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令和 6 年度(2024 年度)事例 Ⅲ 解答解説
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
C 社の強みを 80 字以内で述べよ。
回答例(71 字)
社長は搬送機能・工場レイアウトの提案力を持つ。顧客仕様の特注コンベヤを設計・製造する技術力と、X社向け保守を自社営業部で担う経験も強みである。
解説
この問題の着眼点
C社の強みを80字で整理する与件抜粋型の問題 です。社長の提案力、特注品を形にする技術力、それらを活かして築いた受注基盤を分けて拾います。
根拠集めは最初、答案の確定は最後
与件を読みながら、強みの候補へ蛍光ペンやボールペンで印を付けます。すぐに80字へ絞らず、第2問以降へ進みます。
工程改善や新事業を考えた後で戻ると、増産に使う人材・設備と、自社企画に使う提案力の重要性が見えてきます。後続設問との関係を確かめ、似た候補を束ねて答案へ残します。
提案する力と、特注品を形にする力を読む
与件文のどこを見るか
- 第4段落: 搬送機器を含む工場設備レイアウト設計を担当、 工場の生産性を高めることを顧客に提案 とあります。社長は機器単体だけでなく、顧客の工場全体の使い方を考えてきました。
- 第5段落: C 社社長の搬送機能についての有効な提案を受けられる、 X 社以外の工作機械メーカーや物流機器メーカーの特注品受託生産も獲得 とあります。提案が評価され、取引先の拡大へつながっています。
- 第6段落: NC 加工機などの生産設備を導入、 設計要員や製造要員などの技術者を中心に採用、 工作機械メーカー 5 社、物流機器メーカー 3 社 とあります。設備と技術者を整え、複数の顧客の注文に応える基盤を作ってきました。
社長の経験は、顧客の生産性を高める提案力になる
工場では、機械の性能が高くても、物が遠回りして移動したり工程間で滞ったりすれば、全体の生産性は上がりません。社長には搬送機器を含むレイアウトを設計し、顧客の工場の動きを考えてきた経験があります。ここは 工場の生産性向上につながる提案力 とまとめられます。
第5段落の 「その後」 に続く記述は、この提案力がX社以外の特注受託にもつながったことを示します。単なる前職の経歴ではなく、C社の営業上の強みとして働いている点を捉えます。
提案を実際の製品へ変える設計・製造技術がある
C社は顧客の仕様に応じたコンベヤを受託生産し、設計要員・製造要員の採用と設備導入で生産を拡大してきました。人材と設備は別々に列挙するより、 特注品に対応する設計・製造技術力 を支える根拠として束ねると、80字の中へ収めやすくなります。
取引先は工作機械メーカー5社、物流機器メーカー3社です。提案・特注対応を通じた取引の広がりと、増産を引き受ける体制を合わせ、 継続取引と増産対応で築いた受注基盤 と捉えます。X社の国内移管は受注増の外部要因なので、それ自体を自社の能力とはせず、引き受ける側の体制を見ます。
第2問以降を解いて、1軍・2軍を分ける
第16段落では、X社向けのメンテナンスをC社営業部が担当しています。これは既存の保守対応経験であり、第5問の直接顧客向けサービスを整える際の土台になります。提案力と特注品を形にする力に加え、この経験を答案候補として残します。据付は現在の顧客企業が行うため、自社の据付実績としては書きません。
三つの強みを80字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
答案の骨格は「搬送機能・レイアウトの提案力+特注品の設計製造技術+X社向け保守対応の経験」です。取引先数や設備名を全て列挙するのではなく、提案し、作り、納入後を支える異なる能力を80字へまとめます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の基本方針からは、自社の強みを棚卸しし、活かす市場や製品を考える視点を持ち帰れます。本問では、社長の提案力と特注対応の技術を分け、両者を支える人材・設備を整理します。
