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令和 5 年度(2023 年度)事例 Ⅰ 解答解説 ​

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お知らせ

この事例の解説は、AI による出力内容を中小企業診断士が監修し、修正を加えたものです。

第 1 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

統合前の A 社における ① 強みと ② 弱みについて、それぞれ 30 字以内で述べよ。

回答例(28,30 字) ​

【強み】厳選原料による高品質な商品と、従業員が助け合う組織基盤。 【弱み】原材料仕入れの深刻な不安定化と顧客層の高齢化・固定化の進行。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

統合前のA社の強みと弱み を整理する、与件抜粋型の問題です。現経営者の改革によって得た力と、残っている課題を、それぞれ30字で答えます。

根拠集めは最初、答案の確定は最後 ​

与件を読みながら候補をマーキングする ​

与件を読みながら、厳選した原材料、個室、オリジナルメニュー、従業員の定着など、強み・弱みの候補をマーキングします。この段階では30字に絞らず、後続設問へ進みましょう。 後の問題を解くことで、活かす強みと補う弱みの重要度が見えてきます。

候補を拾ったら、第2問以降へ進む ​

統合前のA社に当てはまる候補の中で、後続設問でも使うものを1軍、その他を2軍として整理し、最後に第1問へ戻ります。ただし、第4問で活用するX社の仕入網や駅前立地は、統合前のA社の強みにはできません。設問の主体・時点を確かめたうえで、1軍を優先して各30字にまとめましょう。

与件文から強み・弱みの候補を拾う ​

与件文のどこを見るか ​

強みとしてマーキングする箇所 ​

  • 第7段落:原材料の厳選、店舗の改装、オリジナルメニューの開発によって、 商品とサービスの質を高めることで、差別化 しています。顧客に選ばれる商品・サービスを提供できる点が強みです。
  • 第8段落: チームとして相互に助け合う土壌 が生まれ、 従業員が定着するようになった とあります。さらに、 自主的に問題点を提起し解決するような風土 もあり、商品だけでなく組織面にも強みがあります。

弱みとしてマーキングする箇所 ​

  • 第7段落:仕入業者の高齢化によって、 原材料の仕入れが不安定 になっています。高品質な商品を作れても、それを支える材料の安定確保には課題が残っています。
  • 第9段落: 常連である地元の顧客も高齢化 し、 新たな顧客層の取り込み が重要になっています。地元の常連客との関係に支えられる一方、顧客層を広げる必要があります。
接続詞から、強みと残る課題を分ける ​

第7段落の 「ただ」 は、商品・サービスの差別化から、仕入れの不安定さへ話を切り替えています。 提供する商品・サービスの強さと、調達面の弱さ を分けてマーキングする箇所です。

第8段落の 「その結果」 は、育成やチームづくりによって、助け合いと定着が実現したことを示します。行った施策だけでなく、 その結果として獲得した組織の力 を強みとして拾います。

改善済みの弱みを戻さない ​

かつての粗雑な接客や高い離職率は、現経営者の改革によって改善されています。物語の途中で見つけた弱みは、統合前にも残っているかを確認しましょう。X社に残る高い離職率と、A社で実現した従業員の定着も区別します。

第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける ​

後続設問で使う強み・弱みを確認する ​

後続設問とのつながりから、次の要素を優先候補にできます。

第1問で拾った候補後続設問とのつながり答案に残す方向
高品質な商品・サービス第2問で、現経営者が進めた差別化の中心となる商品・サービスの品質
助け合い、自主的な改善、従業員の定着第4問設問1で、A社の組織文化を活かして統合を進める基盤となる協働的で強固な組織基盤
原材料の仕入れの不安定さ第4問設問2で、X社の仕入網を活用して補う課題となる原材料調達の不安定さ
地元の常連客の高齢化、顧客層の偏り第4問設問2で、駅前立地を活かして若者や外国人観光客を取り込む背景となる顧客層の高齢化・固定化

この対応を見ると、強みには 品質と組織 、弱みには 調達と顧客層 を残す理由が分かります。料理や店舗の特徴だけで強み欄を埋めず、統合を支える組織面の強みも確保します。

2軍の候補は、1軍へまとめられないか考える ​

厳選した原材料、個室やボックス席、オリジナルメニューは、一つずつ書くと30字に収まりません。 高品質な商品・サービス と束ねれば、組織面の強みも残せます。

助け合い、自主的な問題解決、従業員の定着も、 強固な組織基盤 としてまとめられます。 2軍を捨てるのではなく、1軍の言葉に意味を含める ことで、具体的な根拠を活かしながら字数を縮めます。

