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令和 6 年度(2024 年度)事例 Ⅱ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
B 社の現状について、SWOT 分析をせよ。各要素について ① ~ ④ の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。
回答例(39,34,36,38 字)
【強み (Strength)】3 代目の企画力と発信力、及びデザイナーズホテル等の実績。窯元等との良好な関係。 【弱み (Weakness)】従来商品の新鮮味と価格競争力が乏しく、既存の卸売販路での売上も低迷。 【機会 (Opportunity)】新規クリエイター窯元の参入と、家庭での器の利用に対する若者・海外の関心。 【脅威 (Threat)】人口減少による国内市場の縮小、安価な輸入品との競合、産地の情報発信力の低下。
解説
この問題の着眼点
B社の現状を 強み・弱み・機会・脅威に分け、各40字でまとめる与件抜粋型の問題 です。B社の能力や体制と、産地・市場の変化を分けて拾います。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら、SWOTの候補をマーキングします。蛍光ペンやボールペンの色、S・W・O・Tの印で区別し、この段階で40字へ絞り込まず、第2問以降へ進みましょう。
後続設問で使う強み・補う弱みを1軍、その他を2軍に分けます。返礼品、利用型サービス、店舗とECの連携を考えてから戻ると、企画・発信・窯元との関係を優先する理由が見えてきます。
3代目の能力と、産地・市場の変化を分けて読む
与件文のどこを見るか
- 第9段落: ホテルの料理長との綿密な打ち合わせ、 季節感や月ごとに変わる料理内容に合わせた色や形の食器を提案、 別の宿泊施設や飲食店からオリジナル食器の提案依頼、 窯元をはじめ、この地で地場産業に携わってきた人々も温かい態度で接するようになった とあります。顧客の用途を形にする企画・提案力と実績があり、地域との良好な関係にもつながっています。
- 第10段落: 再生回数が伸び、 若者と見られる視聴者や海外の人々、 自宅で再現したいという視聴者からの問い合わせが相次いだ とあります。動画を作り反響を得た力と、食器の新たな使い方に関心を寄せる顧客の存在を分けて拾います。
- 第11段落: 会社概要と主要取引金融機関や大口取引先の記載さえあればよい とあります。消費者への販売を育てるには、卸売中心の考え方やオンライン対応を見直す必要があります。
- 第4段落: 新しい作風を受け入れる土壌、 クリエイター志望の移住者が窯元を開く とあります。新たな商品づくりの相手や作風が生まれる外部環境です。
- 第6段落: 安価な外国製陶磁器の輸入が増加、 陶磁器の新規需要も買い替え需要も拡大が見込めない とあります。低価格品との競争と国内需要の停滞を脅威として拾います。
- 第7段落: X 焼に関する社会全般への情報発信が滞り、販路が細っている とあります。B社だけの発信不足ではなく、産地全体の顧客接点が弱まっている問題です。
自社の能力と、その能力を活かす外部の機会を区別する
3代目は、食器を仕入れて売るだけでなく、料理長の要望を聞き、盛り付ける料理に合う器を企画してきました。動画でも使い方を見せて反応を得ています。これを 顧客の用途に合う企画力と、魅力を伝える発信力 とまとめれば、後続設問で使える強みになります。
一方、クリエイター志望の移住者による窯元の開業は、B社の社内人材が増えたことではありません。 多様な作風の担い手が生まれる産地の変化 という機会です。同様に、動画を企画・発信する力は自社の強み、若者や海外から寄せられる関心は新しい市場へ接する機会と分けます。
強みが生まれていても、販売体制の課題は残る
弱みは、従来商品の新鮮味や価格競争力が乏しいことと、既存の卸売販路が低迷していることを中心に整理します。オンライン対応の遅れは補足論点として理解し、40字の答案では「何が売れにくく、どの販路が弱まっているか」が読める表現を残します。産地全体の需要縮小や輸入品との競争は脅威欄へ分けます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
| 自社の候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 料理や季節に合わせた食器の企画・提案 | 第2問の返礼品、第4問の盛り付け講座や新作提案 | 3代目の企画力 を1軍にする |
| 使い方の動画が反響を得た経験 | 第2問の価値の伝達、第4問の来店・購入への案内 | 発信力と評価された実績 を残す |
| 窯元への生産委託と良好な関係 | 第2問の共同企画、第3問の多様な器、第4問の制作体験 | 窯元との良好な関係 を残す |
| 従来商品の新鮮味・価格競争力不足と卸売低迷 | 新たな価値の提案と販路づくりが必要になる | 商品競争力の不足と既存卸売の低迷 を弱みの優先候補にする |
| 卸売中心の発想・HPの会社紹介 | 第3問の利用者対応、第4問の店舗・EC連携で補う | オンライン対応の遅れは補足論点として持つ |
