定要因 を押さえます。
| 第1問で拾った候補 | 新事業との関係 | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 自然素材・国産材への関心 | 木材を使った製品が選ばれる背景となる | 自然素材志向の高まり |
| 教育・子育ての場での木育需要 | 知育玩具を使う場面や顧客層が広がる | 木育ニーズの増加 |
| 内装材市場の競争・公共案件の不安定性 | 既存事業に頼り続けにくく、新たな収益源が必要になる | 既存市場の競争と不安定性 |
| 知育玩具市場の既存製品 | 進出先でも競合との差別化が必要になる | 知育玩具市場の既存競合 |
2軍の候補は、1軍へまとめられないか考える
薄板加工、仕上げ、安全な加工や塗料のノウハウを一つずつ書くと、技術の説明だけで30字を使ってしまいます。薄板加工技術等の既存ノウハウ と束ねれば、社外との連携も残せます。
林業家・製材所、県、大学、木工職人との関係も、調達・実証・製造を支える連携網として整理できます。2軍を捨てるのではなく、1軍の言葉に意味を含める と、根拠を活かしながら字数を縮められます。
SWOTをそれぞれ30字にまとめる
強み・弱みは、進出時に存在した資源と課題を残す
強みは 加工のノウハウと連携網、弱みは 新規事業の必要性に対する既存社員の理解不足 を残します。
強みでは「製品を作る力」と「社外の協力を得る力」をまとめています。弱みは何に対する理解が不足していたかを明確にします。字数を埋めるために、異なる時点の課題を足さないことが大切です。
機会・脅威は、需要と競争の中身を残す
機会は 自然素材志向と木育需要、脅威は 既存事業の不安定さと知育玩具市場の競合 をまとめます。
「需要増加」「競争激化」だけでは、何の需要や競争なのかが伝わりません。自然素材、木育、公共案件、知育玩具など、対象を示す言葉を残しましょう。
最後に、各30字以内か、内部と外部を取り違えていないか、進出時の状況として説明できるかを確認して答案を確定します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくりについて解説しています。本問では、「S・Wは内部の資源・能力・課題」と「O・Tは外部の市場・競争・制度」を2025年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2025年度への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| S・Wは内部の資源・能力・課題 | 加工技術・連携網、新規事業の必要性への理解不足 | 公共案件の不安定性を弱みに入れない |
| O・Tは外部の市場・競争・制度 | 自然素材・木育需要、競争激化・公共案件不安定 | 社員の抵抗を脅威に入れない |
| 分類後に戦略へ組み合わせる | 強みを機会へ投入して関連多角化する | 本問は各30字なので戦略提案まで詰め込まない |
類題は、2024年度事例I第1問 と 2023年度事例I第1問 の強み・弱み、2022年度事例I第1問 の法人化前の強み・弱みです。2025年度はO・Tまで求めるため、内部と外部、進出時と拡大後を分け、対象に合う具体的な候補を30字以内にまとめる練習になります。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくり)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2025年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 30 点)
設問文
A 社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫について、150 字以内で説明せよ。
回答例(137 字)
県主催イベントに出展し、親子の好反応を基に市場性を確認した。保育・教育施設で実証し、子どもが日常的に製品へ触れる場からアイデアを得た。教育熱心な子育て家庭を標的に、直営店・県アンテナショップ・大手ECで購買接点を設け、県広報、SNS、子育てイベントで認知・誘客接点を広げた。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、顧客との接点を作るためにA社が実際に行った取り組みや工夫です。これから行うべき販促策を助言する問題ではありません。販売場所だけでなく、親子に知ってもらう場、製品に触れてもらう場、購入できる場を拾い、150字にまとめます。
A社は、内装材を扱う企業との取引から、子育て家庭に向けた知育玩具の事業へ踏み出しています。従来の営業ルートを持っていても、それだけで子育て家庭に製品を知ってもらえるわけではありません。そこで、誰と、どのような場で接するようにしたのかに注目します。
