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平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅱ 解答解説
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第 1 問(配点 25 点)
設問文
B 社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から 150 字以内で述べよ。
回答例(135 字)
顧客はなじみのビジネス客8割と訪日客2割で、前者は高齢化で減り、地域では和の風情を求める訪日客が増加する。競合は駅前のチェーンホテル2軒で中心部に他の宿はなく、自社は歴史・美術品の文化的雰囲気、中心部立地と英語対応が強みだが、駅から遠く施設も古く、新規客への発信が弱い。
解説
この問題の着眼点
B社の現状を 顧客・競合・自社の3Cで150字以内にまとめる与件抜粋型の問題 です。顧客と競合は与件の事実を拾い、自社は 強みと弱みに分けて 整理します。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら、顧客・競合の事実と、自社の強み・弱みの候補をマーキングします。蛍光ペンやボールペンの色、S・Wなどの印で区別したら、すぐに150字へ絞らず、第2問以降へ進みましょう。
後続設問で使った強み・補う弱みを1軍、その他を2軍に分け、最後に第1問を確定します。文化資産、英語対応、地域との接点がどの施策を支えるかを見れば、短い自社欄へ残す根拠を選びやすくなります。
顧客の変化と、B社が選ばれる理由を集める
与件文のどこを見るか
- 図:X市のインバウンド客数が近年大きく増えています。Customerの市場機会を示す根拠であり、B社自身の宿泊客数の増加とは区別します。
- 第7段落: 昔なじみのビジネス客8割、インバウンド客2割、 なじみ客らは高齢化が進み、減少傾向、 たいしたプロモーション活動を行う必要性がなかった とあります。既存客に支えられてきた営業と、現在の顧客減少を一緒に捉えます。
- 第6段落: 和の風情を求めるインバウンド客が急増 とあります。X市を訪れる顧客の需要が変化しています。
- 第8段落: 駅前にはチェーン系ビジネスホテルが2軒、 X市市街地中心部にはB社以外に宿泊施設がない、 B社だけがこの需要を享受できていない とあります。競合の所在と、観光需要を取り込めていない自社の現状が分かります。
- 第1段落: 約150年の歴史、 英語に堪能な従業員 とあります。歴史のある宿に、外国人客と意思疎通できる人材が加わっています。
- 第2段落: 古風な和室、 苔むした庭園、 芸術家による美術品 とあります。和の文化に触れられる資源です。
- 第3段落: これらのエリアはいずれも徒歩圏内、 最寄り駅までは公共バスを利用して20分強 とあります。市内観光には便利な一方、駅からは距離があります。
顧客は、市場の変化と現在の客層を分けて読む
X市では和の風情を求めるインバウンド客が増えています。しかし、B社の宿泊客は昔なじみのビジネス客が8割で、その客層は高齢化・減少が進んでいます。拡大する観光需要と、縮小する既存顧客への依存 の隔たりが、後続設問の出発点です。
図は、2007年を1.0としたX市のインバウンド客数の推移で、近年の大きな伸びを示します。B社の宿泊客数のグラフではありません。市場に機会があることと、それを自社が取り込めているかは分けて考えます。
第7段落冒頭の 「一方」 は、観光客が増える街と、営業方法がほとんど変わらなかったB社を対比しています。ホームページ開設などは始めていますが、宿の価値を新しい顧客へ届けることが課題として残っています。
競合は、同じ地域の宿でも立地が異なる
駅前にはチェーン系ビジネスホテルがある一方、市街地中心部の宿泊施設はB社だけです。駅からの近さでは不利でも、B社は名刹や商業地域へ歩いて行けます。駅へのアクセスと、観光・夜の回遊への便利さ を分けると、中心部立地の強みを説明できます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
自社の候補は、後続設問で どの資源を使い、どの弱さを補ったか を基準に絞ります。
| 自社の候補 | 後続設問とのつながり | 答案に残す方向 |
|---|---|---|
| 長い歴史、和室、庭園、美術品 | 第2問の発信内容、第3問の文化案内に使う | 歴史と文化的な雰囲気 を強みの1軍に |