| 長い業歴や従来の取引先の数 | 事業の基盤を説明する補足情報 | 2軍として持ち、現在の企画・発信能力を先に書く |
機会には 新規窯元の参入と、家庭での器の利用に対する若者・海外の関心 、脅威には 国内需要の縮小・安価な輸入品・産地の発信力低下 を置きます。B社自身の弱みと、産地を取り巻く悪条件を別々の欄へ整理しましょう。
第11段落の 「しかし」 は、会社紹介で十分とする2代目の考えと、オンラインの有用性を認めてECを始める3代目の考えを対比しています。B社には従来から一般消費者への店頭販売があり、動画でも反響を得ていますが、 消費者との直接的な関係を育てる販売体制は整備途上 と捉えられます。
SWOTを各40字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の要求に沿って組み立てることです。
強みは企画・発信力と実績、窯元との関係をまとめます。弱みは従来商品の競争力不足と既存卸売の低迷です。宿泊施設向けの新規提案・受注実績と、従来の卸売販路の低迷を混同しないようにします。機会は新規窯元の参入と若者・海外の関心、脅威は国内需要の縮小・輸入品との競争・産地の発信力低下を示します。オンラインの活用は施策であり、機会欄では視聴者側の関心や反響を捉えます。
弱みは、従来商品の新鮮味や価格競争力が乏しいことと、既存の卸売販路が低迷していることを中心に整理します。オンライン対応の遅れは補足論点として理解し、40字の答案では「何が売れにくく、どの販路が弱まっているか」が読める表現を残します。産地全体の需要縮小や輸入品との競争は脅威欄へ分けます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法について示しています。本問では、「顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する」を2024年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する | 分析の各箱へ与件事実を置き、比較から強みと課題を特定する | 現状分析では後続問の施策を先取りしない |
類題は、2022年度事例II第1問 と 2019年度事例II第1問 です。共通点 は、内部・外部の事実をSWOTで整理することです。相違点 は、本問が陶磁器卸の企画・発信実績、従来商品体制、移住窯元、輸入品競争を扱う点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2024年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 25 点)
設問文
X 市は、ふるさと納税の返礼品として X 焼を活用したいと考えている。現在でも市の返礼品の中に X 焼はあるが、全国の返礼品の中で埋もれている状態にある。3 代目は、X 市から「返礼品の中でもっと目立ち、市と X 焼のファンを増やすような返礼品の企画を考えてほしい」と依頼を受けた。ブランド価値構造のうち、消費者にもたらす感覚価値と観念価値を意識して、返礼品の企画を 100 字以内で提案せよ。
回答例(92 字)
3代目とクリエイター窯元が、料理の映える色・形の限定X焼セットを開発する。作り手の思いや産地の物語を動画で伝え、食卓の美しさと地域文化を受け継ぐ喜びを提供し、X市とX焼への愛着を育む。
解説
この問題の着眼点
全国の返礼品の中で目を引き、X市とX焼のファンを増やす 返礼品の企画 を100字で提案します。 感覚価値と観念価値の二つ を、具体的な商品と伝え方に結びつける問題です。
器の美しさと、その器を選ぶ意味を一つの企画にする
与件文のどこを見るか
- 第4段落: 新しい作風を受け入れる土壌、 クリエイター志望の移住者が窯元を開く とあります。伝統的な産地に新しい感性を取り入れる相手がいます。
- 第9段落: 盛り付け映えや写真映えを考え抜き、 季節感や月ごとに変わる料理内容に合わせた色や形の食器 とあります。料理の見え方を変える企画力が、商品の具体像につながります。
- 第10段落: 家庭料理でも見違えるほどおいしそうに見える食器への盛り付け方、 X 市の郷土料理と X 焼を紹介する動画 とあります。使ったときの美しさと、地域の食文化を映像で伝えられます。
- 第11段落: オリジナルの X 焼の企画と市内の窯元への生産委託 とあります。3代目が企画し、窯元が制作する役割を組み合わせられます。
感覚価値は、食卓で感じる美しさへ具体化する
感覚価値は、見た目や手触りなど、感覚に訴える魅力です。本問では、 料理が映える色や形、食卓を彩る美しさ が中心になります。単に「高品質な食器」とせず、3代目がホテルで培った盛り付けの発想を、家庭でも楽しめる器へ活かします。
例えば、季節の料理が引き立つ限定の器を、クリエイター窯元と企画する方法が考えられます。返礼品の紹介動画でも料理を盛って見せれば、受け取った後の食卓を想像できます。Productとしての器の特徴と、Promotionとしての見せ方をそろえる考え方です。
観念価値は、地域や作り手への共感へつなげる