外部の変化を、A社の弱さまで読み取る ​

仕入業者や顧客の高齢化は、A社の外側で起きている変化です。本問では、その影響でA社が抱える 原材料を安定して確保しにくいこと と、 特定の顧客層への依存 を弱みとして整理します。

地域の常連客がいること自体は強みです。ただし、その層だけに頼っていては将来の需要を広げにくいため、顧客基盤の偏りに注目します。

強み・弱みをそれぞれ30字にまとめる ​

強みは、品質と組織の両方を残す ​

強みは、厳選原料や独自メニューによる品質と、従業員が相互に支援する組織の働きを残します。「強固な組織」という評価語だけでなく、「従業員が助け合う」と具体化すれば、30字でも何ができる組織なのかが伝わります。

弱みは、調達と顧客層の両方を残す ​

弱みの骨格は、 原材料調達の不安定さ+顧客層の高齢化・固定化 です。材料を確保する問題と、顧客層を広げる問題を短く並べます。

「新しい仕入先を探す」「若者を集客する」という改善策ではなく、「仕入れの不安定化」「顧客層の固定化」のように、現在の状態を表す言葉でまとめます。

最後に、各30字以内か、統合前のA社の事実か、品質・組織と調達・顧客層がそれぞれ残っているかを確認して答案を確定します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」は、SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくりについて解説しています。本問では、「顧客価値を生む資源・能力を強みにする」と「依存構造・代替力不足を弱みにする」を2023年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2023年度の与件への当てはめ答案上の注意
顧客価値を生む資源・能力を強みにする高品質な商品・サービス、自律的で協働的な組織結果だけでなく能力へ束ねる
依存構造・代替力不足を弱みにする仕入先高齢化と顧客層固定化への対応力不足外部環境そのものを弱みとしない
時点・対象を固定する統合前のA社だけを分析X社資源や統合効果を入れない

類題は、2022年度事例I第1問 と2024年度事例I第1問 の強み・弱みです。共通点は、与件事実を内部資源・組織能力・依存構造へ一段抽象化して分類することです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(SWOTによる内部・外部環境の整理、顧客・取引先の声を集める仕組み、異業種・異分野との接点づくり)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2023年度の与件事実を主根拠にします。

第 2 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

A 社の現経営者は、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。100 字以内で述べよ。

回答例(94 字) ​

先代の総花的メニュー・出前中心から蕎麦へ集中し、地元家族客向けに個室を整え、厳選原料と独自メニューで高付加価値化した。価格競争を避けて顧客満足を高め、客単価と安定収益を確保する狙いである。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、先代との戦略上の違いと、その狙いです。現経営者の施策だけを並べず、先代の幅広いメニュー・出前中心の営業から、誰に何を提供する経営へ変えたかを比較します。100字の前半に戦略の違い、後半に狙いを置くと対応が明確です。

「何を変えたか」と「何のために変えたか」は別の問いです。メニュー削減、改装、値上げを挙げるだけでは、施策の一覧になります。それらを、顧客と商品を絞り、価格以外の価値で選ばれる店へ変えた動きとしてまとめることが焦点です。

与件文から戦略の転換を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第2段落:先代は 出前中心の営業 を行い、まちの食堂的な役割 を担っていました。地域の幅広い食事需要に応える経営です。
  • 第5段落:現経営者は 総花的なメニューを見直し、出前をやめて来店のみの経営 とし、蕎麦に資源を集中 しました。まず、限られた資源を看板商品へ振り向けています。
  • 第7段落:地元のファミリー層に絞り込んだ うえで、個室やボックス席 を整え、使用する原材料も厳選して、看板となるオリジナルメニュー を開発しました。対象顧客と商品・サービスの両方を変え、品質で選ばれる店にしています。
  • 第8段落:安定的に利益を確保できる体制 になっています。売上を増やすことだけでなく、質を評価されながら収益を確保する方向と捉えます。
資源集中と高付加価値化を一続きで読む ​

メニュー削減だけなら効率化ですが、個室や厳選原材料、独自メニューを組み合わせると、家族でゆっくり食事を楽しむ価値を高める戦略が見えてきます。値上げも単独の目的ではなく、この提供価値と対応させて読みます。