| 英語に堪能な従業員 | 第2問の安心感、第3問の対話を支える | 英語対応 を強みの1軍に |
| 市街地中心部の立地 | 第3問の回遊提案、第4問の夜間滞在と連携に使う | 中心部立地 を強みの1軍に |
| 既存客に頼る営業、発信の弱さ | 第2問の情報発信、第3問の口コミ、第4問の送客で補う | 新規客への発信不足 を弱みの1軍に |
| 施設の古さ、駅からの距離 | 改築に頼らない文化価値と事前案内の必要性につながる | 老朽化・駅からの距離 を弱みとして残す |
客室数や駐車台数も候補ですが、ここでは2軍とし、顧客に選ばれる理由と、新規客を取り込めない原因を優先します。和室の古さは設備面の弱さになり得る一方、和の風情を求める顧客には魅力にもなります。何を求める顧客にとっての評価か を添えて整理しましょう。
顧客・競合・自社を150字で答案化する
答案の骨格は、 顧客の変化+競合の立地+自社の強み・弱み です。顧客では、自社の宿泊客構成がビジネス客8割・訪日客2割であることと、地域の和の風情への需要増を分けます。競合は駅前のチェーンホテル2軒で、中心部には他の宿泊施設がありません。自社を競合に含めず、文化・立地・人材の強みと発信・施設面の弱みを示します。
「顧客は〜。競合は〜。自社は〜が強みだが、〜が弱み。」と三つに分けると、問いとの対応が明確です。美術品や庭園の説明を長くせず文化資産として束ね、顧客と競合を書く場所を先に確保する ことを意識します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法について示しています。本問では、「顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する」を2018年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客・競合・自社、または内部・外部を分けて根拠を整理する | 分析の各箱へ与件事実を置き、比較から強みと課題を特定する | 現状分析では後続問の施策を先取りしない |
類題は、2025年度事例II第1問 と 2024年度事例II第1問 です。共通点 は、外部環境と自社資源を分けて現状を固定することです。相違点 は、本問が宿泊客構成、駅前競合、歴史・文化・英語対応、施設老朽化を3Cで整理する点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2018年度の与件事実を主根拠にします。
第 2 問(配点 25 点)
設問文
B 社は今後、新規宿泊客を増加させたいと考えている。そこで、B 社のホームページや旅行サイトに B 社の建物の外観や館内設備に関する情報を掲載したが、反応がいまひとつであった。B 社はどのような自社情報を新たに掲載することによって、閲覧者の好意的な反応を獲得できるか。今後のメインターゲット層を明確にして、100 字以内で述べよ。
回答例(93 字)
和の風情を求める訪日客に、歴代社長と芸術家の交流、美術品の由来、日本らしい朝食の献立を写真と外国語で紹介する。英語での接客や外国語予約も案内し、文化を味わえる滞在と利用時の安心を伝える。
解説
この問題の着眼点
今後のメインターゲットと、新たに掲載する自社情報 を100字で示します。誰にどんな価値を伝えるかを決め、ホームページや旅行サイトの情報内容へ落とす、 Target・顧客提供価値からPromotionへつなぐ問題 です。
建物の紹介から、泊まって味わえる体験の紹介へ
与件文のどこを見るか
- 第6段落: 和の風情を求めるインバウンド客が急増 とあります。新規客として狙う層と、その層が求める価値を一緒に拾います。
- 第2段落: 古風な和室、 苔むした庭園、 歴代の社長たちが支援してきた芸術家による美術品、 海外でも名の知られた作家や芸術家 とあります。設備の説明を、宿の歴史や文化を味わう体験へ広げる材料です。
- 第9段落: 日本の朝を感じられる献立、 器にもこだわって、 多くの宿泊客から喜びの声 とあります。日本らしい朝食に価値を感じた顧客の反応があります。
- 第1段落: 英語に堪能な従業員 とあります。外国人客との対話を支える人的資源です。
- 第3段落: これらのエリアはいずれも徒歩圏内 とあります。名刹や商業地域を巡る滞在の拠点として訴求できます。
- 第7段落: ホームページから外国語でも受け付けられる、 事前に予約のない客が宿泊することはほとんどない とあります。来訪前に魅力を伝え、予約へつなぐことが重要です。
図の市場拡大と、宿が提供できる体験を重ねる
