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令和 2 年度(2020 年度)事例 Ⅱ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
現在の B 社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①〜④ の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。
回答例(37,39,40,39 字)
【強み】高品質なハーブの無農薬栽培・加工技術と、大手製薬会社との取引で得た信頼性。 【弱み】特定の大手取引先であるZ社への売上依存度が高く、自社のマーケティング力が弱い。 【機会】健康志向を背景としたヘルスケア市場の拡大と、安眠効果のあるハーブへの新たな需要。 【脅威】主要取引先Z社との取引縮小・終了の可能性と、島の人口減少による地域の活力低下。
解説
この問題の着眼点
現在のB社を SWOTの四つの欄に分け、各40字でまとめる与件抜粋型の問題 です。栽培・加工の力と販路の課題を内部環境、需要の変化と取引先・地域の動向を外部環境として整理します。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら候補をマーキングします。蛍光ペンやボールペンの色、S・W・O・Tの印で区別し、40字へ絞り込む前に第2問以降へ進みましょう。
後続設問で使う強み・補う弱みを1軍、その他を2軍に分け、最後に答案を確定します。取引先開拓、自社ブランド販売、島での体験に必要な資源と課題を確かめると、優先して残す根拠が見えてきます。
栽培・加工の強さと、販売先への依存を整理する
与件文のどこを見るか
- 第5段落: 無農薬で高品質のハーブ、 同じ耕作地で年に4〜5回収穫できる効率的な栽培方法 とあります。品質と効率を両立する栽培能力があります。
- 第8段落: 栽培したハーブを新鮮なうちに乾燥粉末にする、 輸送コスト削減 とあります。栽培に加えて、島内で加工し出荷する能力を持ちます。
- 第11段落: Z社との取引実績が安心材料、 B社の事業がZ社との取引に依存している とあります。新規取引の信用となる実績がある一方、売上を支える相手は偏っています。
- 第6段落: このハーブと島の知名度が大消費地では著しく低い とあります。自社製品の販売が伸びなかった背景であり、顧客へ魅力を伝え、需要へ結びつける力が課題になります。
- 第7段落: 消費者の健康志向を背景にますます拡大基調にあるヘルスケア市場 とあります。B社が活用できる外部の需要です。
- 第11段落: 安眠効果があるとされるハーブ(Yとは異なるハーブ)が注目を集めている とあります。ハーブY以外にも新しい需要が生まれています。
- 第10段落: あと2〜3年でこの製品を製造中止する可能性が高い とあります。主要取引先の判断によって原材料需要が失われるおそれがあります。
- 第2段落: 若年層の人口流出や雇用機会不足、 地域の活力が低下して久しい とあります。事業の基盤となる島の環境にも不安があります。
同じZ社の話でも、内部の弱みと外部の脅威を分ける
Z社への依存 は、B社自身の取引先構成の弱みです。一方、 Z社の製品の売れ行き鈍化・製造中止の可能性 は、相手側で起こる外部の脅威です。「一社に偏っていること」と「その一社からの注文が減ること」を分けると、同じ記述の繰り返しを避けられます。
第11段落の 「しかし」 は、別のメーカーから引き合いが来ても、取引量はまだ少ないという対比です。新規取引の芽はあるものの、依存から脱してはいません。また、自社サイトでの受注が始まった現在と、かつて離島フェアで売れなかった時点を区別し、販売力を今後育てる必要があると捉えます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
| 自社の候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 高品質な無農薬栽培と乾燥粉末加工 | 第2問の原材料提案、第3問の商品づくり、第4問の生産体験 | 栽培・加工技術 を1軍にする |
| Z社との取引で得た信頼 | 第2問で新しい法人取引先を開拓する裏付け | 大手製薬会社との取引実績による信頼性 を1軍にする |
| Z社に偏った取引先構成 | 第2問で複数社へ広げ、第3問で直接販売へ展開する | Z社への売上依存 を1軍にする |
| 自社製品の魅力を需要へ結ぶ力の不足 | 第3問で顧客と対話し、商品づくりへ反映する | 自社のマーケティング力の弱さ とまとめる |
| 年4〜5回の収穫、島内工場という個別事実 | 栽培・加工能力の具体的な裏付け | 2軍として上位の能力表現に含める |