第6段落の 「他方で」 の前では売上改善が、後では業務負荷と離職の問題が示されます。効率重視の取り組みだけで改革が完成したわけではありません。その後の商品・サービスの質や組織づくりまで読むことで、現経営者の戦略の全体像を捉えます。

価格競争から離れ、選ばれる理由を作る ​

先代の幅広い需要への対応から、看板商品へ資源を集中する ​

先代の時代は、周囲に飲食店が少なく、地域のさまざまな食事需要に応えることが成長につながりました。出前と多様なメニューは、その環境では役割を持っていました。先代の経営を初めから誤りだったと評価する必要はありません。

その後、チェーン店などの競合が増え、以前と同じ方法では売上を維持しにくくなります。現経営者は、効率の悪いメニューや出前をやめ、もともとの看板だった蕎麦へ資源を振り向けました。「やることを減らした」という事実を、強みのある商品へ力を集めた戦略として読み取ります。

家族客に合う商品とサービスを組み合わせる ​

ファミリー層に絞るだけでは、その顧客に選ばれる理由までは作れません。個室やボックス席は、家族や友人など複数人で利用する顧客に合う店舗づくりです。厳選原材料やオリジナルメニューは、料理の質や独自性を高める取り組みです。

こうした施策を組み合わせることで、 家族で食事を楽しめる商品・サービスへ高付加価値化する 方向が見えます。席数を減らして個室やボックス席を整えたことも、人数を多く受け入れるだけでなく、対象顧客に合う利用環境へ変えた動きとして理解できます。

差別化の先にある顧客満足と収益を説明する ​

現経営者は、総花的な食堂の延長でチェーン店と価格を競うのではなく、蕎麦と地元ファミリー層へ集中しています。顧客を絞り、その顧客に合った品質と接客を整えることで、競合と異なる選ばれ方を作る狙いです。

「差別化集中戦略」という用語だけで説明を終えず、A社では何への集中、何による差別化なのかを示します。従業員の育成は戦略を支える施策ですが、本問の100字では戦略の比較と顧客満足・安定収益を優先します。

商品とサービスの質で選ばれれば、大手と同じ価格軸だけで競う必要が薄れます。 価格競争を回避し、顧客満足を安定収益へつなげる ことが狙いです。値上げを単独で説明するのでなく、顧客が評価する価値を高めたことと組み合わせます。

戦略の違いと狙いを100字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

骨格は「先代の総花的メニュー・出前中心→蕎麦と地元家族客への集中+個室・原料・独自メニューでの差別化→価格競争回避と収益確保」です。高付加価値化という言葉だけで済ませず、家族客の来店ニーズへどう応え、料理の何を高めたかを短く残します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」は、限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択・集中する考え方について解説しています。本問では、「競争範囲を絞る」と「優位性を非価格価値に置く」を2023年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2023年度の与件への当てはめ答案上の注意
競争範囲を絞る地元ファミリー層を標的にする単なる顧客減少と書かない
優位性を非価格価値に置く蕎麦、品質、接客へ資源集中する低価格集中と混同しない
狙いを競争回避と収益へつなぐ価格競争を避け、満足と安定利益を得る「差別化した」で止めない

類題は、2018年度事例I第1問 の小規模市場を狙う競争戦略と、2011年度事例I第1問(設問2) の医家向け市場への集中です。共通点は、限られた資源を特定顧客・価値へ集中し、大手との価格競争を避けることです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」(限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択・集中する考え方)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2023年度の与件事実を主根拠にします。

第 3 問(配点 20 点) ​

設問文 ​

A 社経営者は、経営統合に先立って、X 社のどのような点に留意するべきか。100 字以内で助言せよ。

回答例(98 字) ​

X社の離職・処遇不安、旧経営者依存と横連携の薄さ、駅客向け低価格戦略の不振を確認する。A社の方法を一律に押し付けず対話で離職を防ぎ、旧経営者の個人的な仕入先関係を引き継ぎ、高品質原料の調達を守る。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、統合に先立って把握すべきX社の状態です。次の設問が統合の進め方を問うのに対し、本問では、A社と何が違い、その違いがどのようなリスクになるかを100字で助言します。

A社は改革によって、品質を高め、従業員が助け合う職場を作ってきました。しかし、その経験があるからといって、X社でも同じ方法をそのまま実行できるとは限りません。経営権の引き継ぎと、現場が新しい方針で動けることは別です。統合前に何を理解しておく必要があるかを考えます。