図では、2007年を1.0とするX市のインバウンド客数が、特に2014年以降大きく伸びています。第6段落の「和の風情を求める」という需要と合わせれば、増加する外国人旅行者のうち、日本らしい滞在を楽しみたい人を狙う理由が明確になります。
グラフが示すのは市全体の市場機会です。B社がその需要を取り込むには、和室・庭園・美術品・朝食を通じて何を体験できるかを伝え、外国語での予約へつなぐ必要があります。図だけから外国人旅行者全員の好みやB社の集客実績を確定しないようにします。
和の風情を求める人へ、宿の資源を結びつける
仕事のために泊まる顧客と、日本の文化を体験したい顧客では、宿を選ぶ理由が異なります。新規客を増やす本問では、増加している 和の風情を求めるインバウンド客 をメインターゲットに据えます。
その顧客へ「客室が15室あります」「バス付きです」と伝えるだけでは、日本でこの宿を選ぶ理由が届きません。美術品を眺め、庭園の風情を味わい、和室と日本らしい朝食を楽しめるという B社ならではの文化滞在価値 を伝えます。
美術品は、飾りではなく宿の物語として伝える
第2段落の 「このため」 は、歴代社長による作家・芸術家の支援と、館内に美術品があることを結びます。写真に作品名や背景、宿との関わりを添えれば、見た目だけでは分からない文化的な魅力が伝わります。
和室や庭園も、設備名の追加で終えず、そこでどう過ごせるかを写真と文章で具体化します。朝食なら、日本らしい献立の内容を伝え、日本の朝を味わう場面を想像してもらいます。資源を列挙することから、顧客が得る経験を伝えることへ 変えるのが、掲載内容の見直しです。
期待と安心感を、予約につながる情報にする
外国人客には英語で相談できることも伝えます。文化への期待に加え、滞在中に意思疎通できる安心感があれば、宿を選びやすくなります。徒歩圏の名刹や祭り体験も、B社を拠点に楽しめる過ごし方として紹介できます。
地域紹介だけで終えず、この宿に泊まると何を楽しめるか へ戻します。来訪後の飛び込み客を待つのではなく、旅行の計画段階で宿の価値を知ってもらい、既存の外国語予約へつなげる流れです。
ターゲットと掲載情報を100字で答案化する
答案の骨格は、 和の風情を求める訪日客→芸術家との交流史・美術品の由来・朝食の献立→文化を味わう滞在と英語対応の安心 です。建物・設備の写真は既に掲載されているため、写真を足すだけで終えず、写真だけでは分からない交流の歴史や作品の背景、朝食の内容を新しい情報として示します。写真と外国語で泊まる価値を伝え、既存の英語接客・外国語予約を案内します。
100字では、媒体を新しく増やす話より、誰に何を伝えるか に字数を使います。「美しい写真を載せる」だけでなく、何の写真や背景を通して、どんな滞在を期待してもらうのかまで残しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「情報発信を強化する際の注意事項を教えてください。」は、誰に・何を・どう伝えるかを定め、対象に合う内容・媒体と個人情報配慮を設計する方法について示しています。本問では、「標的顧客のニーズから商品・サービスと届け方を設計する」を2018年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 標的顧客のニーズから商品・サービスと届け方を設計する | 対象顧客、提供価値、商品・品揃え、販売方法を因果で結ぶ | 与件にない商品を自由発想せず既存資源との適合を確かめる |
類題は、2021年度事例II第2問 と 2024年度事例II第2問 です。共通点 は、標的顧客に合わせて商品・情報内容を選ぶことです。相違点 は、本問がインバウンド客へ和の文化滞在と英語対応をWebで伝える点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「情報発信を強化する際の注意事項を教えてください。」(誰に・何を・どう伝えるかを定め、対象に合う内容・媒体と個人情報配慮を設計する方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2018年度の与件事実を主根拠にします。
第 3 問(配点 25 点)
設問文
B 社は、宿泊客のインターネット上での好意的なクチコミをより多く誘発するために、おもてなしの一環として、従業員と宿泊客との交流を促進したいと考えている。B 社は、従業員を通じてどのような交流を行うべきか、100 字以内で述べよ。
回答例(97 字)
英語対応の従業員が関心を聞き、美術品や庭園の由来・逸話を説明する。客の感想や自国の文化も聞いて会話を深め、好みに合う名刹・祭り・飲食店を提案する。交流で得た思い出と満足から好意的な口コミを促す。