顧客との接点には、販売するだけでなく、相手の反応を確かめたり、実際の利用からアイデアを得たりする役割もあります。「何をしたか」を拾い、その行動がA社にとってどのような意味を持ったのかを添えると、取り組みと工夫の両方を説明できます。
与件文から顧客との接点を読む
与件文のどこを見るか
- 第4段落:県のイベントで A 社もブースを出展し、自社の製品に目を輝かせる子どもたち や 熱心に説明を聞く保護者 を見て、社長は 新規事業に大きな可能性があることを確信した とあります。出展という行動だけでなく、親子の反応と社長の認識の変化までが一組の根拠です。
- 第7段落:実証実験の支援 と 県の広報媒体を通じた PR 協力 を得ています。保育・教育施設で 子どもたちが日常的に A 社の製品に触れる機会 を作り、それが 知育玩具に関する新たなアイデアの源泉 になりました。製品を使ってもらうことと、A社が製品づくりに役立つ学びを得ることがつながっています。
- 第8段落:教育熱心な子育て家庭 を対象に、自社工場併設の直営店や県のアンテナショップ に加えて 大手 EC サイトへの出店 を進めました。さらに SNS を活用した情報発信や子育てイベントへの出展 により、顧客に知ってもらう接点を広げています。
販売経路だけに絞らない
イベントは認知と対面での反応確認、保育・教育施設は日常的な体験、直営店やECは購買につながる接点です。県広報やSNSは、まだA社を知らない家庭へ情報を届けます。同じ「接点」でも役割が違うと捉えると、店名や媒体名の列挙から一歩進んだ説明になります。
接続詞からどう読むか
第4段落の 「しかし」 の前では、消費者向けの事業は実験的な取り組みにとどまっています。その後で、親子の反応を見た社長が市場の可能性を確信しています。単にイベントが開催された場面ではなく、顧客と直接接したことが事業判断を後押しした場面として読みます。
第7段落の 「とりわけ」 は、保育・教育施設の役割を強調しています。県の支援という大きなくくりで読み流さず、日常的な利用とアイデア獲得の関係まで拾うことで、実証の意味が具体的になります。
顧客を知る場と購入につなげる場を結ぶ
イベントで、子どもと保護者の反応を直接確かめる
「ブースを出展した」だけなら、宣伝活動をしたという説明にとどまります。しかし、与件には子どもが製品に目を輝かせ、保護者が熱心に説明を聞いたことまで書かれています。親子の反応を直接見たことによって、社長は消費者向け事業の可能性を確信しました。
出展という行動に 親子の反応から市場性を確認した という意味を添えます。第4段落の 新規事業に大きな可能性があることを確信した という変化を、顧客との直接の接触が事業判断を後押しした場面としてまとめます。
施設で日常的に使ってもらい、アイデアを得る
イベントでの出会いに対して、保育・教育施設では子どもが日常の活動の中で製品に触れます。一度きりの反応だけでなく、継続して使われる場を持てることに違いがあります。与件では、その接触が新たなアイデアの源泉になったと説明されています。
このため、施設での実証は 製品を体験してもらう場と、A社が学ぶ場 の両面から捉えます。第7段落の 子どもたちが日常的に A 社の製品に触れる機会 を、 知育玩具に関する新たなアイデアの源泉 へつなげた点を残すと、実証という取り組みの工夫が伝わります。
子育て家庭へ、情報と購入機会を届ける
第8段落の 教育熱心な子育て家庭 に対し、 SNS を活用した情報発信や子育てイベントへの出展 を行っています。県広報も含めて製品を知ってもらう場を広げる一方、直営店・県のアンテナショップ・大手ECで購入できる場所も用意しました。
情報発信だけでなく購入先も必要であり、販売場所も知られていなければ利用されにくいと考えられます。A社は 知ってもらう場と購入できる場の両方 を広げています。ここでは売上効果の推測より、どの顧客に、どの役割の接点を用意したかを説明します。
大学との共同研究も事業を支えていますが、それ自体を顧客接点と呼ぶのは慎重にします。本問では、親子が製品に出会い、体験し、購入する取り組みを優先します。開発に役立つ連携を何でも答案へ入れる必要はありません。
顧客接点づくりを150字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。
イベントで反応を確認した 、 施設で体験と学びの機会を作った 、 対象家庭に向けて販路と情報発信を広げた の順にまとめます。150字あるので、接点の名前だけでなく、誰に何の機会を作ったかまで添えます。
ただし、すべてに長い効果説明を付ける必要はありません。既に行った取り組みを「設けた」「広げた」と説明し、提案形の「行うべきである」に変えないようにします。