観念価値は、その商品に込められた考え方や背景に触れ、持つこと・使うことに意味を感じる価値です。 産地の歴史、新しい作風への挑戦、作り手の思いへの共感 を通じ、「この器だから使いたい」「この地域を応援したい」と思える企画にします。
第4段落の 「このため」 は、新しい作風を受け入れる土壌とクリエイターの新規参入を結んでいます。この産地らしさを活かし、3代目の企画力と窯元の制作を合わせた 伝統と革新を融合する限定品 を考えます。作り手への取材や制作風景の動画で、実際の思いや地域の物語を伝える方法が考えられます。
美しい器だと感じるだけでなく、その背景に共感して選ぶことで、所有する喜びが深まります。市やX焼のファンを増やすには、名前を広めるだけでなく、 返礼品を使う経験と地域への愛着を結ぶ ことが重要です。
二つの価値を返礼品の企画へ100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
答案の骨格は「料理に合うX焼の器セット+色・形による美しさ+作り手や産地への共感→市とX焼への愛着」です。最初に受け取る返礼品を特定し、感覚価値は食卓で感じる美しさ、観念価値は文化を受け継ぐ意味や所有する喜びとして示します。動画はその価値を伝える手段として添えます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「商品をブランド化するには、どのようにすれば良いのでしょうか?」は、標的と目指すイメージを明確にし、名称・ロゴ・物語と一貫発信でブランド価値を築く方法について示しています。本問では、「標的顧客に約束する価値とブランドの立ち位置を明確にする」を2024年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、経営ハンドブック「コーポレートブランディング」は、ブランドコンセプトを明確にし、一貫した価値の発信と維持によって信頼・選好へつなげる手順を補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 標的顧客に約束する価値とブランドの立ち位置を明確にする | 商品・物語・表現・チャネルを同じブランド価値で統一する | ロゴや広告だけをブランド戦略としない |
類題は、2016年度事例II第4問(設問1) と 2021年度事例II第4問 です。共通点 は、固有資源をブランドの意味と商品企画へ変えることです。相違点 は、本問が感覚価値と観念価値を分け、限定品・作り手の物語へ落とす点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「商品をブランド化するには、どのようにすれば良いのでしょうか?」(標的と目指すイメージを明確にし、名称・ロゴ・物語と一貫発信でブランド価値を築く方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コーポレートブランディング」(ブランドコンセプトを明確にし、一貫した価値の発信と維持によって信頼・選好へつなげる手順)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2024年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 25 点)
設問文
X 焼には窯元それぞれの魅力があるため、3 代目は、消費者がいろいろな窯元の陶磁器を手にとれる機会をつくりたいと思っている。しかし、陶磁器祭りで接客をしていると、「あれもこれも欲しいが、家にはもうたくさんの食器がある。収納スペースがないし、今あるものも捨てられない」と購入をためらう食器愛好家の声をよく耳にする。3 代目は、自社や窯元の事業機会拡大を図る一方、こうした食器愛好家のニーズを充足する新規事業を手がけたいと考えている。どのような事業内容にすべきか、100 字以内で提案せよ。
回答例(92 字)
複数窯元の器を月額で借り、交換・返却できる事業を始める。今ある大切な食器は預かり保管して収納を空ける。好みに合う器を提案し、返却品は点検して再貸出し、継続利用料をB社と窯元に還元する。
解説
この問題の着眼点
多様な器を楽しみたいが、収納を増やせず、今ある器も捨てられない食器愛好家 に対する新規事業を100字で提案します。所有の制約を解く利用型サービスと、B社・窯元の事業機会を一緒に考える問題です。
「欲しいのに買えない」理由から、提供するものを変える
中心となる根拠は設問文の 収納スペースがないし、今あるものも捨てられない という声です。購入意欲はあるため、知名度や価格を変える前に、家の中に器が増え続けることを解く必要があります。これを支えるB社と産地の資源は、次の段落で確認します。
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 複数の窯元から陶磁器を集めて、 問屋オリジナル商品を企画して窯元に生産委託 とあります。B社は窯元ごとの器を集め、利用者へ組み合わせて提供する役割を担えます。