解説
この問題の着眼点
従業員と宿泊客がどのように交流し、好意的な口コミにつなげるか を100字で示します。接客というサービスの中身を考え、体験価値から口コミへつなぐ問題です。中心は継続購入を管理するCRMではなく、 滞在中の経験価値と、それを共有したくなる満足 にあります。
会話を通じて、その客に合う文化体験を届ける
与件文のどこを見るか
- 第1段落: 英語に堪能な従業員 とあります。外国人客の関心を聞き、案内内容を伝えられます。
- 第2段落: 歴代の社長たちが支援してきた芸術家による美術品、 苔むした庭園 とあります。従業員との会話で意味や楽しみ方を伝えられる館内資源です。
- 第4段落: 山車を引く体験、 さまざまなタイプの飲食店、 美術館などの施設が集積 とあります。宿泊客の関心に応じて案内する地域資源があります。
- 第6段落: こうした食べ物などは写真映えし、 SNS投稿に向く とあります。体験を写真と言葉で共有しやすい素材があります。
- 第7段落: 最低限のコミュニケーションが主要な外国語で図れるよう、 従業員教育も始めた とあります。交流を一人だけに任せず、日々の接客へ広げる土台があります。
美術品や庭園を、従業員との交流のきっかけにする
館内に美術品があっても、眺めるだけでは作品の背景や旅館との関わりまでは伝わりません。従業員が案内し、興味を持った作品について説明すれば、文化資産を見る体験を、人との交流で深める ことができます。
第2段落の 「このため」 がつなぐ、歴代社長の芸術家支援と館内の美術品は、会話で伝える物語になります。英語に堪能な従業員を活かせば、外国人客にもその背景を説明し、質問へ応えやすくなります。
一方的な説明から、関心に合わせた提案へ進める
交流では、こちらが話すだけでなく、何に関心があるか、どんな体験をしてみたいかを聞きます。美術が好きなら館内作品と地域の美術館、祭りに関心があれば展示施設の山車体験、食を楽しみたい客には好みに合う飲食店を案内する例が考えられます。
宿泊客の関心を聞く→館内案内・地域回遊を個別提案する という順序なら、「自分に合う過ごし方を教えてもらえた」という満足が生まれます。観光パンフレットを渡すだけでなく、従業員の対話が提案の中身を変えることが重要です。
口コミの前に、語りたくなる経験をつくる
館内での文化案内と、教えてもらった地域での体験が、その客ならではの思い出になります。写真映えする食や街並みは、その経験を他の人へ伝える素材です。従業員が写真撮影を手伝ったり、体験後の感想を聞いたりすることも、交流の具体例になります。
そのうえで、感想や写真の投稿を案内します。交流→満足→自発的な口コミ という因果を大切にし、投稿依頼だけを先に置かないようにします。好意的な評価を条件にせず、実際に楽しんだ経験を共有してもらうことが出発点です。
交流の内容と口コミへのつながりを100字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
美術品や庭園を案内するだけでなく、作品の由来や逸話、庭園の楽しみ方を宿泊客の関心に合わせて伝えます。客が感じたことや自国の文化を語れば、従業員も受け止めて会話を深められます。さらに関心に合う名刹や祭り、飲食店を個別に提案すると、その客ならではの思い出が好意的な口コミになります。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「サービス業での生産性向上」は、顧客経験、サービスブランド、人材育成、顧客別の提供方法を一体で高付加価値化する考え方について示しています。本問では、「顧客が価値を実感する体験を設計し、口コミ・再訪へつなげる」を2018年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。また、「インターネット上で口コミを上手に利用する方法を教えてください。」は、顧客体験をオンライン上の口コミ・紹介へつなげ、信頼と新規接点を広げる方法を補う資料として併記します。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 顧客が価値を実感する体験を設計し、口コミ・再訪へつなげる | 地域資源、案内・参加内容、体験後の共有・購買を一続きにする | 媒体やイベント名の列挙だけで終えない |