与件の具体的な描写を短い表現に置き換える
答案の骨格は、 イベントでの反応確認→施設での体験と学び→対象家庭への販売・情報接点 です。この三つのまとまりを先に置き、それぞれに出展、実証、店舗・EC・広報・SNSという具体的な取り組みを肉付けします。場所や媒体を列挙するだけでなく、接点ごとの役割が分かる文章にします。
子どもが目を輝かせ、保護者が熱心に説明を聞くという描写は、「親子の好反応」と束ねられます。社長が新規事業の可能性を確信したことは、「市場性を確認した」とまとめます。事実を削って抽象語だけにするのではなく、出展という行動を残し、その後に短く意味を添えます。
施設については、「実証」と「日常的な接触」を残し、得られたものを「アイデア」とまとめます。残る販売場所と媒体は、「購買接点」と「認知・誘客接点」という役割ごとに列挙すると、同じ説明を何度も書かずに済みます。対象である「教育熱心な子育て家庭」も置くことで、誰に向けた取り組みなのかが明確になります。
最後の販売・情報接点は列挙する内容が多いため、イベントの描写を短くまとめて字数を確保します。実際に行った行動と、その行動ならではの工夫を残し、「行うべき」と助言する答案に変えないようにしましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、顧客・取引先の声を集める仕組みと、集めた情報を商品・サービス開発へつなぐ体制を説明しています。本問では、その判断軸を第4段落、第7段落、第8段落の実施事実へ当てはめます。
| 判断軸 | 2025年度への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 現場で反応を確かめる | イベントの親子反応、保育・教育施設での日常接触 | 接点名だけで終わらせない |
| 接点の役割を分ける | 店舗・ECは購買、県広報・SNS・イベントは認知・誘客 | 与件にない成果を断定しない |
| 得た情報を次へ生かす | 現場接触を新たなアイデアの源泉にする | 顧客ではない参加者を顧客の声と読み替えない |
類題は、2019年度事例I第3問(接点から新規事業の用途を見つける問題)と、2013年度事例I第6問(顧客情報を商品開発へつなぐ問題)です。同じ論点は、接点を設けるだけで終わらず、そこで得た反応や情報の役割まで説明することです。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」
この公的資料は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2025年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
A 社社長は、木製知育玩具の新規事業を成長させていくに当たって、全社的な組織改革を検討している。それに対して、採用すべき組織体制とその理由に関して 100 字以内で助言せよ。
回答例(100 字)
内装材・知育玩具・X事業の事業部制とし、各責任者へ権限を委譲する。市場特性に応じた迅速な意思決定と次世代リーダー育成で子息への依存を緩和し、横断会議で技術・人材・情報を共有して限られた資源を活用する。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、採用すべき組織体制とその理由です。組織名を答えるだけでなく、なぜA社の課題に合うのかを100字で説明します。焦点は、内装材と知育玩具の違いに対応しつつ、限られた人材・技術を全社で活かすことです。
新規事業が増えたから自動的に事業部制を選ぶのではありません。A社では、既存事業と新事業で市場の動き方が異なり、新事業の判断が子息に偏っています。その一方で、30名の会社として資源を融通し合う必要もあります。「どこを分けて任せ、どこを全社で調整するか」を考える問題です。
与件文から組織改革の必要性を読む
与件文のどこを見るか
- 第1段落:現在は 製造技術部門、営業部門、管理部門 からなる機能別の組織です。既存事業では専門機能をまとめる合理性がありますが、事業が増えたときに誰が事業全体を判断するかが問題になります。
- 第9段落:内装材事業は 売上の大半を占めており、新事業には ビジネスのスピード感 が必要です。また、彼一人の力では限界が見え始めている うえ、両事業で 求められるスキルセットや思考様式も異なる とあります。
- 第10段落:限られた経営資源を効果的に配分 することと、次世代のリーダー候補 の育成が課題です。事業ごとの自律性だけでなく、全社での調整と人材育成も必要です。
違いへの対応と連携を両立する
第9段落の対比は、既存事業を捨てて新規事業に全面移行するという意味ではありません。売上を支える内装材を維持しながら、知育玩具には市場変化に応じて素早く動ける体制を用意する、という課題です。