外部環境は、 健康志向と安眠ハーブへの需要 を機会に、 Z社との取引縮小・終了の可能性と地域の活力低下 を脅威に整理します。ハーブ畑の景観や食文化は第4問で使う大切な根拠ですが、強み欄では栽培・加工と信用を先に確保します。
SWOTを各40字で答案化する
答案の骨格は、 強み=技術と信用/弱み=依存と販売力/機会=健康・安眠需要/脅威=取引縮小と地域の衰退 です。強みは「高品質」「無農薬」「栽培・加工」を一つの能力へ束ね、信用という別の観点も残します。
各欄の中で同じ意味の候補をまとめ、 一つの話だけで40字を使い切らない ようにします。弱みはB社の構造、脅威は外部の変化として書き分けると、次の問題で何を改善するのかも明確になります。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法について示しています。本問では、「顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する」を2020年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する | 分析の各箱へ与件事実を置き、比較から強みと課題を特定する | 現状分析では後続問の施策を先取りしない |
類題は、2024年度事例II第1問 と 2019年度事例II第1問 です。共通点 は、内部・外部の事実をSWOTへ分類することです。相違点 は、本問が無農薬栽培技術とZ社取引実績を強み、Z社依存を弱み・脅威として切り分ける点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2020年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 30 点)
設問文
Z 社との取引縮小を受け、B 社はハーブ Y の乾燥粉末の新たな取引先企業を探している。今後は Z 社の製品とは異なるターゲット層を獲得したいと考えているが、B 社の今後の望ましい取引先構成についての方向性を、100 字以内で助言せよ。
回答例(97 字)
健康・長寿に関心のある高齢者層をターゲットとし、健康食品や介護食メーカーと提携する。ハーブYの伝統や効能を訴求し、乾燥粉末を使用した粉末茶等の製品を提案し、複数社との取引でZ社依存を軽減させる。
解説
この問題の着眼点
ハーブYの乾燥粉末を販売する法人取引先の構成 を100字で助言します。Z社製品とは異なる最終顧客を選び、その顧客へ商品を届けられる企業を逆算して、Z社への依存を減らす方向へつなげます。
最終顧客から、新しい取引先を逆算する
与件文のどこを見るか
- 第9段落: 主として30〜40歳代の女性層の支持を獲得した とあります。Z社製品が既に獲得している顧客層です。これとは異なる層を考えます。
- 第4段落: 島内では古くから健康・長寿の効能があると言い伝えられてきた、 とくに高齢者は普段からおひたしや酢みそあえにして食べる とあります。ハーブYには美容向けの製品以外に、日常の食事として親しまれてきた背景があります。
- 第6段落: お茶や調味料、健康食品 とあります。ハーブ一般の用途の広さを、Yを使う食品提案の手掛かりにします。
- 第5段落: 無農薬で高品質のハーブ とあります。新しい取引先へ品質を訴求できる根拠です。
- 第11段落: Z社との取引実績が安心材料、 Z社との取引に比べるとまだ少量 とあります。信用を新規開拓へ活かし、依存を緩められる取引の広がりを目指します。
年齢を変えるだけでなく、使う場面と価値を変える
STPでは、既存の30〜40歳代女性の美容需要に対し、例えば 健康・長寿に関心のある高齢者層 を選びます。島の高齢者が食べてきた事実を手掛かりに、日常の食事へ取り入れやすい健康食品などの用途を考える方向です。
島内の食習慣が全国へそのまま広がると決めつけず、取引先の顧客理解を使って、味や食べやすさ、利用場面を確かめます。 島の伝統と高品質な無農薬素材 を、どんな商品価値にできるかまで示すと、ターゲット選定に理由が生まれます。
顧客を持つ企業と組み、乾燥粉末の用途を広げる
高齢者の食や健康に関わる 健康食品・介護食メーカー などが取引先候補になります。B社は栽培・加工したYの乾燥粉末を供給し、相手は製品化と最終顧客への販売を担います。粉末茶や食品への配合など、相手が商品化しやすい使い方を提案することで、単なる原材料の売り込みから一歩進められます。
ここで扱うのは ハーブY です。安眠効果を持つものはYとは別のハーブであり、第3問のハーブティーをそのまま第2問の商品に置き換えません。Yについては、与件にある伝統的な食利用や品質を根拠として、提案する用途を考えます。
一社を置き換えるのでなく、取引先構成を変える
第11段落の 「しかし」 の後には、新規取引が少量で、依存構造が残る現状があります。別の大手一社に取引を集めるだけでは、その相手の製品方針に左右される状態が続きます。