類題は、2020年度事例II第4問 と 2023年度事例II第3問 です。共通点 は、参加・体験が愛着や口コミを生むことです。相違点 は、本問が宿泊中の文化案内と夜の回遊を個別提案し、滞在後の投稿を促す点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「サービス業での生産性向上」(顧客経験、サービスブランド、人材育成、顧客別の提供方法を一体で高付加価値化する考え方) / 中小企業基盤整備機構 J-Net21「インターネット上で口コミを上手に利用する方法を教えてください。」(顧客体験をオンライン上の口コミ・紹介へつなげ、信頼と新規接点を広げる方法)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2018年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(配点 25 点)
設問文
B 社は、X 市の夜の活気を取り込んで、B 社への宿泊需要を生み出したいと考えている。B 社はどのような施策を行うべきか、100 字以内で述べよ。
回答例(98 字)
近隣の割烹料理店や夜間営業店舗と提携し、宿泊客へ夕食クーポンや夜の回遊マップを提供する。提携先にはB社の宿泊案内を設置してもらい、夜の来街客を予約につなぐ相互送客を構築し、夜間滞在需要を取り込む。
解説
この問題の着眼点
X市の夜の活気を、B社の宿泊需要へ変える施策 を100字で助言します。地域の飲食・回遊と宿泊を一つの過ごし方にし、相互送客で顧客接点をつなぐ、 顧客提供価値からProduct・Placeへ進む問題 です。
街に来てもらうことから、泊まる理由をつくることへ
与件文のどこを見るか
- 第4段落: 夜通し続くこの祭り、 さまざまなタイプの飲食店 とあります。夜に楽しめる催しや食の資源があります。
- 第5段落: 名刹は通年で夜間ライトアップ、 夜間の滞在人口は増加傾向 とあります。祭りの開催時だけでなく、夜まで街で過ごす機会が広がっています。
- 第6段落: 電車で2時間程度の日帰りできる距離 とあります。夜の魅力を知らせるだけでなく、泊まって楽しむ理由が必要です。
- 第2段落: 夕食は提供していない、 地元の割烹料理店からの仕出しで対応 とあります。自社で夕食を作らず、地域の飲食機能を活かす関係があります。
- 第8段落: X市市街地中心部にはB社以外に宿泊施設がない、 B社だけがこの需要を享受できていない とあります。周辺店舗のにぎわいを宿泊へ結びつける仕組みが足りません。
- 第7段落: 事前に予約のない客が宿泊することはほとんどない とあります。回遊客への案内を、予約できる導線へつなぐ必要があります。
- 第9段落: 大規模な投資は当面避けたい、 宿泊料金の値上げにも着手したくない とあります。既存の資源と地域連携を使って宿泊客を増やす方向を考えます。
夜まで楽しむ価値と、中心部に泊まる便利さを結ぶ
第5段落の 「こうした影響を受け」 は、街並み整備やライトアップ、地域の活動と、夜間の滞在人口増加を結びます。B社の周辺には、夜まで過ごしたいと思う材料がそろいつつあります。
一方、X市は大都市圏から日帰りもできます。そこで、夕食やライトアップを楽しんでから近くの宿へ戻れるという 夜の回遊と宿泊を組み合わせた過ごし方 を提案します。夜の祭りは開催時の魅力、通年のライトアップは年間を通じた魅力として使い分けます。
B社が持たない夕食を、地域の強みで補う
B社は食材ロスと調理人の人件費を理由に夕食を提供していません。館内で全て完結させるのでなく、割烹料理店や夜間営業店舗の料理・接客と、B社の宿泊機能を組み合わせます。
宿泊客へ夕食クーポンや回遊マップを渡し、店の特徴、営業時間、夜の見どころを案内する方法が考えられます。B社は泊まる場所、地域店舗は食や夜の楽しみを担う ことで、大規模な設備投資に頼らず滞在価値を広げられます。クーポンを提案する場合も、負担を店舗と調整し、採算を確かめます。
宿から街へ、街から宿へ送客する
宿泊客を店へ紹介するだけでは、飲食店の売上は増えても、B社の新規宿泊につながる経路が残りません。提携先にも宿泊案内を置いてもらい、店舗の顧客がB社を知り、予約できるようにします。
| 紹介する方向 | 具体的な接点 | 双方の効果 |
|---|---|---|
| B社から地域店舗へ | 夕食クーポン、回遊マップ、個別案内 | 宿泊客の満足と店舗の来店増 |
| 地域店舗からB社へ | 宿泊案内、予約先の紹介 | B社の認知と宿泊予約の増加 |
ここで 相互送客を、事前予約までつなぐ ことが重要です。案内には宿の連絡先やホームページへの導線を載せ、夜まで楽しむ旅行を計画する段階や、次回訪問の予約につなげます。その夜に店へ来た客が、案内を見れば必ず飛び込みで泊まるとは考えません。