第9段落の 「一方」 は、ベテランの技術と経験に支えられた内装材と、スピード感を求められる知育玩具を対比しています。この違いを「同じ判断基準・同じ進め方では対応しにくい」と読むと、事業に応じて責任と権限を分ける理由につながります。
第10段落では、その事業をどのように連携させるかも問われています。事業ごとの判断を速めることと、全社の限られた資源を活用することは、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。分業の提案に調整の方法を添える必要があります。
事業別に任せ、全社で資源を調整する
事業の責任者が、市場に合わせて判断できるようにする
内装材・知育玩具・X事業を事業別に運営する事業部制 が考えられます。責任者へ判断を任せれば、顧客や必要な技能の違いに合わせて動きやすくなります。子息だけが判断を抱える状態を解消し、事業運営の経験を次のリーダーにも積ませる狙いです。
現在の機能別の組織は、製造・営業・管理の専門性をまとめて使う点では合理的です。ただし、事業が複数になると、各機能をまたいで「この事業では何を優先するか」を判断する役割が重要になります。新事業の判断を子息だけに集めたままでは、組織の名前を変えても負担は軽くなりません。
そこで、事業ごとに責任者と判断できる範囲を明確にします。顧客の変化を捉えた人が、必要な対応をその事業の中で進めやすくすることが 権限委譲による意思決定の迅速化 です。何でも現場任せにするのではなく、日々の事業運営と全社的な判断を分けて考えます。
事業の責任は分けても、資源は全社で活かす
一方、社員30名のA社で、各事業へ管理機能や技術者を一式ずつ重複配置することまでは求めません。事業の責任を分けることと、資源を分断することは別です。 社長が全社の資源配分を調整し、必要な技術や管理機能を共有することで、小規模企業としての制約にも対応します。
例えば、新事業にも既存事業の加工技術が使われています。事業を分けた結果、この技術を融通しにくくなれば、A社の強みを損ないます。共通機能の活用や事業責任者間の調整を行い、大きな人員配分などは全社の優先順位に沿って判断する体制が考えられます。これらは採用済みの制度ではなく、助言として提案する補完策です。
事業の判断は責任者へ、共通資源の配分は全社で調整する と役割を分けます。各事業が素早く動けることと、30名の会社として技術や人材を融通できることを両立させる設計です。
仕事を任せることを、次のリーダーの育成につなげる
子息への依存を減らすには、単に補助者を増やすだけでなく、自分で判断して事業を進められる人を育てる必要があります。与件は子息に続く次世代のリーダー候補を課題としており、子息一人をさらに鍛えるだけでは問いに十分応えられません。
責任ある範囲を段階的に任せ、結果を振り返る経験を積ませれば、次のリーダーが事業運営を学ぶ機会になります。権限を渡すことと、人を育てること を組み合わせることで、現在の判断集中を緩和しながら、将来の事業展開を担う層を厚くする狙いが生まれます。
組織体制と理由を100字で答案化する
答案の骨格は、 事業別の責任・権限+迅速な判断と次世代育成+事業間の資源共有 です。市場・技能の違いへの適応には事業ごとの判断、子息への集中には各責任者への権限委譲を対応させます。責任を任せて事業運営を経験することが、次のリーダーの育成にもつながります。
限られた人材や技術を活かすため、 横断会議で技術・人材・情報を共有する と方法と対象を短く添えます。会議の頻度や細かな運営手順は省き、事業を分けて任せることと、全社で強みを融通することを100字の中で両立させます。兼務や共通部門の活用など、同じ働きを持つ方法も考えられます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」と「営業部門を再編したいのですが、どのような組織編成にすればよいでしょうか?」は、幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方と商品・顧客・事業特性と再編目的に応じて、機能別組織や事業部制等を選ぶ視点について解説しています。本問では、「経営者へ集中した権限を分散する」と「異なる事業特性へ組織を適合させる」を2025年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2025年度への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 経営者へ集中した権限を分散する | 事業部長へ事業運営を任せる | 社長がすべて決める体制を残さない |