そのため、 異なる用途・顧客に接する複数社との取引 を育てる方向を答えます。取引先の数だけでなく、届ける顧客や用途も広げることで、一つの製品の販売不振がB社全体へ及ぼす影響を抑えられます。大手との取引実績による信用を、次の販路を作るために使う判断です。
取引先構成の方向性を100字で答案化する
答案の骨格は、 異なる最終顧客→その層に届く法人取引先+Yの用途提案→複数社取引で依存を軽減 です。最終顧客には健康を意識する高齢者、法人には健康食品・介護食メーカー、提案にはYの乾燥粉末を使う食品を肉付けします。
「誰を狙うか」だけで終えず、 誰に原材料を売り、どのような取引先構成へ変えるか まで残します。用途は取引を具体化するために短く示し、Z社依存の軽減という経営課題へ結びましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「中小企業にも有効な企業連携の考え方について教えてください。」は、共通目的、相互補完する経営資源、役割分担、双方の利益を明確にする連携原則について示しています。本問では、「各者の得意資源と役割を分け、共同価値と双方の効果を作る」を2020年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「顧客ターゲットを明確化するには、どうすればよいのでしょうか?」は、属性・地域・心理・行動で標的を具体化し、品揃え・サービス・販促を標的へ合わせる方法を補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 各者の得意資源と役割を分け、共同価値と双方の効果を作る | 協業相手、自社の提供資源、相手の資源、顧客便益を対応させる | 相手先名だけ、または一方だけが得する提案にしない |
類題は、2022年度事例II第2問 と 2017年度事例II第3問 です。共通点 は、標的顧客と協業相手の資源を対応させることです。相違点 は、本問が健康・長寿に関心ある高齢者と食品・介護食メーカーを結ぶ点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「中小企業にも有効な企業連携の考え方について教えてください。」(共通目的、相互補完する経営資源、役割分担、双方の利益を明確にする連携原則) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「顧客ターゲットを明確化するには、どうすればよいのでしょうか?」(属性・地域・心理・行動で標的を具体化し、品揃え・サービス・販促を標的へ合わせる方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2020年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 30 点)
設問文
B 社社長は最近、「眠る前に飲むハーブティー」の自社オンラインサイトでの販売を手がけたところ、ある程度満足のいく売上げがあった。
(設問 1)
上記の事象について、アンゾフの「製品・市場マトリックス」の考え方を使って 50 字以内で説明せよ。
回答例(50 字)
安眠ハーブティーという新製品を自社サイトで大都市圏女性という新市場に直販するため、多角化戦略である。
解説
この問題の着眼点
安眠ハーブティーの直販を、 アンゾフの製品・市場マトリックスで分類し、50字で説明 します。B社の従来の製品と顧客を基準に、何が新しくなったのかを二つの軸で確かめます。
B社にとっての製品と市場の変化を読む
与件文のどこを見るか
- 第8段落: ハーブの栽培・粉末加工・出荷を行うための事業会社 とあります。従来のB社は、メーカーへ供給する原材料を生産してきました。
- 第11段落: 安眠効果があるとされるハーブ(Yとは異なるハーブ)、 安眠系サプリメントなどの原材料として使いたい とあります。この別ハーブにも、メーカー向け原材料という使い道があります。
- 第12段落: 「眠る前に飲むハーブティー」というコンセプトの製品、 自社オンラインサイトで販売、 20歳代後半〜50歳代の大都市圏在住の女性層 とあります。今回は消費者が飲む製品を、自社で個人へ販売しています。
原材料から、自分たちのブランドの飲用製品へ進む
製品軸では、メーカーが加工する乾燥粉末と、顧客が眠る前に飲むハーブティーを比較します。材料に共通性があっても、購入者がそのまま使える商品として用途・飲み方を提案するため、 B社にとっての新製品 と捉えられます。
製造をOEM企業へ委託していても、B社が自社ブランド製品として企画・販売する関係は変わりません。自社工場で最終製品を製造したかどうかではなく、 何を商品として市場へ提供するようになったか を見ます。
原材料を買う企業から、飲用する個人へ市場を広げる
市場軸では、Z社などのメーカーと、自社サイトで注文する大都市圏の女性を比較します。B社の直接の取引相手が法人から個人へ広がり、個人の使い方や反応を自ら把握するようになるため、 B社にとっての新市場 です。