類題は、2025年度事例III第1問、2023年度事例III第1問、2021年度事例III第1問です。共通点は与件から自社の資源・能力を抽出する点。相違点は、2023年度は生産面の強み二つ、2021・2025年度は強みと弱みを問うのに対し、本問は提案力や顧客基盤も含む強みを80字へまとめる点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための基本方針」(強みを棚卸しし、限られた経営資源を顧客・商品・商圏・販路へ選択集中する考え方)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 2 問(配点 20 点)
設問文
コロナ禍以降増加傾向にある受注量に対応するため、C 社製造部では工程改善によって生産能力の向上を図る検討を進めている。どのように工程改善を進めるべきか、100 字以内で助言せよ。
回答例(99 字)
ボトルネックの製缶工程を IE 手法で分析し、作業手順の改善を行う。他工程の作業者を多能工化し応援体制を構築する。加えて、一部作業の外注化や生産性の高い設備導入も検討し、工程全体の生産能力を向上させる。
解説
この問題の着眼点
受注増へ対応するための 工程改善による生産能力の向上策を100字で助言します。 全体の生産量を制約する製缶工程を特定し、作業改善、応援、外注・設備の順に能力を高める方法を考えます。
一つの工程だけに残業が集中する理由を読む
与件文のどこを見るか
- 第7段落: 生産を国内に移管した、 C 社の受注量は近年さらに増加傾向にある とあります。増加する受注を処理するため、生産能力を高める必要があります。
- 第11段落: フレームは主に製缶課で、 最終の組立を組立課が行っている とあります。製缶で作るフレームも、最終製品を完成させるために必要です。
- 第15段落: 製缶工程(製缶課)の残業や休日出勤が多く、 週次日程計画表の変更が常態化、 不適合品発生などの特別な場合を除き残業や休日出勤は生じていない とあります。前後工程と比べ、製缶に負担が集中しています。
全体の生産量は、製缶工程を通せる量に制約される
製缶工程だけが残業や休日出勤で納期へ対応し、そのために計画変更も常態化しています。前後工程との違いから、 製缶工程がボトルネックとなっている と判断できます。
機械加工で部品を多く作れても、必要なフレームがそろわなければ組立を完了できません。改善の起点を製缶へ置くのは、忙しさを均等にするためだけでなく、工場全体の完成品の量を増やすため です。
まず作業を調べ、同じ時間で処理できる量を増やす
IEの作業分析で、製缶のどの作業に時間がかかり、準備・移動・待ちなどのムダがどこにあるかを確認します。例えば、必要な材料や工具を探しているなら配置と準備を見直し、作業の順序を整える方法が考えられます。
与件だけで特定のムダが発生していると決めつけず、 作業分析で原因を確かめ、手順を改善・標準化する という進め方にします。標準にした方法を現場へ定着させ、作業時間が実際に短くなったかまで確認します。
他工程の人材を使えるようにし、残る不足を補う
前後工程では通常、残業が生じていません。この差を活かし、負荷と技能を確認したうえで、 他工程の作業者を多能工化し、製缶への応援体制を作る ことを考えます。製缶の必要技能を教え、安全・品質を確保して担当できる作業を増やします。配置換えだけで直ちに同じ仕事ができるわけではないため、教育を対策に含めます。
作業改善と応援でも能力が足りなければ、 一部作業の外注化や生産性の高い設備導入 を検討します。外注先の品質・納期、設備で短縮できる作業と費用、今後の受注量を比較し、製缶の不足を補います。先に全工程へ設備を増やすより、制約工程の改善後に必要量を見極める順序です。
改善対象を固定し、手段を段階的に組み合わせる
| 段階 | 製缶工程への対応 | 狙い |
|---|---|---|
| 作業方法 | IEによる分析・手順改善 | 一つの仕事に必要な時間を減らす |
| 人員・技能 | 多能工化による応援 | 他工程の人材を必要な時に活用する |
| 外部資源・設備 | 一部外注・設備導入の検討 | 内部改善後にも残る能力不足を補う |
第3問で扱う計画・情報共有だけでは、製缶の処理能力そのものは十分に増えません。本問は、制約工程の作り方と使える人・設備を変えることへ焦点を置きます。
製缶を起点とする能力向上策を100字で答案化する