| 異なる事業特性へ組織を適合させる | 内装材と知育玩具の速度・技能差に対応する | 組織名だけでなく採用理由を書く |
| 補完人材・経営人材を育てる | 子息に続く次世代責任者と専門人材を育成する | 子息だけへの権限集中に置き換えない |
類題は、複数事業間で人材の流動性を確保する組織改編を問う 2016年度事例I第4問、組織改編の目的を問う 2018年度事例I第4問、今後の組織構造を助言する 2022年度事例I第4問(設問1) です。いずれも組織名と、環境・事業特性・人材への効果を対にして答えます。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「幹部のロイヤルティーを高めるには」(幹部へ権限と責任を与え、自律的な行動を促す考え方) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「営業部門を再編したいのですが、どのような組織編成にすればよいでしょうか?」(商品・顧客・事業特性と再編目的に応じて、機能別組織や事業部制等を選ぶ視点)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2025年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 30 点)
設問文
A 社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150 字以内で助言せよ。
回答例(137 字)
理念を「木の恵みと匠の技で、子どもの未来と地域の豊かさを育む」と再定義する。社長と子息がベテランや若手社員との対話で、新事業に既存技術を活かす意義を共有し、顧客の喜びを社内へ還流して仕事とのつながりを実感させる。さらに社外関係者にも理念を説明し、共通目的に基づく協働を促す。
解説
この問題の着眼点
問われているのは、企業理念をどのように再定義するかと、関係者へどう浸透させるかの二つです。150字の中に、理念の中身と、それを仕事や協働へ結びつける方法を置きます。新しい標語を考えるだけでも、研修などの施策を並べるだけでも問いの片方が残ります。
A社には既に創業以来の理念があり、社長は新事業がその理念に適合すると考えています。それでも社員には必要性が十分伝わっていません。つまり、理念が存在することと、社員が新しい仕事の意味を理解していることは別です。理念の言葉を整えるだけでなく、自分たちの技術や役割と結び付けて受け止められるようにすることが焦点です。
与件文から理念を見直す意味を読む
与件文のどこを見るか
- 第5段落:創業理念は 自然から頂いた木を、生活する人々が豊かになるよう社会にお返しする です。しかし、社員は 新規事業の必要性を十分には理解できなかった とあります。理念がないのではなく、その理念と新事業のつながりが十分に共有されていません。
- 第6段落:既存事業の 薄板加工技術 や 仕上げ技術 が新事業にも活かされています。ベテランの蓄積を否定する改革ではなく、技術を新しい相手の豊かさへつなげる事業と説明できます。
- 第7段落:同県や地元の大学との良好な関係、地域の木工職人たち の協力が事業を支えます。浸透の相手は社員だけでなく、共に製品や体験を作る社外の関係者にも広がります。
「しかし」が示す理解の隔たり
第5段落には 「しかし」 が二度現れます。前の逆接は、既存製品がある中でも社長が市場を有望と捉えたこと、後の逆接は、その決断に社員の理解が追いついていないことを示しています。社長にとっての納得を、そのまま全社員の納得として扱わないように読みます。
社長にとって木育は創業理念に沿う事業でも、社員が同じ意味を受け取っているとは限りません。長く内装材を支えてきた社員には、自分たちの技術がどのように必要とされるかを伝えることが重要です。理解不足を単なる反抗と決めつけず、仕事とのつながりを実感できる説明と対話を考えます。
創業の思いを新しい価値へつなぐ
理念の核を残し、誰にどのような豊かさを届けるかを具体化する
再定義では、木の恵みを人々の豊かさへ返すという核を残し、「子どもの成長」と「地域の豊かさ」を具体化します。知育玩具の商品名だけに限定すると、内装材やX事業の社員が自分の仕事を位置づけにくくなります。既存技術と新事業が同じ方向へ向かう言葉にすることが大切です。
木の恵みと、長年培った加工技術・職人の力 を価値の源泉として残し、それを 子どもの成長と地域の豊かさ へつなげます。既存事業で大切にしてきた資源や技術が新しい相手の生活にも役立つ、と説明することで、創業の思いと新事業を一つの方向にまとめられます。
受け継ぐ価値と、新事業で実現する価値 の両方を言葉にすることが、理念の再定義です。製品名や売上目標に限定せず、内装材・知育玩具・X事業の社員や協力者が、自分の仕事の意味を見いだせる内容にします。