- 第7段落: 幅広い年齢層の食器愛好家が 20 万人前後集まる、 規模が零細であり、生産活動も行う傍ら、頻繁な商品情報の更新を行うのは至難の業 とあります。愛好家との接点があり、窯元だけでは難しい紹介や利用者対応をB社がまとめる余地があります。
- 第11段落: オリジナルの X 焼の企画と市内の窯元への生産委託 とあります。多様な器を使ってもらう事業にも、既存の窯元との関係を活かせます。
新たに買い足すことから、交換しながら使うことへ
顧客が既に持つ大切な食器を預かって保管し、自宅の収納を空けたうえで、複数窯元の器を交換・返却しながら利用できる月額サービスを提案します。既存食器の保管は「捨てたくない」と「置き場所がない」を両立させ、貸出品の交換は新たな器が増え続けることを防ぎます。預かった私物と、点検して次の顧客へ貸すレンタル品は別に管理します。
器を循環させ、窯元にも継続的な収益を返す
返却品は 点検・再利用 し、次の顧客へ貸し出します。傷みや衛生状態を確認し、貸し出す点数・交換頻度・配送費も踏まえて料金を決めれば、サービスを続けられる条件を検討できます。返却を受けるだけで、再利用や採算を考えない事業にはしません。
第7段落の 「だが」 は、窯元がオンラインで発信できる可能性と、制作と更新を両立する難しさを対比しています。B社が器の取りまとめ、紹介、利用者対応を担うことで、窯元は自作の器を知ってもらう接点を持てます。
さらに、利用履歴から好みに合う次の器を提案すると、顧客が継続して楽しむ理由になります。利用料をB社と窯元へ還元する仕組みをつくり、 食器愛好家の満足と、産地側の事業機会を両立させる ことを考えます。履歴の活用は、この利用型事業を続けるための支援として位置づけます。
利用の仕組みと産地への還元を100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
答案の骨格は「既存食器を預かる+複数窯元の器を交換・返却型で貸す→収納と多様な器の体験を両立→利用料をB社と窯元へ還元」です。100字では、今ある食器への対応と、新たに使う器の仕組みを両方残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「産地の危機回避へ サブスクで販路開拓に挑戦「清峰堂株式会社」」は、九谷焼を月額で入れ替えて借りるサブスク型レンタルとショールーム連動の実例について示しています。本問では、「所有負担を貸与・返却・交換を伴う利用権で解決する」を2024年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「「所有」から「シェア」へ変化する消費者の心をつかみ成長「レンティオ株式会社」」は、月額レンタル、返却、初期負担軽減、再貸出を組み合わせる所有代替型サービスの実例を補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 所有負担を貸与・返却・交換を伴う利用権で解決する | 顧客の収納制約、返却・点検・再利用、履歴提案、継続利用料の還元を結ぶ | サブスクとレンタルを同義にせず、所有権と返却条件を示す |
類題は、2023年度事例II第2問 と 2020年度事例II第3問(設問1) です。共通点 は、売り切り以外の事業モデルで顧客課題を解くことです。相違点 は、本問が収納制約を所有から利用へ転換し、器の交換・再利用・履歴提案・継続利用料を結ぶ点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「産地の危機回避へ サブスクで販路開拓に挑戦「清峰堂株式会社」」(九谷焼を月額で入れ替えて借りるサブスク型レンタルとショールーム連動の実例) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「「所有」から「シェア」へ変化する消費者の心をつかみ成長「レンティオ株式会社」」(月額レンタル、返却、初期負担軽減、再貸出を組み合わせる所有代替型サービスの実例)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2024年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 30 点)
設問文
EC サイトの新規顧客は増えたが、3 代目は顧客の顔を直接見ながら販売できない寂しさも感じ始めた。3 代目は、今後は、X 市の地元で開く店舗と EC サイトの両方を利用する顧客を増やしていきたいと考えるようになった。B 社にはどのような施策が必要か、150 字以内で具体的に提案せよ。
回答例(141 字)
ECサイトで窯元の制作体験、3代目の盛り付け講座、カフェイベントの予約を受け付け、店舗へ誘導する。店舗では参加者にEC用クーポンとQRコードを渡し帰宅後の購入を促す。両チャネルの購買・体験・嗜好情報を一元管理し、好みに合う新作やイベントを継続提案して相互利用と顧客生涯価値を高める。
解説
この問題の着眼点
店舗とECの両方を利用する顧客を増やす施策 を150字で提案します。ECから店舗、店舗からECへ動く理由をつくり、両方で得た顧客情報を次の提案へ使います。中心は 販路をつなぐPlaceと、継続関係を育てるCRM です。
店舗の体験と、自宅から購入できるECをつなぐ