答案の骨格は、 製缶がボトルネック→IEで作業改善+多能工応援→外注・設備も検討して全体能力向上 です。最初に対象工程を置き、「分析する」「改善する」「応援する」と具体的な行動を肉付けします。
設備導入だけで字数を使わず、まず社内でできる作業改善と技能の活用を残します。製缶の能力向上を工場全体の増産へつなぐ 形で結びましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の業務プロセスの解説は、作業の流れを見えるようにし、ムダを減らして人材を柔軟に活用する考え方を示します。本問では、製缶を改善対象に据え、作業方法と応援体制の両方を変えるために使います。
類題は、2023年度事例III第5問、2019年度事例III第3問(設問1)、2015年度事例III第2問です。共通点は、需要に応える工程能力と体制を考える点。相違点は、2023年度は新設備・新体制の妥当性、2019年度は新工場の量産体制、2015年度は工程間の設備能力の偏りを扱い、本問は製缶への負荷集中から改善を始める点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「業務プロセスの見直しによる生産性向上」(作業工程を見える化し、待ち・移動等のムダを除き、人材を流動化してPDCAで改善する方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
C 社では、受注量の増加や納期短縮要請などの影響で製造部の工程管理が混乱している。どのように工程管理業務を改善するべきか、その進め方を 100 字以内で助言せよ。
回答例(93 字)
作業方法を整え、実績を計測・蓄積して標準時間を設定し、工程別の能力・負荷と納期から日程・着手順を調整する。進捗、部品納入や設計変更を適時共有し、遅延予兆に応じて計画・要員配置を修正する。
解説
この問題の着眼点
受注増・納期短縮で混乱する 工程管理業務の改善の進め方を100字で助言します。 作業と時間の基準を作り、実行できる日程計画へ落とし、実績を見て修正する順序で考えます。
経験による工数見積もりと、週末の調整を見直す
与件文のどこを見るか
- 第12段落: 顧客要求納期を基準として製造番号ごとの大日程計画を策定、 大日程計画と設計部で作成された部品構成表 とあります。納期から立てる計画と、調達に使う情報は既にあります。
- 第13段落: 週 1 回週末に開催される生産会議、 次週 1 週間の各工程の週次日程計画表を作成、 各作業の工数見積もりは、製造部各課長の経験を基に作成 とあります。工程間の調整は行っていますが、必要時間の見積もりが個人の経験に依存しています。
- 第14段落: 工程管理の混乱、 現在の管理では納期遅延が生じる恐れ、 IT 利用も図りながらその対応を検討 とあります。今後の受注増に耐えられる管理へ変えることが課題です。
作業の基準と必要時間をそろえ、計画の土台を作る
同じ作業でも担当者ごとに見積もる時間が違えば、各工程にどれだけ仕事を入れられるかを比較しにくくなります。まずIEで作業方法を分析し、 標準作業と標準時間を設定する ことを置きます。
標準時間は、決めた方法で作業する際に必要となる時間の基準です。これを使えば、製造番号ごとに必要工数を積み上げ、各工程で使える能力と比較できます。単に現状の時間を測るだけでなく、作業方法を整え、その方法での実績を計測・蓄積してから計画に使える基準にします。
納期だけでなく、各工程の能力に合わせて日程を組む
顧客の納期から逆算しても、製缶に能力以上の仕事を集中させれば、そのままでは実行できません。 標準時間・納期・工程能力に基づく日程計画 を作り、負荷の山と優先順位を調整します。
既存の大日程計画と週次計画をつなぎ、材料・外注品の納入状況も確認します。例えば、必要部品がそろう時期や前工程の完了予定を踏まえて着手順を決めます。受注増を受け止めるには、希望する納期と実際にできる量の両方 が計画に必要です。
実績をすぐ共有し、遅れる前に手を打つ
第14段落の 「現在は何とか納期を確保できているが」 は、今は納期を守れていても、今後の負荷増に現行管理では対応しきれないおそれを示します。週末に状況を確認するだけでなく、変化を早く捉えて調整する仕組みを考えます。
製造番号を共通のキーにして、各工程の 着手・完了実績と進捗をシステムへ入力・共有する 方法が考えられます。計画と実績の差から遅延の予兆を見つけ、作業順序や要員配置を修正します。部品納入状況や設計・納期変更も関係部門へ適時伝え、古い前提のまま作業が進まないようにします。