与件文からX社の注意点を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第11段落:X社は 顧客回転率を高めるオペレーション で、横のつながりが少なく、部門をまたぐ調整を X 社経営者がそれを補っていた とあります。A社の相互協力型の職場とは運営の仕組みが違います。
  • 第12段落:大手外食チェーンとの価格競争は難しく、離職率も高く なっています。低価格中心の戦略と、忙しさを抱える現場の両方に課題があります。
  • 第13段落:統合に不安を感じた従業員から 退職に関わる相談 が出ています。将来起こるかもしれない一般的なリスクではなく、既に表面化した離職の懸念です。
経営者が交代しても自動的には連携しない ​

X社では、各担当が自分の仕事に専念し、横断的な調整を経営者が担っています。経営権を引き継ぐだけでは、調整役の交代や仕事の進め方の違いが現場の負担になり得ます。A社のやり方を直ちに当然とせず、従来の役割関係を確認する必要があります。

同じ蕎麦店で、厨房・接客・管理という似た担当区分があっても、担当間の調整の仕方は違います。A社では助け合いや自主的な問題解決が育っていますが、X社では経営者が決めた業務を各担当がこなしています。組織図の形だけでなく、実際に誰が判断し、誰がつないでいるかまで読みます。

戦略・組織・従業員の状態をつなげる ​

既存の離職問題に、統合への不安が重なっている ​

X社には、忙しさや仕事のきつさによる高い離職率があります。さらに、統合に伴う不安から退職相談が出ています。この二つは区別して把握します。統合だけが離職の原因ではなく、もともとの現場負担に新たな懸念が加わっているからです。

退職相談がある以上、人の問題を統合後に考えればよいとはいえません。人材が流出すれば、店を運営しながら商品やサービスを改善することも難しくなり得ます。「離職リスクに留意する」は、従業員数を確認するだけでなく、何を不安に感じ、働き続ける上で何が障害なのかを把握する意味です。

給与や勤務先が変わることなどは一般に確認事項になり得ますが、この与件には不安の具体的な内訳は書かれていません。処遇悪化が決定していると補わず、対話で確かめるべき内容として扱います。

経営者に頼っていた調整を、誰が担うか確かめる ​

第11段落では、従業員の 横のつながりが少なく 、担当を横断する意思疎通を X 社経営者がそれを補っていた とあります。 経営者の指示と調整に依存する運営 と捉えると、交代時に引き継ぐべき役割が見えてきます。

その仕組みを把握せずに経営者だけを交代させると、これまで誰に相談していたか、変更を誰が決めるかが曖昧になるおそれがあります。A社の自主的な協働文化を持ち込む前に、従来の指示・調整の流れと両社の違いを理解することが必要です。

低価格路線の限界を、現場の制約と合わせて読む ​

X社は競争に対して値下げや営業時間の拡大を行いましたが、大手との価格競争は難しいとされています。さらに、営業時間を短くしても、勤務時間内の忙しさが残っています。単に営業時間を戻したり、安さを強めたりすれば解決する状況ではありません。

低価格路線が行き詰まり、忙しい現場では離職率が高く、さらに統合への不安が加わっています。そこで、戦略の見直しを進める前提として、人が残り、安心して協働できる状態を確保することが大切です。

X社の仕入網などの価値まで否定する必要はありません。注意すべきなのは、両社の違いを見落として一律に変え、従業員や事業基盤を失うことです。対話によって不安や実情を把握する、と留意点から基本姿勢へつなぎます。

ここでは、差別化の具体策を詳しく展開するより、低価格路線の限界と組織・人の制約を踏まえて統合へ入る姿勢を示します。その診断を受けて、次の設問で実行方法を考える流れです。

統合前の留意点を100字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

統合前には、従業員の不安、担当間の横連携、低価格路線の不振を確かめます。加えて、X社経営者の個人的な仕入先関係を確認し、統合後も取引を続けられるよう引継ぎを図ります。A社の方法を一律に押し付けず、対話による離職防止と、原料調達の継続を合わせて助言します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」と経営ハンドブック「M&Aの活用法」は、現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続きとM&Aの目的を明確にし、従業員への説明と相手企業の文化を尊重しながら統合する方法について解説しています。本問では、「成立前に人・文化・業務を確認する」と「雇用不安とキーパーソン流出を把握する」を2023年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2023年度の与件への当てはめ答案上の注意
成立前に人・文化・業務を確認するX社は横の連携が弱く、経営者へ依存財務・契約だけに狭めない
雇用不安とキーパーソン流出を把握する正社員・アルバイトから退職相談がある二要因理論の定着策へ機械的に寄せない
事業上の課題も確認する低価格対応では大手と競争できない統合後施策を先走らず留意点を答える