地域連携と宿泊化の仕組みを100字で答案化する
答案の骨格は、 夜間営業店・割烹との連携→夕食・回遊と宿泊の組み合わせ→相互送客による宿泊需要 です。連携相手を最初に置き、宿泊客へのクーポン・マップと、提携先からの宿泊案内を肉付けします。
100字では、誰と組み、双方が何を紹介し、どう宿泊へつなぐか を残します。観光地をたくさん列挙するより、街のにぎわいをB社の予約へ変える仕組みを説明しましょう。値上げや改築ではなく、既存資源をつなぐことに解決の軸を置きます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある「地域活性化に向けた企業と自治体の連携はどのように進めればよいのでしょうか。」は、地域の共通目標を置き、互いの強み・課題・役割・責任・評価方法を共有する連携手順について示しています。本問では、「各者の得意資源と役割を分け、共同価値と双方の効果を作る」を2018年度事例IIの与件事実と設問要求へ当てはめます。
| 公的資料の判断軸 | この設問への当てはめ | 答案上の注意 |
|---|---|---|
| 各者の得意資源と役割を分け、共同価値と双方の効果を作る | 協業相手、自社の提供資源、相手の資源、顧客便益を対応させる | 相手先名だけ、または一方だけが得する提案にしない |
類題は、2022年度事例II第4問 と 2017年度事例II第3問 です。共通点 は、地域事業者との資源補完です。相違点 は、本問が夜間営業店・割烹とのクーポンと案内設置を相互送客へ結ぶ点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「地域活性化に向けた企業と自治体の連携はどのように進めればよいのでしょうか。」(地域の共通目標を置き、互いの強み・課題・役割・責任・評価方法を共有する連携手順)
この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2018年度の与件事実を主根拠にします。
第 4 問(解説)
問題文の該当箇所
- 「B 社は、X 市の夜の活気を取り込んで、B 社への宿泊需要を生み出したいと考えている。B 社はどのような施策を行うべきか、100 字以内で述べよ。」
答案作成の根拠 本回答は、設問の趣旨である「X 市の夜の活気を取り込む」ことを、自社に閉じず、地域全体との連携によって実現する施策を提示したものである。B 社の経営資源や地域の状況を踏まえ、実現可能性の高い具体的な方法を提案している。
外部資源の活用と連携: 与件文には「夜間の滞在人口は増加傾向にある」とあり、これは主に市街地の飲食店やライトアップされた名刹などが生み出す「夜の活気」である。B 社単独で夜の魅力を創出するのではなく、既に存在する地域の魅力を活用することが合理的である。特に「すぐそばにある地元の割烹料理店」との既存の関係は、連携の足がかりとして最適である。
宿泊客へのインセンティブ提供: 宿泊客に「クーポン券」を提供することは、夜の街へ出かける直接的な動機付けとなる。これにより、宿泊客は地域の飲食店で食事を楽しむという「コト消費」を体験でき、滞在満足度の向上につながる。これは、夕食を提供しないという B 社の弱みを、地域の魅力を体験させる機会へと転換する施策でもある。
相互送客による宿泊需要の創出: 施策を一方的な顧客紹介で終わらせず、「B 社のチラシを置いてもらう」ことで、双方向の送客、すなわち相互送客の仕組みを構築することが重要である。これにより、地域の飲食店を訪れた夜の観光客に対して B 社の存在を認知させ、新たな宿泊需要を掘り起こすことが可能となる。これは、プロモーション不足という B 社の課題を、地域連携によって補う有効な手段である。
使用した経営学の知識
- 地域連携マーケティング (エリア・マーケティング): 自社だけでなく、地域全体を一つの魅力的なエリアとして捉え、地域の事業者と連携して集客力やブランド価値を高めていくマーケティング手法である。本施策は、地域の飲食店と連携し、互いの顧客を送り合うことで地域経済の活性化と自社の売上向上を両立させる、その典型例といえる。
- Win-Win の関係構築: B 社は宿泊客に付加価値を提供でき、提携飲食店は新規顧客を獲得できる。この協力関係は、双方に利益をもたらす「Win-Win」の関係であり、持続可能な連携の基礎となる。
- クロスセル: 宿泊というメインのサービスに、地域の飲食という関連サービスを組み合わせて提案する手法である。顧客単価の向上ではなく、顧客満足度の向上と、新たな顧客接点の創出を目的としている。