社員との対話で、今までの仕事と新事業をつなぐ
ベテラン社員に「新事業を理解しなさい」と伝えるだけでは、自分の技術が何に必要なのかは分かりません。例えば、長年の加工経験が、子どもが触れる玩具の滑らかさや安全性に活かされると説明すれば、内装材で積み重ねた仕事と新事業のつながりが見えます。
そこで、 社長と子息がベテラン・若手と対話し、既存技術を活かす意義と役割を共有する ことを提案します。疑問や懸念も聞き、新事業のどこが今までの仕事とつながり、どこで新たな学びが必要かを具体的に説明します。
顧客の喜びを伝え、理念を仕事の実感に変える
イベントでは、親子の反応が社長の確信につながりました。同じように、子どもや保護者の喜びを社内へ伝えることは、社員が仕事の価値を実感する機会になり得ます。「人々を豊かにする」という言葉を、自分たちの製品を喜んで使う相手の姿へ結び付けるわけです。
第4段落の 自社の製品に目を輝かせる子どもたち や 熱心に説明を聞く保護者 の反応を、製造などの社員にも伝える方法が考えられます。 顧客の喜びを社内へ戻し、自分の仕事が生む価値を実感してもらう ことで、理念を日々の仕事に結びつけます。
社外の関係者にも、協力する目的を伝える
新事業はA社の社員だけで完結していません。県の実証・広報支援、大学との連携、木工職人の製造協力があり、それぞれに役割があります。「関係者」を社員だけに限定すると、この協働関係を見落とします。
社外にも理念を説明し、子どもの成長や地域資源の活用という目的を共有すれば、何のために協力するかをそろえやすくなります。A社の理念への服従を求めるのではなく、各者の役割を共通目的へ結ぶことが 社外関係者との協働を促す という助言の意味です。
再定義と浸透策を150字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。
前半に 創業の思いと新たに実現する価値 を理念として示し、後半に 社員との対話・顧客反応の共有・社外への説明 を置きます。理念の内容を簡潔にまとめ、誰が誰へどう伝えるかを書く場所を確保します。
「理念を共有し一体感を高める」だけでは実行方法が見えません。対話、既存技術の意義の説明、顧客反応の還流、社外への説明を、A社の理解不足と協働関係に結びつけましょう。
抽象的な効果より、浸透させる行動を残す
答案の骨格は、 創業の思いを新たな価値へ再定義→対話と顧客の喜びで社内へ浸透→社外と目的を共有 です。木材と技術で子どもや地域に届けたい価値を先に置き、社長・子息が社員と対話すること、既存技術の意義を説明することを肉付けします。「一体感を高める」と効果だけを書くのでなく、そのための行動を残します。
次に、顧客の喜びを伝える方法と、社外への説明を簡潔に添えます。理念の中身を前半に、社内への浸透と社外との協働を後半に置くと、二つの問いに対応した答案になります。字数を調整するときも、「再定義する内容」や「社外の関係者」を丸ごと落とさず、重なる説明を短くすることを意識しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「理念経営」は、存在意義・目的を理念として明文化し、日常の判断・行動基準へ浸透させる考え方について解説しています。本問では、「環境変化に応じて理念を再整備する」と「明確さを高める」を2025年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | 2025年度への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 環境変化に応じて理念を再整備する | 木材を返す理念を、木育・子ども・地域価値まで発展させる | 創業理念を否定せず新旧事業を統合する |
| 明確さを高める | 既存技術と新規事業の関係を具体的に言語化する | 抽象的な「社会貢献」で終わらせない |
| 共有を自律行動へつなぐ | 対話、参加、顧客の喜びの共有を継続する | HP・SNSによる外向けPRだけにしない |
類題は、事業領域の明確化で営業社員の行動が変わった理由を問う 2019年度事例I第4問、サービス事業拡大に向けた組織文化変革・人材育成を助言する 2015年度事例I第5問、第三の創業期の組織課題を問う 2017年度事例I第5問 です。共通論点は、理念を掲示することではなく、戦略の意味を共有して人の行動を変えることです。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「理念経営」(存在意義・目的を理念として明文化し、日常の判断・行動基準へ浸透させる考え方)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2025年度の与件事実を主根拠にします。