類題は、2009年度事例I第2問 の買収へ慎重だった理由と、2009年度事例I第3問 の買収後のモラール低下です。共通点は、M&Aの財務効果だけでなく、人員構成・文化・心理を事前に確認することです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」(現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続き) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「M&Aの活用法」(M&Aの目的を明確にし、従業員への説明と相手企業の文化を尊重しながら統合する方法)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2023年度の与件事実を主根拠にします。

第 4 問(配点 40 点) ​

設問文 ​

A 社と X 社の経営統合過程のマネジメントについて、以下の設問に答えよ。

(設問 1) ​

どのように組織の統合を進めていくべきか。80 字以内で助言せよ。

回答例(80 字) ​

A社経営者が統合方針と雇用・処遇を説明し、対話で不安を解消する。両社の人事交流と混成チームで知識を共有し、現場に改善を任せ、助け合い自ら問題を解く文化を育てる。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

第3問で確認した違いを踏まえ、組織をどう統合するかを80字で助言します。新たな商品や客層ではなく、従業員の不安を抑え、両社が協力できる関係を作る方法が中心です。

第3問の「離職リスク」「連携の薄さ」をもう一度書くだけでは、進め方の説明になりません。何を伝え、どのような経験を通じて協働を育てるかへ、一段進めます。A社が既に行った組織づくりを手掛かりにしますが、X社の事情を無視して制度を一括移植することは考えません。

与件文から統合の出発点を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第8段落:A社は 正社員を増やして育成を行い、仕事を任せていった うえで、目的意識の共有や意思の統一 を進め、チームとして相互に助け合う土壌 を作りました。統合先にも活かせる経験があります。
  • 第11段落:X社は 担当業務に専念するのみで横のつながりが少なく、X 社経営者がそれを補っていた という状態です。担当間の自律的な協力を育てる必要があります。
  • 第13段落:不安になった X 社の正社員やアルバイト から退職相談が出ています。まず、統合後に何を目指し、どう働くのかが分かるようにすることが重要です。

不安を和らげ、協働を経験してもらう ​

統合後に目指す方向を経営者が説明する ​

従業員にとって、経営者が変わるだけでは、これから何を大切に働けばよいかは分かりません。そこでA社経営者が、統合後に目指す店や、顧客に提供したい価値を説明することを提案します。売上を増やすという目標だけでなく、現場が仕事の方向を理解できる内容にすることが重要です。

何のために統合し、両社の良さをどう活かすかを伝える ことで、従業員がこれからの仕事と自分の役割を考えられるようにします。目指す方向が分かることが、統合を受け入れ、協力する出発点になります。

対話によって、相手が抱えている不安を知る ​

A社経営者が統合後の方向を説明し、X社の従業員との対話を重ねます。一方的な説明会だけでは、処遇や仕事への具体的な不安を拾えません。相手の経験も尊重して話を聞くことで、統合を受け入れる土台を作ります。

説明した側が「伝えた」と思っていても、相手が理解し納得したとは限りません。退職相談が出ている本事例では、懸念を聞き、分かっていることと未決定のことを区別して説明する姿勢が必要です。忙しい現場の事情にも耳を傾けることで、新しい取り組みをどのように進められるかを考えやすくなります。

方向を説明することと、従業員の受け止め方を確かめること を繰り返し、不安の軽減につなげます。対話で分かった懸念を次の説明や進め方へ反映すると、一方的な通知から、納得を積み重ねる過程へ変わります。

人事交流を、助け合って働く経験へつなげる ​

そのうえで人事交流や共同の仕事を通じ、互いの仕事や強みを知る機会を作ります。A社の文化を宣言するだけでなく、助け合って働く経験を積むことが、横のつながりの形成につながります。人を入れ替えること自体が目的ではありません。

例えば、両社の担当者が一緒に仕事の進め方を確認し、接客と厨房が共同で改善を考える場を設けます。相手が何を大切にし、どこで困るかを知ることを、 担当を越えて相談し、助け合う関係づくり へつなげます。