設問文では EC サイトの新規顧客は増えた と条件が追加されています。次の課題は、その顧客に現地でも器や人に触れてもらい、帰宅後も利用を続けてもらうことです。
与件文のどこを見るか
- 第7段落: 自由に出入りできる窯元、 消費者に直接販売 とあります。産地には、作り手や器と接する機会があります。
- 第9段落: ホテルの料理長との綿密な打ち合わせ、 盛り付け映えや写真映えを考え抜き とあります。3代目の提案経験を、使い方を学ぶ場へ活かせます。
- 第10段落: 家庭料理でも見違えるほどおいしそうに見える食器への盛り付け方、 旅先で食べたこの味わいを自宅で再現したい とあります。使い方や地域の体験が、自宅での利用意欲へつながる根拠です。
- 第11段落: 明るく開放感のあるスタイリッシュな空間、 自社の扱う X 焼で軽食を提供するカフェスペース、 自社が扱う X 焼を販売する EC サイトを開設することにした とあります。店舗は器を実際に使う場、ECは来店しなくても購入できる接点として組み合わせられます。
ECから店舗へは、現地でしか得られない体験を案内する
ECで商品を見る顧客に、例えば 窯元の制作体験、3代目の盛り付け講座、カフェイベント を紹介し、予約を受け付けます。店舗で3代目に直接相談でき、器を使った食事や盛り付けを体験できれば、商品写真を見るだけでは分からない魅力に触れられます。
窯元と連携する制作体験も、店舗を集合・案内の接点にするなどして来店へつなげることが考えられます。ECから単に「店にも来てください」と誘うのではなく、 実物・使い方・作り手に触れる来店理由 を用意することが重要です。
店舗からECへは、帰宅後も器を選べる導線を用意する
来店者には、使った器や関連商品のECページへ進める QRコードとEC用クーポン を案内します。店頭で気に入った器を帰宅後に選び直したり、新しい料理に合う器を追加で探したりできれば、遠方の顧客とも関係を続けられます。
第11段落の 「しかし」 は、HPを会社紹介と考える発想から、販売に役立つ接点として活用する転換を示しています。本問ではさらに、店舗での経験をECでの購入へ引き継ぎ、 EC→店舗と店舗→ECの往復 をつくります。
クーポンは帰宅後に利用するきっかけです。値引きそのものより、体験した器や使い方をオンラインでも見つけられることを軸にすると、二つの販路が一つの顧客体験としてつながります。
顧客情報をまとめ、次の提案へ戻す
共通の会員情報などで、 両チャネルの購買・体験・嗜好情報を一元管理 する方法が考えられます。どの器を買ったか、どの講座へ参加したか、どんな色や料理を好むかが分かれば、その人に合う新作やイベントを案内できます。
情報が別々のままでは、来店して好みを伝えた顧客にも、ECでは同じ一斉案内を送るだけになりかねません。 体験や購買の情報を、個別の継続提案へ返す ことで、B社との接点を重ねるほど選びやすくなる関係を育てます。これが、相互利用を長期的な顧客価値へつなぐ考え方です。
相互利用と継続提案を150字で答案化する
答案の骨格は、 EC→店舗の体験予約+店舗→ECの購入導線+情報統合による継続提案 です。三つにおよそ50字ずつを置く意識で、体験内容、クーポン・QRコード、集める情報とその使い方を肉付けします。
「ECでは〜。店舗では〜。両方の情報を〜。」とすると、手段の役割が伝わります。 二方向の利用と、情報を次の対応へ使うこと を残し、店舗とECを別々に宣伝する答案ではなく、両方を使い続ける理由まで書きましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「小売業の生産性向上」は、実店舗の体験とEC・顧客データを結び、双方向接点と提案精度を高める小売DXについて示しています。本問では、「ECと店舗を往復できる顧客体験とデータ統合を設計する」を2024年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「EC一元管理ツール」は、店舗・ECの在庫、顧客、注文情報を一元管理し、分析と提案へ活用する仕組みを補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| ECと店舗を往復できる顧客体験とデータ統合を設計する | 予約、店舗体験、EC購買、クーポン、顧客情報を双方向に結ぶ | オンラインから店舗への一方向誘導だけにしない |
類題は、2016年度事例II第2問(設問2) と 2021年度事例II第2問 です。共通点 は、オンラインと実接点を購買行動へつなぐことです。相違点 は、本問がECと店舗を双方向送客し、両チャネルの顧客情報を統合するOMOである点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「小売業の生産性向上」(実店舗の体験とEC・顧客データを結び、双方向接点と提案精度を高める小売DX) / 中小企業基盤整備機構「EC一元管理ツール」(店舗・ECの在庫、顧客、注文情報を一元管理し、分析と提案へ活用する仕組み)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2024年度の与件事実を主根拠にします。