ITは共有を早める手段です。入力項目・更新担当・更新時点を決め、異常を見つけた後に誰が何を調整するかまで設計すると、見える化が管理の改善につながります。
基準・計画・統制の順に100字で答案化する
答案の骨格は、 作業方法の整備→実績の計測・蓄積と標準時間の設定→能力・負荷と納期の照合→進捗・部品納入・変更の共有と修正 です。第1文で作業の標準化と時間設定から、能力・負荷に基づく日程調整までを示します。第2文で進捗・部品納入・変更の共有と、遅延予兆に応じた計画・要員配置の修正を示します。
「進め方」なので、三つの施策を並べるより、基準を作って計画に使い、実績との差を修正する 順序を残します。第2問の設備・作業能力の改善と区別し、仕事をどう計画し動かすかで結びます。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の「見える化」は、進捗や異常を関係者が把握して行動できる状態を考える参考になります。本問では標準時間を基準に計画と実績を比較し、遅れの予兆を工程間で共有して調整へ結びつけます。
類題は、2025年度事例III第3問、2018年度事例III第3問、2011年度事例III第2問です。共通点は、計画と実際の生産のずれを抑える管理を考える点。相違点は、2025年度は特急受注の余力・変更指示、2018年度は在庫推移と計画、2011年度は計画変更と納期満足を扱い、本問は経験による工数見積もりを共通基準へ変えるところから始める点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21「『見える化』とはどういうことなのでしょうか?」(管理対象と基準を明確にし、異常や進捗を誰でも把握できる表示と運用へ変える方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 4 問(配点 20 点)
設問文
C 社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは行われているものの、現状のコスト高には対応できていない。今後、顧客企業と価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策を 120 字以内で助言せよ。
回答例(112 字)
製造番号別に材料使用量・最新単価、実作業時間・賃率、外注費等を集計し実際原価を把握して、見積との差異を分析する。現行原価と目標利益を見積基準へ反映し、営業・製造で原価上昇の根拠と適正価格を共有して顧客説明用の資料を準備する。
解説
この問題の着眼点
価格交渉を円滑にするための 社内の事前対策を120字で助言します。 現在の原価を把握し、見積りの基準をそろえ、顧客に説明できる根拠資料へつなげる流れです。
過去の契約価格と、今かかっている費用のずれを読む
与件文のどこを見るか
- 第8段落: 過去に製造した搬送機器の契約金額を参考に、 営業部員が材料費と社内加工費、その他の経費を合計して算出、 営業部長が決裁、 契約金額は現状のコスト高には対応できていない とあります。見積りと決裁は行っていますが、費用増を価格へ十分に反映できていません。
- 第8段落: 受注番号は、製造部では製造番号として使われる とあります。営業の契約情報と製造の実績を、同じ番号で結びつけられます。
- 第9段落: 部品構成表はデジタルデータとして、 材料と外注品の発注、在庫管理に活用 とあります。必要な材料・外注品を把握する既存情報があります。
- 第13段落: 各作業の工数見積もりは、製造部各課長の経験を基に作成 とあります。加工費の算定にも、共通の時間基準と実績情報が必要になります。
いくら上がったかを、製品・工程ごとの費用でつかむ
第8段落の 「見直しは一応行われているものの」 は、見直しの実施と、実際の費用増を回収できているかを分けています。過去の契約金額から少し増額するだけでは、現在の製品に必要な材料や加工の負担を十分に説明できません。
まず、 製造番号ごとに材料費・加工費・外注費等を集計する 仕組みを整えます。部品構成表と購買情報から材料量・単価を、作業記録から実際の工数を集め、賃率や設備費などの費用と結びつけます。特注品ごとの負担をつかむ個別原価計算の考え方です。