X社にも、日々の営業を支えてきた経験があります。A社だけが教え、X社だけが従う関係ではなく、双方の良さを理解する交流にすることが大切です。人員を大幅に入れ替えて現場を混乱させるのではなく、営業を続けながら協働を経験できる形を考えます。

A社の成功を、結果だけでなく過程から活かす ​

第8段落の 「その結果」 に注目すると、助け合う土壌は最初からあったのではなく、育成や仕事の委任、目的意識の共有を通じて生まれたことが分かります。X社にも「チームワークを大切に」と唱えるだけでなく、人を育て、方向を共有し、協力する経験を積む過程が必要です。

組織統合の進め方を80字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

骨格は「統合方針・雇用処遇の説明と対話→人事交流・混成チームでの知識共有→現場が助け合い改善する文化」です。交流を行ったことだけで終えず、一緒に仕事を進めて問題を解く経験を作り、現場へ改善を任せる方法まで示します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」と経営ハンドブック「M&Aの活用法」は、現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続きとM&Aの目的を明確にし、従業員への説明と相手企業の文化を尊重しながら統合する方法について解説しています。本問では、「統合後ビジョンと目的を共有する」と「双方向対話で不安と文化差を把握する」を2023年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2023年度の与件への当てはめ答案上の注意
統合後ビジョンと目的を共有するA社経営者が新たな展開を説明一方的な指示にしない
双方向対話で不安と文化差を把握するX社従業員の退職不安を聴く制度統一を急がない
交流・共同活動で一体感を作るA社の助け合う文化を押し付けず相互理解する精神論でなく人事交流等を示す

類題は、2009年度事例I第3問 の買収後のモラール低下と、2024年度事例I第4問(設問1) の改革推進者と橋渡し役の配置です。共通点は、組織変更時に現場の信頼と受容性を設計することです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「事業承継の一般的な手続きと内容」(現状分析、後継者育成、段階的な承継、属人業務の標準化、PMIを含む事業承継の手続き) / 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「M&Aの活用法」(M&Aの目的を明確にし、従業員への説明と相手企業の文化を尊重しながら統合する方法)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2023年度の与件事実を主根拠にします。

(設問 2) ​

今後、どのような事業を展開していくべきか。競争戦略や成長戦略の観点から 100 字以内で助言せよ。

回答例(95 字) ​

X社の仕入網で高品質原料を安定調達し、A社の蕎麦づくりと接客をX店へ展開して差別化する。駅前立地を生かし若者・観光客向けの商品を開発し、SNSで魅力を発信して来店を促し、新顧客層を開拓する。

解説 ​

この問題の着眼点 ​

問われているのは、統合後の事業展開を競争戦略と成長戦略の観点から考えることです。どう選ばれるかと、誰へ市場を広げるかの両方を100字に入れます。二店舗の売上を足すだけでなく、両社の資源を組み合わせる意味を考えます。

競争戦略では、価格以外に顧客から選ばれる理由を考えます。成長戦略では、既存の顧客基盤を大切にしながら、新たにどの層へ広げるかを考えます。「差別化する」「成長する」と結論だけを置かず、A社のノウハウとX社の仕入網・立地を、どのように使うかまで説明することが焦点です。

与件文から統合で使える資源と機会を読む ​

与件文のどこを見るか ​
  • 第7段落:A社は 商品とサービスの質を高めることで、差別化 していますが、原材料の仕入れが不安定 です。強みを広げるにも調達の補完が必要です。
  • 第11段落:X社には 中堅の食品卸売業者 との関係があり、その業者は 地元産の高品質な原材料 も扱っています。高品質な商品づくりを支える仕入網として活かせます。
  • 第12段落:X社は 駅前に立地 するものの、大手外食チェーンとの価格競争は難しく なっています。安売りの継続ではなく、A社のノウハウを使った商品・サービスの差別化を考えます。
  • 第13段落:外国人観光客や若者が増え始めた うえ、公共交通機関を利用する来訪者 が目立ちます。駅前店舗を新しい顧客との入口にする機会です。

両社の強みで弱みを補い、新しい顧客へ広げる ​

X社の仕入網で、A社の品質を支える調達を補う ​

第1問で整理したように、A社には高品質な商品・サービスがある一方、原材料の調達が不安定という弱みがあります。品質を強みにしていても、必要な材料を確保できなければ、それを安定して提供しにくくなります。