Z社製品にも女性客がいますが、それはZ社の顧客です。B社の市場を判断するときは、B社が直接誰に販売していたかを基準にします。年齢層に一部重なりがあることより、 メーカー向け原材料販売から消費者への直接販売へ という変化が重要です。
二つの軸を合わせて、多角化と判断する
| 比較軸 | 従来のB社 | 今回の展開 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 製品 | メーカーが使うハーブの乾燥粉末 | 眠る前に飲む自社ブランドのハーブティー | 新製品 |
| 市場 | Z社などのメーカー | 自社サイトで購入する大都市圏の女性 | 新市場 |
新製品×新市場=多角化 となります。オンラインサイトは新市場に直接届くPlaceですが、販路が変わったことだけで多角化を決めるのではなく、この二軸で理由を示します。
第12段落の 「さらに」 は、自社ブランド販売と島の活性化に向けた社長の思いが強まっている箇所です。この目的を背景に、実際に行った製品・顧客の変化を分類します。ハーブ栽培・加工の知識を活かした展開でも、アンゾフの分類では両軸が新しいと判断できます。
製品・市場の二軸を50字で答案化する
答案の骨格は、 安眠ハーブティーという新製品+大都市圏女性という新市場→多角化 です。製品名と顧客を具体的に置き、「新製品を新市場へ販売するため、多角化」と分類の理由をつなげます。
50字では一般的なマトリックスの定義や施策の効果を説明するより、 二つの「新しい」を裏付けるB社の事実 を優先します。「ネット販売を始めたから」だけに縮めず、製品と市場を残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「アンゾフの成長マトリックス」は、既存/新規の製品と市場を分け、市場浸透・市場開発・製品開発・多角化から成長方向を選ぶ枠組みについて示しています。本問では、「当該企業を基準に製品と市場の新しさを別々に判定する」を2020年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 当該企業を基準に製品と市場の新しさを別々に判定する | 新製品と新市場の交点から成長戦略を選び、根拠を示す | 新チャネルだけで新市場・多角化と断定しない |
類題は、2016年度事例II第2問(設問1) と 2024年度事例II第3問 です。共通点 は、製品と市場の組合せから成長方向を選ぶことです。相違点 は、本問が新しい安眠茶を新市場の大都市圏女性へ売るため多角化と判定する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「アンゾフの成長マトリックス」(既存/新規の製品と市場を分け、市場浸透・市場開発・製品開発・多角化から成長方向を選ぶ枠組み)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2020年度の与件事実を主根拠にします。
(設問 2)
B 社社長は自社オンラインサイトでの販売を今後も継続していくつもりであるが、顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている。顧客の関与を高めるため、B 社は今後、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか。100 字以内で助言せよ。
回答例(99 字)
サイトで開発過程を公開して商品案や名称、ハーブの活用法を募り、意見や投票結果を試作・改良へ反映する。採用理由と成果を公開し、試作品への感想も募って対話を続け、顧客が製品づくりに参加する実感を高める。
解説
この問題の着眼点
自社オンラインサイトで 顧客を製品づくりへ巻き込むコミュニケーション施策 を100字で助言します。情報を一方的に届けるだけでなく、顧客の声や参加を商品開発へ戻す流れを考えます。
購入者との接点を、商品を一緒に育てる場へ変える
与件文のどこを見るか
- 第12段落: 自社ブランド製品の販売に再びチャレンジしたい、 「眠る前に飲むハーブティー」というコンセプトの製品 とあります。B社が商品を企画し、顧客の声を次の商品づくりへ使える場面です。
- 第12段落: 自社オンラインサイトで販売、 20歳代後半〜50歳代の大都市圏在住の女性層 とあります。既に反応した顧客と継続して接点を持てます。
- 第11段落: 6〜7種類の別のハーブの栽培・乾燥粉末加工 とあります。顧客の使い方や希望を検討する際の、自社側の素材・加工の基盤になります。
開発の途中を見せ、顧客が参加できる問いを置く
完成した商品を宣伝するだけでは、顧客は「買うかどうか」を選ぶ立場にとどまります。例えば 開発過程を公開し、味・飲み方・名称のアイデアを募る と、商品が出来上がる前に意見を出せます。