第3問で設定する標準時間は、見積りの加工費を計算する基準にも使えます。一方、実際の原価は実績工数等から把握し、見積りとの差を確認します。見積りに使う基準と実績の比較 によって、価格上昇だけでなく作業の超過などの原因も分けて捉えられます。
原価情報を、営業が使う共通の見積基準へ変える
原価が分かっても、営業担当ごとに違う前提で見積もれば、採算の確認は安定しません。 最新原価と目標利益に基づく見積ルール・承認手順 を定め、設計・製造・営業で共有します。
材料単価や賃率をいつ更新し、特殊な仕様や追加作業をどう見積もるかをそろえます。営業部長による決裁は既にあるため、承認者を置くこと自体より、どの情報で採算を確かめるかを改善します。
費用増と自社の改善を分け、説明資料を準備する
顧客へ示すために、材料・人件費等の上昇資料、製品別の影響額、これまでの価格改定履歴をまとめます。同時に、工程改善で削減した負担も整理し、 自社で吸収した部分と価格へ反映したい部分 を説明できるようにします。
原価差異と改定履歴を残せば、前回の交渉から何が変わったかも確認できます。ここでは交渉時の話し方を詳しく書くより、営業が根拠を持って交渉できる状態を社内で作る ことが中心です。
価格交渉の社内準備を120字で答案化する
答案の骨格は、 製品・工程別の原価把握→見積・承認基準の共有→費用上昇と改善実績の根拠資料 です。原価把握には材料使用量・最新単価、実作業時間・賃率、外注費等を用います。実際原価と見積との差異を分析し、現行原価と目標利益を見積基準へ反映します。
「集計する」「見積基準へ反映する」「共有して資料を準備する」と社内の行動を並べます。営業・製造で原価上昇の根拠と適正価格を共有し、顧客説明資料を用意するところまでが本問の事前対策です。原価データを作ることと、見積り・説明に使えること の両方を確保しましょう。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21のコスト削減の解説からは、見えにくい間接費も含め費用の発生を把握する視点を、中小企業庁の支援ツールからは原価・費用上昇の根拠を交渉準備へ使う視点を持ち帰れます。本問では、製造番号で原価と契約情報を結び、見積基準と説明資料にします。
類題は、2023年度事例III第3問、2016年度事例III第2問、2010年度事例III第2問です。共通点は、費用の発生と収益性を生産管理へ結びつける点。相違点は、2023年度は材料高騰下の収益改善、2016年度は生産管理全般、2010年度は工程移管のコストと混乱を扱い、本問は価格交渉に先立つ原価・見積りの社内整備に絞る点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「コスト削減の仕方」(活動別・製品別の間接コストまで可視化し、ムダ・ムラ・ムリを特定して削減する方法) / 中小企業庁「価格交渉・転嫁の支援ツール」(製品別・工程別原価とコスト上昇の根拠資料を整え、価格交渉・転嫁へ反映する方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。
第 5 問(配点 20 点)
設問文
C 社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120 字以内で助言せよ。
回答例(119 字)
小規模工場・物流施設の搬送・レイアウト課題を調査し、社長の提案力を生かして自社企画製品を開発する。営業・設計・製造の専門チームで新規顧客を開拓し、協力先も使って据付・保守を提供する。既存受託との負荷を調整し、新企画に人員と時間を確保する。
解説
この問題の着眼点
小規模の工場・物流施設を新設・更新する企業と直接契約し、自社企画製品を提供するための 事業の進め方を120字で助言します。 企画開発、直接営業、据付・保守、推進体制をつなげます。
直接契約すると、C社が担う仕事が広がる
与件文のどこを見るか
- 第3段落: 設備に組み込まれるローラコンベヤやベルトコンベヤを受託生産 とあります。現在は設備全体を提供するメーカーから、機器の生産を受託しています。
- 第4段落: 搬送機器を含む工場設備レイアウト設計を担当、 工場の生産性を高めることを顧客に提案 とあります。施設の使い方まで考える社長の経験を、新事業の企画へ活かせます。