X社の取引先は、地元産の高品質な原材料を扱う生産者とつながっています。この関係を活用できれば、A社の調達を補いながら、品質を重視する方針も支えることが期待できます。単に仕入先を増やすという話ではなく、A社の提供価値に合う供給網を組み合わせる点に意味があります。

A社のノウハウで、X社に価格以外の選ばれる理由を作る ​

X社には駅前という立地がありますが、それでも価格競争によって業績が厳しくなっています。立地さえ良ければ顧客が戻るわけではなく、どのような商品・サービスで選ばれるかを変える必要があります。

ここで、 A社の商品づくり・接客のノウハウをX社の差別化へ活かす ことを考えます。低価格で回転数を上げるだけでなく、地域の食べ歩きに来る人にも魅力を感じてもらえる商品・サービスへ改善する方向です。

A社の家族向け店舗を、そっくりそのまま駅前店に再現する必要はありません。駅利用者など既存の顧客もいるため、立地や客層に合う形でノウハウを使うことが大切です。移すのは外形ではなく、顧客に合った価値を作る力です。

公共交通で来る新しい客層を、駅前店舗へ取り込む ​

第13段落の 「とりわけ」 は、SNSやグルメアプリを頼りに、公共交通で訪れる人が目立つことを強調しています。外国人観光客や若者が増えたという記述と、X社の駅前立地を組み合わせると、新規客層への接近という成長の方向が見えてきます。

一方、A社は駅からバスで約20分の立地です。既存の地元客との関係を保ちながら、駅前のX社を新しい来訪者との接点にすれば、従来とは異なる顧客へ広げることが期待できます。これは蕎麦店とは無関係な事業への多角化ではなく、両社の事業を活かした顧客層の拡大です。

X社の仕入網でA社の調達を補い、A社のノウハウでX社の差別化を進める という双方向の補完です。そこへ駅前で新しい客層を取り込む機会を重ねることで、二店舗を持つことを成長につなげます。

組織統合が、資源を活かす前提になる ​

既存の地元ファミリー層を捨てるのではなく、駅前のX社で観光客や若者を取り込むことで顧客層を広げます。仕入先との関係はX社経営者の個人的なつながりなので、統合だけで必ず維持できるとは考えず、関係の引き継ぎも実行上の留意点です。

また、A社のノウハウをX社へ広げるにも、両社の従業員が協力する必要があります。設問1で対話や交流を考えたことが、設問2の資源活用を支えるわけです。ただし、本問で再び対話の手順を詳述すると事業展開を書く場所がなくなるため、答案では競争と成長の方向を中心にします。

競争戦略と成長戦略を100字で答案化する ​

答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。

骨格は「X社の仕入網+A社の蕎麦・接客→X店の差別化→駅前立地とSNSで若者・観光客を開拓」です。誰を増やすかに加えて、SNSやグルメアプリで情報を探す来訪者へどう届けるかを残します。原料調達・提供価値・顧客接点を結び、統合資源が成長へつながる流れを示します。


公的資料から持ち帰る知識と類題 ​

独立行政法人中小企業基盤整備機構のJ-Net21にある経営ハンドブック「アンゾフの成長マトリックス」は、既存/新規の商品と市場を分けて成長方向を選ぶアンゾフの成長マトリックスについて解説しています。本問では、「既存/新規の商品と市場を分ける」と「補完資源のシナジーを確認する」を2023年度の与件事実と設問要求へ当てはめます。

公的資料の判断軸2023年度の与件への当てはめ答案上の注意
既存/新規の商品と市場を分ける商品・サービスを強化し、観光客・若者へ届ける新チャネルを直ちに新製品としない
補完資源のシナジーを確認するX社の調達網・立地とA社の品質・接客M&A一般論で終えない
新市場ニーズと実行策を対応させるSNS・グルメアプリ利用者へ価値を伝える販促だけでなく商品・接客改善も書く

類題は、2015年度事例I第5問 のサービス事業拡大と、2021年度事例I第3問 の事業ドメイン拡大です。共通点は、既存資源とのシナジーと、新市場を開くための能力・施策を対応させることです。

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「アンゾフの成長マトリックス」(既存/新規の商品と市場を分けて成長方向を選ぶアンゾフの成長マトリックス)

この公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。答案では2023年度の与件事実を主根拠にします。

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