「ご意見をください」と広く尋ねるより、「眠る前にどんな香りや飲み方を楽しみたいか」など、商品コンセプトに沿う問いを置く方法が考えられます。B社が検討している内容も伝えることで、顧客は自分の経験をどこへ役立てられるか理解しやすくなります。
意見を集めて終わらず、返答と商品への反映を見せる
次に、 ハーブの活用法を投稿・共有できるコーナー を設け、顧客同士が他の使い方を知り、B社も質問や提案へ応答します。飲む場面、好み、使いにくさといった情報を得ることで、B社だけでは見えなかった需要を商品改善へつなげられます。
寄せられた意見や投票結果を試作・改良へ反映し、採用理由と成果をサイトで知らせれば、 自分の意見が商品づくりに届いたという実感 が生まれます。これが参加意識を高め、再び意見を出したい、出来た商品を使いたいという関係へつながります。顧客の声を開発へ戻す部分が共創であり、そのやり取りを続ける部分がCRMです。
自社サイトを中心に、対話を続けられるようにする
SNSはサイトの開発企画や投稿募集を知らせる入口として併用できますが、本問の中心は 自社オンラインサイト上の双方向の対話 です。広告や割引を増やすことより、顧客が参加し、応答を受け取り、その後の変化を見られる場を具体化します。
第12段落の 「さらに」 で強まる自社ブランド販売への思いを、顧客の声を活かす商品づくりへつなげます。最初の注文で得た接点を次の対話へ育て、売り切りではない関係を作る考え方です。
顧客参加のコミュニケーション施策を100字で答案化する
答案の骨格は、 開発過程の公開→商品案・名称・活用法の募集→意見・投票結果を試作と改良へ反映→採用理由と成果を公開し対話を続ける です。募集・共有と参加意識の間に、実際の商品への反映と顧客への報告を残します。自社サイトを中心とし、SNSは募集を知らせる補助に位置付けます。
「双方向にする」だけで終えず、 B社が何を見せ、顧客が何を返し、どう製品づくりへ関わるか を動詞で示します。施策をいくつも列挙するより、公開・募集・共有・応答が一続きになるようにまとめましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」は、顧客接点から要望を集め、製品・サービスの改善と信頼形成へ還流する仕組みについて示しています。本問では、「顧客のアイデアと反応を開発へ反映し、需要を検証する」を2020年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「第2ステップ:アイデアを発想する」は、標的顧客との意見交換や個別調査から定性情報を集め、商品アイデアへ反映する方法を補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客のアイデアと反応を開発へ反映し、需要を検証する | 開発公開、募集、企業の応答、商品への反映を循環させる | 一方向の情報発信や意見募集だけで共創としない |
類題は、2021年度事例II第4問 と 2022年度事例II第4問 です。共通点 は、外部の知識を商品開発へ取り込むことです。相違点 は、本問が顧客から名称・用途・アイデアをオンラインで募り、参加意識を高める共創である点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」(顧客接点から要望を集め、製品・サービスの改善と信頼形成へ還流する仕組み) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「第2ステップ:アイデアを発想する」(標的顧客との意見交換や個別調査から定性情報を集め、商品アイデアへ反映する方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2020年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 20 点)
設問文
B 社社長は、自社オンラインサイトのユーザーに対して、X 島宿泊訪問ツアーを企画することにした。社長は、ツアー参加者には訪問を機に B 社と X 島のファンになってほしいと願っている。絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか。100 字以内で助言せよ。
回答例(99 字)
B社のハーブ畑での収穫体験と乾燥粉末加工の工場見学を行う。社長自らが島の活性化への思いを語るセミナーや収穫したハーブを使い、島の高齢者から島のハーブ料理を教わる料理教室を開催し、ファン化を促進する。
解説
この問題の着眼点
オンラインサイトのユーザーが B社とX島のファンになる、観光以外のプログラム を100字で助言します。B社の生産現場を知る体験と、社長・住民の思いや暮らしに触れる交流を組み合わせます。
商品の背景を体験し、作り手と島を身近に感じてもらう
与件文のどこを見るか