- 第8段落: 顧客企業が作成した製品仕様書および製品図面を確認 とあります。現在は顧客が仕様や図面を用意します。直接契約では利用者の要望を自社で仕様へ具体化する役割が増えます。
- 第16段落: 据付は顧客企業が行う、 据付後のメンテナンスについては顧客企業が行う、 X 社の場合は C 社の営業部が担当 とあります。据付は現在の顧客が担い、保守はX社向けに自社の経験があります。
社長の提案力を、対象顧客のニーズと製品企画へ結ぶ
新事業の対象は、設問にある小規模の工場・物流施設を新設・更新する企業です。まず搬送する物、量、設置スペース、現在の作業負担などを調べ、何を改善したいのかをつかみます。
その情報に社長のレイアウト設計・提案経験を合わせ、 顧客の生産性を高める自社企画製品 を開発します。現在の特注製造技術を活かしながら、「渡された図面どおりに作る」前に、どんな機器・配置が顧客に必要かを考える仕事を加える流れです。
機器を納めるだけでなく、使える状態まで支える
従来の顧客企業は、C社の機器を設備へ組み込み、据え付けています。施設を使う企業と直接契約する場合、この機能を従来の顧客に任せる前提では進められません。 直接提案する営業部隊と、据付・保守まで担うサービス体制 を整える必要があります。
第16段落の 「据付後のメンテナンスについては顧客企業が行うが」 の後には、X社向けではC社営業部が担当するという例外が続きます。この経験はサービス体制を育てる出発点です。ただし、それだけで新規顧客の据付から保守まで全て対応できるとは限らないため、必要な技能・人員・担当範囲を確認します。
営業が把握した設置条件を設計・製造・サービスへ渡し、納入後の不具合や利用者の声を次の企画へ戻せば、 企画から利用後まで一貫して支える関係 を作れます。広告や訪問を増やすだけではなく、直接取引に必要な仕事を補うことが中心です。
受注が増える既存事業と、人・設備を奪い合わないようにする
既存事業では製缶の残業が多く、工程管理にも混乱が生じています。そのまま新事業を同じ担当者へ追加すると、目の前の納期対応が優先され、企画や顧客開拓が進まないおそれがあります。
そこで、 営業・設計・製造等をつなぐ専門チーム を編成し、責任者、担当業務、使う工数を明確にします。既存受注との負荷を調整し、新事業に必要な人材・サービス機能を段階的に整えます。専門チームを作ることは、既存部門との情報交換を切ることではなく、新事業を進める責任と資源を確保すること です。
| 現在の役割分担 | 直接契約で補うこと |
|---|---|
| 顧客が仕様・図面を提示 | ニーズ調査から自社で企画する |
| 設備メーカーへ納入 | 施設利用者への直接提案・顧客開拓 |
| 据付は顧客、保守は一部のみ自社 | 据付・保守を一貫して支える体制 |
| 既存受注の増加へ各部門が対応 | 専門チームと負荷調整で推進 |
自社企画・直接契約の進め方を120字で答案化する
答案の骨格は、次の論点を設問の順に整理することです。
骨格は「施設の搬送・配置の課題を把握→社長の提案力で企画→営業・設計・製造の連携→据付・保守の提供+既存受注との負荷調整」です。「ニーズ調査」「専門チーム」という名称だけでなく、何を調べ、どの部門がつながり、新事業へどのように資源を確保するかを残します。
公的資料から持ち帰る知識と類題
J-Net21の組織・体制づくりの解説は、顧客の声を取り込み、社内で商品開発へ活かす仕組みを考える参考になります。本問では、社長の提案力を営業・設計・製造へつなぎ、直接契約に必要な据付・保守まで体制を広げます。
類題は、2023年度事例III第5問、2019年度事例III第3問(設問1)、2015年度事例III第2問です。共通点は、事業に必要な能力を現行体制と照らして整える点。相違点は、各類題の中心が新工場・専用設備や工程能力にあるのに対し、本問は直接契約で増える企画・営業・サービスと推進体制まで扱う点です。
出典:中小企業基盤整備機構 J-Net21経営ハンドブック「商品開発・市場開拓のための社内外の組織・体制づくり」(3C・4P・SWOTで自社と市場を整理し、顧客の声や異分野との接点を社内外の体制へ落とす方法)
公的資料と類題は理解を補助するものであり、当該年度の公式解答や採点基準ではありません。