- 第1段落: ハーブの無農薬栽培、 ハーブ乾燥粉末の一次加工・出荷 とあります。収穫や加工という、B社の本業を体験・見学する素材があります。
- 第5段落: 一面に広がるハーブ畑 とあります。オンラインで買っていた商品の原材料が育つ場所を訪ねられます。
- 第8段落: 栽培したハーブを新鮮なうちに乾燥粉末にする とあります。収穫したものが加工される過程を、品質への理解へ結びつけられます。
- 第3段落: こうした島の窮状を打開したい とあります。創業の背景には、島の課題を事業で解決したいという社長の思いがあります。
- 第4段落: 島のイベント時に必ず食べる風習、 高齢者は普段からおひたしや酢みそあえにして食べる とあります。島の住民からハーブの食べ方や文化を教わる交流が考えられます。
収穫・加工を通じて、品質の理由を実感してもらう
まず、 ハーブの収穫体験と乾燥粉末加工の工場見学 を組み合わせます。畑で植物に触れ、栽培の工夫を聞き、その後の加工を見ることで、商品がどこで誰によって作られているかが具体的になります。
第8段落の 「そこで」 は、かさばるハーブの輸送費という課題を、島内での乾燥粉末加工で解決する流れです。工場を見せるだけでなく、その工程が必要になった理由まで案内すると、B社の工夫や事業への理解が深まります。 品質を支える仕事を知ること を、企業への信頼へつなげる体験です。
社長の思いと、住民の食文化を交流で伝える
次に、 社長が島の活性化への思いを語る場 を設けます。ハーブ栽培を始めた理由や、島で加工まで行う事業を作った経緯を本人から聞くことで、商品だけでなく、その事業を続ける意味にも触れられます。
さらに、 島の高齢者にハーブ料理を教わる料理教室 を開く方法が考えられます。料理を一緒に作り、祝いの膳や日々の食事での使い方を聞けば、ハーブが島の暮らしに根づく植物だと実感できます。収穫体験で触れたものを料理で味わう構成にすると、生産と食文化がつながります。
B社への信頼と、島への愛着を両方育てる
収穫・工場見学は B社の品質や技術への理解 を、社長・住民との交流は 作り手の思いと島の文化への共感 を育てます。この二つを組み合わせることで、「商品を買ったことがある」関係から、「あの人たちの事業と島を応援したい」関係へ進むことが期待できます。
本問では絶景や星空の案内を増やすより、 誰と何を体験し、何への理解や愛着が生まれるか を具体化します。これは訪問そのものを提供価値のある体験商品にし、その後の関係を深めるCRMへ結ぶ考え方です。100字では帰宅後の施策まで広げず、指定された現地プログラムに集中します。
ファン化につながるプログラムを100字で答案化する
答案の骨格は、 収穫・加工の事業体験+社長・住民との交流→B社と島への理解・愛着 です。前半には収穫体験と工場見学、後半には社長の思いを聞く場と高齢者から学ぶ料理教室を肉付けします。
体験名を並べるだけでなく、 誰が伝えるか、何を学べるか を添えると、その島・その会社ならではの内容になります。企業への信頼と地域への共感を「ファン化」へ束ね、二つの対象へのつながりを残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「イベント・しかけ:何度も来たくなるイベント・しかけ(店舗力7回目)」は、体験・実演で顧客の声を集め、商品理解、愛着、再来訪、固定客化へつなげる方法について示しています。本問では、「顧客が価値を実感する体験を設計し、口コミ・再訪へつなげる」を2020年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」は、顧客接点から要望を集め、製品・サービスの改善と信頼形成へ還流する仕組みを補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客が価値を実感する体験を設計し、口コミ・再訪へつなげる | 地域資源、案内・参加内容、体験後の共有・購買を一続きにする | 媒体やイベント名の列挙だけで終えない |
類題は、2018年度事例II第3問 と 2016年度事例II第3問 です。共通点 は、現地体験を理解・愛着・口コミへつなぐことです。相違点 は、本問が畑・工場・料理教室と島の住民交流を組み合わせてファン化する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「イベント・しかけ:何度も来たくなるイベント・しかけ(店舗力7回目)」(体験・実演で顧客の声を集め、商品理解、愛着、再来訪、固定客化へつなげる方法) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「顧客とのコミュニケーションの仕組み」(顧客接点から要望を集め、製品・サービスの改善と信頼形成へ還流する仕組み)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2020年度の与件事実を主根拠にします。

